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呪殺夢  作者: FROGGER
11/22

四夜目 3

 神主さんの計らいで、一室を借りる事が出来た。


 時々訪れる参拝客の為に、木賃宿として利用している部屋は、学校の教室くらいの広さがあり、部屋の隅に毛布らしき薄い布が平積みされている。


 「野宿にならなかっただけでもありがたい。 まあ、これもいい体験談になるだろうな」


 荷物を置いた轍と神社を何度も往復し、一段落した頃には日がとっぷりと暮れていた。


 神主さんに改めて挨拶をし、宿泊費として千円札を手渡した後で台所に行く。


 「ラーメンと缶詰位しか無いけど、無いよりはマシか」


 そう言いながら箸を付けようとした時、不意に扉が開いた。


 「ハヒフヘホーーッ」


 思わず振り向く黒士と跳津。


 「えっと、どうも?」


 そんな二人を無視し、ずかずかと部屋に押し入った男は、跳津のラーメンをひったくるとズルズルと食べ始めた。


 「おい、何すんだよ!」


 跳津の抗議を無視してドンブリを空にする男。


 黒士は、その顔に見覚えがあった。


 「なあ、お前まさか『納豆ゲーマー』か?」


 黒士の言葉を肯定するように握り拳を振り上げ、親指をおっ立てる男。




  大手掲示板の一つに「3(み)ちゃんねる」というものがある。


 その掲示板に喧嘩を売った男がいた。


 それが、「納豆ゲーマー」という、ふざけたハンドルネームを付けた奴だった。


 彼は、掲示板の利用者から住所や名前を特定され、自宅で押し問答になって逃げたらしいと聞いていたが、いつの間にかIチューブ(いつべ)で復活したそうだ。


 「なんで問題人物がここにいるんだ? そう言えばお前、ネットゲーマーを騙って3ちゃんねるを荒していたらしいじゃねぇか。 今度は何を企んでいるんだ?」


 黒士の詰問に、拍手する納豆ゲーマー。


 「そこまでバレてたの? いやー、参ったね。 なんちゃって」


 そう言いながら空になったドンブリを床に放り投げる。


 睨む跳津を無視して黒士に向き直る納豆ゲーマー。


 「おメーら、面白そうな事してんじゃない。 さすがは大黒様、やっぱ違うねぇ」


 こいつ、俺達が命がけで足掻いているのをネタにしてやがる。 なんて悪趣味な奴だ。


 黒士は、自分の顔が火照っていくのを自覚した。


 「まさかネットゲーム内で流れている噂は、お前の仕業じゃないだろうな?」


 「噂ぁ?」


 白々しくおどける納豆ゲーマー。


 「第二次世界大戦後に帰郷した男が神器を盗んで死んだ話だ。 故人を恥ずかしめる奴は、ネットゲームをやる資格は無いぞ!」


 黒士の怒声が部屋中に響いた。


 「うっせぇんだよバカ。 俺は天下のIチューブ様だぞ!? 自作自演なんて、みんなやってるっつーの! そんなんで泣く奴の方が馬鹿だっつーの! そもそもおメーが俺ん家の住所を特定したんだろうが! 違うか?」


 そう叫びながら黒士に殴りかかろうとする納豆ゲーマー。





 コーン




 木こりが大木に斧を入れたような軽快な音が響く。


 動きを止めた三人が、お互いを確認するように見た。


 「い、今のは?」


 慌てて部屋を出た黒士が目にしたのは、部屋の扉に穿たれた菱形の穴だった。


  

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