四夜目 2
「おや珍しい。 こんな辺鄙な神社に何かご用ですかな」
物腰の静かな、いかにも好々爺といった神主が出迎えてくれた。
「俺は朝帳ジャーナルの大田黒士です。 彼は因幡跳津。 ちょっとした証拠集めをする為に戸渡村という場所を探しています。 昔、抜け忍達が作ったとされる村らしいのですが、神主さんは御存知ありませんか?」
「ここの近くには昔、忍者が作った隠れ村があったと聞きます。 恐らくここで間違いは無いでしょう」
神主さんの言葉を聞き、思わずへたり込む二人。
「偶然、というか奇跡だなこりゃ。 良くたどり着けたもんだなぁ」
「実は俺達、とある噂を調査しています。 呪殺夢っていうらしいのですが。 まず、このハガキを見てくれませんか?」
そう言いながら黒士は神主さんにハガキを貼った厚紙を差し出した。
一瞬、怪訝そうな表情を浮かべた神主さんが厚紙を受け取り、ハガキを確認する。
「このハガキに書かれている通り、俺達に鈴の音が聞こえたんですよ。 今の所、それらしい夢は見ていないのですが、編集長が夢に出てきた鬼に手を切られたそうです」
そう言いながら今度は編集長のカルテをコピーした紙を神主さんに見せた。
「もし、その話が事実なら、由々しき事態ですな。 何故その編集長をつれて来なかったのですかな?」
言われてみればそうだ。
「あ、えーと、編集長がお祓いに行くと言っていましたので、そのままにしていました。 ここに神社があるって分かっていたら一緒に来たかも知れません」
我ながら薄情だと思いつつ答える黒士。
何も言わずに、ただじっと見ている神主さんの目が痛い。
「このハガキを手に入れたのが二日前です。 正直に言うと、手詰まりになっていました。 この呪いが『呪殺夢』だという事だけは分かりましたが、自分が出来る限りの事をやっても何も分からず、偶然にここまでたどり着いたのです」
そう言って頭を下げる黒士。
「神主さん、無理を承知でお願いします。 どうかお力添えをお願いします」
そんな黒士を見て腕を組む神主。
「私も神に仕える身。 何とかしたいのはやまやまですが、何が何やら。 私には、あなたたちが呪われているとは思えないのですよ。 何か勘違いでもなさっているのではないですか?」
神主さんの話を聞いて顔を見合わせる黒士と跳津。