ミューズの振りしてレースを観戦
陸上の競技場かサッカー場を思わせる形だけど広さは数倍以上ある会場には規則正しくスターライダーが並んでスタートの時を待っている。
その会場を見下ろしながら女装したボクは客席を埋める大観衆に笑顔で手を振っていた・・・いやミューズとして紹介された直後だから国賓としてらしく振舞わ無いと、その会場は先程も説明した通り6隻の航宙貨物船が長方形に取り囲んで客席を作っている。
「今までは限られた空間内での暗殺だったけど遮蔽のない外だと電源さえ確保出来たら光学兵器は凄い脅威と・・・流石に成らないな?」
なにせ光学兵器なら肉眼で見得るだけで有効な射程距離と言えるんだけど、実際には届くと言うだけで正確に当てられるとは限らない。
実は炸薬で飛ばす実体弾の狙撃銃よりは高性能だけど、それでも実弾が現実には真っ直ぐ飛んで無いのと同じく光線も大気圏内では真っ直ぐ飛ば無いのだ!
確かに実弾は重力下だと重力に引かれ長距離に成れば成るほど弾道は放射線を描く、その上に大気の抵抗も掛かり温度に因っては更に顕著に曲線を描く事に成る・・・だけどソレは光学兵器も一緒で大気中に含まれる細かい塵や温度で曲がったりして仕舞うのだ!
温度や濃度が違う液体を混ぜると中に二つの液体が混ざるまで模様が浮くでしょ、あれと同じコト意味が分んないなら水にガムシロを垂らして見ると良い。
それに同じ原因で大気中を進んで行く内に、進行ルートの温度差や大気中にある水分で曲がる事や、その水分や塵を焼く事で光学兵器も威力が減退してしまう!
「そう炸薬式実弾兵器よりは射程も長く正確さも高いけど、それでも限界は有ると言う事だ」
「そうです光学兵器の場合 弾道と言うのが正しく無いでしょうが、大出力で放った光線も屈折する率は一緒です・・・つまり」
逆に言えば肉眼で見得ない程の長距離は有効射程距離に含まれない!
「アリス・・・ここから見得る山々からボクを狙うとして、それに必要なだけの電力を保持・・・・・」
「最低限必要なだけの出力と想定しても、それだけのジェネレーターや電源ケーブルは見付かりませんでした」
ここから見える山以外の自然物は無く、つまり山々から撃たれる心配は無いと言う事だ。
「ボクを狙撃出来る範囲の建造物に最低限の出力のジェネレーター・バッテリー・通電設備を・・・・・」
「距離別に換算しスターシップでスキャンしてますがジェネレーターは起動するまでは感知出来ませんね・・・それ程の長距離用じゃ無ければバッテリーも大気圏外からスターシップで捕捉出来ませんし、そもそも既存の送電線から拝借されたら見付かる筈もありません」
いつものカチューシャ越しに申し訳無さそうに言うアリスだったけど、
「それは最初から分かってた事さ・・・」
「それに光学兵器で狙われた場合、もう一つの問題が・・・・・」
そう光学兵器で狙われた場合、理論上ボクは攻撃を躱す事が不可能・・・だって光速だよ光速!
敵が引き金を引き切った時、その照準の中心にボクの頭が収まってたならボクは確実に頭を撃ち抜かれて御陀仏に成ると言う寸法だ!
「個人で張れる防御シールドには限界があるし、抑々狙撃で破れない程のシールドなら敵も感知出来るセンサーを・・・通常のスコープにだって標準装備されてますからねぇ」
こんな物騒な会話をしてるのにボクとアリスに緊張感は無かった・・・いや多少緊張はしてるけどソレを表情とかに全く出してない、いや出す必要を全くと言って良いほど感じていないのだ!
「まぁ最悪いつもの直感的と言うかニュー〇イプ的なアレで対処するしか無いな・・・クレメンスさんにはボクの背後に誰も立たせない様に申し入れをしてある筈だよね?」
自分でも無意識に反撃してて自覚して感じられるようになったのは最近の話だけど、ボクは敵の殺意と言うか害意と言うか、とにかく攻撃する意思の様なモノを感じて条件反射的に対処してたらしい。
だから光学兵器でスターシップを攻撃されても、その攻撃を躱したりする事が出来る様に見えたのだ・・・だけど実際には敵の殺意を感じ引き金を引いてる間やスイッチを押す間に回避行動に移っているのだ!
「と言ってもコンナのキッドさんだから出来る芸当です、普通の人間には先ず実現不可能ですからね。映画とかで主人公にだけ弾が当たらない不思議な現象を地で行ってるのがキッドさん何だから・・・・・」
「人を人外扱いするなよ・・・最もコレにはボクも人内で出来る事とは思え無いけど、なぁコレってマダ原理とか仕組みを解明出来て無いの?」
一応聞いて見た。
「スターシップの設備と私の余剰リソースを総動員して26回も解析を試みましたが全く、皇帝陛下もファルデウス中の学術・研究機関に声を掛けて調べさせてますが想像の域を超えるモノは一つもありません。抑々キッドさん達の言う先古代文明時代の情報にもキッドさんみたいな異常者の事例は・・・」
「ヒトを変態か何かみたいに言うな!」
地味に傷付いた。
「とにかくミューズ様たちが発見して以来、私もファルデウスの学会も内密で調べ続けてるんですよ?それでも明らかに成ら無いんですから、そう言うモノだと思って諦めた方が良いのでは無いですか?」
「そんな不確かなモノに命を預けるしかない現状って一体・・・・・」
と愚痴ったのだけど、
「言い出したのキッドさんですからね?まぁ今迄の事例から言ってキッドさんが頭を撃ち抜かれカーニヴァーに殺される可能性は・・・・・」
アリスが計算して出した答えは、
「小数点の次に0が12個並んで4が付きます、頭ではなく心臓を狙う場合でも数値は変わりません。だから賭けは成立しなか・・・・・」
「オイ・・・」
❝しまった❞と言う感じで言葉に詰まるアリス、
「お前まさか・・・」
「言・・・言っときますけど私は賭けに乗っても無いし、そもそも話にも加わってませんからね!」
慌てて言い訳するが基本アリスはボクに嘘は吐かない。
「それに二人ともキッドさんが傷付く方に賭けはしなかったし、抑々キッドさんが傷付くとは思ってませんから・・・その可能性が有ったら止めてますって!だから賭けは成立してない・・・」
「今回の件にミューズは関わって無い、第一そんな賭けを冗談にしても口に出来る程ミューズは擦れて無いんだ・・・つまり会話の主は他の人間、さぁその会話の主と内容を詳しく話せ!さもないとオマエの電送ヒューズ、規格を一回り小さい物にするぞ!」
ちょっとキツイ声が出てしまった。
最もアリスとのカチューシャ経由での会話だ・・・実際に声は出して無いし脳内だけで交わされる会話、ほら近未来の日本を舞台にしたSFのメディアミックス作品❝GHOST IN・・・❞に出て来るアノ通信機能みたいな感じだ。
「あわわ・・・この会話はスターシップ側のジョシュアさんと、今回の件で応援に来ているジュリアさんの間で先日・・・・・」
あの二人・・・後で覚えていろよ!
ノーマ宗教国・首都星エルヴィン・・・この世界では国家の首都星に固有名詞が付かず❝〇〇国首都星❞と言う言い方をするのだけど例外的に名前が付いてる場合がある。
ボクに入れ知恵された皇帝が可愛い孫の名前を首都星に着けたファルデウス帝国の場合と、元々固有名詞の付いてる惑星に首都を移転したノーマ宗教国のような場合だ。
「前の首都星が環境汚染で・・・・・」
と言うノーマ教の教祖パーロさんが隣の席でボクのグラスに飲み物を注ぎながら言った。
この人もボクの正体と今回の計略の事を知っている。
「で・・・敵に狙われてる感じはするのですか?」
「ちょっと分からないな・・・少なくとも今は殺気を感じてないんだけど」
ボクの眼下にあるフィールドを取り囲むように設置されてる観客席、そこを埋め尽くす大観衆も歓声を上げて今か今かとレースのスタートを待っている。
「この大観衆の中で歓声がオマエの奇怪な能力が妨げる事は有るまいな?なら正直に言え・・・今なら力尽くでもオマエを・・・・・」
「大丈夫さ勝算は十二分に有る。ボクならカーニヴァーの殺気を感じて・・・・・」
いや本当にソレが殺気だったかは分かんないけどさ、それでも真空を隔てて戦艦の装甲越しに殺気を感じてたんだ・・・この開けた空間で感じられないとは思えない!
それに爺ちゃん達は歓声が邪魔に成らないか懸念してたけど、それも無いんじゃないかな・・・だって幾ら操船が自動化されて簡略されたとしても、艦船の乗員って平均化しても100名を切る事は無いだろう。
そんな大勢の人々が時には怒号を 時には断末魔の叫びを上げ戦ってる中で殺気らしいの感じてたんだもの、今更スターライダーレースに興奮する観衆の歓声でコノ能力が阻害されるとは考え難い。
「狙って来るなら・・・あの辺じゃろうな」
爺ちゃんが眠たい様な眼で正面に在るビル群を眺める・・・あの中の一室なら電力を盗む事だって難しくは無い、ただノーマの司法機関や軍が徹底的にクリーニングしてる筈だ。
「解っておるな?もし何も感じられなくとも、スタートのシグナルが鳴ったらオマエは床に伏せて貴賓室から・・・・・」
「大丈夫、首筋に何かチリチリしたモノを感じて来た・・・いつも戦場で感じてるのと同じ奴だよ」
途端にパーロさんと爺ちゃんの貌に緊張が走った。
「カーニヴァーは間違い無くボクの事を見てる・・・爺ちゃんも警護に就いてくれてたニアさんやレミアさんも、ボクを庇おうと余計な動きはしないでね?ハッキリ言って・・・」
「我等の身体能力じゃ邪魔に成る事くらい心得てる・・・それより本当に解っているのか?」
正直 爺ちゃんは報告を受けててもボクの能力に懐疑的だった様・・・まぁ確かに超能力かオカルトじみてるし、それ自体が眼に見え無い力だから信じられ無くても仕方ない事だろう。
「うん確かに感じてるよ!この感覚は・・・ドッカの誰かさん達に差し向けられた暗殺者の者より、スターシップやノーダーの中で感じてる職業軍人さんのモノに近い様な感じがするね」
グラスの中身を一口・・・何と中身は酒類である!
「この状況下で酒類を出すのは・・・いくら何でもミューズはおろかボクにだって早いでしょう?」
「そう言う習わしなんですよ、最初に一口だけでソフトドリンクに変えますから・・・」
最初からソフトドリンクで良いんじゃないかと思うんだけど、あらゆる毒物(勿論アルコールも)に耐性が有るボクの身体だけど戦闘中に感覚を鈍化させるモノは摂取したくない。
「やはりビル群か?なら屋上から・・・・・」
「方向的には正面右寄りの小高い丘(実際ほとんど山)の上に有るビル群、でも屋上は無いと思う・・・人口衛星でも監視してるだろうしドローンだってアンナに飛び廻って、あれは巡回し捲くってるんだろうし」
そう言うと爺ちゃん達は呆れながら、
「あのビル群の上空を飛んでるドローンが見えてるのか?」
そう言うと双眼鏡の様な物を覗き込み・・・・・
「これで見たってドローンは確認出来ん、一体お前は如何言う眼をしとるんじゃ?」
「爺ちゃんの場合は老眼じゃね?痛て・・・ゴメン悪かった!本当の事が一番傷付くもんな、いや分った分かったから更に力を入れないで!」
背後で思いっ切りオシリ抓り上げられた!
「このスケベ爺、どこを抓ってるんだよ!」
「オマエ相手なら兎も角、私がミューズにゲンコツ落としてたら違和感有り有りだろうが!」
爺ちゃんはミューズの尻を引っ叩く事は有っても、ゲンコツ落とす事は無さそうだモンな・・・そう考えたら見得ないよう背後で尻抓られる方がやられそうなお仕置きだ。
「しかし・・・それなら時間が無いぞ!もうすぐスタート用電飾が点灯する・・・5つあるシグナルが全て灯ったらブザーが鳴り響き一斉にスターライダーが飛び立つ、おそらく奴が狙ってるのは・・・・・」
「その瞬間だろうね」
フェンツの時とはスタートの方法が違うそうで、如何やらノーマのレースは地球に近いスタート方式を取っている様だ。
「時間が来たらと言う訳じゃ無いのは有難い、シグナル見ながらなら敵も見える場所に居るって事だろう?」
ボクが見た視覚情報は脳内より抽出データ化されカチューシャ経由でアリスに届く、その情報を彼女も懸命に解析してくれている。
「さてと・・・ボクの躰は❝彼❞特製のクリーチャーボディだから、こう言う非常識なチョッと気持ち悪い機能も実装されてるんだけど・・・」
ボクの眼はチョッとした望遠鏡の様な仕様に成ってるのだ!
「気持ち悪いとは思わんが、オマエが非常識な事に今さら誰も驚かんが・・・ヘブシッ!」
オケツ抓ってくれた御返しだ、今度はボクが爺ちゃんの脇に肘を入れてやる♪
だけど確かに時間的余裕が無い・・・あのボクの感みたいなのだけを頼りに、伝説的な殺し屋さんを相手にするのは流石におっかない。
「と言っても一斉にスターライダーが飛び立つのは可成り見物でしょうし、あんなに離れててもベランダに窓に屋上から大勢の人がコッチを見ています。あの中から狙撃手を見付けるのは至難の・・・」
「とボクも思ってたけど意外に簡単じゃ無いかな?」
ボクとアリスの会話は爺ちゃんにも指輪型の端末経由で聞かせている。
だから爺ちゃんが横でギョッとしてるのと、アリスも通信の向こうで動揺してるのが感じ取れた♪
「見えてるのか?」
「敵を確認出来てるんですか?」
爺ちゃんとアリスが同時に問い、一所に居たクレメンスさんやアリオスさんも驚いている様だけど・・・・・
「いま探してる所さ♪先ず屋上には一般人が大勢出てる・・・上空にはドローンが飛び交ってるし、衛星軌道上からは人工衛星も数分おきに来てるから屋上に居たら見逃されないよね?」
この世界の建築には給水タンクとかアンテナがシンプル過ぎるほどシンプルに纏められ、屋上には余計な物が一切無い様な感じに造られてる。
それこそエレベーターや階段の出口である塔屋の位しか無いけど、そこにだって観客やカメラを持ってる人が登ってて人が隠れるスペースなど無い。
「と言う事で屋上から狙撃される心配は無し、一方ベランダや窓からだって見物人が集まってる・・・あれじゃ部外者は入り込めないだろうし空き家や無人の部屋の窓はチェックされてるだろ?」
「まあ当然じゃな・・・」
最悪 銃を片手に押し入って家人を殺したり、家人を監禁してってのも有るかも知れない・・・けど、そんな強盗みたいなマネを伝説と言われる狙撃者が使ったりするかな?
「それに最近に成って、あの辺りの部屋を借りたり購入した怪しいのは司法機関がチェックしてるでしょ?同時に廃教主義者関連の施設や、その関係者や怪しい奴が借りたりした部屋は・・・・・」
「当然です」
この情報化が進んだ未来都市で司法当局の眼を誤魔化し切る事は難しいだろうしね!
「第一あの辺から狙うにしたら光学兵器も結構な電力が必要だよね?そんな電力を一般家庭が使おうとしたら・・・・・」
「即当局が感知し警官隊が踏み込みます」
アリオスさんが自信を持って言った。
「って事は普通の家庭や事務所の類じゃ考えられない、高出力の発電機何か持ち込めば稼働と同時に感知出来るモン・・・だから既存の配電設備から電力をチョロまかして怪しまれない所は?」
「建設中もしくは解体中の工事現場と言いたいのか?」
「その位は流石にチェックしてるよ?」
と言いながらアリオスさん達は部下に指示を飛ばしてる。
「でも部屋を借りたり購入するよりチェックは甘いんじゃないの?工事現場で働く期間工なんかは・・・・・」
『見つけました!』
アリスが言うと同時にカチューシャ経由でボクの視界の中に赤く光る光点が現れる・・・アリスが指し示したモノでソレを何度かズーム表示する様にカチューシャに指示、すると光点は小さな四角形そして次々と大きく成ると工事現場に一角を表示する。
その中では粗末な私服の男性が大きな望遠レンズ付きのカメラを、縦に2本並べて構えてるのが見えた・・・そんな人は他にも大勢居るから見た目的には怪しい感じはしない。
でも光学兵器って発射前チャージする間に銃口が一瞬発光するから、望遠レンズの中に怪しい明かりが灯るとボクは彼に向って微笑み・・・彼が驚愕する姿を確認してから背後に誰も居ない事を確認してから身を翻した!
頭を狙ってるのか心臓を狙ってるのか判らなかったからね、元々浅く腰かけてた椅子から腰を浮かして置いて超特大望遠レンズ表面が発光すると同時に横にクルリと回転しながら立ち上がった!
その瞬間は正にスタートと同時だった・・・ズバシュッ!と大きな音を立てて、光学兵器は発射音は小さいけど大出力の場合は着弾音も含めて大きい。
ボクの座ってた豪華な椅子の背凭れ、その頭の部分が丸く切り取られ切断面が赤熱化していた!
ズバシュッ!ズバシュッ!と更に2連射、爺ちゃん達は伏せてるけどボクは踊り子が踊りを披露する様に舞いながら光弾を躱して行く・・・スタートの瞬間のボクを撮ろうとしてたカメラが特ダネを逃がすまいとボクの姿を追っていた。
まー不思議なコッチャ無い・・・ミューズがスターライダーのレースが好きなのは有名、と言うよりファルデウス皇族に関わらず世界中の皇族・王族・貴族・為政者それどころか国民に至るまでスターライダーレースの人気は高い。
スタートの瞬間にミューズなら良い顔をするだろうとベストショットを狙ってたのだ・・・ゴメンね女装した男のボクで、でもボクでも需要が有るとか思った奴は一歩前に出て歯を食い縛れ!
とバカをやってるヒマは無い・・・ボクは不本意ながらもドレスの裾を捲り上げてパパラッチ達にサービスカットを提供、太股の内側に装着して例の新型銃を引き抜くと貴賓席を飛び越えて眼下の一般席に飛び降り、そしてドレスを翻し観客の間を怒鳴りながら走り抜ける!
「近付いたら危ないぞ、ボクはレーザード・ライフルで狙われているっ!」
地球ほど馬鹿な市民は居ないらしく、みんな素直に道を開けてくれるからボクは観客席を一気に走り抜けるとグラウンドに飛び降りた。
グラウンドの端には数台のスタート出来無かったスターライダーが留められてるが・・・・・
「これは飛べるのか?」
こっちの誰何にピットクルーやメカニックらしい人が答える。
「その辺のはダメ故障してスタート出来無かった・・・あっ!このスターライダーなら飛べる、このスターライダーはレギュレーション違反で失格したんだ!」
「借りるよっ!」
ボクは彼が指し示したスターライダーに飛び乗ると彼が素早く電源を入れてくれ、如何やら相当優秀なメカニックらしい・・・スターライダーのエンジンが稼働するとボクは動力パイプを引き千切りながら発進させた!
流石に周囲の奴等が騒ぎ始める・・・まぁ光学兵器と言え隣で発砲されちゃ流石に誤魔化す事は出来無い、脅し代わりに拳銃を引き抜くと周囲の者が恐怖を貌に浮かべて後退った。
義侠心を出して取り押さえに来ない様に脅しているだけだ、数日とは言え一緒に仕事したキミ達に手出しはし無いよ・・・邪魔をしなければね!
ワシは大口径の望遠レンズに偽装した銃器を諦めると屋上に走った・・・施工主が気前良く施工中の高級集合住宅を建築作業員に開放してたから、ワシだけじゃ無く工事現場の監督から作業員まで大勢が自家用の空陸両用機を停車してた。
自分のエアカーに飛び乗ってスグに上昇させる・・・ここに来る前に狙ってたミューズ姫が、スタート出来無かったスターライダーに乗ってコッチに来るのが見えたから!
「あれは・・・ミューズ姫じゃ無いな・・・・・」
もう一台のスコープ代わりにしてた超望遠レンズ、そこで拾った画像を携帯型ICで解析したが如何やら何らかの偽装をされ見破れ無かったらしい。
と言う事は男の子には見え無かったけど、あの子はミューズ姫では無くキャプテン・キッドである可能性が高い・・・ミューズ姫と瓜二つだと言う話は有名だからな!
「ワシもヤキが廻ったかな・・・引退時かも知れん」
「そうだね・・・まぁそれ以前に殺し屋なんて迷惑な仕事は早く畳んでよ!」
何でコンナに早く追い付ける?
なんでコッチの車のラジオにハッキング出来るんだ?
公用ファルデウス語を地球の言葉を変換してるけど、エアカーって❝エアプレイン・アンド・カー❞の略である。
文字道理に飛行機と車のコンポジットで、あの名作SF❝フィフスエレメント❞で主人公が運転してたタクシーや他の車を想像して貰うとイメージに近い。
ボクは殺し屋の・・・陛下の爺ちゃんよりはチョッと若いけど、結構お爺ちゃんだな意外と♪
彼の乗るエアカーに並走して銃を向けながら、
「追いかけっこする?ボク追いかけっこには自信が有るんだけど・・・」
「奇遇だな、ワシも追いかけっこには自信が有るんだ!」
そう言って機体?車体?を翻し降下して行った・・・だけどコッチはレース仕様のスターライダー、そう簡単に逃がす訳には行かない!
すぐに追い付いて今度は奴のエアカーに上から覆い被さる様に陣取り、
「その割にはスグに追い付かれてるじゃん・・・追いかけっこ、お爺ちゃんにはチョッと荷が重いよ?」
「五月蠅いワシを年寄り扱いするな!」
狙撃の時には結局使わ無かった第六感、例の特殊能力が発動したのでボクは急制動・・・ボクの乗ってるスターライダーの居た所にレイガンの弾道が、窓から手を出して発砲したらしい。
「ボクの生まれた世界と言うか国にはさ❝年寄りの冷や水❞と言う格言が有るんだけど意味を知りたくない?」
「知りたくも無いわい!」
そう言うと更に華麗なるドライビングテクニック?いやフライングテクニックを披露してくれたんだけど・・・・・
24時間後・・・ゴツンゴツンとボクの乗ってるスターライダーのノーズに小突かれながら、それこそスクラップ寸前までにボロボロになったエアカーがスタート地点に帰って来た。
いや帰ったのはボクだけか彼は此処から飛び立った訳じゃ無いし、そんな事を考えながら奴を強制着陸させると中から鍛え抜かれた肉体を維持する細マッチョな老人が転がり出て来た。
「キ・・・キサマには敬老の精神と言うモノが無いのか?」
「殺し屋さんに言われてもな・・・そう言う倫理観の類、一切持って無いから殺し屋なんて出来るんだろうし」
そう言われると少し考えてから、
「まあ殺し屋をやってたワシが言うべき事じゃ無いよな確かに、もっともワシの様な爺を嬉々として小突き回す様なオマエは少し問題があると思うのだが?」
と言ってから自分を取り囲む官兵に向かって、
「ワシがオマエ達がカーニヴァーと呼び逮捕し様としてた殺し屋だ・・・今さら悪足掻きはせん」
と大人しく捕まって連行されて行った。
するとクレメンスさんとアリオスさんが、
「何か話を聞かなくて良いのか?」
「連行され逮捕されたら司法機関が・・・」
と聞いて来る。
「問題無いよ、何の為に一日かけて奴を小突きながら追い掛け廻したと思ってんのさ?聞きたい事は全て聞いたから連れて来たんだから」
あいつを追い掛け廻しながら嘘判別機に掛けていた、おかげで聞きたい事は全て聞き出しているYesとNoしか聞けなくても質問に答えさせられてると相手が思って無ければ聞きたい放題さ!
確かにαトライシクルは相手が本当の事を言ってるか嘘を吐いてるかしか判別出来無いけど、その正答率は常に略100%これを数問繰り返せば大抵の情報は引き出せるんだ時間は掛かるんだけど!
例えばさ・・・相手に「犯人は日本にいるよね?」と聞いて真偽どっちの回答をされたにしても、相手が答えて日本に居る事を確認出来たら見っけモンだ!
「都内に居るか?」とか「所縁の地に潜んでいるんだろう?」とかカマを掛けながら質問し範囲を狭め、最終的に「どこどこの隠れ家とかにさ・・・」「妹の家に匿われてるんだろ?」とかで追い詰めたら正確な潜伏先を聞き出す事が出来る。
最も敵が怪しんで質問に口を閉ざしたら御手上げだからダミーの質問や会話を交えながら、それでいて時間も限りが有るから複数の質問を同時進行で行い、奴に余裕が無く成る様に全力で小突き回しながら軽口を装って質問し続けるんだ♪
そんな会話が良く出来るなって?
簡単さ有能なシナリオライター兼監督のアリスが質問の仕方から内容まで全て立ててくれてるからね!
連行されて行くカーニヴァーの後姿を見ながら、ボクは頭上を通り過ぎるスターライダーの軌跡を見上げる。
今の所ジョシュアさんのチームはトップグループに食い込んでる、アンカーのジョシュアさんに周った時に何位に居るのだろうか?




