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爺さんから逃げ出したのに爺さんに連絡を取る!

 ファルデウス皇帝との下らない意地の張り合いに疲れたボクは帝国と少し距離を置こうと・・・何てボクがマトモに考える筈が無く、単純に単なる嫌がらせで爺ちゃんに「暫く帝国から出国してミューズに会え無くしてやる!」と嫌味なメールを送ってやった!

 悔しがる爺ちゃんの顔を思い浮かべ喜んでたけど別に嫌がらせの為だけに出国した訳じゃ無くミューズとイリスの「他の国を見て見たい」と言う何気ない会話にボク自身も見たくなったのと、そして何よりジョシュアさん達が参加したがってるスターライダーの惑星レースが有るノーマと言う惑星に輸送の仕事が有ったからだ。

 ジョシュアさん達にはレースが有る時は一時的に離脱できる雇用形式に(ミューズが)してたけど、どうせなら(つい)でに送ってやっても良いしボクも観光して見たかったからね!


「ふ~んノーマ首都星の赤道上を4人で一周づつ4周してゴールを目指すのね?」


「ただし高度1万メートル以下だと速度制限を掛けられるんだ」


「そう低空で速度を出し過ぎたら環境破壊が激しくなるからね♪スタートやライダー交代後に出来る限り素早く高度を上げてフルスロットル、そして成層圏外を最高速度でカッ飛んだら落ちる様に減速しながら交代地点に・・・そしてアンカーは成層圏でゴールを千切る!」


 実は二人ともスターライダーレースにハマッているらしく、ミューズとイリスにジョシュアさんが詳しいレースの説明をしながら楽しそうに会話してる。

 ボクは・・・


「ジョシュアさん・・・」


 ミューズ達に熱弁してた彼女が貌を逸らして口笛を吹く・・・コイツ誤魔化す事を放棄してんな!


「あんまり過剰な布教活動は火炙りの刑だよ?お尻の・・・・・」


 途端に半泣きに成ってボクの足に縋って「ゴメンなさい」を連呼した。

 と言う事は多少は過激な布教活動してたって事に成るが、まあミューズとイリスが楽しんでるんなら叱るほどの事じゃない。


「ライダーは交代するけど機体の交代は不可、最高速度はマッハ5前後で5時間以上掛けて赤道を一周・・・赤道の長さは地球より短いのか?」


 そう言ってノーマの情報をタブレットに表示した。

 ノーマ宗教国連合・・・この世界でも進行されている運命を司ると言う神を信仰する宗教国家、政治自体は完全民主制で宗教の信仰の自由も保証されてるけど、せめて国教なんだから敬えよ位の小言を言われる程度の緩い宗教国家だ。

 ただ・・・


「最近テロが多いみたいなの」


 イリスが言った・・・この時代に神を信仰などナンセンスと廃教を強要するテロがあるらしい、地球は逆のテロなら有るんだけどねw


「その廃教主義者がレースを舞台に・・・」


 ソイツ等が何かしないか用心した方が良い・・・もうボク自身がジョシュアさん達を家族と思い始めてるからね、まぁ当人はジュリアさんと同じく歳上の妹みたいな感じだけど。

 手が掛かる所とか・・・まぁその廃教主義者が彼女達のレースを妨害するってなら、ボクも一肌脱いでやらなくちゃ成らないかもね!


「廃教主義者の・・・」


 アリスが集めた情報に眼を通しながら・・・その際ボクは思いっ切りイヤなモノを目にしちゃったんだけど、それを口にする事無く銃の手入れをすると言ってリビングを離れる事にしたのだった。




「私も気が付かなかったのに、あの写真だけで良く気が付きましたね?やはりキッドさん野生の感が冴えてますよ。でもこの事は・・・」


「ミューズには絶対気取られない様に・・・万が一にも気付かれたなら即ボクに、仲間にも気付かれた様なら即箝口令を布いて」


「心得ました」


 そう言うと少し考えてから、


「皇帝陛下には連絡して置いた方が良いのでは無いでしょうか?」


 とアリスは言った。

 本当に人間臭いAIだよな!


「AD通信を使ったら・・・」


「普通の船ならエネルギーレベルが落ちて気付かれますが、スターシップには普段使って無い戦闘時のエネルギー嵩増し用ジェネレーターが在ります。それをコッソリ使用すれば大丈夫だと・・・・」


「ホント君は優秀だよ」


 そう言ってから、


「ファルデウス帝国・首都星ミューズに緊急連絡・・・至急内密に相談したき事例が発生と送ってくれ」


「了解しました」


 ボクは指示が終わると銃のケースを広げた。


「そう言えばボクってストライカー方式の銃って造って無かったよね?」


 銃を磨きながら独り言ちる・・・ボクの拳銃は全てハンマー方式、ストライカー方式の銃は一つも再現して無かった。


「ストライカー方式の銃は何か玩具っぽい感じ(イメージ)がするんだよね、別に嫌いって訳じゃ無いけど・・・」


 ボクはケースの中と棚に飾ってある銃を見比べた・・・アイツが敵に廻るなら間違い無く殺し合いに発展する、その為にチョッとハードな戦闘に成ると思っていた方が良いだろう。

 ならば装備も少しは慎重に選ぶ必要が有るのだけど・・・・・


「そうは言ってもボクの銃って殆ど趣味で造った代物だから、でも実際に使うと(この世界で)近代的な銃と比べて遜色を感じ無いのは・・・やっぱりボクが素人だからなのかな?」


 荷電粒子砲は(❝彼❞の技術でも)拳銃サイズまで落とせず実用化されて無いが、ボクも状況に依ってはビームやレーザーそれにブラスターも使う・・・だけど実戦で炸薬式の固体弾を使っても何の不便も感じない。

 それ等より寧ろ使い勝手が良い様に思ってる。


「それは(あなが)ち間違って無いと思いますよ」


 と言って来たのはアリスだった。


「電源も複雑な機構も必要の無い炸薬式実弾拳銃は意外とメリットも大きい、光学兵器反射防弾機能が発展し光学兵器の優位性が薄れて来て見直されてる所ですよ」


 そう言って帝国新聞の軍事系の記事がカチューシャを経して脳内に表示された。


「何だボクがジェリスさんと一緒に戦った遺伝子遺産の探索、その探検が元凶か・・・あれで実弾兵器の有用性を見直されたんだ」


 さて・・・


「攻撃力を考えると人間相手なら9㎜でも良いけどポッド相手だと45ACPだよね・・・個人的にはガバメントの方が好みだし護身用なら良いんだけど、本格的な銃撃戦に置いてはP220の方が優位かも知れない」


 ボクは2丁の銃を左右の手に持ち独り言ちた・・・護身用を考えたら抜き撃ちしやすいスリムなガバメントタイプ、だけど銃撃戦とか乱戦に成ったら連射し易く10連マガジンが使えるP220タイプが上に思える。

 勿論だけど銃も弾薬も❝彼❞の技術で洗練された異次元銃だから反動も少なく銃声も小さい上に威力は桁違い、なのに弾速とか貫通力を落とし弾頭に工夫して敵に最大限のダメージを与えられる様に造られていた。


「それにしても見事に全部ハンマー式だな・・・ストライカー方式が嫌いな訳じゃ無いんだけどコッチの方がカッコ良く思えるし、如何してもハンマー式の方を再現しちゃうんだよね!」


 まあ自分が見た目から入ってる素人なのは自覚してるんだけど・・・それにしてもボクが再現した地球の名銃は、その自動拳銃の全てがハンマー式でストライカー方式の銃を作った事が無い。


「メインはP220で良いとしてサイドはPPK/Sいやチョッと待てよ・・・イヤこの際だ前から頭の中で温めていた、あの銃を今回こそ造って見るか?あの銃はストライカー方式だしボクとしても初めての銃だけど・・・・・」


 ボクは射撃場を出ると工作室に向かった。




 固体弾を飛ばす炸薬式の銃は地球では現役だけど、この世界で現在の人間でも先古代文明人であるリザーダー達にとっても骨董品以上の価値を持って無かった・・・レールガンは現役だけどね!

 ただドチラの文明でも確かに使われてる時期があったし現在ファルデウスでは有用性を見直され研究し直されており、そこでボクは❝彼❞から引き継いだ知識と技術を使って最高のオリジナル拳銃を造ってみようと設計して有ったのだ。


「まあ設計(したじゅんび)は済んでたから、既に工房の機械で大半のパーツは自動で造って貰って有ったからね・・・・・」


「その前に皇帝陛下から通信が届いてます」


 アリスの一言で我に返ったボクは、


「ミューズ達は任せたから気付かれ無い様に・・・そしてコチラのモニターに、こっそり爺様の通信を繋げて」


「アイギスさんに頼んでフルーツタルトを焼いて貰いました♪それで女性陣には現在お茶にして貰ってるんですが、キッドさんは銃いじりに集中してるから声を掛けない方が良いと言って誤魔化してます」


 ボクは出来上がった銃のパーツをトレイに乗せモニター前の席に座り込んだ。


「繋げてよ」


 とだけ言ってモニターを起動して貰うと相変わらず怖い爺様の顔が画面いっぱいに映し出される。


「・・・・・爺ちゃんワザとやってる?爺ちゃん顔面凶器なんだから、通信の度に大映しに成られると心臓に負担が・・・・・」


「その前に直接心臓止めてくれる!今度会った時は覚悟を・・・そんな事を言わせたくて会談を求めた訳で無かろう、何か重大な問題でも起こったのか?」


 乗り掛かったけど真面目な顔に成っている。

 まあ折角逃げ出した上に嫌味なメールまで送った相手が、こんなに早く連絡とって来たなら誰でも少しは考えるよねw


「この写真を見なよ・・・・・」


 ボクはノーマで暗躍している廃教主義者のテロリストの写真を見せた。


「ノーマのテロリストの情報か・・・信じたい奴等にだって信じる権利があるだろうに、自分が嫌だからと他人にまで・・・だがコレが一体如何したと言うのだ?」


「良く見なよ!一応は直接 自分で国外追放にした罪人だろう?当時は20位の年齢だった筈だ・・・」


 ボクに言われて再度テロリストの顔に目を通す・・・そのテロリストの指導者である30代くらいの女の顔を見ても思い出せないらしい。


「駄目だコイツ等に関して全く思い出せ無い、だがそうオマエが言うなら私と無関係では有るまい・・・一体何者なのだ?」


「ミューズの実家でメイドをしてた女で、アンタにファルデウス帝国から国外追放されてる・・・と言えば判るだろ?」


 爺ちゃんは面白くも無さそうに鼻を鳴らした。


「ミューズへの虐待に関わってた女か・・・」


 ミューズを虐待してたのはマルドゥース伯爵家の人間だけじゃ無い、その使用人まで虐待に関わってる者がいたのだ!


「スマンが酒を持って来てくれ・・・出来るだけ強いヤツが良い」


 こんな話を素面でやってられない、侍従長が爺ちゃんの酒を用意してる間にボクも自分でウイスキーを一杯グラスに()いだ。


「この手で八つ裂きにしてやろうかと本当に心の底から思ってたのだ・・・だがマルドゥース伯爵家の人間はミューズの母親と血縁、しかも使用人を罰するなら主人を罰さぬ訳には行かない。仕方なく伯爵家も使用人も追放だけで許してやったと言うに・・・」


 クイッと一息で酒を喉に放り込んだ・・・真似してボクも同じ様に飲むけど顔を顰めてしまう、マダマダお酒を美味しく飲める様に成るには時間が掛かりそうだ。


「それが他国でテロリストだと?コイツ等が全く反省もしてない証だな」


「その斜め後ろの奴も見て見ろよ!整形してるけど面影は残っている・・・その男も関係者しかも血縁者でもある」


 そう言われて写真(と言ってもモニターに表示されてる画像だけど)を見直す爺ちゃんも暫く考え漸く思い出した様だった。


「血縁と言っても本家マルドゥースなら兎も角アズミーナの実家の方は血が薄過ぎだ・・・しかし流石はスターシップのAI、大して似ても無いコイツの顔に良く気が付いたな」


「見付けたのはボクさ・・・アズミーナのババアの一件が有ったから、生きてる可能性があるマルドゥース絡みの人間の顔は全員覚えてた」


 そう宗教根絶派の頭やってる女はミューズの母親の家の使用人で年端も行かないミューズに苛烈な暴行を加えてたクソビッチだけど、その斜め背後にいる男もミューズの従兄弟で彼女を虐待していたクソ野郎だった。




 惑星エルヴィンの赤道直下のリゾート地❝スタートライン❞・・・この星で行われるスターライダーレースのスタートでありゴール後のライダーの帰還地点だけど、もう少し名前に捻りが有っても良かったんじゃ無いかと思えるボクだった。

 そんなスタートラインでは金持ちも貧乏人も水着に成ってビーチに繰り出したり、ホテルのテラスでモニター越しにレースを観戦するのが習わし・・・その為の3D空中映写機が、そこ等中で洋上に巨大な立体映像を投影している。

 そんな街で大きな湾を見下ろす高台の屋敷のバルコニーでボクはトロピカルドリンクを飲みながら(くつろ)いでる、この屋敷は何とジョシュアさんの所有物だ!


「貴族の企業が起こしたダムの決壊で・・・」


「流されたのは本宅でコッチは別荘、ここも自分の家と思って寛いでくれよ」


 とテーブルに酒類や軽い御馳走が並んでてジェイナス婆ちゃんが大はしゃぎだ!


「ナンか・・・凄い歓迎だね?」


「だって・・・あんな怖い事を旦那が言うから」


 イヤこの街に来たら雰囲気に乗せられ「やっぱりボクも参戦しようかな?」なんて言ったらコノ状態に成った。


「そこは実力で優勝を・・・」


「今回ばっかりは卑怯でも卑屈でも情けないと言われても、優勝のポイントが入ればレギュラー資格が手に入るんだ!そもそも人外の旦那が相手じゃ確実に優勝狙えない、せめて旦那はカテゴリーを別枠にイヤ非常識なのやバケモノ・人外専用のカテゴリーを新設・・・・・」


「アリス、スターライダーを一台廻せ!対流圏から成層圏から迄ノーズにジョシュアさん括り付けて・・・・・」


 途端に脚に縋って来るジョシュアさん、ジュリアさんと別の意味で駄目な姉ちゃんポジションだ!


「とにかく今回は意地でもポイント捥ぎ取るぞ!」


 取り巻きと一緒に「おーっ!」と声を上げる・・・レギュラー資格を手に入れると予選から出場出来る、無い者は予備予選的なレースから出なくては成らず懐に響くそう、それに正式なレーサーやチームと認められるのはレギュラーからだそうだ。


「でもさ・・・この屋敷って結構な資産だろ?維持費もバカに成らないだろうし・・・これを売却したら貧乏学生やレーサーしなくても、レースの資金だって賄えたんじゃ・・・・・」


「パパとママの思い出が詰まってるんだ・・・ここだけは売りたく無かった」


 そう言われるとチョッとホッコリして仕舞う。


「ジョシュアさんはボクの事信用してる?」


「旦那の事は信じてますよ、戦略的理由が無い時以外は嘘を吐かない」


 チョッとコイツ揶揄ってるけど今回は見逃してやって・・・


「ボクは今回ジョシュア達を応援に忙しいから絶対レースには出無いよ!」


「やったあ、優勝は確実だ!」


 と喜んだジョシュアさんがボクに抱き付いてキスの嵐を・・・唇まで奪われちゃったけど知らないぞ!


「ジョシュアさ~~~ん・・・」


 地獄から響くような怖~~~い声でミューズが言った。


「ナニお兄さまに色目を使ってるのかしら?」


「イエこれは感謝や親愛の表現の類でして、決して女将さんに対して間女に成る気は有りませ・・・女将さん許してぇぇぇ~~~~~っ!」


 可哀想にミューズに腕を引っ張られて抱き寄せられるとソファの上でオシリ叩き、良い光景だからボクも見物させて貰う♪


「ア~~~ン女将さん許して、でも旦那が出ないなら優勝は夢じゃ無い♪」


「それはチョッと甘くないか?」


 おや聞き覚えのある声と思ったら、そこにはフェンツ大スターライダー部の面々がいた。

 勿論ウェッセルさんも・・・良かった銃撃された後の経過は順調らしい、彼等を先頭にサポートのチームメイトも十数人で来てた。


「折角招待して貰ったので遠慮無くお邪魔しました」


「オレ達も参加するんで良いゲームを・・・・・」


 途端にミューズの膝の上でオシリ叩きの罰を受けてるジョシュアさんの顔色が変わった!


「何で・・・このレースは4人制で・・・・・」


 すると部長さんが、


「出るのはオレとイリーナそしてコイツ等さ!」


 前に出て来たのは可愛らしい顔をした男女の若い人・・・と言ってもボクよりズッと歳上だろうけど、ただ太々しい面構えからレースに対する自信が見て取れる。


「そりゃ卒業しても学外メンバーとして参加出来るけど、基本学校のサークルだから在学生が中心に成るだろ?」


「この子達は武者修行でファルデウスのレースに参加させてたのよ・・・他にも後輩の育成に余念は無いわよ」


 ジョシュアさんは顔色を蒼くしてたけど、


「ま・・・負けるモンか、特にイリーナからは実力で勝ちを捥ぎ取ってやる!」


「ナンかボクに対する態度と違い過ぎない?」


 なんかボクに対しては問答無用で怯えてらっしゃったけど?


「そりゃ旦那とレースなんて噛み付きに来てる人食い鮫にケツ狙われながら泳いで逃げてる様なモノだから・・・」


 とジョシュアさん、


「確かにキッド相手じゃ私もやり合いたくないわね」


 イリーナさん迄・・・


「お前の戦い方はレースじゃ無くて格闘戦だよ!」


「それも可成りエゲツ無い・・・」


 部長にウェッセルさん迄・・・


「やっぱり全言撤回して参加して優勝はボクが捥ぎ取ってやろうか!」


 泣きながら謝って来たジョシュアさんのオシリをタップリ叩いといてとミューズに言って、ボクはイリーナさん達に「冗談だよね?」と懐柔されながらジュースを一口・・・するとイリーナさんが連れてきた後輩の女の子の方が・・・・・


「こんなチビが本当に そんな速いのかしら?」


 と挑戦的な事を言った♪




「ゴメンなさい許して下さい私が悪う御座いました堪忍して、もう勘弁してよぅぅぅ~~~~~っ!」


 イリーナさんの後輩であるリズさんは練習飛行でボクに背後から煽られながら悲鳴を上げる・・・良い子の皆は公道では絶対に煽り運転なんかしちゃダメだからね、もちろん空中じゃモットやってはいけないけどさ!


「ゴメンなさい!ゴメンなさい!ゴメンなさい!ゴメンなさい!・・・もうキッドさんの事を甘く見ないから勘弁して下さい、先輩からも何とか言って・・・・・」


「ねぇキッド・・・」


 イリーナさんが通信回線に割り込んで来た。


「リズは悪い娘じゃ無いんだけどチョッと生意気で、こちらの指導や指示に逆らうトコも有って少し手を焼いてたの。この際、良い機会だからリズの鼻っ柱をへし折ってくれる?」


「了解♪」


 ボクは彼女の期待に後ろに自分のスターライダーのノーズを押し付ける!


 ガリガリガリ・・・


「イヤァァァ~~~~~ッ!先輩ゴメンなさい、これからはチャンと言う事聞くからぁ~~~~~っ!」


 もう完全に泣いていた。


「お楽しみの所を申し訳ありませんが・・・」


 アリスも通信に割り込む、


「今晩、陛下が密談したいと・・・」


 ならもう少しリズさんを可愛がれるねw




「うわぁぁぁ~~~~~んっ!」


 イリーナさんにすがって泣いてるリズさんにボクを始め男連中は良い笑顔で見守ってる。


「これに懲りたら生意気な態度は、ちょっとアンタこの匂い・・・もうシャワーを浴びて着替えてらっしゃい!」


 如何やら怖くてオモラシしてたらしい。


()()()悪くて脱げないんですぅぅぅ~~~~~っ!」


「全く・・・」


 呆れながらも女性数人で彼女を宥めながらシャワーに向かった。

 それを見届けたボクはミューズに、


「チョッとイメンケさんとアノンさんと3人で出掛けて来る。遅くなるから後の事は・・・・・」


「いかがわしい店に行っちゃダメですから(ペチン!)じょ・・・冗談ですよぅ!」


 いやボクの年齢を考えて言いなさいよ、軽くミューズのオシリを一発叩いてやった!


 さてボクはイメンケさんの新車で、この街に有るファルデウス大使館に・・・この街は首都じゃ無いけど大きな街なので首都と別に大使館の分室があるそうだ。

 イメンケさんとアノンさんには理由を話して仲間に引き込んである、この二人は諜報戦や情報戦・調査に暗殺と今回役に立つ技能に秀でている・・・そう今回に限り最悪の場合は暗殺も手段の中に入れる積りだった!


「遅かったな?」


「ミューズに気取られない様に出て来るの気を遣うんで・・・」


 そう言う爺ちゃんの背後にダイルさんが、彼が内密に爺ちゃんを運んで来たらしい。


「早速だが・・・」


 大使館の豪勢な客間には爺ちゃんたち以外にも知らない顔が3名・・・


「ノーマ宗教国連合、最高評議会議長のクレメンスと申します」


「ノーマ教、教皇パーロです」


「船乗りギルドのノーマ支部長アリオスです」


 おおっとぅ行き成り出て来たビックネーム!


「これはファルデウス帝国皇帝である私と友人であるノーマ宗教国連合・最高評議会議長クレメンス殿との共同で内密な依頼だ・・・この通りギルドは通すが報酬は別の秘密口座を作ってキッドに直接、スターシップの財布はミューズが握ってるからアヤツに気取られぬ為にだ」


 また財布が膨らんじゃうな。


「クレメンス殿からはテロの防止とテロリストの摘発、私からはテロリストの拿捕または無力化を依頼する。無力化だ・・・意味は言うまでも無いな?」


「優先はドッチ?拿捕それとも・・・・・」


 爺ちゃんはボクの眼を覗き込みながら、


「これでもマトモな国家の君主なんだ・・・一応は捕縛を優先、但し逃がす位なら完全な無力化して貰わないと成らない」


 と静かに言った。


「了解した・・・でもテロの防止と摘発はボクの仕事じゃ無い、そちらは司法機関の方が間違いなく有能だと思うよ」


 当然の事だから釘を刺して置くけど、


「いやオマエの感は馬鹿に出来無い、特に現場にいる時には・・・」


「別に捜査をして欲しい訳じゃ無いのです。ですが何かを感じたのなら・・・その場に居たアナタに出来る範囲で何とかして欲しいと思ってます」


 ボクが超能力でも持ってると思ってるのかな?

 当然その疑問をブツケテ見た・・・


「間違い無く持ってるだろうがオマエは・・・いや超能力等と言うファンタジーな代物じゃ無くても、間違い無く何か怪しい力を持ってる!さも無ければ悪魔が肩入れしてるんだオマエには・・・・・」


 毎度恒例互いの頬を抓り合うが失敗した・・・この場には止めに入る役目のミューズが居無い、と思ってたら護衛に付いて来たジェリスさんが爺ちゃんを、そしてボクはイメンケさんとアノンさんに引き離される。


「それより問題はミューズ達に何と説明するかだ・・・流石にアイツ等を連れてテロに近付く何て出来無いぞ」


「いやキッドさんイリーナ女史に接近する際ミューズ様とタッグを・・・」


 と突っ込むイメンケさん、


「あの時とは状況が違う・・・あの時は()くまで狙われてたのはイリーナさん、ボクやミューズはターゲットじゃ無かったんだから。まあ途中でイリーナさんに成り替わったボクはターゲットに成っちゃった・・・けど・・・・・」


 ちょっと考え込むボクに周囲の皆が貌を覗き込む。


「キッド君、如何したんだい?」


 ジェリスさんが声を掛けて来たので、


「そうだミューズを虐待してた奴等は揃いも揃って外道ばかり、見下し虐待してたミューズが英雄の相棒として活躍してヒロイン扱い何て許せず筈が無い!間違い無くミューズにも毒牙を向けて来る・・・・・」


「それは間違い無いだろうな」


 重々しく爺ちゃんが言った。


「じゃあ簡単だ・・・ミューズを囮にして奴等を誘き寄せれば良い!」


 途端に皆の貌が引き攣り特にジェリスさんがボクを叱ろうと口を開きかけたけど、そんな事を言われては一番最初に怒鳴ってプロレス技を仕掛けて来る爺ちゃんが黙って聞いてるのを見て口を止めた。


「またミューズに化けて囮に成る積りか?」


 更に驚いた顔をする一同だったが、


「ミューズを狙う奴等を野放しには出来無い、そう言う奴等は早目に駆除したいからね・・・大丈夫ボクは害虫駆除は得意なんだよ。本当に害虫に成るか成ら無いかはボクがミューズに化けて姿を見せれば判るだろ?」


 ミューズが気に入らないと危害を加えようとしたら有罪、コッチが最大級の危害を与えてやれば良い!


「スマンな・・・」


 大事な孫娘に危害を加えかねない相手を見定め遠ざける、その為に動くボクに爺ちゃんが礼を言うけどソノお礼はボクには全く不要であった。


「ボクが世界で一番大好きで大事なミューズの為に動くんだ・・・爺ちゃんの礼は不要いや誰からも見返りなど欲しく無い、ボクがボクの一番大切な宝物を守る為にボクの意志で行動するんだから」

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