ジジイを撒く!
命までは奪われ無かったけど地位も財産も全て奪われ、死なない程度に長~~~く苦しめる様に設定された重労働刑に処せられたミーモット達!
と言っても裁判はこれから何だけどね、専制政治の帝国じゃ裁判何てコンナ物、名君たる爺ちゃんの手腕に期待するとしよう。
えっ、感情のままに裁判する前から刑が決めてドコが名君だって?
為政者何てモノは大衆に対して間違って無い答えを出し、ソレを確実に実行させられれば何の問題も無い!
民主主義の名の下に政治家が自分の欲望に任せた政治をするより何倍もマシだって!
まあ裁判が始まったら弁護人が有能過ぎて引っ繰り返されるケースが有り得ない訳じゃ無いらしいけど、そこら辺は爺ちゃんがちゃんと対処してくれる筈、問題は・・・・・
「見事に頭を押さえられましたね?」
スターシップは現在コロニー・エンドラに寄港してるんだけど、出口の辺りに爺ちゃん達が陣取っててスターシップの出航を妨害してるのだ。
「現在エンドラ周辺では傷付いた艦隊を立て直す為、緊急で修繕するエリアを確保してる・・・もうすぐアイスコフィンも到着するから・・・・・」
「それ迄は出航させ無いぞと言いたいんだな?」
ハッキリ言わなくても明確な嫌がらせだ!
「マアそれ程は待たせ無いから安心するが良い、アップルトン少佐達が来る頃には修理は兎もかく艦隊編成は済ませ退いてやる!ハッハッハッ・・・・・」
お目付け役が来る迄、ボク達を脚留する気ナンだな?
良い度胸だ・・・ボクはコロニーと周辺の宙域図を表示して、
「エンドラ宇宙港はセンターピラーの中に建設されてる・・・のは、この世界のコロニーとしては標準的な仕様。問題は・・・・・」
「宇宙港から出港した船は余程の事が無い限り10マイル直進してから自由航行に移行する事が義務付けられている・・・」
余程の事とは戦闘に事故への対応・・・ちなみにマイルは地球の距離と一緒、その上にベッセルとかリードとかワープやハイパードライブで移動する時用の超長距離の単位表現もある。
「そしてミーモット討伐が終わった以上、そう簡単には艦隊の陣内に入れて貰えない・・・・・」
人の事を利用する時は散々引っ込んでたくせに!
「正面から許可を求めても時間稼ぎされてパイン少佐が来ちゃうよ?お爺さまは彼女達お目付け役が来るまで脚留させる積り何だから・・・・・」
「そして宇宙港の進路先10マイル地点に布陣して前を塞ぐ、いくら有事直後で寄港する船が無いからってやり過ぎじゃ無いんか?」
「そこら辺は流石に皇帝陛下、我が侭な爺だね」
皆が苦笑する。
さて・・・
「艦隊直前で急制動かけて方向転換・・・・・」
「その時に進路方向へ先回りされて塞がれる」
皆で和気藹々と爺ちゃんを出し抜く相談をしてるが、その背後で気拙そうにしてるジーンさん達ファルデウス帝国軍人一同の皆さん、ミューズの警護にアヴァ元帥がスターシップに乗り込ませた方々だ。
「悪戯には悪戯で返答したいんだけど何か良い案は無いかな?」
「向こうもキッドさんの悪辣さは心得てるだろうし、痛ぇ!」
余計な事を言うアノンさんのケツを蹴り上げた!
さて・・・
「戦闘速度は出さない迄も標準航行速度じゃ先に包囲される。コロニ―から出て5マイルで速度制限が解除されるから・・・・・」
「あっ!」
一同の眼がミューズの背後に向いた・・・ミューズの世話役も兼ねて護衛に就いたジーンさん達だが、まあミューズの世話役の事も考えて殆ど女性でも7人中2人だけ男性が居た。
隊長格のジーンさんと二人いる副長のフォスターさん、もう一人の副長は女性のニアさん・・・そのフォスターさんが声を上げたのだ。
「いえ何でも・・・」
「何か思い付いたんだろう?言いなさい・・・君等は確かにファルデウス軍人、だけど今はボクの指揮下に有る筈だ!」
まあイザと成ったら軍の命令の方を優先されるだろうけど、基本的に彼等はボクの指示に従う契約に成ってる・・・そうじゃ無きゃボクの船に乗せられ無い!
「言わないなら全員下船させるよ?」
それだけは絶対に回避したい彼等の弱みを使って脅迫する!
「自慢じゃ無いけど爺ちゃんよりボクの方が悪辣だぞ!」
ジーンさん達が怖い目でフォスターさんを睨んでるけど諦めた彼は、
「ファルデウス軍の艦だってコロニー宇宙港から10マイルの所ギリギリまで艦を進めて無いでしょう、戦時なら兎も角2~3マイルは余裕を持たせて配置してますよね?」
言われて見ると確かに開けられてる。
「宇宙港から出港して5マイルで加速開始、突っ込むと思ってビビらせて10マイル過ぎたら急転進・・・・・」
「いや危険過ぎるだろう?」
「十分速度を出さないと囲まれる、出し過ぎたら突っ込んでしまう、どちらにしろ打つ手は無い様だが?」
2~3マイルと言えばキロに直せば3.2~4.8㎞、随分離れてると思われるかも知れないけど200m近い宇宙船が高速で飛ぶには狭い範囲と言わざるを得ないのだ。
だけどね・・・
「そんなに難しい事じゃなっ!」
後ろっから首根っこを押さえられ、
「まだ何か隠し玉持ってるんだね?とっとと出しな!」
ジェイナス婆ちゃんに言われて仕舞った!
「スターシップがエンドラ宇宙港より離床しました」
「標準航行速度内で加速しながら直進中・・・・・」
すると悪人面した皇帝陛下は楽しそうに指示を飛ばした。
「あの子と船の機動力は十分知ってるだろうし、初めて接敵する者はシュミレーションを済ませてる筈だ!敵は我等より圧倒的に早いがコチラには数の理がある、冷静に包囲すれば抜かれる心配は無い筈だ!」
とキッドを完全に敵扱いしてた。
「後で仕返しされても知りませんからね」
背後の臣下である伯爵ジェリス少佐が呆れた様に言うが、
「仕返しが怖くて悪戯出来るか!」
と言い切ってしまう!
「宇宙港より5マイル離れて加速を開始、そのまま直進して向かって来ます・・・・・」
「指示に従う様にと警告せぬか」
「それが通信に一切応答しないのですが・・・」
その場に居た全員が「えっ!?」と言う顔をする。
「さらに加速を・・・この侭では・・・・・」
「成る程・・・考えたな?」
と言うジェリス少佐に皆の眼が向いた。
「警告何て来ましたっけと言う理屈で・・・・・」
「艦隊に特攻し中を縫う積りか?!」
皇帝が驚いた様に言う。
「あの子の技量と船の性能、そして性格を考えるなら・・・・・」
「全艦密集陣形!各艦の距離を1マイル以内に・・・・・」
皇帝の指示で各艦が距離を狭める。
「帝国航海法に置いて官民全ての艦船は1マイル以内に接近する時は互いの了承を・・・・・」
「スターシップ更に加速!」
真っ直ぐ突っ込んで来るスターシップに皇帝の顔が蒼褪める。
「キッド君、本気で切れちゃったかな?ファルデウスから出奔するコト考えちゃって、最後に特攻する気じゃ・・・・・」
「わ・・・私が悪かった!頼むから止めんかキッド・・・・・」
「スターシップ更に加速・・・」
「ぶつかる・・・」
皆が貌を蒼くする中でジェリス少佐だけは涼しい貌を、マァそこまで馬鹿な事をキッドがする筈が無いと信じてるのだが・・・内心キッドが気の短い事も知ってるのでキレ無いか心配しても居た!
「スターシップもう止まれませ・・・あっ?!」
レーダー観測スタッフが素っ頓狂な声を上げた所でスターシップが直角に曲がる!
「えっ?」
「何が如何成って?」
そのままエンドラとファルデウス艦隊の間を飛び去って行ったが、誰もスターシップを追い掛ける気に成れず、彼等が去って行くのをモニター越しに見守るしか出来無かった。
「なんだ・・・もっと何か特別な能力でも隠し持ってたのかと期待してたのに」
「そんな隠し玉、幾つも持っちゃいませんって」
まぁホントはマダマダ隠し持ってるの有るんだけど、そう簡単に公開するのも面白く無かったから出して上げないけどね!
「ワープの応用か・・・でも気付かれたんじゃ無いのかい?」
「あの距離のワープなんて気付かないと思うな」
ファルデウス艦隊の向かって突進しながらワープを開始して亜空間に突入、そして亜空間から出て来る時はスターシップの軌跡に対し直角に交わる辺りにワープアウトしただけ、まあワープして方向転換などコストが悪過ぎだから多様出来る技じゃ無いけどね♪
「あんな短い距離でワープする事だって驚異の技術だけどさ」
「リザーダー・・・先古代文明人の艦隊戦では初歩的な技だったらしいけど」
この技を教えてくれたのは勿論ダーグだ。
「初歩的な知識ではあるが、こんな物騒な技を実戦で使い奴はいないぞ」
「ボクが物騒だったかなw」
正直ワープインする自分の艦尾に自分で突っ込んだりする事故も有るらしい。
「陛下たちも驚き過ぎて追って来れなかったみたいです・・・この事は報告書には乗せないでおきましょう」
「確実に連帯責任負わされますからね・・・・・」
ミューズのガードに乗り込んでるファルデウス帝国軍人の皆様が仲間の筈のフォスターさんをジト目で見ていた。
「さてと・・・何とか振り切ったんだから・・・・・」
「少し遠くへ足を延ばしましょう♪」
「楽しみ♪」
ミューズとイリスに左右から抱き付かれ、ボクは鼻の下を伸ばしながら目的地をドコにし様か考えていた。




