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さてと・・・本番が始まるかな?

 ボクが依頼されたのはイリーナさんの無事帰国、それ以外の部分はボクの趣味と言うか我が儘と言うか・・・まあ好きな様にやらせて貰うけどね♪

 そもそも決着を付けなくてはイリーナさんが帰ろうとしない、チームメイトを殺した奴は絶対に許さ無いそうだ・・・まだ死んで無いんだけどね。

 チームメイトか・・・ウェッセルさんも可愛そう、だけど彼は知る事すら出来無いかも知れない。


 ウェッセルさんにはスターシップの特性ナノマシン治療薬をイメンケさんに届けて貰ってる・・・と言うよりスターシップのメンバーには緊急用に全員持たせてた、それをコッソリ病院に忍び込んで投与して貰ったのだ。

 他の人には絶対に見付からない様にして・・・この薬は何と言っても彼の技術で作られた狡い代物だからチョッと他の人に見せる訳には行かない、だがソレでも彼が助かる可能性は無いと言って良いだろう。


「小数点以下しか無い生還の可能性が、やっと整数に成ったって程度なんだろ・・・安心してよ、気休めでしか無い事はボクも分かっているから」


 ボクは牽引型貨物船(トレーラーシップ)に偽装したスターシップが牽引するコンテナ船の中で皆に呟いた・・・操縦はアリスが執り行っておりボクは回収されてから全速と言わ無い迄も疑われない程度の速度でネメシスに、スターライダーがボロボロなのは紛れもない事実だからね。

 ちなみにボクがゴールを切ってから少し経ってるけど、まだまだリタイヤしていない最後尾の奴がゴールするには時間が掛かるそうだ。


「オープン戦ならコンナモンだぜ・・・なんたって同好会レベルの奴が完走する事を目標に頑張ってるから、まあ良い記念に成ると思ってるんだろう。アタイも最初はそうだったし・・・・・」


 ジョシュアさんが言うとイリーナさんも、


「いつも通りなら最後尾がゴールするのは夕方前に成ると思う、優勝祝賀レセプションは夜からね・・・今回は優勝狙えると思ってたんだけどな」


 過去2回ほど出場してるイリーナさんは戦績が3位と5位、今回ゼニスがチョッカイを掛けなければ優勝しても不思議じゃ無い記録の保持者だった。

 ところでゴールからネメシス迄スターライダーなら1時間も掛からない・・・だけどトレーラーシップとは輸送船の事であり速度はスターライダーと5~6倍以上、だから優勝したボクとビリが入れ替わって到着する事もあり得る。


「そんなに何で離れてるの?ネメシス近郊をゴールにしても、いやネメシスの宇宙港をゴールにすれば良かったのに・・・・・」


「昔はそうだったのよ!でもエキサイトしたライダーが止まり切れず突っ込んだりする事例が多発して・・・コロニーの宇宙港がゴールだったのが外に、コロニーの近くだったのが遠くに、そして今の状態へ・・・・・」


 ダーグの問いにイリーナさんが答えた・・・コロニー宇宙港をゴールにしてた時代は最後の最後までデッドヒートを繰り広げて港湾施設に突っ込んだり、またコロニー近郊の場合は自前の船に乗って近くで見様とした金持ちやコロニーの観客席だった展望ドームに突っ込んで事故とか枚挙に暇が無かったそうだ。


「取り合えずネメシスに着くな・・・最後尾には後れを取らなかったらしい」


「それどころかスターライダーが傷付いて我々の様にサポーターが運んでるチームもある、基本レセプションパーティーは全員集まってからだから・・・あんまり遅くなりそうだと運営委員長から迎えのシャトルが・・・・・」


 そんな事を話してるダーグ達をジョシュアさんは横目で盗み見てる・・・この様子だと・・・・・


「ボクの正体に気付かれたなら・・・・・」


「ぎゃっ!」


 こっそり後ろから近付き耳元で囁き脅かしてやると、盛大に驚いたジョシュアさんが飛び上がってから恨みがましい眼でボクを見た。


「可哀想だが・・・」


「ア・・・アタイの口を塞ぐ気か?」


 こんどは凄い怯えて言うジョシュアさんにボクは、


「うん♪でも殺したりしない、お尻の爆弾湿布を一生剥がして上げ無いだけで・・・・・」


「鬼っ!」


 空かさず怒鳴り返された。


「あの人喰いザメのキッドに逆らったりしないよっ!だからケツの物騒な湿布を・・・・・」


 シロアリの次は人喰いザメかよ・・・ボクが世間で如何思われてるのか良く解る。


「ボクの事は何て呼ぶんだっけ?」


 こう言うミスをパーティーでされては堪らない、だが・・・もうそう言う腹芸は必要無いかも知れないな・・・・・・


「レセプションパーティーは予定より一時間ほど遅れそうですが、それが無くても我々は十二分に余裕を持ってネメシスに到着を・・・そして少し遅れてガネスの船もネメシスに到着します。キムセンやゼニスが雇った破落戸(ナラズモノ)と一緒にね・・・・・」


「何を企んでいるのか聞く迄も無いか・・・ボクを襲って悪人として殺される事が御希望だ!財団頭首が隣国の英雄それも皇女(ミューズ)の保護者を襲ったら大問題、財団は即ジョンブルソン政府の管理下に置かれ速やかに解体されるだろう。それで被害者に賠償させながら、出来る限り雇用を守りつつ民営化、そしてキムセンやゼニスに財産を残させない様に・・・ってのがガネスの狙いだろうね」


「そう言うモノを持ってても悪い事にしか使いそうも無いですからね、あの人たちゼニスとキムセンは・・・・・」


 全くミューズの言う通りだった。


「と言う事はレセプションパーティーに乗り込んでくる可能性が高いな?」


「と言うより他の予想が有るなら教えて欲しい、これより最適な舞台は無いしね・・・・・」


 するとジョシュアさんは慌てた感じで・・・・・


「イヤイヤ根っからの悪人じゃないかもって話に成ってたのに、ここで襲撃何てしに来るか?他の人も巻き添えに成るし・・・・・」


「それ位しないとガネスも悪人でしたと世間が認め無い、そこで精いっぱい悪役を演じ殺される積りだろうね」


 父親と息子はドクズだったけどガネスの評判は決して悪くない、それどころか評判が良い男なのだ・・・これ位しないと自分の評判を地に落とせず財団を残そう何て考える奴が出かねないと思っているのだろう。

 ボクはアノンさんが持ち込んだ証拠に向き合う。


「さてと話は分かったよ、で・・・アンタ等はボクに何を依頼する?これが有触(ありふ)れたフィクションならガネスのおっさんを泣く泣く討って尊い犠牲だったって話に成るんだろうけど、それを望む位ならアンタ達はココにまで来なかった筈だ」


 そうアノンさんが連れて来たのは証拠じゃ無く証人、ガネスゲイター氏の元執事と元運転手だった!

 一生遊んでも使い切れない報酬を得たが、そんなモノ捨ててでもガネスのおっさんを救いたいらしく、それを見越したアノンさんに追跡されて連れて来られたそうだ。


「そんな事は決まってますね・・・主人を救って頂きたい!出せるモノは全て出すし、足り無いなら一生かけてでも支払います」


「でも旦那様は死ぬ気だ・・・生きる選択肢を捨てて仕舞ってる、生きる気力も無いんだ」


 確かに絶望的な状況か?

 そんな事は無いさ!


「彼は今の状況に絶望してるだけ何だろ?なら力尽くでも今の状況から救い出し、今までの人生で一番幸せだった時の状況に整えて放り出せば良い!アンタはガネスのおっさんが船乗りだった頃からの相棒だったんだろ?ミスター・ガネスが一番幸福だった時は?」


「確かに私は彼が船乗りとして組合(ギルド)に登録してる時からの相棒でした・・・良く御調べに成られてますね」


 執事さんは感心した様に言った。


「良い情報源があってね・・・・・」


 ボクはアノンさんを見やる。


「そうですね・・・それなりに結婚生活は満たされてた様に見えましたが、やはり船乗りをしてる時が一番幸せそうでした。」


「何だ思ったより簡単そう、ところでガネスのオッサンは傭兵系の船乗りだったの?ボクみたいな兼業してたかも知れないけど、どちらに比重を・・・・・」


「そう言う事なら彼は宇宙で荒事は嫌いな貿易メインの船乗りでした」


 へぇ・・・確かに彼は財閥を運営する手腕も素晴らしかったらしい。


「なら簡単さ・・・その為に・・・・・」


「「「「「その為に?」」」」」


 執事さんや運転手さんだけで無く皆が身を乗り出して来た所で、


「ガネスには死んで貰う!」


「「「「「「「「「「ハァッ?!」」」」」」」」」」


 いや受けを狙ったんだけど・・・勿論ホントに殺す訳じゃ無く、そう言う計画ナンだって説明したけど紛らわしい言い方するなって皆からエラい怒られた!

 ワザとやってるだろうって・・・何で分かったんかな?




 スターシップが偽装してるコンテナ船を牽引したトレーラーシップごと、ネメシスの宇宙港に入るのは面倒なので回転して無いコロニーのシャフト部に接続をする・・・最近は()パイロットを自認してるミューズが接舷をやりたがるので任せていた。

 ボクは荷物を確認し操縦室(コクピット)に向かう途中でダイニングに、コクピットにはダイニングを経由しないと入れないからね・・・そこではイリーナさんがフェンツの病院に問い合わせている。

 まだウェッセルさんは耐えてるらしい・・・そう部長と話していた。


 さて少々複雑な関係にあるが今の所ボクはガネスゲイターを敵と認識、いや(エネミー)じゃ無く目標(ターゲット)だな言うなれば!

 そして新たに受けた依頼により彼を今の状況から救うには、ウェッセルさんに生き延びて貰わなければ成らなかった・・・執事さんと運転手さんの二人が言うには彼は責任感が強い人物で、息子が人を殺したとすれば必ず息子に責任を取らせ自分も死を持って償うと言う。


 そして残念ながら❝彼❞の技術をもって(ズル)をしてもウェッセルさんの容体は左程好転しない、それほど心臓を掠めるのは危険な状態で地球の技術だったら既に死んでるレベルの即死案件だろう。


 これはもう運を信じ天に任せるしか無いな。


「あとは・・・ウェッセルの体力次第だ」


 部長の声が聞こえて来る。

 もしウェッセルさんが死んだのなら計画を大幅に練り直さなくては、最悪しばらくガネスを眠らせて・・・ダメだ問題を後回しにするだけ、だが上手い解決法が思い浮かば無い。


「仕方無い・・・ガネスに関しては上手い解決法が無いなら下手でも解決させる道を選ぶしか無いな?そしてもしウェッセルさんが・・・・・」


 コロニーのメインシャフトに接舷し手続きをしながら考えた・・・最悪のケースは執事さんと運転手さんに協力して貰い情に訴えて自殺を留まらせるしか無い、しばらく彼を眠らせるか拘束した上で監禁しゼニス・キムセンを殺してからね!

 それにアノンさんからもたらされた情報で殺し屋を差し向けたのはゼニスじゃ無くキムセンだと言う事は判ってる、もしウェッセルさんが助から無かったら短い間と言え仲間に成ったんだ・・・ボクは間違いなくキムセンの首を狙いに行くだろう!


「お兄さま接舷完了いたしました。乗員の簡易上陸しか申請してないので・・・・・」


 ボクは必要に思える装備を収めたキャリーバックを引いてネメシスに下りると偽装したトレーラーシップは離れて行った・・・その事は別に怪しまれる事で無く支出を節約するのに当たり前の事、何せ船はレンタルと(船を持ってる学生もいるけど贅沢な行為)思われてるだろうしレンタル料を節約するなら必要以上に延長しないのは当たり前、そしてコロニーへの節減や停留にも税金掛かるから用が無いなら速やかに離れるのが当然なのだ。

 何せ今ボクはフェンツ大の学生イリーナさんと言う事に成っており彼女は貴族(ファルデウスでは当主だけで無く、家族も貴族の一員と見做される)と言えレース関係の援助を家から受けて無い、そして貧乏生活を送ってる訳じゃ無いけど贅沢もしてる訳で無く節約して学生生活を送ってるから何も違和感は感じ無かった。


 ポートに降り立つとスグに運営委員会からリムジン的な車が迎えが来て、そしてボクとジョシュアを乗せて優勝祝賀レセプションの会場まで乗せてってくれた。

 本来は優勝者のイリーナ(ボク)を迎えに来た車だけどジョシュアもオマケで乗せて貰え、それだけでは無く女性優勝者のみの特権であるレセプション参加時の衣装(ドレス)の用意もして貰えてた。


「ア・・・アタイもドレス貰っちゃって良かったのか?」


 恐縮しながらも嬉しそうに言うジョシュアさんに運営委員会のスタッフは、


「感謝はイリーナ選手にして下さい。ジョシュア選手はスターライダーから振り下ろされた時点で失格に成ってますが、それでもイリーナ選手と一緒にトップでゴールを切った事は事実ですから・・・まぁ気の利いたジョークと言う事で♪」


 そうドレスは貸与では無く進呈で、流石ジョシュアも女の子だけあって奇麗なドレスが貰えて嬉しいらしく少し浮かれている。

 だがヤッパリ粗雑な正確なようで・・・・・


「ここで着替えちゃって良いのかな?」


「いえいえホテルの一室を用意してありますから!」


 ボク達はレセプション会場のあるホテルに向かった。


 この世界でフリーコロニーつまり自治されてるコロニーはスラム的な物だと思ってたけどボクの偏見だった様、ただし実際スラム的な所や実質廃棄されてるコロニーが一番多いみたいだ。

 それでも自治するだけの管理能力と税収が有れば健全な運営も可能ならしく奇麗な街並みが続いて、そして立ち並ぶ立派なホテルの一つに入るとボクはポーターに荷物を運ばれ最上階の一室に案内された。


「この後3時間後にレセプションパーティーは始まる予定です。また明日の午前早い内に記者会見が1時間ほど、部屋は明後日まで取ってあるのでチェックアウトまで御自由に・・・本来イリーナ様お一人の為の部屋ですがイリーナ様が許可されるならジョシュア様も使われて構いません」


 最後の一人もゴールしたらしいが疲れ果て動けないらしく休ませる時間が欲しいとの事、地球ならソイツを欠席させてトットと始めちゃうだろうがコッチの世界の方が優しいのか紳士的なのか・・・ボクは礼を言うと案内してくれた運営委員会のスタッフは帰って行く。

 スイート的な部屋らしくコンセルジュが一部屋に一人付くらしい、だが少し休みたいので席を外す様に頼むと用が有ったら何時(いつ)でも内線で呼んで欲しいと言って出て行った。

 さてと・・・


「3時間後なら20時からか・・・・・」


 ボクは自分に用意されたドレスとジョシュアに用意されたドレスを見比べる・・・確かに高価で質の良いモノらしいが武器を隠せる場所が全く無い、これで襲われたら火力不足に悩む事に成りそうだ。


「せめて45口径は一丁・・・それに予備マガジンも・・・・・」


 ボクはドラビュリティスーツのまま外を伺いながら、カチューシャでスターシップのアリスと連絡を取る。


『今どの辺り?』


『衛星アロイスの陰へ通信出来る程度に隠れました。キッド様が何を狙ってるのか判りますが、今から従業員の衣服を盗みに入るのは危険だし無理が有るでしょう。ですがパーティー会場の中は大忙しですが外は比較的静かですから、私の指示通りに・・・・・』


『了解・・・』


 ボクは部屋に戻りジョシュアさんに向かって、


「シャワーでも浴びて着替えたら寛いでて、でも部屋から出ようとしただけで・・・」


「しただけで・・・・・」


 ゴクンとジョシュアさんが唾を飲み込む音がした気がする。


「お尻が・・最低でもウェルダン、下手したら消し炭になって消えちゃいます♪」


「絶対に部屋から出ませんっ!」


 ガタガタ震えながら言ってる・・・ゴメン張り付いて簡単に剥がれない様に成ってるけど、ホントにタダの湿布ナンだけどね♪


「じゃあ良い子で待ってるのよジョシュア?」


「ハ、ハ~イ、イリーナお姉さま」


 脅える彼女の返事を確認し、ボクはキャリーバックを引いて部屋を出るのだった。




「と言っても下手な所に隠してもなぁ・・・・・」


 思いっ切り自分を悪役に見せてガネスは死ぬ気だ・・・ならば世界的に騒がれ報道もされてるフェンツ・オーバブレイクレース、その優勝祝賀レセプションパーティーでボクを襲う事が一番印象付けられる。

 そのタイミングはボクの予想だけどパーティー終盤それも終わり間際に成ってからだと思われる・・・その理由は報道関係者はパーティーが終るまで帰らない事と、レース参加者やスタッフそれに招待客で年寄りは疲れて早目に帰る者が出て来るからだ。

 ガネスがアノンさんやジュリアさんの読み通りの人物なら必要以上の流血は避け、そして思いっ切り目立つタイミングで仕掛けると思う・・・パーティーは表彰式典で幕を閉じるからだ!

 それに・・・・・


「この世界でもビール掛け・・・いやシャンパンシャワーか?が有るんだな・・・・・」


 それが有るからドレスを用意してくれたらしいが、ドレスを補償するのを考慮してのプレゼントでは絶対に無いな!

 何せ用意されたドレスはボクのもジョシュアさんのも思いっきり濡れたら透けそうな薄手の生地のドレス・・・こう言う企画を考える奴とは気が合いそうだが、今回に限っては透けたドレス姿のボクを見たら皆が絶句するだろう♪


「さてと武器が隠せそうな所は・・・」


「そんな場所、有る筈が無いでしょ・・・ジョンブルソンの大統領まで来るのよ!」


 彼女がボクの後ろに近付いて来たのは分かっていた。


「これはこれは・・・人の事をオシリの形で見分けてるジュリアお姉ちゃんじゃ無いですか♪」


「もう悪かったから止めてよ、本当に反省してるんだから・・・・・」


 可愛いお姉ちゃんを揶揄うのは楽しいなぁ♪


「変な所に隠して見付かったら大騒ぎよ?私と部下は多少武器を持ってても咎められないから預けときなさい」


「そんな事言ったってジュリアさんは友好国と言え他国の兵士だろ?大統領来てるのに武器なんか持ち込めるの?」


 地球じゃ考え難く・・・も無いのかな?

 その辺は良く解らないけど・・・・・


「大型火器の類は流石に無理だけど、護身用の拳銃や警備の者の軽機関銃はくらい持ってられるよ・・・忘れてるだろうけど私も一応皇族だから」


 そう言えばジュリアさんって皇位継承権第3位の人なんだよね?


「あんまり人目につかない方が良いでしょ?早く預けなさい」


 そう言われてジュリアさんの部下にボクの武器、主に軽機関銃やブラスターの類を預けてく♪


「で・・・私はミスターガネスに、レセプションが終わり次第イリーナを連れ出すと言ったけど・・・・・」


 ならヤッパリそのタイミング終了間際のパーティーで襲い掛かって来る筈、ガネスも多分ジュリアさんから受けた言葉を「手を出すな」と言う脅迫か「出せるモノなら出して見なさい」と言う挑発に思っているだろう。


「ガネスって戦闘スキルは・・・・・」


「あの身体の動きから見て戦闘は(こな)せないと思う・・・(たる)んでる訳じゃ無いけど鍛えられて無いし、戦闘訓練に関してはした事も無いと思うな」


 それを聞いたボクは少し考え込む・・・・・


「そいつは・・・ちょっと困ったな」


「何で?」


 ジュリアさんが首を傾げた。


「多少なりともガネスに戦闘スキルが有るなら奴も乗り込んで来るでしょ?()()()()()に送り込んで来るチンピラと言え、殺す相手に全任せするタイプとは思え無い、自分も乗り込んで最後は自分も殺される様に・・・それが出来無いなら自分で・・・そう考えると思うな」


 ジュリアさんも頷いてる。


「でも自分にスキルが無いなら少なくとも自分が依頼主に成ってる以上、手下の足を引っ張る真似はしない・・・例え最初に雇ったのが父親や息子だとしても」


「ある意味、最後の死に花を咲かせ様としてるからね・・・悪の花をね」


 ボクは自分の武器をすべて渡すと自分の部屋に戻りながら、


「って事は来ない以上ガネスは近くにいて襲撃に失敗したら自分の頭を打ち抜くんじゃ無いかな?」


「そう成る・・・可能性も高いわね?」


 まあボクの予想通りに成るとは限ら無いけど、


「ジュリアさんはガネスの雇った破落戸(ゴロツキ)を相手に・・・・・」


「手は出せ無いわね・・・少なくともアナタが襲われる迄は!」


 この国の官兵では無いからね。


「ボクは・・・襲われてからじゃなきゃ応戦出来無い、それを知ってて迎え撃った形にすると後が五月蝿いからね」


「そうなる前に通報しろと言う話に成るからね・・・それと襲撃される事を知ってて司法に訴え出る事も無く自分で撃退するのはジョンブルソンじゃ非合法だから」


 それなら襲われてからじゃ無きゃ戦闘に入れ無い・・・襲われてから応戦するなら「襲われる何て知ら無かった」と言い通せるし、何度も襲われてるから護身用の銃を持ってても文句を言われないだろう。

 さてと・・・


『アリス、聞こえるか?』


『感度良好』


『目標は今どの辺り?』


『これから大気圏に突破を試みる所です』


 まあジュリアさんとクリッパーだから、こんなに早く来れたんだし・・・ジュリアさんより先にコッチに来れたなら、その場でガネスはボクを襲わせただろう。


『それにガネスは確実にイリーナさんが何者かと入れ替わってる事に気が付いてるでしょう。それがアナタだとは思って無いでしょうが・・・・・』


 それはそうだろう・・・奴は父親と息子が言い訳出来ない様にする為にイリーナ(ボク)を襲いに来てる、だけどボクの事を本当にイリーナさんだと思ってるならコンナ穴だらけな計画を立て無いだろう・・・襲っても互角に戦える相手だと解ってるからこそ勝負に来てる!

 ある意味・・・人生最後のゲームを楽しみに来てる訳、そう言う事なら相手に成ってやるけど・・・思い通りに動くとは限ら無いよガネスさん!




 部屋に戻るとジョシュアさんがモジモジしており、


「なぁ・・・ちょっと頼みが有るんだ・・・・・」


「お尻を焼き直されたく無かったら・・・言葉遣い!」


 ジョシュアさんは背筋を伸ばし、


「イリーナお姉さま、お願いが御座います・・・・・」


 と小さく成って言い、それを聞いたジュリアさん達が苦笑してた・・・幸い今回引き連れてた部下は全員女だったので中に入って貰っている


「絶対に逆らわ無いからオシリの湿布を剥がして下さいっ!これじゃ恥ずかし過ぎますよ!」


 うん・・・横のスリットから思いっ切りチラチラ湿布が覗いていた。


「そんな事言っても一応アナタはボク・・・いや私を襲って来た襲撃者なのよ?」


 ボクも男言葉が出ない様に今の内から慣らしとく♪


「それは解かってんだけど御願いしますよ~~~っ、アタイがオシリを炙られてる所は全世界に放送されちゃってるんですよ!これで湿布張ってパーティー出たら、そのコト思いっ切り皆に連想させちゃう・・・羞恥責めだよっ!」


「はぁ~~~っ!」


 ボクは思いっ切り深く溜息を吐いた後、カチューシャに指示をして張り付いた湿布を解除した・・・感触から湿布が緩んだ事を感じた彼女はボクに礼を言いながらトイレに飛び込んで、少しすると湿布を手にスッキリした顔でトイレから出て来た・・・ついでに用を足して来た訳じゃ無いよな?


「これで思いっ切りパーティーを楽しめる♪」


「甘いっ!」


 ボクは彼女から湿布を一枚だけ引っ手繰ると携帯してたナイフを引き抜き当てる。


「イ・・・イリーナお姉さまっ!?」


「安心なさい、切っても爆発しないから」


 ナイフで半分に切って、


「これならスリットから覗かないでしょ?メアリさん悪いけどチャンとオシリに張ってるか確認して・・・」


「イリーナお姉さまの意地悪っ!」


 泣きながらジュリアさんの部下に頼んでチャンと貼り付けられた事を確認して貰うと、後ろを向いてたボクにジュリアさんの部下が張ったと報告されカチューシャに張りく様に操作させた。

 少々強めに!


「ひゃんっ!アンマリだっ、鬼っ!悪魔っ!鬼畜っ!」


 可愛らしく抗議するジョシュアだが気にせず、


「あんなに危険なプレーをするジョシュアにはお仕置きよ♪少しは反省しなさい・・・・・」


「アンタの腕なら命の危険に障るとは思わ無かったんだよぅ・・・」


 そんな泣き言を漏らした。

 だがボク達のやり取りを見てたジュリアさんは、


「キッド君・・・」


「なにジュリアさん?」


 ジュリアさんが心配そうに声をかけて来た。


「これから銃撃戦に成るだろうし、あんまり思い悩まない方が良いよ?」


 おや・・・態度に出して無い積りだったけどドコかに出てたのかな?


 マア自分でも自覚が有ったからね?


「この状況をスケベ中年並みにHなキミが楽しまないで事務的にこなす筈が無いもの・・・・・」


「失敬な・・・こっちは健全な青少年なだけ、ただジュリアさん今のボクは()()()のイリーナよ」


 どこで盗聴されてるか解らないからね♪


「お友達の容体・・・・・」


「病院の院内通信をハッキングしてるけど・・・山場を迎えたらしい、脳波や脈拍が限界まで弱まり乱れ捲っているそうだ」


 そろそろナノマシン群のエネルギーが切れる、それまで彼が持ち堪えられたら勝ち目も出て來るけど・・・ちなみに同じタイプのナノマシンは身体が持たないから再投与が出来無い!


「ワンツーフィニッシュを決めて共に優勝し告白するんだろうが・・・こんな所でくたばったら負け犬だぞ!」


 ボクはエールの積りで悪態を吐いた。

 すると後ろから・・・誰かに抱き締められる。


「大丈夫・・・まだ希望は残ってるよ、イリーナお姉さま・・・・・」


 意外にもジョシュアさんだった。

 やっぱり悪い人じゃ無かったらしい・・・


「そうよ・・・勝負の結果は終わってからじゃ無いと分から無いわ!」


 前からジュリアさんも抱き締めてくれ何か安心させてくれる。

 するとドアをノックされ、


「イリーナ様、ジョシュア様・・・そろそろレセプション会場に御足労願えますか?」


 と言われた。

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