そしてボクは切れた!
惑星フェンツの主要都市バグネラ、その沖合に建設された巨大なプラットフォームにはスターライダーが市松模様の様に整然と並んでいた。
その中で自分の乗機になるスターライダーに跨りながらボクは色々とセッティングを詰めている・・・こうして見るとスターライダーってバイクの両サイドに何かユニットを繋げた、このまま変形してロボットに成りそうなデザインをしている。
変型出来るアサルトノーダー造って見様かな?そんな事を考えながらレースの説明も聞いてい。
「シグナルが点灯したりフラッグが降られる訳じゃ無いのね・・・10時ピッタリに全員レース開始で衝突したり突っ込んだら全て自己責任か、随分事務的だけど後ろから突っ込まれた場合は如何成るんだろ?」
まぁ思ってた以上にハードなレースの様だ。
ちなみにフライングは問答無用で失格、あと自分から突っ込んでった様な事故は突っ込んだ側の責任だ。
「プロペラントタンクは4本付いてるがフェンツを一周した所で2本パージ、そして大気圏を突破し宇宙空間に出た所で残り2本を切り捨てる・・・そしてゴールであるフェンツ第1衛星❝エンツィオ❞と第2衛星❝アロイス❞の間を突破しフリーコロニー❝ネメシス❞へと・・・んっ?」
するとボクの乗るスターライダーの前に立ち塞がる見覚えの有る4人組が、ミューズと歩き回ってる時にボクのアレを握り締めに来たガラの悪いお姉さんと取り巻きだ。
「アンタ・・・やっぱりイリーナだったんだね、でもアン時は確かにアレが付いてた筈だ・・・・・」
まあ堂々と「私がイリーナです」とスタートラインに立ってるんだから、そう思われても仕方が無いし・・・痩せたと言っても会ったのは数日の事で見分けが付かない筈も無い。
イリーナさんとボクは元から貌の造作も似通ってた・・・だから化粧をしただけでモニタ越しにしか見て無いだろうゼニスゲイター位は騙せ、後は精密に解析されない様カメラで映される事を避けるだけで済んだのだ。
それにもうボクがキッドと暴露てもイリーナさんがフェンツから離脱した以上は何の問題にも成ら無い、後は奴等がボクに襲い掛かって成るべく襤褸出す様に仕向けるだけで良い。
それにしてもコノお姉さん、握った男性器の事をハッキリ言葉に出来無い辺りは可愛い。
おっと今ボクはイリーナさんナンだから・・・・・
「フフッ・・・アナタ本当に可愛いわね?」
成るべく女らしい声で対応する。
「アンだって!?」
「アナタが握ってたの屋台で貰った青い熟して無いバナナよ?ぷふっ!」
ボクも演技が上手く成ったな・・・さも笑うのを我慢出来無いと言った感じで、
「追われてたから男物の服着てズボンの中に入れといたんだけど、まさかアンナので本当に誤魔化せるなんて・・・貴女って見た目に寄らず可愛い子なのね?」
「ず・・・随分と砕けた伯爵令嬢だなおい?」
真っ赤な貌をして睨んで来るが、
「アンマリ屋敷に拠り付かなかったし貴族の嗜みは身に着けて無い、だからアナタみたいな人の相手も十分務まるわよ?」
「このアバズレが・・・」
もう完全にポジションが入れ替わってる。
「覚えときな・・・お嬢さまが遊びで参加するにゃ、レースってのは御上品な代物じゃ無いんだ」
「アナタこそ覚えて置きなさい・・・アナタ達一般市民は幻想を抱いてるけど貴族ってのは綺麗でも上品でも大人しくも無い、暗殺も謀略も当たり前で実力行使ナンて日常茶飯事の筋肉戦闘集団なんだから!」
う~んジュリアさん辺りに聞かれたら確実にクレーム付けられそうだ!
「そもそも国を守る為に爵位を押し付けられ、少なくとも当主と跡取りは確実に実戦に身を置いて戦闘可能な職業軍人なのよ?上品にティーカップを傾けながら優雅に微笑む貴族何て現実には居無い、レーション齧りながら軍用ナイフで敵の喉笛を切り裂き、銃の一発どころか艦砲射撃で敵艦のどてっ腹に風穴を開ける・・・それがファルデウス貴族の姿!アナタがケンカ売ってるの、そんな相手なんだけど自覚してるのかしら?」
お姉さんもマア真に受けてドン引きしてらっしゃるけど全てボクが即興で考えた架空のファルデウス貴族象、勿論そんな貴族はファルデウスに居無いだろうし居たとしても極一部・・・こんな事を言ってるのが暴露たらファルデウスの貴族から追い掛け回されて捕まったら折檻されかねない!
「ちっ!精々息がってな・・・その言葉が本当か如何かはレースで確り見させて貰うからね!」
そう言って立ち去ろうとする彼女達の背中に、
「構わ無いけど見物料はアナタの命で支払う事に成ると思いなさい!」
言い負かされて悔しそうな顔で振り返る彼女にボクは満面の笑みを浮かべながら答え、そして頭の中では何故か皇帝陛下の爺ちゃんとジュリアさんがギャアギャア文句を言ってる様な気がした。
ボク達はスタートラインを離れてカフェテラスに入った・・・実はスタートラインではボクの乗るスターライダーを組み立て中、と言うより皆ライダーに細工をされない様ドコも会場でレース直前に組み立て最終チェックをするのだ。
「キッ、いやイリーナ・・・ファルデウス貴族って本当にそんな感じなの?」
「な訳が無いでしょ♪今のを本気で信じてるんなら、ファルデウス貴族が勢揃いしてる前で正座させられて説教されるよ!」
そう言うと「だよな・・・」と安どした表情をするウェッセルさん、まあ意中のイリーナさんが本当にそんな戦闘民族だと思ったら二の足を踏むかも(笑)
『お兄さまチョッと良いですか?』
おっとミューズから連絡が来る。
『商材の搬入は全て終了、これから離陸し各地に散ってる仲間を回収してから大気圏から離脱フェンツの引力圏から離れる・・・と見せ掛けて2つ目の月アロイスの陰に隠れてます』
『チャンと生鮮食品は・・・・・』
『液体窒素でカチンコチンに冷凍したまま絶対零度をキープして輸送します。お楽しみ様に私達の分もタップリ買い込んで有りますから・・・』
仕方の無い奴だな。
でもこれでフェンツのステーションコロニー出て続きを、ギルド所属なら滅多に搭乗員をチェックに来ないからイリーナさんをキャプテン・キッドとして堂々と惑星フェンツの宇宙に上げられ・・・そうしたら依頼は100%達成で後はオマケだ。
『キッドさんチョッと良いですか?』
ミューズとの会話にイメンケさんが割り込んで来る。
『何か有ったの?』
『チョッと会って頂きたい奴が居まして、いや違うな・・・出来る事なら合わせたく無いのですが、雇用者としては雇用主に内緒に出来無いと言うか』
少し考えて、
『出来る事ならボクに合わせたく無いのは、つまり物騒な相手って事かな?だけど有益な情報を持ってる可能性が有り、しかもボクと直接話をしたがってる・・・初対面の相手かな?』
『正面切って会っては無いですね・・・ただキッドさんは何処かでチラッと位は見たかも知れ無いし、アッチはキッドさんの事は確り何度か見てる筈でして・・・』
はて誰だろう・・・
『ジョルジュ・ダビド・アノン』
『ああイメンケさんと反対の意味の名前の人、でもボクその名前に聞き覚えが無いけど一体誰なのさ?』
するとイメンケさんは、
『アレッ、名前教えてませんでしたっけ?トゥーニックに雇われてキッドさんを殺しに来てた殺し屋ですよ♪』
『んな奴と連絡、取り合ってたの?』
確かにボクもヤツの影くらいはチラッと見たし、ボクを暗殺し様としてたのだから姿くらい見てるよね・・・なんか凄く頭痛がし始めたが取り敢えず話を聞いて見ると、この惑星に来てボクと別れたイメンケさんに彼が接触しボクと会談したいと申し出たらしい。
『もうキッドさんに危害を加える積りは無いそうで・・・』
『信じられるの?』
正直ボクはアイツと一対一で戦い勝つ自信は無い・・・ただイメンケさんに言わせるとボクはアズミーナを殺す事で何かが一皮剥けたらしく、今のボクなら勝てるとは断言出来無いけど十分互角に戦えるそうだ。
『信じられる筈が無いでしょ、キッドさんを殺そうとした殺し屋さんですよ?』
『そんなのに雇用主を会わせ様とするなよ!』
冗談じゃ無い!
『彼が何かし様としたら、その前に私がアイツの頭を打ち抜く積りですから♪』
『あれっ、ミューズと一緒じゃ?』
そう言えばミューズの声より鮮明に聞こえる。
『お兄さまと別れてスターシップに合流してから、私とイリーナさんの護衛はダーグさん達に任せて別行動ですよ』
『キッドさん・・・右斜め前50m』
ボクは思いっ切りズッコケ掛ける・・・イメンケさんは黒人さんに成って屋台で音楽ディスクとドリンク類を、しかもラッパーみたいなファッションで売ってる!
「さあ異なる時空からの来訪者、ファルデウスの英雄キャプテンキッドの故郷からの音楽とドリンク類だ!まだジョンブルソンに入って来て無いが今後ヒットは間違い無し、特に音楽は・・・・・」
アイツ・・・思いっ切り目立っているなぁ!
「おぉソコのお嬢さん、アンタ可愛いからサービスしとくよぅおおっ!」
イメンケさんの額にジョンブルソンの流通硬貨であるコインを弾いてやった。
「ゴメンなさ~い、当たると思わなくて♡」
思いっ切り科を作るボクに、
「き・・・気にしない、気にしない!ところでお嬢さんは未成年かな、でも保護者が居るならアルコールドリンクでも良いかな?」
さてココで問題だ・・・ボクは特殊な躰で比較的アルコールには強いけど、それでも抑々酒類を美味しいと思えずハッキリ言って嫌いだ。
だけどイリーナさんはボクと大して年齢も違わ無いのに大の酒豪、彼女に成り切るなら涼しい貌をして飲む方が良いかも知れ無い。
けど・・・
「明日のレースに差し障り有るとイケナイから遠慮させて貰うわ」
そう言って普通のソフトドリンクを購入する・・・すると容器の側面に地図が描かれており、振り返ると彼じゃ無く女の子が屋台の店番をやっている。
『それだけイメンケさんが肩入れしてるなら会うよ』
『バレてますか・・・』
本来イメンケさんなら彼ほど物騒な相手にボクを会わせ様と等しない、だから会わせ様としてるだけで入れ込んでるだろう事は想像が付いた。
「しかし殺そうとした相手に営業を掛ける何て良い度胸してるよな?」
「お褒めに預かり恐縮です♪」
彼ジョルジュ・ダビド・アノンは公園でボクと対峙しながら将棋に興じる振りをしてる・・・イメンケさんったら地球のゲームをさっきの屋台で売り捲っており、この公園中でチェスやオセロにトランプにUNOそして将棋に興じる人ばかりいる。
まあボードゲームやカードゲームをしてる時は手や手持ちのカードで口元を隠し、表情を読まれない様にする振りが出来るから密談するには都合が良かった。
それにドノ世界でも・・・いや地球でも仕事をサボッて公園や街角でゲームに興じる風景は見られ、しかもこの世界だと軽く賭け事を兼ねておりイリーナさんも常連だったそうだ。
ちなみに彼は現在老人に化けてる・・・
「褒めて無いからね!第一 報復で殺されるとは考え無かったのかよ」
「トゥーニックが相手なら絶対に会おう何て考えませんが、アナタなら殺す前に私の売ろうとするブツを確認するでしょう?それに有用なモノを売りに来たのなら殺そうとはし無い筈だ」
成程、確かにそうかも知れない。
「トゥーニックとはビジネスライクで、あまり個人的には好きじゃ無かったのか?」
奴には合わないと言う言葉の真意を探った。
「そんな事は有りません、相応の報酬で報いてくれますし金払いも良かったですから大好き・・・ただ彼は自分を殺しに来た人間は絶対に生かして置か無いでしょう。有用な情報を持ってたとしても自分を殺し掛けた相手なら、まあ良くて報酬は払わ無いし悪ければ拷問フルコースを御馳走してくれそうで・・・」
つまりビジネスライクだった訳じゃ無ェか!
「まあ命を狙われたら厄介かも知れませんが、仲良く仕事してる内は役に立つ男ですよ私は・・・如何でしょう、今回は可成り御安く提供する積りですが?」
「自分で言うな!まぁ確かに役に立つなら・・・どんな情報を幾等くらいで売る積りなんだ?」
試しに情報の触りと金額を聞いて見た・・・アノンが提示したのはトランサッド財団の内情と動向、そして彼の提示したのは確かにポンと出して良い金額じゃ無いけど素人のボクにも安いと思える。
『イメンケさん?』
『お買い得だと思いますよ?』
カチューシャの通信機能で聞いて見た。
「OK情報は買わせて貰う・・・でも二三、確認したい事が有る。殺し屋のオマエが何で情報を売りに来た?何でボクを相手に選んだ?」
「元々殺し屋と情報は切っても切れない間柄、殺し屋の片手に小遣い稼ぎで情報の販売もしてたんですよ。相手にアナタを選んだのはトゥーニックと同じで金払いが良さそう、そしてトゥーニックと違い自分を狙った殺し屋とも真面な取引してくれそうだったから」
相手を見る眼は有りそうだけど・・・
「それでも このタイミングで殺し屋のオマエが情報を売りに来る・・・しかも都合良くトランサッド財団の情報を持って、少し違和感を感じるんだが?」
「その理由は単純にイメンケ氏にコテンパンに叩きのめされて・・・彼は電気ショッカーガンを使ってましたけど、その後トゥーニック氏の所に連行される時に逃げ様と抵抗したら私の手を思いっ切り踏んづけて来たんですよ!」
彼が懐から本当の右手を出した・・・ギプスみたいなもので固められてる、今までボクの相手してたのは義手だった。
「器用な人だなぁ・・・」
「そんな所で感心しないで下さい!イメンケ氏ったら手加減せずに踏み躙ってくれたから骨折だけじゃ無く神経まで・・・お蔭で暗殺者なんて精密な仕事は暫く出来無く成って、しかも路銀も尽きて仕舞い治療続ける費用も・・・・・」
ボクは立ち上がり、
「決めた・・・アンタの犠牲者を増やさない様に、この取引は無かった事に・・・・・」
「イヤちょっと考えて下さいよ、私の情報は有益ですよ!」
思いっ切り縋って来やがるなコイツ♪
『キッドさんも意地悪して無いで、コイツが復活して悪さする様なら改めて殺しに来れば良いだけの話しですから』
『その前に出た犠牲者には如何やって責任取る積りだよ!』
ボクの払ったギャラで復活した殺し屋が誰かを殺したら、間接的にボクが殺した事に成らないかな?
『その時は御任せ下さい、何かやらかす前に私が彼の息の根を止めます』
イメンケさんの場合、本当にやっちゃいそうだ!
結局イメンケさんの執り成しも有って取り引きする事に、確かにボクにとって重要な情報だったけどね・・・でもボクの懐から金を出しながらイメンケさんが取引し、ボクの罪悪感を緩和しようとしてるのか?
「いや恐らくですが奴は乗りたいと思ってるんだと思いますよ・・・スターシップに」
「ぶふっ!」
イメンケさんの所で買ったドリンクを噴出した。
今イメンケさんは背広を着た会社員風の姿で仕事をサボりつつボクと将棋してる風を装いながら対局している。
「汚いなぁ・・・」
「いや噴出させたのはイメンケさんだからね!ボクのコト殺しに来た殺し屋がスターシップに?イヤイヤ冗談でしょ・・・」
するとイメンケさんは、
「イヤ本気だと思いますね・・・彼は確かに殺し屋でしたが、そんな仕事に嫌気が刺してたんじゃ無いかな?」
「まさかソレを・・・」
思いっ切り嫌な予感がしたが、
「了承して無いし橋渡しをする気も無いですよ、それに彼もそんな事一言も口にしてません。ただ何となく私にはそう思えるんです・・・まあ勘なんですけどね」
「そんな物騒な奴船に乗せるのボクは嫌だからね」
すると意外な事に、
「いや私だって大反対ですよ?勿論キッドさんがOK出しても反対する積りです!ただ・・・これも勘なんですけどハッキリ言ってキッドさんと彼は話が合いそうだし、私達が反対しても絆されて最後は乗せると言い出しそうな気がします」
「そんなコト言う筈無いだろ?」
するとイメンケさんはボクを疑わしそうな眼で見ながら、
「本当ですか?」
と言った。
ボクが自分の命を危険に曝してスリル楽しんでる様に見えてるのかな・・・ボクはイメンケさんと対局しながらアノンが持って来た情報に眼を通す。
あの殺し屋の売って来た情報は可成り有益だった・・・今後トランサッド財団の企ててる計略が丸見えに成る様な代物、こんなスキル有るなら殺し屋じゃ無くて情報屋やってりゃ良かったのに?
「親の顔も知らずにフリーコロニーで風浪児やってたらしいですね・・・殺し屋の組織に拐かされて無理やり殺し屋に、幼い頃から殺し屋やってたんで犯罪をしてる感覚すら無かったそうですよ?」
そう言ってイメンケさんは桂馬を進める。
「引退する気だったけど最後に大きな報酬とキッドさんと言う殺し甲斐のあるターゲットをチラ付かされ、ついついトゥーニックの誘いに乗っちゃったそうですが・・・中々面白そうな奴だったでしょ?」
「そりゃ認めるけど・・・」
ボクが王手を掛けた所で、
「おいイリーナ明日のスタートに差し障る、そろそろ・・・・・」
ウェッセルさんに促されて公園を後にした。
オーバーブレイクは安全や環境に対する配慮でレギュレーション等で制限を掛けられ、大気圏内では音速の5倍程度しか出せない様に制限されてる・・・まあ大気圏内を光速で飛び回られたらソレだけで下手したら環境破壊が発生する。
そもそも音速を突破して良いのは高度5000mを超えてから、最もオーバーブレイクのレギュレーションとスターライダーのジェネレーターの制限で早々音速が突破出来無い様に成っている。
「良いか・・・もう一度確認するぞ?」
ウェッセルさんがボクに詰め寄って来るがイリーナさんみたいな美人なら兎も角ウェッセルさんみたいな男に詰め寄られても、と言ったらライダースーツの上からオシリを叩かれた・・・このスケベがボクは男だぞ!
「真面目にやらんからだ・・・良いか、このレースはスターライダーじゃ世界最高の権威あるレースなんだ!それだけに皆が血走ってて多少のラフプレー何か気にもしない・・・・・」
「それだけじゃ無いよ・・・ボクの後ろのグリッドに並んでる3人、レースが始まった途端にボクに体当たりする気だ!」
アノンの情報は確かなのかと思ったがミラーで背後を確認したところ、そう言うコトを如何にもしそうな面々が、そう言う目でボクを見てるんだよコレが!
「そうか?みんなオマエをイリーナだと思ってるから、ケツに見惚れてるんじゃ(ドスッ!)ごふっ!じょ・・・冗談だよ・・・・・」
思いっ切り肘で脇腹を突いてやった!
「ほらサッサと確認とやらを、サポーター退避まで時間は無いよ?」
「うぅ・・・レースとしてはスタートしたらスタート地点から東に経度30°飛行する間に高度5000mまで、その場で到達出来なかった者は問答無用で失格だ。その30°地点からフェンツの赤道上を一周しながら大気圏を突破し第一の月❝衛星エンツィオ❞に向かう」
「ゴールラインはエンツィオとアロイスの間だけど向き的にエンツィオを目指す事に成る・・・か」
「そうだ・・・そしてエンツィオとアロイスの間を突破してゴール、ゴール時点で燃料切れを起こしてもレース上は問題無いが・・・・・」
「ボクの場合は命が無く成ると・・・・・」
そんな所を狙われたらボクでも生き残る事は出来無いからね♪
「最後に・・・」
部長さんがボクの耳元に口を近付けて聞いて来る。
「本当に良いのか?もうイリーナはキミの船に乗ってフェンツを離脱した・・・ここで君が命がけでレースに出無くても、キミの正体を明かせば奴等も手を出して来ないだろう」
ウェッセルさんも頭を寄せて、
「トランサッド財団が本気でオマエをイリーナと思ってる以上、本気で確実に殺しに来るだろう・・・今からでもリタイヤして」
そんな事を言う二人に部長からタブレットを奪い、このレースの公式サイトを表示させ・・・・・
「この200年近い歴史を誇るレースで最近の優勝者は・・・5年ほどトランサッド財団系列のチームが独占してる、このレースの優勝をイリーナさん縁のチームがダッシュし後に財団投手の息子を訴え出たら・・・最高の良い気味だと思えませんか?」
二人は驚愕と言う感の顔をして、
「逆に負けたら、その腹いせで後の裁判をと言われそうで怖いな?」
「ってよりオマエは本当に優勝する気だったのか?」
「当然じゃ無い、ナニ間の抜けた事を言ってるの?あのアホ共のチンケなプライド圧し折って間抜けヅラを世間に晒してやれば、今年のレースをオジャンにされた部長やウェッセルさんの溜飲も多少は下がるだろ?」
「オマエって奴は・・・」
呆れた様にソレでいて楽しそうに微笑む二人の背後からスピーカーが可愛らしい女の人の声を放った。
「サポーターズアウト、サポーターズアウト・・・スタート5分前です。プラットホームからサポートスタッフは退避して下さい」
部長とウェッセルさんがヘルメットの上から頭を撫でて走り去る・・・スターライダーは滑走が不要で離陸は停止状態から斜め上に飛ぶが、流石に事故も有るし危ないのでサポーターは全員退避する事に成ってる。
まあ残ってる馬鹿が居たとしてもレーサーや所属チームに何の御咎めも無い、ただ残ってた馬鹿の命の保証が無くて後 罰金も課せられるかな・・・マアそんな馬鹿は滅多に居無いと部長さんも言ってたけどね♪
ボクはジェネレーターの出力を上げながら背後をミラーで見やると明らかに獲物を狙う目で見てる彼等・・・奴等は本物のレーサーだがチームに関係無く個人的にトランサッド財団に買収され、金でプライドを売り渡しレーサーから殺し屋に転職したらしい。
「そっちがその気なら手加減しないからね!」
ボクは独り言ちて時計を見やるとスタート迄3分を切り時刻の隣でカウントダウンが始まる。
すると右手の方が騒がしく成り見るとウェッセルさんが飛び出してボクに向かって走って来た・・・おいおいアンタが馬鹿だったのか?何て思わ無い、彼の必死な形相で何か非常事態なのは理解出来た。
ボクは彼の視線を読み追うと彼が飛び出して来たのとボクを挟んで反対側に有るゲート・・・参加者が多過ぎるので出入り口が何十ヶ所も有り、その一つから大会関係者のユニホームを着た男がボクに向かって銃を構えている。
「まさか、そう来るとは・・・」
一瞬ボクは判断に迷った・・・飛び降りてスターライダーの影に隠れれば良かったのだが、これからコイツで大気圏を突破しなくては成らず、そんなモノに銃弾で傷を付けられては命に関わる!
ボクは応戦する積りで腰から銃を抜いたが一瞬早く敵の方が発砲、その銃口はボクでは無くスターライダーに向いていたのだが・・・その銃弾から機体を守ったのはウェッセルさんの身体だった!




