ヤル事済んだから逃げ出すw
ファルデウスに帰還したけど箱舟に積んであった❝お宝❞の内、全ての情報は一旦スターシップのワイズマンズ・ライブラリーに移動、そして遺伝子遺産に関する情報と❝お宝❞本体はジュリアさんのお母さんであるマリアさんとウェルム少将の奥さんに一部を渡して後は皇帝の爺に丸投げした。
元々惑星2つ分の自然環境などボクの手に余るから、爺さまに任せて国主導で行って貰った方が早い・・・勿論それで出た上りはチャンと配当して貰うけどね!
そして爺さまに遺伝子遺産を渡した時に、サンティアラのリザーダーの卵が次々と孵化してる事を教えられる・・・その数は先古代文明人を一種族として再び蘇えらせるだけ有った!
「そう言えば・・・ダーグ達みたいなトカゲベースの爬虫類型人種はいなかったけど、他にも結構いろいろな種族が居るもんな」
惑星ミューズのステーションコロニーの1つで入管レセプションに並ぶ人々を見ながら思う・・・確かにボク達みたいな霊長類型が多いけど、他にも魚やタコっぽい外見の異星人や鳥や動物に似た獣人系の人々も居た。
「チョッと良いかね?」
如何見ても二足歩行してるネコにしか見えない人種がボクの隣に座った・・・正直可愛いと思って仕舞ったが話してみると立派な成人、よっぽどボクより年上だったりする。
「ミスター・ドレイク・・・ミスター・ドレイク・フランシスさんは居ますか?」
「ハイ、私です」
ボクが立ち上がると入管のお姉さんが驚き、
「失礼しましたミス・ドレイク」
「名前も間違えてますね・・・フランソワーズ・ドレイクです。入星目的は就労で就労ビザは此処に・・・・・」
アヴァ元帥が用意しといてくれた書類を手渡す。
「失礼ですが発行元が皇室に・・・」
「ハイ、この度ミューズ姫の教育係に・・・」
すると相手は驚きながら、
「お若いのに素晴らしい・・・如何か我等が姫をよろしくお願いします」
と深々と頭を下げられてしまう。
彼女を騙してる事に罪悪感を感じながら、こんな計画を考えたミューズとアヴァ元帥に帰ったら仕返しし様と心に決める。
『そもそもギルドも何でこんな仕事を仲介した?ボクが加入してるのは船乗りのギルドで、ボディガードのギルドじゃ無いのに!』
未だにミューズを如何にかして利益をと考える馬鹿が居て、そいつ等を釣り上げる為にアヴァ元帥に頼まれて仕舞ったのだ・・・本来ただの船乗りであるボクが受けるべき仕事とは思えない。
ただコノ世界で個人の艦船を所有してる者は傭兵や輸送業者・それに探検家を兼業してる様なモノで、犯罪捜査を依頼される事も珍しい事では無い・・・現にボクも傭兵として反逆者や侵略者を手籠めにしてるし♪
『それに今回は男物のスーツ姿でショートに見得るウィッグ被ってるのに、何で皆ボクを女の子と認識する!』
確かにボクはミドルティーンで子供と思われる事は仕方無い、それでも普通は男の子と判らないのかな?
「声を出すな」
後ろから来た男に小声で囁かれ、同時に背中に固いモノを押し付けられる。
「大人しく外に出ろ・・・その車に乗るんだ」
よしよし上手く引っ掛かってくれた♪
「おっ・・・豪い可愛い子が教育係なんだな」
「おい役得じゃ無いか・・・どうせ説得しなきゃ成らないんだからよ、その間に少しお近づきに・・・・・」
そう言って太腿の内側を撫でられ・・・ボクは切れた!
「まあ背後に居た貴族を焙り出せれば良かっただけだから多少派手に殴っても問題無かったのだが・・・それでもコレはヤリ過ぎでは、それにキッド君 少々苦しいのだが・・・」
「ヤカマシイ!」
こんな計画を考えたアヴァ元帥の首を後ろから絞めながらボクの眼の前を誘拐犯がストレッチャーで運ばれて行く・・・全員漏れ無く一目で判る重傷者、そして全員が「ア゛~~~ッ!」とか「ヴ~~~ッ!」とか呻いている。
「しかし・・・ここまで念入りに傷付けても致命傷は追わせて無い、キッド君ヤッパリ帝国諜報部で拷問に関する指導を・・・解りました冗談ですからソロソロ首を離して!」
呼吸が苦しくなってアヴァ元帥がギブアップ、
さて・・・全てが終わった所で、これからボクは如何し様かな?
ジュリアさんとジェリス艦長は原隊に復帰したし、パインさん達も何処かに編入されるだろう。
これからボク達はスターシップのみで気ままな・・・・・
「ミューズ様が乗ってるのに単独行動させる訳に行くか!」
行き成りアヴァ元帥の部下に怒鳴り付けられる。
「最低でも一個小艦隊は同行させて貰うぞ!」
「そもそも皇女様を乗船させときながらな・・・」
比較的若い偉そうな文官然とした連中が騒ぐと途端にアヴァ元帥の顔色が変わった・・・その表情が一生懸命「馬鹿どもが、それ以上煽るんじゃ無い!」と言ってるのだが、彼の馬鹿じゃ無かった部下達はその事に全く気が付か無い。
「だから穏便に話を持ってこうと思ったのに、あの雄ネコ(コッチの世界で気紛れで我が侭な者を指す隠語、日本で言う天邪鬼に該当)どもが大人しく言う事聞く筈が無かろう!」
アヴァ元帥がミューズの護衛に一個小艦隊つけろとキッドに言った部下に怒鳴り付けた・・・あんな言い方をすればキッドがヘソを曲げて悪戯するに決まってる、それを見越して監視も付けたけど見事にスターシップは姿を消した。
「キッド様は船乗りのギルドに加盟し資産は全てギルドの口座に預けてますから、依頼を受けたり預金を下ろしたら連絡するようギルドに・・・・・」
「出来ると思うか?」
アヴァ元帥が部下を冷たく睨み付ける・・・ギルドはドコの国にも属しておらず完全に独立した世界的な公組織の組合、余程の事が無い限り国に命じられたからと言って組合員の個人情報を漏らす筈が無い。
ギルドに頼んで聞き入れられるのは言伝を預かって貰う事くらいだ。
「陛下が怒ってるぞ・・・取り敢えず閑職に廻されて暫く反省するが良い、パイン・アップルトン大尉 ヴァッサー・メローネ大尉 キャンディ・コットンズ大尉の3人を呼べ」
考えの足りない部下を追い払うとキッドに着けていた3人を呼び、程無くして現れた敬礼する3人に椅子を勧めた。
「君達3名を少佐に昇進させ、パイン少佐とヴァッサー少佐には正式にサンティーウェンとハンガーダッシュの艦長に任命する。なにか異論は有るかね?」
「異論は有りませんが疑問が御座います。答えて頂けるので?」
パイン大尉とヴァッサー大尉は降将でキャンディ大尉は昇進・艦長就任したばかり、いくら先の戦乱で活躍したと言っても昇進が早過ぎた。
「君達をミューズ姫の護衛として独立艦隊を組織して貰う・・・そして準備が整い次第スターシップを追跡、追い付き次第ミューズ様の護衛を・・・・・」
「無理です、如何考えても追い付けません!」
「スターシップに喰らい付けなんて正気ですか?」
パイン・ヴァッサー両少佐が呆れた様に言うが、
「そんなのは解っておる!だが国としても何もせん訳にも・・・ゲフンゲフンそうでは無い、私は追い付いたらと言ったのだ。追い付いたら追いて行けと言ってる訳じゃ無い」
そう言って今の所 判明してるか推測された、スターシップとキッド達のデータをモニターに表示・・・その情報の殆どがキッドやミューズのパーソナルデータだった。
「キッドは言うに及ばずミューズ様も甚だ生粋のトラブルメーカー、その2人が同じ船に乗って旅をする・・・何もトラブルを起こさないと思うか?」
「少なくとも計算するなら和では収まりません・・・最低でも積いえ二乗に成る筈、トラブルの種が2人も乗ってるんだから当然でしょうね」
アヴァ元帥の溜息混じりの問いに冗談交じりで答えるパイン少佐だった。
「その報告と後始末が君たちの任務・・・幾らキッド君達でもトラブルを起きたら即座に片付けられはせん、アイツ等がトラブルの元を蹂躙してる間に追い付いて静観するか一緒に暴れるかは任せよう。その後に我々が事態の収束を測れる様にフォローして貰いたい」
「キッドさん達に私達のフォローなんか必要でしょうか?」
面白くも無さそうにアヴァ元帥は鼻を鳴らす。
「だから奴等のフォローじゃ無い、後始末をする私達のフォローをしてくれと言ってるんだ・・・現実では正義の味方が暴れた後、創作物の様に綺麗に片付く筈が無い!せめて私達が滞り無く後付け出来る様に下地を整えて欲しいのだ」
正直言って・・・新しく昇進した少佐3人は呆れた眼で、自分達の一番高い場所に居る上官を見ていた。
「そんな目で見るなっ、仕方無いだろう!アイツ等が暴れた後が平和で静かな土地に成ってると思うか?絶対に逆だ・・・その場は引っ掻き回されて大混乱に・・・・・」
「とアヴァ元帥が仰ってたので自重する様キッド君に注意を・・・・・」
途端に元帥の貌から血の気が引いた。
「止めんか冗談じゃ無い!絶対そんな事を言うんじゃ無いぞ・・・後でどんな陰湿な仕返しされるか判ったモノじゃ無い、年寄りに元気な少年の遊び相手をさせるんじゃ無い」
「でも元帥も楽しそうでしたが?」
言って後悔するキャンディ少佐だった。
「ボーナス査定が一段落ちたぞ、これ以上落とされたく無かったら・・・」
「すぐに出港準備を整え、彼等の足取りが判明次第出航します」
3人は調子良く拝命した。
「君達3人の船を旗艦に軽巡洋艦や駆逐艦を数隻付けて3個小分隊を編成させる・・・艦隊を名乗るのには心許無いが腕白小僧とジャジャ馬娘を追い回すには身軽な方が良い、まあ少々大袈裟だろうが姫様込みの逃亡者を追い掛け回すには仕方無い・・・頼んだぞ」
そう言うと3人を執務室から追い出した。
「重巡洋艦のサンティーウェンとハンガーダッシュ、そして戦艦のマリンシールは3隻とも新型のエルミスⅡ級・・・それに同じくエルミス級の軽巡洋艦や駆逐艦を2~3隻づつ加え、更に輸送艦を同行させんのか」
「私の上官が怒ってましたよ、元々ジュリア中佐の指揮下だった私を艦ごと引っこ抜いたから」
そうジュリア中佐は生え抜き部下を新型艦ごと引き抜かれたのだ。
「怒ってるのは多分ポーズだけですよ・・・キャンディ少佐を引っこ抜いた埋め合わせにエルミス級巡洋艦と軽巡洋艦を計15隻をロイヤルフェンサー1に、他にもエルミス級駆逐艦も20隻・・・強か過ぎるほど強かな方ですよね?」
奪われた分はキッチリ回収したらしい。
「そりゃそうよ♪一時的と言ったって私の部下に成った人達、引っこ抜くんだから・・・・・」
後ろから声を掛けられ3人が驚かされた。
「これはジュリア中佐・・・ここには如何して?」
「呼び出された序に一応ポーズだけは元帥に文句を言いに来たんだけど、やっぱり怒ってるポーズだけ見せてるの暴露てるかな♪」
「そりゃ奪われた以上の艦を利子・熨斗紙付きで回収したんだから・・・・・」
そう言うとジュリア中佐は怒った貌をして、
「船は兎も角キャンディも引き抜いたんだから・・・まあ一応キャンディは私の配下の侭、一時的に別動隊って事に成ってるけどね」
そう言うと休憩ラウンジに誘い皆にコーヒーを振舞った。
「でキッド君達の行方は?」
「それが皆目・・・取り敢えず碌な準備も出来て無いようでしたから、近場で補給をすると見て周辺の大きなコロニーを捜索してるのですが・・・・・」
4人で3D表示させた宙域図を覗き込む。
「そりゃキッド君達は子供だけど頭は良い、それもコッチの常識を振り切ってね・・・だから私達には及びも付か無い方法で逃げ様とすると思うんだけど」
「同感です・・・先ず近場のコロニーや補給基地は絶対に現れ無い、特に我が軍の補給基地にはタダで補給出来るとしても確実に現れ無い」
先の公約でキッドとスターシップ一行には、軍が完全なサポートを行う事を明言している。
整備に修理に補給は全てロハでやってくれるが、訪れた途端に惑星ミューズに連絡され足止め工作を喰らう・・・絶対に訪れ無いと断言出来た。
「土地勘がある場所と言ったらファーレン、でもコネは無いから確実に捕まるし・・・・・」
「それに2人は子供で目立ち過ぎる・・・かなり首都星から離れ無いとギルドにも顔を出さないと思いますよ、ギルドには陛下の手の者が着いてるでしょうし」
「でも先古代文明人のダーグ氏は目立ち過ぎるから外しても、スターシップには成人男性が2人同行してますから・・・もっとも調査員もソコは考えて追跡してるでしょうけど」
「陛下ったらキッド君を拗ねさせた文官を呼び出して、自ら全員に関節技を掛けて泣かせてたわよ・・・自らの口で招いた災いだからって可哀想に」
そう言ってキッド達が立ち寄りそうな場所を念入りに精査してる。
「とにかく一番まずいのはスターシップが完全な補給をして逃げ出す事です・・・そう成ったら幾らエルミスでも追跡に骨が折れるから、万全の状態で出航させる事だけは何とか阻止しないと・・・・・」
要はマトモに追い掛けっこをしたら敵う筈が無いので、スターシップを追い掛け回し常に補給出来ない様にして完全な状態にさせ無い方針なのだ。
「ただ・・・あの子の場合・・・・・」
「キッド君だけで無く、ミューズ様や艦載AIのアリスですら・・・コッチの思惑には考えが及んでいる筈です」
「その上で・・・あの子が裏をかくとしたら?」
そんな事を考えてた所に、
「大変です中佐っ!」
ジュリア中佐の部下が彼女の元に息を切らせながら駆け付けた!
その数日前・・・
ボク達が行方を眩ました翌日だけど・・・
「お兄ちゃん、今度は宇宙港の展望公園に行こうよ!」
「この港には軍の最新艦が寄港してるんだって!」
「オマエ達は女の子なのに船が好きだな?」
そう言いながらブロンドの少女2人が兄らしい少年の手を両サイドから引っ張っている・・・少女達は長いブロンドをポニーテールとツインテールにし兄の方は短くボブカットに纏めている3人で、展望台に来ると設えられた望遠鏡を覗き込みながら騒いでいた。
「あの三角形の船ってカッコ良いよね・・・・・」
「あのキャプテン・キッドの船を模した最新艦ナンだって!確かエルミスⅡ級って言ったかな・・・汎用性が高い設計だから戦艦から巡洋艦・駆逐艦まで、色んな規格でエルミス級が造られてるんだって!」
はしゃぎながら望遠鏡を覗き込み、周囲を伺いながら踵を鳴らし合図を送る。
「大丈夫、コッチに注意してる人は周囲に居無い」
「ここから見得る所には整備済みの艦が停泊し補給を・・・一日二日じゃ終わりそうも無いけど、仕掛けるには早い方が良いよね?」
「アリスが管理システムに侵入したって、積み込みが一番込むのは明後日の夕方みたい・・・・・」
もう御分かりだろうがウェッグでショートボブに見せ掛け変装したキッドと髪を金色に染めたミューズ、そしてイリス母娘の3人で公園に遊びに来た一般市民の振りしてロイヤルフェンサー第1艦隊を偵察していた。
そして勿論・・・・・
「手を洗ってらっしゃい、お昼ご飯にしましょ♪」
「「「ハ~イ♪」」」
芝生の上でシートを広げお弁当を並べるのは眼鏡をして知的な女性に扮したアイギスさん、彼女に言われてボク達3人は水場に手を洗いに行く・・・こう言うのはコッチの世界でも変わら無い光景らしく其処彼処で家族連れがお弁当を広げていた。
手を洗って来た3人がアイギスの作って来てくれたサンドイッチを主体にした弁当にパク付き、その美味しさに表情を緩めるがボクとしてはオニギリが欲しい。
幸いジュリアさんの母上マリアさんに種籾を渡したから、程無くして量産し収穫出来たら廻して貰える手筈に成っている・・・地球から持って来た米は尽きてたのだ。
「でも本当に計画通り行くかしら?」
「行か無くても次善策・代案は3部まで練り上げて有る・・・けど多分上手く行くと思う、完全な状態で補給も整備も終えてからダッシュで首都星から離脱出来る様に♪」
「お兄ちゃん・・・貌が悪人だよ」
変装中なのでボクの事を「お兄ちゃん」と呼んでるミューズ、ボク達はアイギスさんも含めて貌がソックリだから親子にしか見得無いだろう。
「まぁ今ヤル事は無いんだし、もっと遊んでから船に戻ろう・・・何か行きたい所でもある?」
お土産は流石に届けて貰う訳に行かないから、直接店舗で購入して自分で運ばなくては成らない。
「特に無いですけど博物館に・・・・・」
「このコロニーの博物館は美術館が併設されてるから一緒に行こう、あと明日と明後日で動物園と水族館にも行って見たい!」
イリスにも可愛らしくオネダリされ、アイギスさんが窘めてるけどミューズとイリスの言う通りに観光する。
そして十分休暇を楽しんで明後日に・・・・・
「この搬入伝票、可笑しく無いか?」
ジュリア中佐の部下でエルミスⅡA級・高速機動巡洋艦クリッパー所属グリン・マッサティー中尉が、チェックしてる伝票の重複個所を発見しチェックする様に部下に命じた。
「別に可笑しくは無いかと思いますが・・・艦体補修や兵装作成の素材、外装塗料や耐光学兵器素材までなんて・・・・・」
「どの艦にも緊急時用に備蓄しとく物じゃ?」
グリン中尉はタブレットを投げ渡しながら、
「その量じゃ精々一隻分、艦隊で一括購入してるのにか?」
「計算間違えて追加補充したのでは?」
そう言う事も確かにあるが・・・・・
「まぁそんなに中尉が気に成るなら再優先で調べて置きますよ、ただ直接問い質さないと纏まら無いので明日か明後日に成ると思いますが・・・・・」
「頼むわ♪」
その翌日・・・・・
「中尉・・・チョッと話が可笑しく成って来ました。どこにも発注者が存在してません」
「流石に、そんな筈は無いだろう?」
「しかも他にも水に日用品や食料そして燃料に武器弾薬に他にも軍需物資、それ等の発注者が解らない注文がロイヤルフェンサー第1艦隊名で注文されており・・・第78番ハンガーへ持ち込まれてる様です」
「どこかのバカが横流ししてるんじゃ無いだろな?」
皆が顔を見合わせて・・・・・
「憲兵隊に連絡しろ・・・それにヒマしてる海兵も第2種白兵戦武装で、準備が整い次第78番ハンガーへ殴り込みをかける!」
そう言って自分の銃を手に取りながら・・・・・
「でも逃げられるんだろ~な~~~っ、こんな非常識な事をやらかすのは多分アイツだし・・・それと司令官に緊急連絡を・・・・・」
数分後・・・グリン中尉の懸念は的中する。
「大体さぁ・・・艦一隻が誰にも見咎められる事無く、コロニーの中から出航するなんて出来る筈が無いだろ?」
ファルデウス帝国首都星❝ミューズ❞の衛星軌道上に浮かぶ第一ステーションコロニー、その中の軍港にある第78番ハンガーの中から出港準備を整えながらポップ・インシャグワー少佐が言った。
「港の中を牽引するだけなら兎も角ね・・・・・」
その助手をしながらイメンケ・ダビド・ダーウィッシュが相槌を打つ。
「大将・・・物資は全て積み込んだけど、ここで整理してる時間は無さそうだ!ハンガーブロックの入り口に憲兵隊が集まり出したぜ・・・・・」
「流石ジュリアさんの所の部下だな・・・散々偽装したのに納入経路から暴露たかな?少し手荒な出港に成るから、ジェイナス婆ちゃんにイリスとアイギスさんはリビングルームへ!」
「アイアイサー」
と言ってモニターの一部に敬礼するイリスの姿が映り、その可愛らしさに皆でホッコリする。
「奴等が来る前に出港するから、ポップさんとイメンケさんもブリッジに・・・イメンケさん領収書は?」
「ちゃんと入口に張って来たよ♪」
彼等がブリッジに来るのを待つ。
「しかし彼等も思わなかっただろうな・・・逃げたと見せ掛けてステーションコロニーの中に残り、ロイヤルフェンサー1の艦隊の中に紛れ込んで隠れてるなんて」
「それもロイヤルフェンサー1の受注に偽装して物資を搬入させてる何てね♪」
ダーグとミューズが楽しそうに言ってる。
「お待たせ・・・そこまで憲兵隊が押し寄せてる」
「中に入られたら出航出来無いよ、憲兵隊を殺す気は無いんだろ?」
イメンケさんとポップさんがブリッジに駆け込んで来て言った。
憲兵隊がハンガーに入った状態で出航すれば、背後にいた人は黒焦げだし内圧で外に吸い出される人も出る・・・そもそも宇宙服を装備して無ければ数秒で御陀仏だ!
「もう与圧は抜いてある・・・自分達で開けたら自殺だし、今から気圧を充填する時間的余裕は無いさ。ホラもうゲートが開くし・・・・・」
目の前で縦横500mは有る重厚な外部ハッチが完全に開いた。
「首都星ミューズ第一ステーションコロニーへ、これよりスターシップは出港する・・・底意地の悪い帝国文官の所為で余裕が無いんだ、許可してくれ無いと・・・・・」
「犯罪者でも無い限り当方に出港を禁じる権限は無いですよ、だから絶対にコロニーの設備は壊さないで下さいよ・・・フリじゃ無いですからね!」
「了解・・・スターシップ、微速前進!」
そしてコロニーと十分な距離を取ってからスターシップは最大船速で加速し始める。
「言わんこっちゃ無い・・・アヴァ叔父様いえアヴァ元帥の部下も、キッド君を煽り捲るから・・・・・」
艦隊司令官ジュリア・バーカンディが溜息交じりで呟く。
「司令ハンガーの扉に、この封筒が・・・・・」
部下のグリン中尉に渡された封筒の中には・・・・・・
『受領書・・・予てからの約定通りスターシップの補給は帝国宇宙軍にツケさせて頂きます、スターシップ艦長キャプテン・キッドことセイ・ヤフネ♪』
「あの子ったら・・・」
封筒の中に有った便箋を握り締めてジュリアが呟く・・・・・
「補給と言うより強盗だよな?やり方が・・・・・」
「しっ!」
グリンの呟きをジュリア中佐の副官ミントが止め様と、しかし・・・・・
「あ~らグリン君ったら、我が帝国軍が一介の船乗りに強盗されちゃったなんて思ってるんだ?そう言う子は司令部からお説教とペナルティのプレゼントが・・・・・」
「口が過ぎましたっ、勘弁して下さい!」
年下の女上司に頭を下げるが勿論冗談でやっている♪
「しかし参ったわね・・・」
「えぇ・・・懸念してた完璧な体制での逃走を許して仕舞いました」
「こりゃ例の文官どもはアヴァ元帥にも呼び出されても関節技の餌食に・・・・・」
パイン大尉一同も呆れ顔で呟いた。
その頃ボク達は全速力で惑星ミューズから離脱しながら・・・・・
「作業用ドローンを総動員して物資の整理と収納を、取り敢えずミューズから離れて帝国内の外縁部に・・・・・」
「そして私達の冒険が始まる!」
ボクの言葉に冗談を被せたミューズ、そのオシリにオヤツの入ってるケースを投げ付けながら・・・・・
「取り敢えず目的地は爺さまの横やりが入らない僻地のギルド支部だ!」
と言って見た♪




