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お宝見付けたけど邪魔も入る!

 コッチの世界でボクの物語が始まった、あのジェリス艦長達を救った宙域・・・から進む事3日程で時空の境目に到達、こう言う場所は彼方此方(アチコチ)に点在していたが近づく事は滅多に無い。

 上手く利用すればワープの際に燃料や時間の節約それに他の次元に移動する事が出来るのだが、それ等はコチラの世界でも知られて無く時空が歪んでる危険地帯だと認識されてるのだ。

 まあ現在名称も付いて無いので仮に❝ワームホール❞と呼ぶ事にしておく・・・ワープの効率化に利用出来ると言ったらジュリアさんが眼の色を変え、その場で爺さまにAD通信で連絡しボク達に協力要請をして来た。


「技術と情報は提供するからソッチで勝手に検証して実用化してよ!ボクは宝探しに来てるだけなんだから・・・・・」


「オマエは既に安全に運用出来る技術を持ってるんだから、提供するだけじゃ無く確証させる所まで付き合わんか・・・今迄ワシ等はアレを危険な自然現象としか認識して無かったんだぞ!」


 まあ普通はワープの際にワームホールを利用する事は思い付か無いかも知れないけど・・・・・


「ボクが簡単に協力するかと思ったら大間違いだぞ・・・・・」


「果たしてそうかな?ミューズッ!行けっ!」


 行き成りミューズがボクの右手を絡め抱くと、頬にキスをしてから耳元で囁く!


「お兄さま・・・お願いしますから、お爺さまの願いを聞いてあげて・・・・・」


 孫に色仕掛けさせるとは何と卑劣な!


「こ・・・こんな事でボクを篭絡出来ると・・・・・」


「イリスも行くのじゃ!」


 イリスがボクの背中に抱き付いてくる!


「お兄さま、イリスからも御願いします♪」


 このジジイ・・・ボクの弱点を心得てやがる!


「だが色仕掛けと分かって釣られるほど甘くは・・・・・」


「頼んだぞジュリアッ!」


「約束忘れないで下さいよ♪」


 ジュリアさんがボクの左腕に・・・自分の胸を押し付けながら囁いた!


「キッド君、オ・ネ・ガ・イ♪」


「何でも言って下さい♪」


 ハイ、一発で篭絡されました・・・だってジュリアさんったら結構有るんだもん♪


「マダマダ若いなキッドよ♪」


「うるせぇ卑怯者め!」


 自分達で折れなかったボクが一発でジュリアさんに篭絡された理由、それが胸のボリュームに有る事を知ったミューズとイリスが怒ってボクの肩と背中をポカポカと殴って来た。


「イテテ・・・爺ぃ~っ、こう成る所まで織り込み済みの色仕掛けだったか!」


 ミューズとイリスに責められるボクを見て御満悦顔の爺さまに、


「だが甘いな・・・協力するのはボクの気が向いてから、今すぐ協力してやるとは言って無いぞ!」


「オマエも中々卑怯だぞ・・・」


 爺さまに呆れた様に言われる。


「どうせ学者や技術者がコッチに来てから、計測器とか付けた上でワームホールを利用したワープの航法を見せろって言う積りだろ?抑々ここまで来たらボク達にワープする必要も無いんだ・・・・・」


 何日待たされるか判ったモノじゃ無い!


「冷たいのう・・・そんな冷たい事を老人に言うで無い」


「急に甘えるな、拗ねるな気持ち悪い!そもそも自分の孫を害そうとした容疑者の訊問に立ち会って、鉄拳で報復した様な(ジジイ)が弱々しく老人の振りするなよ!」


 ナスティーズ枢機卿が何とか喋れる様に成ったので尋問が始まった・・・勿論だが口を閉ざしたら拷問を使ってでも吐き出させる勢いで、地球と比べたら未来の世界と言え専制国家は犯罪者に厳しい!

 でもソレ以前に自分の利益とエゴの為にイリスを監禁・脅迫し、アイギスさんを拷問どころか凌辱迄して・・・そしてミューズを暗殺し様としたナスティーズを許せるほど、この爺は寛容な人物では無かった。

 コッチの仕入れた情報によると訊問の最中に切れた爺さまは、ナスティーズに鉄拳制裁・・・ソレを周囲の者は止める事も出来ず、いや別に皇帝陛下だから止められ無かったのでは無く数人がかりで羽交い絞めにしても止められ無かったのだ!


「最後は関節技決められて漸く停止したクセに、暴走機関車みたいな(ジイ)さまだよね・・・・・」


「だ・・・誰から聞いた?」


 陛下が小声で聞いて来る。


「アンタに関節技を決めて停止させた人、可哀想に勢いで横っ面に肘入れちゃったんだろ・・・全く子供じゃあるまいしチャンと謝っときなよ」


「ウェルムの奴め口が軽い・・・だがチャンと謝ったぞ」


 するとミューズに、


「為政者たる者が私怨で鉄拳を振るうなど有って成らぬ事、お爺さまは一体何に怒っておられたのですか?」


 ミューズには詳しい話をして無いし、する事も出来無い・・・だから助け舟を出す。


「そりゃオマエにソックリなイリスを脅して言う事を聞かせ様としたうえ、あんなに酷い事をアイギスさんにしたんだから・・・オマエの命だって狙ってたんだしボクも正対したら殴らずには居られないよ!」


「いやオマエ殴るより散々な事をしたからな・・・完全にボロ雑巾の様に成ってて、ナノマシン技術も動員して最先端医療を施した上で訊問迄こんなに時間が掛かったんだぞ?」


 後ろに居たアヴァ元帥も溜息混じりに、


「良く生きていたモノです・・・普通なら完全に死んでるレベルで痛め付けられてました。キッド君には我が国の諜報部へ、拷問技術を御教授して頂きたい・・・・・・」


 拷問の先生なんて肩書が付くの絶対嫌だよ!

 でも何とかミューズを誤魔化せたらしい♪


「とにかく頼む・・・1週間以内にソッチに担当を廻す、だからワームホールを利用したワープの教授を・・・・・」


「まだ1週間も時間を潰させるの?」


 嫌そうな顔をしたボクに、


「いや私達・・・亜空間に入る必要は有ってもワープする予定は無いですよね?」


「先に宝探ししてたって良いんじゃ無いの?1週間も有ったら、上手く行ったらキッド君の方舟回収出来るんじゃ・・・・・」


 そりゃ宝探しだけならね・・・・・




 亜空間に侵入してから亜空間内で行動出来る長距離探査用ドローンを何機か飛ばし、亜空間中の探索・調査を行わせる・・・探してるのは方舟だけでは無い。


「探索範囲は比較的狭い・・・現在地点を起点に侵入方向は逆に、範囲は円錐形に広げてって・・・・・」


 ミューズやアリスと相談しながら決める。

 ジュリアさんは亜空間の外で待機中、そもそも彼女達の仕事は方舟が見付かったら警護し安全にファルデウスに移送する事だ。


「亜空間から脱出し平常空間に戻る為に最大限に制動中、だから()れほど遠くまで飛ばされてる可能性は無いと思うのですが・・・お兄さま如何か致しましたか?」


 ぼ~っとしてたらミューズに引き戻された。


「いや地球への帰り道を、残ってるデータや方舟の飛ばされ方から逆算出来ないかなって考えてたんだ。まぁ無理だよね・・・・・」


 一応スターシップには電磁場嵐にも対処出来るデータバンクを搭載して有るが、そこには❝彼❞から託された英知を補完するので容量一杯だったのだ。

 だからコチラの世界に来るまでの航海記録は航行・座標データを含めて全てが簡易記憶領域に、そしてソレ等は失われ・・・つまり地球のある世界に帰る道が完全に判ら無い。

 有るのは亜空間を突破しコチラの平常空間に出て、そしてミューズが自分をアリスだと思い込んで航行を始めた時からのデータのみなのだ。


「私も電磁場嵐に有った事すら覚えてませんでしたから、亜空間からの脱出方向もデータもスタート時の状況から逆算した位で・・・・・」


「その情報が間違って無いと良いんだけど・・・・・」


 ミューズを責めてる訳じゃ無く、情報が違ってる・狂ってる可能性は大いに有るのだ。




 今日の探索は終わり通常空間に出てジュリアさんの艦隊と合流、クリッパーで点心パーティーを開きながら情報を交換した・・・何故か帰った筈のジェリス艦長が一緒に地球産の料理に舌鼓を打ってる!


「亜空間内には明日から、私かジュリアが選抜されたメンバーと一緒に同行させて欲しい」


 中で先古代文明の軍事力それもA級市民側のモノと交戦する可能性を考慮しての事らしい。


「悪いけど基本残す積りは無いよ、それ所か不味い部分が有ったら欠片も残さず焼き尽くす積りだ・・・・・」


「こちらも軍事利用する気は無いから安心してくれ♪ただ情報だけは君が管理を・・・それに不味い部分を焼き尽くした後で残ってる物が有るなら、それは貴重な先古代文明の遺産だから出来るなら残して貰いたい」


 そう言う考えも有るかと思いつつ、そして参加する気が満々のミューズに向かって・・・・・


「ノーダー戦なら参戦を許す・・・けど白兵戦に参加し様としたら、お尻が林檎みたいに赤く成るからね!」


「わ・・・解ってますよぅ」


 さて・・・今後の調査が如何成るか判ら無い、目的が何度目の潜航で見付かるか全く判らない。

 そもそも第一日目に見付かる可能性だってあるのだから先に行った方が有利、と言う事でジュリアさんとジェリス艦長が鬼気迫るジャンケン合戦を開始した。




 ジャンケンに勝ったのはジェリス艦長で亜空間内にラグナレクを含む3隻で同行・・・もっとも今回彼の率いるロイヤルフェンサー2は10隻しか来ていなかった。


「護送の警護はジュリアに任せれば良いし、私は亜空間内に同行する交換要員でしか無いからね・・・・・」


 そう言ってボディーアーマーを着けながら装備を装着して行く・・・そう彼等にとっては第1回目の潜航で方舟を発見して仕舞ったのだ・・・悔しがるジュリアさんの顔が眼に浮かぶ♪

 ただ問題が有って銀の方舟に覆いかぶさる様に赤茶色いA級市民側の戦艦がくっ付いている、如何やらボク達が切り離した後に接触しドッキングして仕舞ったらしい。


「あれがボク達に電磁場嵐を浴びせて来た奴か・・・物資を強奪する積り何だろうけど、中にゾンビ兵器とか溢れてたら嫌だぞ!」


「そんな事を言って無いで早く乗り込みましょうよキッドさん、中にある遺伝子遺産を汚染されたら眼も当てられないじゃ無いですか!」


 必死に訴えるココさん・・・ナンでも地球とC4895の二つの惑星、その遺伝子を無事に持ち帰ったら凄いボーナスが出るらしい!


「そんなコト言ったって今更焦っても仕方無いでしょ?さてと・・・当初の予定通りミューズはスターシップを操縦し周辺と敵艦を警戒、何か有ったらノーダーで出撃して貰う。ボクとダーグとイメンケさん、それにジェリスさん所の選抜隊員は方舟とA級市民側の戦艦にドッキングして中の捜査は!そしてジェイナス婆ちゃん達はミューズのサポートを・・・・・」


 決めて有った配置(ポジション)を確認する。


「さてと・・・出て来るのは鬼か蛇か?」




 艦での戦闘は今回すべてミューズに任せる積りで、ボクはエクセリオンに乗り込むとラグナレクの突撃艇の上部に乗り上がった。


「殿下が動いた様だ・・・・・」


 赤茶色い戦艦を相手にスターシップが近付いて行くとスグに砲火が交わされ戦端が開かれた・・・赤茶色い色は暗い宇宙空間では視認性が悪く良い迷彩効果をしてる、でも赤錆を連想させるので如何しても幽霊船とか廃船に見得て仕舞うのだ。


「本当はスターシップで正面からぶっ潰したかったんだけど、電磁場嵐を発生させる兵器のデータは奪取しときたい・・・と言う事で中に潜入するのはボク達が・・・・・」


 ボクのエクセリオンとダーグとロイヤルフェンサー1のノーダーパイロット2名が乗り込んだカブリヌス・・・計4機で強襲突撃艇を警護しながら廻り込んで接近する。

 当然気付かれてて攻撃が来るけど突撃艇の火砲やノーダーの重火器で次々と黙らせてく、奴は方舟を抱き込む様に接舷してるので狙い易いと言えば狙い易い、だが逆に出力を誤ると敵艦を貫いて方舟まで被害が及ぶ。


「ここまで確実に方舟を捕獲してる様子から察するに・・・・・」


 ダーグが不快そうに呟く。


「積んでるDNA遺伝子ベースや卵子に精子、それに脂質や蛋白質が欲しいんだろうね・・・つまり」


「細菌兵器の培養用か?」


 ラグナレクのジェリスさんが通信越しに言った。


「それと有機AIに・・・そんなモンに活用されて堪るかっ!幸い十分以上に丈夫なコンテナに入ってるし、無理矢理開けたら自爆する様に()()()()だ・・・開けられる前に叩き潰すよ!」


 ボク達ノーダー部隊は突撃艇から飛び立ち先行して敵艦に取り付いた!




 敵に物資を奪われて活用される位なら使えない様にする・・・その位は先史時代から行われてる常套手段だろうし、そう言う風に見得る仕掛けをボクの持って来たコンテナにもしてあった。

 まあA級市民が滅んだ事も知ってたしコッチ来て戦争巻き込まれると予想してた訳じゃ無いけどさ、それでも海賊や権力者から持ち物が狙われる事は有り得ると思っていたからだ。


 そんな事を思い出しながら艦隊表面の機銃や敵機さらに砲台を黙らせ、ボク達は内部に突入出来そうな場所を探している・・・側面から銃撃が有りポッド的な敵機が溢れ出して来る。

 ボク達は遮蔽物に身を隠しながら撃ち返す・・・ファルデウスやヴァイラシアンのよりは出来が良いけど、それでもノーダーが出て来ると思ったボクはガッカリだ。


「リザーダーいや先古代文明人は滅亡したんだ。当然A級市民側も・・・だからノーダーのパイロット何て居る筈が無いだろう?」


「いやソコはソレでオート化されたノーダーが居るんじゃ無いかと・・・・・」


 正直期待してた部分が有るのは確かだ。


「ノーダーは人が操縦しなくては真価を発揮出来無い、それならポッドの方が自立戦闘に特化しただけ高精度の戦いを熟せる」


「確かにファルデウスやヴァイラシアンのポッドよりは手応えあるけどね・・・・・っと!」


 ミサイルが飛んで来たので遮蔽物から飛び出すと、そのまま敵機に対して機銃掃射・・・数体のポッドを穴だらけにする!


「人型をしてるとは言い難いけど、今まで見たポッドよりは人に近い形状をしてる・・・腕の代わりに直接火器をマウントしてる所と膝関節が逆関節なのを覗けばだけどね!」


 こんなポッドがファルデウスにも有ったけど、もう一寸アッチはダチョウに近い形だったな。


「あのポッドが出て来たハッチから・・・・・」


「侵入機に対する防御はしてるでしょう・・・それより!」


 ボクはミューズに指示して敵艦の外壁にブラスターで射撃して貰う・・・固定砲台を吹き飛ばした上で風穴が開き、ノーダーでも十分通れる大穴が開口した。


「さあ入りましょう♪」


「キッドって意外と脳筋だよな?腹黒って陰湿な策略家系ってイメージだったんだけど・・・・・」


「そう言えば基本的に作戦も力業仕様だし・・・・・」


 そう言う二人の言葉が途切れた。


「キッドさん冗談ですっ、だからビームキャノン充電しないで!」


「冗談ですっ、冗談ですってばぁ!もうキッドさんってホント冗談が解ら無・・・・・」


「良いからトットと中に入れっ!ホントに撃つよ?」


 銃口を光らせるボクのエクセリオンから逃げる様に2機のカブリヌスが中に入って行く。


「いやキッドも暖気充電(セミチャージ)だろうけど、ホントに充電(チャージ)するなよ!万が一の事が有ったら・・・・・」


「銃口にルミペイントしてるだけ何だけどな・・・通電したら光るタイプの♪」


 ダーグが溜息を吐きながら額に手をやった。


「そんな悪戯用に態々塗装したのか?」


「2~3発打つと剥がれ切っちゃうのが難点なんだよね・・・ダーグ何か良い塗料が無いかな?」


 ダーグのカブリヌスが中に入りながらボクに通信を送って来る。


「そんな悪戯に協力するのは嫌だぞ!」




 中に入るとスグに銃撃戦が始まった・・・ポッドの射出ハッチには中から侵入者を狙う砲塔が有った、内部に火砲を向けようと旋回してる間にボクも応援でリニアガンを発射する。


「ポッド射出カタパルトの横に穴を開けたんだ・・・じゃあこの内側は格納庫と・・・・・」


 数台のポッドを叩き落とし奥へ進むとカタパルトの保護壁らしい壁の向こうを覗き、ボクの背筋にゾゾッ気が立った・・・向こうに見覚えの有るシルエットが!

 とっさにボクはエクセリオンが持ってる携帯レールガン❝リニアガン❞を向け発砲し様と、だけどその銃身をダーグが下に押さえ付けて発砲を封じながら言った。


「大丈夫だ起動して無い、そもそも対艦戦闘用のノーダーだ・・・艦に取り付いた段階なら戦闘に出たかも知れないが、艦内に潜入して来たノーダーと戦う様には出来て無い」


 確かに自陣営の艦の中で戦うには出来て無いだろう・・・なんせ敵艦に取り付いて、中にゾンビ化ウイルスを注入するノーダーなのだから!


「それでも不気味ですね・・・ゾンビ化ウイルスは装備してるのですか?」


 ダーグがカブリヌスの端末ソケットを操作し、この艦の管理コンソールに接続・・・内部までスキャン出来無かったけど12機いる❝バーテラノト❞の装備品をチェックする。


「この12体には装備して無いな・・・おそらく培養カプセルが何処かにあるだろう、培養ベースから分けた時から劣化が始まるからな!」


 そう言って端末に接続し艦内の状況を精査して行く・・・ボクもダーグと手分けして情報漁りを、とんでもない情報を見付けてミューズに連絡する。


「ミューズッ!この艦から離れて浮遊してるカプセル、中にゾンビが詰まってるから全て撃墜して」


「なるほど・・・空間相異シールドを展開しないで亜空間に浮かせといたら、時間が停止して幾らでも保存出来ますからね。了解しました全て撃墜しますが・・・多過ぎて2~3個はドッキングしちゃうかも?」


「それは想定内だから!」


 この艦の周りに48機のカプセルが浮遊してて、中にはゾンビが詰まっているらしい・・・しかしソレを自艦に引き込むかね?


「この艦にはシールドが張られてるから内部で時間は流れている、時間が止まってたら戦闘活動は出来無いからね・・・お蔭でバーテラノトは劣化が進んでボロボロ、改めて破壊する必要は無いよ」


「でもA級市民側の戦艦でしょ、気分的に破壊したくは成らないの?」


 そんな嫌悪感だけで破壊する様な、感情に流されるタイプには見得無いけどね♪


「A級市民が一人でも生きてたらソイツには手を出しただろう、でもA級市民も死に絶えて残ってる遺物の艦を破壊して如何成るんだ?」


 そう言ってダーグは一番近い位置にいたバーテラノトに軽く裏拳を入れる。

 勿論カブリヌスでだよ・・・するとバーテラノトの劣化は予想以上に激しかったらしく、その裏拳一発で関節が折れて仕舞った!


「えっ?」


「嘘・・・」


「ちょっ、冗談・・・・・」


 バーテラノトには10本も足が有るから1本位と思ったけど1本が圧し折れると隣のも、そして連鎖的に次々と折れて行き最終的には立ってられなく成ると隣のバーテラノトの倒れ込む・・・そして後はドミノ倒しだった。


「言っとくが今のは事故だ・・・意図的にやった訳では無い」


「うんボクもダーグが、そう言うタイプじゃ無い事くらい知ってるけどさ・・・この状況だと流石に説得力と言う物が皆無だと思うんだ」


 2列に成って並んでいたバーテラノトは1列全てドミノ倒しに巻き込まれた。


「お兄さまゴメンなさい、全部行けるかと思ったけど1基がドッキングに成功しちゃった!」


「OK気にしないで・・・」


 ボクが通信を切ると、


「と言う事は・・・そろそろゾンビが時間の流れを取り戻して動き出す」


「来るよ!」


 コンテナカプセルは長さ250メートル近くあり、中には2000体以上のゾンビが収納されている・・・案の定ボク達の方に誘導されてゾンビの大軍が押し寄せて来る。

 けど艦内格納庫のゲートに押し寄せてくるゾンビの前に2機のカブリヌスが進み出ると、装備して有った火炎放射器で瞬く間にソレもウェルダンで焼き上げる。


「食欲が湧かないバーベキューだ・・・・・」


「やめろ冗談でも・・・今晩の晩飯が入らなくなるだろ!」


 そうダーグを揶揄いながら焼き続けること数分・・・接近する前に焼いて貰ったので確認出来無かったけど、おそらく先古代文明人のゾンビを焼き尽くす。

 そして奥に進むとインナーゲートに辿り着き、そこからノーダーは入ら無いので徒歩で移動する事に成る。

 ここまで入って来るには大き過ぎる突撃艇の乗員が到着するのを待って、合流したボク達は白兵戦仕様の装備に成って突入を開始した。


「気を付けろよ・・・まだゾンビが残ってるかも知れない?」


「その前に小型のポッドとか出て来ないかな?」


 幾ら亜空間の中だからって敵に乗り込まれた時に備え白兵戦の用意位してると思うけど・・・・・


「空間相異シールドは限定した狭い範囲で開くには技術的に無理がある・・・必然的に艦ごと覆うしか無い、だから亜空間の中で待ち伏せしてる館内にはポッドを配置して置く訳には行かないんだ」


「劣化するからって事?」


 まあ放置されたのが実際に数千万とか数億とか下手したらソレ以上の時間だったから、実際バーテラノトはボロボロで幽霊団地に居た奴よりマシかなって程度でしか無かった。


「艦自体の補修だって必要だしな・・・・・」


「それなら空間相異シールドを張らないで時間を停止させれば劣化しないのでは?極小さい密閉した区画内だけシールドで覆って、それが敵艦や侵入を探知したら艦全体にシールドを張り直すとか?」


「無理なんじゃ無い?」


 イメンケさんの疑問にはボクが答えた。


「空間相異シールドって接触して無くとも、隣接する物体も一緒に包んでしまうから艦の一部にだけって訳には行かないと思う。それに時間が停止してる大型艦にシールド展開するなら相応の出力を持ったジェネレータ付きの別艦が必要に成る」


「そうなったら止まってる方から攻撃して先に潰すか、逆に動いてる感に集中砲火を喰らわすか・・・とにかく戦争中に()られ易い状況にしとくって法は無いんだよ」


 何時も待ち受けてる方が先に発見するとは限らない、コイツに電磁場嵐を喰らったのはボク達が敵対者(コイツ)の存在を知らなかったからに過ぎない!


「でも動いて無い・・・つまり時間を止めたコンテナは外に幾つも放り出して有ったんですよね?」


「それをコッチの艦から作業艇でも飛ばして引っ張って来たんだ・・・時間が止まってると言う事は、コッチから何を指示したって動かせる訳じゃ無い。文字通り時間が止まってるんだから指示したって動く訳じゃ無いんだ」


 まあ1機を覗いて全てミューズが撃墜したけどね♪


「実際に作業艇の行き先を追ってコンテナを見付けてったのです・・・お兄さま達の居る艦に接続して同じシールド内に取り込まれると、暫くして時間も動き出す様ですね」


「そのゾンビも焼却したし、後は老朽化した艦内の警備機構だけで・・・・・」


「チョッと待って下さい!」


 と言うと・・・ミューズが声を張り上げる。


「私が撃墜し切れ無かったコンテナからゾンビの大軍が溢れ出たでしょ、そのコンテナの中は本当にゾンビ兵器だけだったんですか?」


 だからゾンビしか襲い掛かって来なかったんじゃない?


「コンテナは長さ250m弱ですが断面は縦横が50m、容積は62万5千㎥も有りますがゾンビ兵は人と体積は変わりません・・・一人80㎥として16万㎥しか必要じゃありません」


 まあゾンビは形も大きさもバラバラだろうから容積16万㎥で収まる筈が無い、それに密封して置く設備くらいは必要だろうけど・・・・・


「それでも残りの46万5千㎥が埋められる訳じゃ無いよね?」


 ジェリスさんが天井を仰ぎながら言ったけど、そう言えばコンテナに2千体のゾンビと言う情報はダーグが端末から引っ張り出した。


「スマン・・・皆でゾンビゾンビと騒いでたから、他の積み荷が有るかどうかは検索して無かった」


 そう言ってダーグは辺りを見渡し端末ターミナルを見付けると起動させ、そしてコンテナのデータを引っ張り出すと偶然どの様にゾンビが積まれてたのか画像で表示される。


「こいつ等ゾンビで幸運だったかも・・・こんな積まれ方を生きてる人間の状態でされたら拷問とかのレベルじゃ無い、その身で正に地獄を味わえる」


「イエこの状態じゃ長い間生きてられませんよ・・・・・」


 今回同行してくれたジェリス艦長達のしてるヘルメットには小型カメラや各種センサーが装備されており、それが捉えた映像はスターシップに伝達されててソレを見たミューズが呆れる様に言った。

 そのゾンビの積み方が鮨詰めなんて生易しいモノじゃ無くギュウギュウ詰めにされてたから・・・例えるなら布団圧縮袋にヌイグルミを詰め込んで空気を抜いた様な感じ、ゾンビが相手でも可哀想だと思える位だった!


 ちなみに皆の装備してる軍用のヘルメットやヘッドセットにカメラやセンサーが装備されてるのは母船に情報を送る為だけじゃ無い・・・カメラは暗視カメラや熱探知(サーマル)カメラそれに望遠レンズ・顕微鏡兼ねてるし、センサーはレーダーやスキャナー・探知機等の機能が盛り沢山だ!

 それ等の情報は母船に送られるだけで無く皆の装備してるヘルメットのシールドや、軍用ヘッドセットのバイザー内側に表示される様に成ってる・・・ボクのは少々いや可成りチートでカチューシャに内蔵され脳内に作用して視界の隅に表示されるけどねw


「これだな・・・」


 ハッキングして艦内の監視カメラの映像を拾って、この艦とコンテナの接続口が映し出し内部状況をサーチする。


「お兄さま大変っ!」


 ミューズが声を上げたのは接続口から小型の対人戦闘ポッドが大量に溢れ出して来たからだ!


「ゾンビは時間を同調させたらスグ動けたけど、その後ポッドは充電が必要だったみたいですね・・・ポッドの数はゾンビ兵の倍以上で約4800機です。頑張って下さいね♪」


他人事(ヒトゴト)だと思ってオマエ冷静だな!」


 暢気(ノンキ)なアリスの応援に何か殺意が湧いた。

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