また嫌な相手と戦う事に成りそうだ・・・・・
3往復目にして元々ジェリス艦長の目的だった遺体と敵艦残骸の回収は終わった・・・正直ボク達が手を拱いてる間に、もう一回くらい襲撃有るかと思ったけど流石に万単位の艦隊をチョクチョク敵国に送り込めなかったか?
「いやファルデウス帝国内だって、馬鹿なコト考える奴等は居ると思からね!」
「別にキッド君の居た世界から持って来た物で無くても、新しい惑星の生態系遺伝子セット2つ分・・・その価値は計り知れないから!」
ボクの安息の日々は遠い。
「取り敢えず補給艦隊が来るから合流して補給を受けたら出港ね?一応の目的宙域は・・・ここから218万4千ベッセル、ワープで8時間と標準巡行で3日と言う所かしら?」
そう言うジュリアさんは、スターシップに来て地球産スイーツでオヤツしに来てる♪
「一応はね・・・お宝は亜空間の中だろうからソコから調査しないと、正確な場所まで弾き出せないだろうからね。ミューズは自分が❝アリス❞だと思い込んでた時からチャンと航海記録は取って有るんだろ?」
「それは確りと・・・でも私の方も破損が酷くて・・・・・」
あの頃はミューズは医療カプセルの中だったから外に居たボクよりはダメージ無かったみたいだけど、それでもタダでさえ壊れてた身体を大分痛め付けられてた筈・・・それなりに情報の錯綜も有るかも知れないから少し時系列を整理してみるかな?
彼の元でミューズの応急手当てをし屑鉄と成ったエルミスⅠからスターシップを建造した・・・そしてボクとミューズはファルデウスに向かって旅立つ前に地球に寄り、数少ないボクの友人達と別れの挨拶をしてファルデウスに向かって旅立った。
そして地球の有った世界から亜空間を通ってファルデウスの有る❝この世界❞に亜空間跳躍する・・・ちなみに同じ世界に離れて存在するA地点とB地点を亜空間の表層を滑って移動するのがワープ、亜空間を貫いて別の世界に移動するのがジャンプなんだそうだ!
亜空間の中場までジャンプした所で電磁波嵐に遭遇、勢い余って電磁場嵐に頭から突っ込んだ・・・生身のボクが最初にKOされ、医療カプセル内からスターシップの管理をしてたミューズは比較的軽症だったけど医療カプセルの中にも電磁場の影響が出始めた。
スターシップも外宇宙航行船、自然現象や人為的攻撃に対する防御は勿論してた・・・だけど電磁場嵐の威力が強過ぎて大分派手にヤラレ保護モードに成っちゃったんだよね!
もちろん外から電磁場浴びたって艦内が電子レンジに成る事は無い、そんな事に成ったらボクとミューズはチョッとホラーかスプラッター映画的な状況に成っちゃう!
ただシステムに過電流を喰らってボクとミューズの記憶が失われた・・・ボクもミューズも同じインターフェースでスターシップに接続されてたからね、同時に記憶喪失に成った事は別にオカシイ事じゃ無い。
そしてソレが亜空間から出る直前まで続いて・・・何とかミューズの操作で亜空間からは脱出出来たけど、その時に方舟も捥ぎ取られたのはミューズも確認してたそうだ。
で亜空間から脱出した時にはボクは既に医療カプセルの中、治療が終わったら其の侭コールドスリープに入れられた。
一方ミューズは船体の修理を済ませ航海予定表に従い進路をファルデウスに・・・その時には記憶を失っており、インターフェースでスターシップの管理システムに繋がってたから自分をスターシップの有機AIだと思い込んでた。
「イヤちょっと待て・・・少なくとも私は聞いた事が無いぞ、通常空間でなら兎も角 亜空間で電磁場嵐が起きる何て?」
「そうなの?」
首を捻るダーグ、そう言えば彼にはボク達が記憶を失う経緯の話はして無かった。
「電磁場嵐とは宇宙空間に残った微細な粒子が太陽風等によって・・・と言っても私も原理を解ってる訳じゃ無い、ただ亜空間内に物質どころか時間の流れさえ存在しない・・・電磁場嵐が起きる原因さえない筈だ?」
「でも私達は実際に遭遇しました・・・スターシップのAIである、当時のアリスも そう結論付けましたけど?」
「アリス」
「ボイジログを表示します」
ダーグがアリスに言って航海記録を表示させ、そこに有った記録の中には確かに亜空間内で電磁場嵐に遭遇った事が記載されていた。
「ねっ?」
「確かに・・・」
少なくともダーグにとって聞いた事の無い話らしく、亜空間で電磁場嵐に会うのは先古代文明でも知られて無かった。
抑々あの一件以来ボク達も電磁場嵐なんて通常空間でも遭遇った事が無い、それどころかファルデウス帝国籍の船が電磁場嵐を至近距離で確認した情報すら無かくAD望遠鏡で遥か彼方で確認したって程度の情報しかない。
それでも電磁波が吹き荒れる危険な代物だと言う事は知られており、小惑星とかが丸焼きにされた程度の記録は残っていた。
「抑々そんな危険な現象は発生の兆しが見えただけで退避する、それに電磁波嵐と言うモノ自体が非常に稀な自然現象なんだ・・・この話を聞いた時にジェリスやジュリアは変だと思わ無かったのか?」
「そんなコト言っても私達の技術では亜空間の表層を滑ってワープする位しか出来無いわよ?突破した人なんて居無いんだもの、何が正常で何が異常なのか判ら無いし・・・・・」
「亜空間を突破して別次元に行く何て、ミューズ様の話を聞くまで出来るなんて思って無かったんだ・・・今ファルデウスの学会は生簀に酒樽引っ繰り返した様な大騒ぎだよ」
それはさぞ大騒ぎに成ってるだろう。
「じゃあボク達が遭遇したのも天文学的数値での確立の珍事だったのか?」
「いや起きる訳が無いんだ・・・亜空間内で電磁場嵐は絶対に発生しない、有り得ないんだよ・・・・・」
ボクもファルデウスの人達も知ら無かったけど抑々の話し亜空間内には時間の流れが無く、あらゆる粒子や原子は亜空間の中では運動する事が出来無い・・・したがって電磁波が原子に纏わり付き集結して嵐の様な現象を起こせないのだそうだ。
「キッド、少しイヤな予感がする・・・ワイズマンズ・ライブラリィを閲覧する許可をくれ」
「OK、アリス聞こえてるな?セージとしてワイズマンズ・ライブラリィの閲覧許可を、24時間ダーグに与える」
ダーグがコクピットに向かうとジェイナス婆ちゃんとポップさんが、
「私達も・・・」
「チョッとで良いから・・・」
「駄目っ!」
この2人はロストテクノロジーで高性能艦を造りたいがあまり、ボクやアリスが制限してる技術を勝手に持ち出そうとした・・・抑々2人が居なければ面倒な閲覧管理をする必要が無かったのだ!
「いい加減にしないと本当に退船させるよ!イエローカードは既に出てるんだ、もう一枚出させたら本当に退場だからね?」
「アウト迄には3球有るし、そこはストライクにしといてよ・・・・・」
か細い声でジェイナス婆ちゃんが言ったけど、
「弱々しく老人の振りしたって駄目!ビール片手に皇帝陛下をオチョくったり、自らノーダー乗り回して戦地に乱入して来るんだから・・・・・」
全く呆れる婆様だ!
「この間はジュリアお姉さまと一緒に、ビールどころかワインをラッパ飲みしながら・・・・・」
「ミュッ・・・ミューズちゃん、その事はココではっ!?」
ミューズを黙らせようとしたジュリアさんの首根っこをジェリス艦長が掴む。
「ラッパ飲みは禁止してたよね?」
「アハハ・・・お父さん、ゴメンして♪」
珍しく小さく成ってるジュリアさん、
「とにかく何か動きが有ったら伝えてくれ、これから私は久し振りに大説教大会だから・・・そうだジュリア、先日の「100万の大軍に囲まれて見たい♪」発言の分も御説教だよ」
「それは私だけじゃ無い、キッド君だって・・・・・」
だが、
「ボクは冗談だったんだけど・・・そもそもボクは軍人じゃ無いし、敵が居れば即撃破するけど基本的には戦闘自体が好きじゃ無いんだ」
その割には手加減無いと思われるかも知れ無い・・・だけど戦争をゲーム感覚で楽しめる神経は持って無い、抑々ゲームならシュミレーションやプログラムで事足りる。
現に地球と違いスターシップやアイアンイーグルそれにアサルト・ノーダーにおける戦闘を、アリスに頼んで3Dでリアルに再現出来るのだ!
「あの地球の名作 戦闘機空戦ゲームを実物と見分けの付かないレベルで再現出来たし♪」
「まあリアルに制限したら爽快感が無くってゲームとして成立しないのは解りますが、それでもあのミサイル積載量は異常過ぎますよ・・・それに最新作は機体数もミッション数もショボいし!」
「そこはボクが改良して上げたじゃ無いか!」
地球から持ち込んだゲームをアリスに改造させた・・・画像が実物・現実風景並みにクリアにしたうえ、機体数やミッション数も大幅に増やした。
と言ってもミッションやストーリーをプロデュースする技能は無いので、旧作・旧シリーズのミッションやストーリーを画像を綺麗にして企画も統一したのだ!
「〇ース〇ン〇ット・・・続編が出るならやりたかった・・・・・」
「如何だろ・・・最新作も難産だったし、地球に居てもアレ以降は続編出て来なかったんじゃ無いかな?それに機体数やミッション数が少ない事に付いても、ネットで大分叩かれてたし・・・・・」
「ダーグ・・・アンタいつの間にゲーマーに、それに地球のニュースも・・・・・・」
「それが解かってる婆ちゃんも同類だよ?」
この船の乗員は漏れなくゲーマーだったりする。
スターシップでは皆が集まってる部屋が4つある・・・先ずは主に戦闘中はコクピット、自動操縦中はコクピットの後ろに設えたリビング、船体や搭載機の設計や製造・改造に関する話をするのに工房、そして銃をいじる時はシューティングレンジだ。
ミューズ達がジュリアさん達と女子トークに花を咲かせてたので、ボクは珍しく一人でショルダーホルスターを装着し愛用のガバメントモデルを差し込んだ。
ガバメントモデルは2丁作って有り片方はロイヤルブルー仕上げ、もう片方は黒いスライドにシルバーのフレームがセクシーなセミカスタムシルバーフレームモデル仕様・・・どちらかと言うと後者がメインで前者は予備用として置いてある。
ボクはセミカスタムの方をショルダーホルスターに差し込んでレンジの射撃位置に立ち「準備OK」と言う、するとアリスが「レディ」と返し・・・ランダムに数秒の時間を置いて向こうにターゲットが跳ね上がる!
ターンッ!ターンッ!
正面に立ち上がったターゲットの頭に2発ぶち込むと、その左右と足元にターゲットが・・・即座に足元のターゲットから順に2発づつ打ち込みマガジンを交換する。
正面のターゲットが倒れて新たなターゲットが4枚、3枚の頭に2発づつマガジン交換して最後の1枚を撃ち抜いた。
暫く構え侭で次のターゲットが出て来無い事を確認し、横にあるサイドテーブルに銃を置こうとした・・・途端にターゲットが2枚立ち上がり、ボクは頭を2枚とも撃ち抜いた。
「ワイズマン・ライブラリーに行ってから・・・性格、悪くなったなオマエ?」
「それはもう敵は何時飛び出してくるか判ら無いですから、実戦形式にして不意を突く様にしてみたんです♪でも私が銃を置いた所を狙う事、良く気が付きましたね?」
ボクが最初から警戒してた様に言われたが、
「いや、ただ常に警戒を・・・・・っ!」
ボクはマガジンに装弾し様と持っていた弾の箱を放り出し、ガバメントモデルを引っ手繰って銃を構え・・・撃た無かった。
「おい、アリスッ!本当に趣味が悪いぞ」
出て来たターゲットにはミューズが印刷されている。
「こう言うケースも有るのです・・・早く敵を撃ち殺す事のみに注力してるなら諫めないとと思い出して見ましたが、チャンとターゲットを確認してから撃ってたとは驚きです」
地球でも警察や軍隊の訓練は、こう言う感じで子供や女性のターゲットを混ぜて誤射をしない為の訓練をしてた筈・・・・・
「アリス・・・この訓練は有効だ、こんな感じで今後も・・・・・」
「さすがキッド様・・・」
途端にミューズをプリントしたターゲットが翻ると別のターゲットが!
ボクは相手を確認すると躊躇無く2発発砲・・・頭皮を掠めて髪型を逆モヒカンにしてやる。
「キッド様・・・一言言わせて下さい、アナタは最低です!」
「そうかな?」
プリントされてたのは陛下の爺さまで普通なら不敬罪で逮捕モノ、そこへ再びターゲットが翻り次に出て来たのはジュリアさんのターゲット!
このレンジは全身像ターゲットなのでボクは喜んで両脚の間を、しかも なるべく高い位置でパンティーを掠める様に撃ち抜いた。
「お兄さまっ、アナタは本当に最低です!」
「キッド君のHっ!」
後ろから背中を引っ叩かれる、うん2人が来てるの解かってて撃ち抜いたよ♪
来たのは二人だけじゃ無くダーグも一緒だった。
何か話したそうな顔をしてるけど口にしない、ボクは怒れる2人の美少女を宥めてリビングに押し返すとレンジにダーグと2人切りに成った。
「助かるよ・・・他の連中に聞かせるのはキッドの判断を聞いてからにしたい」
ファンタジーの世界ならドラゴンと言われる様な風貌の彼が言う・・・彼らリザーダーの表情はボク達の様な霊長類ベースの人類に比べると無症状に感じるが、今日のダーグは可成り疲れている様に感じられた。
「何か有ったのか?」
「何も無かった・・・だから困っている」
如何言う意味じゃ?
「有益は情報は出て来無かった、だから私の経験と憶測で話さざるを得ない・・・チョッとキッドにはキツい話に成るかも」
「って言うと幽霊団地の件かな?」
ボクが精神を削られる様な案件は2件しか思い当たらない・・・一つはゾンビ化してたと言え幼い子供達を始末させられた件、もう一つは銃で撃たれた件だ。
でも撃たれた件に付いてはイメンケさんが敵打ってくれたし、そりゃ頭には来たけど正直ナンも気に成って無い・・・だからボクがキツく思う事と言ったら幽霊団地の件しか無いのだ。
「話を続けても良いかな?」
「あの件の直後は色々とダメージ喰らってたけど、主に精神的にね・・・でも今じゃ乗り越えたと思ってる。ダーグも気にしないで話して良いよ」
気を使ってくれてる様だ。
「助かる・・・キッドとミューズが亜空間内で出会った電磁波嵐についてだが、多分だが自然現象では無いと思う・・・戦略兵器による攻撃だ」
攻撃される覚えは無いんだけど・・・イヤあの当時の話しだよ?
「解かってる・・・私達リザーダーが滅んだのが戦争だったことは知ってるよな?同族の一部による支配階級の成立、それを阻止し様とした反抗勢力との戦いである事を・・・・・」
それは❝彼❞から聞いていた。
「同種族で同じ文明のキッドに言わせれば爬虫類型人類同士の戦いに成るのかな?それでも私達に取って敵であるA級市民側と我々 反抗勢力である自由銀河同盟軍、その装備品や配備品は例外があるモノの明確に差異が有るんだ」
「それはA級市民側と自由銀河同盟に加担した企業の差異とかかな?」
ダーグが笑みを浮かべる・・・そりゃボク達ほど明確に表情が変わら無くても、彼等と付き合いが長く成れば多少は解る様に成る。
「鋭い事だ・・・その通りでアメリカ西海岸から発祥とする企業の様に、敵対する勢力両方に武器を供給する様な真似は中々出来無い。それに一つの企業が独占体制を・・・・・」
「それ物語中の架空の企業だから!それと同名の企業が有るんでアンマリな事を言わないで・・・・・」
ボクのコレクションによる洗脳は大分進んでいるらしい。
「まぁソレは置いといてだな・・・・・」
少しオタク化してる事を恥ずかしがっているらしい。
「A級市民側に協力する企業の中でモターヴァ・フォーと言う会社が有るんだ・・・キッドに馴染む呼び方ならモターヴァ食品かな、元々は発酵食品やら健康食品を扱ってる会社ナンだが」
腹が減ってはって言葉の有る通り食品は立派な軍事物資、それに関して違和感は感じ無いけど・・・・・
「何をトチ狂ったのか軍事産業に転身してな、例のゾンビ化ウイルスを販売した会社なんだ・・・と言うよりゾンビ化ウイルスを発見したから軍事産業に転身したんだろうな」
ろ・・・ロクなモンじゃネェ!
「そこにアノ対艦戦闘用ノーダーを造ったメーカーが合併して・・・・・」
「確か❝バーテラノト❞って言ったよね?」
ちなみにダーグも便宜上ノーダーと呼んでるが、これはボクが作った造語だ・・・本来の呼び名は先古代文明にも有ったそうだが、ボク達霊長類型人類の発声器官で発音出来る言語では無いそうだ。
と言うより当てはまる発音が無いと言っていた・・・別に可笑しな話じゃ無いと思う、発音が当てはまらない音ナンて幾らでも有るから!
例えばキミは銃声を聞いた事が有る?
漫画では銃声に「バン!」とか「ダン!」とか「バウッ!」とか「ズギュン!」とか色々擬音を付けるけど、本物の銃声を一度でも聞いた事が有ればソレがドレもが正確じゃ無い事に気が付く筈だ。
銃声を聞く機会が有るかって?
簡単じゃないか❝Y〇u〇ube❞で聞けば良いんだよ!
そもそも銃声は銃弾の種類だけじゃ無く発砲する銃やアクセサリーに撃つ位置と聞く(もしくは収音してる)位置、それに気温と湿度に厳密に言えば銃の保管状態によっても変わる筈だ。
とにかく漫画の擬音で合ってると思えるモノが無く、またアニメや映画でも「こんな音だったっけ?」と思わされるモノが多かった。
ちなみにボクが出国いや出星?前にバンコクのシューティングレンジで試した限り、一番「Bang」と言う発砲音に近かったのはM1911から発射された45ACP弾だった様に思う。
まぁソレは置いといて・・・・・
「その合併した企業が人為的に電磁波嵐を起こす戦略兵器を開発したと言う話を聞いた事が有る・・・・・」
「実際に使用されたの?」
彼は首を左右に振った。
「イヤ一度も使用したと言う話を聞いた事が無いんだ・・・それどころかA級市民側の捕虜を尋問しても「そんな話を聞いた事も無い」と、ただ・・・・・」
「ただ?」
ダーグは頭の中で何かを整理しながら、
「我々 自由銀河同盟側は別世界に女子供を疎開させる計画を立ててた、それも可成りの大規模にね・・・その疎開先がもしキッドの居た世界だったら?」
「現実にアッチには❝彼❞が来てたんだ・・・別に変な話じゃ無いと思うな」
「それに亜空間を通り抜けて別世界に行くには❝世界の境目❞から亜空間に突入するのが望ましい・・・亜空間の厚さが薄いからね、実は疎開する案は廃案に成って亜空間に卵を補完する計画に成ったんだ。あのサンティアラがそうだ・・・つまり・・・・・」
ダーグが言いたい事が分かった。
「それを知らないA級市民側が❝世界の境目❞に電磁波嵐を起こす兵器を設置、もしくは装備した艦を配備した・・・それはボクでも想像出来るんだけど、それとゾンビ化ウイルスを開発した会社や合併した会社が如何関係して来るの?」
「その会社が開発したんだよ人為的に電磁波嵐を起こす戦略兵器を・・・・・」
ボクは深く溜息を吐くのだった。
「つまり・・・それを調べ様とすると、ボクのトラウマに成ってるかも知れ無いゾンビウイルスと再戦する可能性があると言う事ね?」
「まぁソウ言う事だな」
ボクは天を仰いで溜息を吐き、そして持ってる銃のチェックを続けるのだった。
ボクは銃は好きだけど可成りミーハーなライトマニアだ・・・好きな銃は映画やアニメの影響を受けたモノばかり、実用性より見た目のカッコ良さを優先させてる所も有る。
そもそも実銃を撃った事は何て地球を旅立つ前はたったの一度しか無かった・・・ただボク達が生まれ❝彼❞の居た世界からコッチに来る前、最後に地球に寄った時にデータの収集と実弾射撃を楽しむチャンスが有った。
それこそデータの方はミューズに任せだったけど、国家や企業のサーバーすら抉じ開けて中身を覗き情報収集した・・・もっとも役に立ちそうな物は少なく抑々技術的にはコッチの方が大分進んでて、ミューズがエンターテイメント系のデータを収集する割合の方が多かった。
同時にボクは地球の軍隊などで使われる戦闘術や運用方法を強制書き込みで頭脳に刻み込み、それを使いこなせる様に身体を慣らすトレーニングを重ねた。
実弾と光学兵器が入れ替わっても基本的な戦闘にセオリーは然程変わら無かったからね、実際ウェルム少将の皆と訓練させて貰った時は遅れる事は無かったよ♪
それに彼も武器を造り出す知識は有っても運用する方法までは知ら無かったしね・・・そもそも彼は技術屋さんで軍関係者じゃ無かった、彼は派閥争いや世俗の煩わしい事に嫌気が差して自主的に疎開した一人の賢者に過ぎない。
戦争中なのに身内で争う仲間に嫌気が差してた・・・A級市民詐称者達はロクデナシの狂人達だったけど、同じ様なクズは自由銀河同盟内にも居たらしい!
「お兄さま、ダーグさんとのお話は終わりましたか?」
未だに銃を撃ち続けているボクに、ミューズがシューティングレンジを覗き込んで来て声を掛ける。
その背後にはティーセットを手にしたアイギスさんが立っており、彼女の腰にはイリスが可愛らしく抱き付いていた。
更にその後ろにはケーキの皿を手にしたジュリアさんと、ティーカップを手にしたジェイナス婆ちゃん迄ついて来てる・・・ジュリアさんの皿の上にケーキはさっきと違うモノだw
「ジュリアさん、何個目だよ・・・太るよ?」
「そ・・・その分トレーニングで消費してるもん!」
まあ彼女のウエストは引き締まったままだ・・・今の所は、太く成ったら虐め倒してやる!
「休憩にしません?」
「ウン、射撃も休憩し様と思ってたトコ」
ボクはマガジンを引き抜きスライドを引いてチェンバー内の弾も排出させると、それを引き抜いでマガジンに押し込むと銃と一緒にテーブルに置いた。
「無理に聞く気は無いですけど問題ですか?」
一応ダーグは先にボクにだけ声を掛けてくれたけど、彼と相談し隠す必要も無いだろうと言う事で話が纏まっていた。
「問題じゃ無いけど胸糞悪い話さ・・・亜空間でボク達をローストしてくれた磁気嵐はA級市民側の兵器の類らしい、勿論だけど撃った奴は健在しかもゾンビウイルスまで持ってる可能性が有る。ただ知的生命体が操作してる可能性は無い、おそらく戦闘用AIの類だろう・・・・・」
「迷惑な話ですね・・・ちゃんと片付けて貰いたいです」
アイギスさんに注いで貰ったお茶を飲みながら、
「ミューズ、久し振りに撃ってみるか?」
とガバメントを押してみると、ミューズは嬉しそうに受け取りレンジの方へ飛ぶ様に走って行って・・・コケた!
「まったく・・・」
助け起こすとミューズは貌を顰めながら、それでも嬉しそうにレンジに入って射撃体勢に成った。
「相変わらず屁っ放り腰で・・・いや後ろに飛ばされ無く成っただけ、進歩してるのか?」
「ソレ以前に撃発の度に眼を瞑ら無く成りました・・・進歩してると言っても良いでしょう」
4~5回マガジンを交換しながら撃って満足したミューズは、貌を上気させながらテーブルに来て座ると・・・・・
「このガバメントモデルはトリガー以外、ほゞオリジナルの1911と同じ形ですね?」
「見た目の好みだけで改変したんだけどね♪」
コルト・ガバメント伝統の全体的にスライドする様な引き金では無く、ブローニング・ハイパワーの様な自動拳銃に良く使われる様な形状の引き金の後にスライドヘッドを控えさせた様な形をしている。
ブローニングはシングルアクションだけど、こう言うトリガーはダブルアクションの自動拳銃に良く使われてた様な気がする。
「初めて撃った銃がガバメントの系列で、こう言うトリガーをしてたんだ・・・コルト・ゴールドカップ・ナショナルマッチだったかな?」
ミューズの隣のレンジに入り予備用のロイヤルブルー・フィニッシュのガバメントを抜いて撃ち、マガジン一個分とチェンバーの一発その全弾をターゲットの眉間を貫いた。
ターゲットがナスティーズ枢機卿なので良く当たる・・・流石に本人の前で親をターゲットに出来無いけど、ミューズが居ない所ではダラスやアズミーナもターゲットに使っていた・・・嫌な奴を的にすると弾が良く当たるし爽快感が違うんだ!
「やっぱり命中率は低いな・・・弾が上にそれる傾向に有るし・・・・・」
実弾を打った経験が足りない証拠、疲れて来ると力んで変な方向に集弾が偏るのだ。
「でも実戦に参加するには程足りないと言うか・・・・・」
「そりゃ炸薬式の銃をメインに戦うんじゃね・・・ミューズはメインにレーザーガン使ってるんだし、サブに持ってる分には炸薬式の小型拳銃を持っても良いんじゃないかな?」
今持ってるPPK/Sを使う分には問題無い筈だ。
「そろそろ本格的に大型拳銃の練習もしたいでしょ?ただし無理はしない事・・・・・」
ボクはミューズにガンケースを差し出すと彼女は怪訝な顔をしながら受け取りケースを開いた・・・中にはボクの銃と同型の、シルバーブライトに輝くガバメントが鎮座している!
「お兄さま♪」
ミューズがボクの首に抱き付いて来て、イリスが指を咥えて良いなぁと独り言を言った。
「イリスは射撃制御を完全に出来る様に成ってからね・・・でもミューズもマダ練習に渡しただけだよ、実戦で使おうなんて思わないでね」
コッチの世界では最高級である木材をグリップに使い、シルバーに輝く銃を抱いてキャッキャッと喜んでるミューズ・・・微笑ましいと思う反面、銃で喜ぶ娘を作った事にチョッと心配に成った。
「お兄さま・・・イリスも今の銃を使いこなせる様に成ったら、もう少し私好みの銃が欲しい・・・・・」
「こらっ!イリス・・・」
アイギスさんが止め様とするけど、
「良いよ・・・使いこなせたら、どんな銃が欲しい?」
「38口径で良いのでマグナム弾が使える銃を・・・・・」
訂正しよう・・・かなり間違えて教育して仕舞ったらしい!




