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いざ出発・・・したのに出鼻を挫かれてムカ付く!

 そんな調子で2ヶ月弱・・・休養を済ませたボク達はファルデウス帝国・首都星ミューズに、その首都の名がインペリアルポリスってのは何の捻りも無いと思う。

 それを陛下の爺さまに言ったら首都の都市名もミューズポリスにすると言いだした事が有り、首都星を自分の名前に変えられただけで恥ずかしがってたミューズがソレを聞いて必死に成って止めさせた!

 実は・・・その時 副首都を惑星ジュリアとジュリアポリスに改名すると爺ちゃんが言ったらしいけど、ミューズと一緒にジュリアさんも惑星ミューズに乗り込んで陛下を締め上げ止めさせたそうだ♪


「まあボクも自分の名前の星が何てイヤだな・・・・・・・」


 と思いながら惑星ミューズに降り立ち勲章授与の式典会場に入るボクと、その仲間達だった・・・そう来たのは叙勲の準備が整ったから、これが終われば漸く旅に出られる

 と思ってたけど、




「キッド殿、お止め下さいっ!」


 大慌ての近衛騎士長に言われたが、ボクは皇帝のクソジジイに決めたスコーピオンレッグロックは外す積りは無かった・・・それどころか更に力を入れて締め上げ、ジジイに止めを刺そうとしてる!


「私も若く無いんだから、それ以上されたら本気で腰が・・・分かった悪かったから好い加減 許してくれ!」


 何とかボクを外してヒィヒィ言ってる爺さんを解放しながら、ジェリス艦長はボクに・・・・・


「キッド君・・・その何で君がドレスを着てるんだ?」


「ファルデウスの正式な装いだと騙されたんです!このジジィ生かして置か無い・・・・・」


 飾り気の無いシックなドレスでデザインがファンタジーっぽく、ズボンさえ穿いたら男性の服としても通じそうだったので途中まで本気で騙されていた!

 ジェリス艦長は溜息を吐きながら、


「いい加減にして下さい、こんな子供染みた悪戯を・・・・・」


「いやキッドの奴が全然気が付か無かったから、つい調子に乗ってのぅ・・・・・」


 と腰を擦りながら楽しそうに言いやがる皇帝陛下のクソジジイ、本当は途中でネタ晴らしする積りだったそうだが、ボクが素直に化粧までさせられたので調子に乗って仕舞ったそうだ。


「いや化粧までって・・・」


「公式の場は男でも顔色位は整えろと・・・コッチの世界では、そう言うモノだと思ってました」


 悔しがるボクを尻目にミューズやココさんが、一生懸命ボクの写真を勝手に撮っている。


「お尻叩きはスリッパでかな?」


「そんなコト言わないで写真くらい残させてよ♪」


「お兄さま本当にきれい・・・女の子にしか見得無い!」


 ミューズ達の言葉がザクッと音を立てボクの心に突き刺さった・・・今晩お仕置きだ、絶対に許してやらん!


「でも冗談はさて置き、今後は如何動く予定だ?」


「アンタにだけは教えない!」


 へそを曲げたボクは陛下を両断する。


「全く揶揄い過ぎるから・・・で予定は?」


「ジェリス艦長に出会った、あの宙域に向かう積りです・・・あの辺りから逆算すれば目的の場所が算出出来る」


 地球から生物の遺伝子を持って来た事は話して有った。


「それはドコの惑星に種付ける積りなのかな?」


「少なくとも爺さんの領星は候補に入って無い!」


 ボクは冷たく突き放す。


「キッド君ソロソロ許して上げなよ・・・陛下が拗ね出した」


「拗ねさせときなさい!」


 コッチが拗ねてるんだ!


「如何でも良いけど機嫌治して、ソロソロ式典本番よ?」


 いっそバックレたろかと思ったけど、流石に大人気無いと思い式典には出る事にした。


「メンズの礼服もチャンと用意して有るんだろうね?」


「さあ如何だったか・・・嘘っ、ちゃんと用意して有るっ!だから銃は抜くなっ!」


「キッド君・・・君の銃は銃声が大きいから、出来たらコッチのブラスターで・・・・・」


「ジェリスッ、オマエは主君に対してだな・・・」


「お兄さま、レーザーなら私のを・・・」


「ミューズも本当に銃を渡すんじゃ無いっ!」


 うむっ、慌てふためく爺さん見てたら気分が落ち着いてきた。


「まあ冗談は置いといて・・・」


「イヤ冗談じゃ無い積りなんだけど?」


 ミューズから本当に銃を受け取ろうとして顔をヒク付かせる爺さん、冗談だよコノ程度で発砲しないってば!


「とにかくだっ!」


 陛下は少しイラついた感じで、


「何かの役に立つかもしれんから、最前列に並んでいる来賓の顔くらい覚えて置け!」


「最前列と言ったら国賓って事でしょ?」


 陛下はディスプレイにファルデウスだけで無く周辺諸国を含む、2つの星雲の勢力図を表示する。


「お前の事だ・・・今後はファルデウスだけで無く、他国にまで脚を伸ばす事に成る。なら顔を売って置くと同時に、味方に成りそうな奴を見定めて置け・・・」


「無茶だ・・・そんなの初対面で解る筈が無い!」


 と思ったけど、


「如何だか・・・お前なら見抜いて仕舞うかも知れないな?」


 何故か皆が、そう言った。

 そして式典が始まり・・・ボクは陛下が言った事を少しだけ理解した。

 最前列とその次位には正装した人々が並んでいるが、友好国・非友好国に関わらず欲望や悪意を滲ませてる者が多々居たのだ。


『こうして見ると・・・隙有らばボクを取り込もうと考えてる輩は、友好国の方に多いのかも知れない』


 割と友好的な笑みを浮かべてる奴等の方が何かコチラを値踏みしてるように感じられ、この感が必ず当たるとは思って無いけどソレでも警戒させられる不気味さを覚える。

 何故だろうか・・・悪意と迄は行かないモノの欲望を滾らせてる事がヒシヒシと感じられた。




「これが原因だろうな・・・」


 陛下が用意してくれたホテルの一室で、式典に参加してくれたダーグが一枚の広告をボクに見せる。

 それには新規・太陽系構築事業と、それに伴うテラフォーミングの出資者を募る記事が出てた。


「これが何で・・・・・」


 ボクには関係無いと思うけど?


「光神教会を制圧しナスティーズ枢機卿を捕らえた後・・・あちらの惑星2つ分の世界の自然環境を完全再現出来る❝遺産❞を持って来た事、キッドとミューズで暴露しちまったじゃ無いか?」


「あぁ・・・」


 確かに人前で言っちゃった!


「それが狙われてるのか・・・・・」


「小国の国家予算並みの利益を数十年間得られ、その後も目減りはするけど継続的に稼げるんだそうだ・・・一つの惑星の自然環境何てソレだけの価値が有る!そんな物が来ると分れば惑星の1つや2つ用意して待ってる。別に親交のある連中に独占させる積りは無いんだろ?」


 そりゃそうだ♪

 その事は・・・独占させる積りは無いと公言して有る。


「だが・・・良からぬ事を考えて、馬鹿な事を企む奴も出て来るかも知れないな?」


「馬鹿な事って?」


 まあ商売には成るけど悪用は出来無いと思うんだけど?


「その2つの惑星遺産を横から掠め取る、最初は協力する風を装って自分が手に入れたら他の入手者に害を及ぼす」


「そうして富を独占するって事ね?」


 確かに考える馬鹿が出て来そうで怖い!


「ダーグよ・・・それって考え過ぎじゃ無いか?キッド君から奪おう何て、毒蛇の入ってる籠に手を突っ込む様なモンだぞ?」


 ポップさん・・・あんたボクの事、そう言う風に見てたんだね?

 ボクッてイメージ毒蛇?


「他に如何見得ると言うんだ?そう思うだろ、イメンケも・・・・・」


「そんな事は有りません♪」


 イメンケさんは即否定する。


「何だよ・・・一緒にノッてキッドを揶揄ってくれると思ったのに?」


「いや私はキッドさんに、そんな失礼な事は思ってませんよ♪」


 なんか白々しいな・・・・・


「イメンケさん・・・別に正直に言ったからって、車を買って上げ無い何て言わないから・・・・・」


「失礼しました。実はチョッと思ってました」


「グレードは落とすけどね♪」


「嘘吐きっ!それは無いでしょ?」


 イメンケさんがボクの脚に縋り付く。


「エッ?この間お兄さまが私費で新車を・・・・・」


「可哀想に講演会の時に爆弾仕掛けられて、ウェルム少将の部下が駆け付けたけどリモコン式なんで危なくて処理出来無くてさ・・・仕掛けたテロリストは捕まえたけど、その時にヤケに成ってリモコンのスイッチを・・・・・」


 それで新車が吹っ飛んだ・・・可哀想で何も言えん。


「でも・・・それって、お兄さまが補償しなくても・・・・・」


 そこでボクとイメンケさんが言葉に詰まる・・・その仕掛けた爆弾魔、実はアズミーナに雇われたんだよ。

 ボクの狙撃に失敗した時の保険で比較的安く雇われたらしいけど、その事はミューズに絶対言えない・・・それに抑々ミューズにはアズミーナの生存すら知らせて無く、これからも絶対に言わない積りなのだ!


「いやボクを狙って来た殺し屋がボクを殺そうとして仕掛けたんだよ?それで買ったばかりの新車が吹き飛ばされちゃ流石に可哀想じゃ無い?だからボクが買って上げ様と・・・だからチャンと買って上げるから、チワワみたいな眼をしてボクの脚に縋り付くのヤメて!」


 まあミューズを誤魔化せたのは良いけど、そのウルウルした眼をするの気持ち悪いからヤメろ!


「ま・・・まあ話を戻そう、そんな訳で馬鹿な事を考えそうな奴が出るかも知れないと言う事だけは注意してた方が良い。キッドの居た世界にも昔話で有っただろう?ガチョウかアヒル等の家禽が金の()を生む話が・・・」


()()()だっ、怪しげなモノを生ますんじゃ無い!」


 ポップさんの下品なジョークに男連中とジェイナス婆ちゃんは大笑い、ミューズとアイギスさんは赤い顔をして呆れ、イリスは意味が解からずキョトンとしてる。


「ところで・・・アイギスさんとイリスちゃんには申し訳無いんだけど、スターシップを降りる気は無いかい?この船タダでさえロストテクノロジーの塊で狙われてるのに、如何やら更に金の成る樹が生えかけてるみたいで欲深いのが狙って来そう何だ!」


 アイギスさん困った様な、それでいて悲しげな顔をして・・・・・


「この船を降りたら・・・全ての人々がとは言いませんが、私達 母娘はマルドゥース公爵の縁者として迫害する者が確実に現れるでしょう。そうする事で自分がトゥーニックやナスティーズ、そしてマルドゥースとは違うんだと証明する為に・・・・・」


「お爺さまも関係者全てを処断し切れた訳じゃ無い、マダマダそれ等の関係者が生き残ってるんです」


 アイギスの返答にミューズが補足した。


「そんなんで自分の立場が守れると思ってる辺り、ボクも爺さまも侮られているよね・・・でもアイギスさん、降りろと言っても一時的にだよ?今回はボクが地球やC4895から持ち込んだ遺産を、管理する人に手渡す迄で良いんだけど・・・・・・」


 それ等ボクが持ち込んだ遺伝子コレクションに遺産、カーゴコンテナに方舟とコードネームを付けた。

 ❝遺産❞にしたのはボクが地球に居た時見てたTV番組から、自然環境にも世界遺産と言ってたでしょ?


「それじゃ駄目なのよ・・・アイギスさんとイリスちゃんに必要なのはキッド君の仲間として活動する実績、ダラスやマルドゥースを排除したキッド君の一味であると言うね・・・・・」


「それよりジュリアさん・・・アナタ一応は未成年でしょ、そんなに堂々とアルコール摂取してて良いの?」


 ジュリアさんは同じホテルで仕事は終わったと、成人済みの皆と一緒に お酒なんか飲んでいた。


「私の年齢なら保護者同伴なら合法(OK)よ?ヨロシクお願いしますね、ジェイナス先生」


「任せなさい、酒代持ってくれる人(スポンサー)の依頼なら大歓迎よ!」


 婆ちゃんはジュリアさんの奢りで上機嫌、それも父親(ジェリスさん)陛下(爺ちゃん)の懐から出てるんだろな・・・・・


「如何かスターシップに残らせて下さい、私なら何でもしますから・・・・・」


「そう言うのが一番困るんだけど・・・・・」


 と言ってボクに見放す事は出来ないしね・・・そんな事は自分でも解ってんだよ、自分の事だもん!


「最後の手段として・・・非常時に備え訓練はさせるけど、イリスちゃんは基本絶対に戦闘には参加させない。それだけは本当に絶対条件、本当に止むを得ない時以外に参加したら本気でオシリ叩きだかんね!」


「ハ・・・ハイッ!」


 ミューズに普段からボクを怒らせたら本当に御仕置きとして❝お尻叩き❞をされる、そう脅かされてたイリスちゃんは脅えながらも元気に答える・・・ちょっと脅かし過ぎちゃったかな?


「スターシップに完全中和型の耐Gコントロールルームを作る、ジェイナス婆ちゃんとイリスちゃんは戦闘中そこに缶詰めに成って貰う」


「良かった・・・今の耐Gルームは腰に来るんだよ」


 ジェイナス婆ちゃんにはマダ(こた)えていたらしい。


「アイギスさんには・・・・・」


「これでも航宙クルーザーの操縦経験と軍用艦2級ライセンス、あと1級の火器運用ライセンスを持ってます・・・それに護身用の銃くらいは撃てます」


 えっ?ちょっと待ってよ・・・・・


「ナンで貴族令嬢のアイギスさんが、そんなモノを?」


「これでも元義父(クズ)元夫(ゲス)から逃げるのに苦労しましたので・・・・・」


 ふ・・・深く聞かない方が良さそうだ。


「婆ちゃん、スターシップの改造どの位掛かるかな?今後は皆にチャンとプライベートが守れる個室を造りたい、それと()っき言ってた耐Gルームを・・・・・」


「壊れてる訳じゃ無いし、もう私も手直ししたい所は無く成って来たからね・・・耐Gルームはリビングを改造する事にして1ヶ月って所だね?」


「その頃にはロイヤルフェンサー1に所属するエルミスⅡの回収も終わるわね・・・・・」


 違和感を覚えてジュリアさんに聞いて見た。


「それはボク達に関係無いんじゃ?」


「有るわよ?次のキッド君達の航海、私達ロイヤルフェンサー1が護衛に付くんだから・・・・・」


 な・・・何でじゃ?




 ロイヤルフェンサー1は艦隊としては、ほゞエルミスⅡで統一された異色な編成の比較的に小さな艦隊だった。

 これは足が速く長い(スピードと航続距離の事)エルミスⅡで迅速に戦地に駆け付け、高速機動戦を仕掛け敵を殲滅する仕様の為である。

 この世界で普通 艦隊と言えば300から1500隻も居て、100隻ちょっとしか無いロイヤルフェンサー1は本当に小艦隊と言える。

 それ以下の数でも偵察や哨戒に数隻から十数隻で組む事も有るが、その程度では基本的に艦隊と言わず・・・ミューズの素性が明かされた後スターシップに数隻の護衛艦が就いただけで艦隊を名乗るのは異例の事だそうな。


「宇宙戦争とも成ると規模がデカいや、艦隊の編成がウン百からだもんな・・・・・」


 マアその中で細かく分けられてるだろうけど、それでもソノ特性上ロイヤルフェンサーの中では一番少ない編成の艦隊がロイヤルフェンサー1だ。

 それでも一時は200以上に増やされたのだが性質上 大艦隊に成るほど見動くが取れず、動きの悪い方から削られ結局は135隻まで削られたのだ。

 そこで削られた艦や搭乗員はロイヤルフェンサー1に対する輸送や補給を担うサポート的な艦隊を編成させられる・・・エルミスⅡは確かに内部には十分な保管スペースを設けているが、それでも前述の特性上 他の艦船と比べあまり多くの物資を積み込め無い。


「と言われても・・・こうゾロゾロ大艦隊を引き連れて探検とは思わなかった、何でこうなったんだ?」


「いや当り前でしょ?」


「お兄さまは認識が甘過ぎます!」


 ジュリアさんとミューズに馬鹿にされてしまう。


「前に言った事も有るけど・・・バクテリアやカビの様なモノなら兎も角、完全に完成された自然の惑星の発見率何て奇跡の様なモノなんですよ?そんな惑星2つ分の完全なる再現可能な遺伝子、お兄さまの箱舟 最終的には星間国家であるファルデウス帝国の国家予算位の価値があるのよ!」


「前にも聞いてたけど、そこまで本当にあるのかよ・・・・・」


 前に聞いた時にはイメージ的に、もっと小さく感じていた。


「そんな御宝を掘り出しに行くんだもん・・・お爺さまだって艦隊の1つや2つ護衛に着けるわよ、むしろロイヤルフェンサー1だけって方が・・・・・」


「キッド君、ミューズちゃん・・・」


 レプトン通信で話してたジュリアさんの声が強張る。


「後方から追跡して来る艦隊が・・・・・」


 オイオイ・・・ボク達は今ワープ中で亜空間に沈んでるんだよ?

 それを追っかけて来るって、さっそく欲の皮が突っ張った・・・・・


「いえ・・・ロイヤルフェンサー2、お父さん達みたい!」


 何だ敵じゃ無いのか?

 するとレプトン通信で懐かしい声が、


「こちらロイヤルフェンサー第2艦隊・旗艦ラグナレク、スターシップ応答願います」


 ココさんの声だ♪


「こちらスターシップ キャプテン・キッド、お久し振りですココさん♪」


 モニターにココ・ナッシュ少尉の顔が表示される。


「お久し振りキッド君、実はチョッとお願いしたい事が有るんだけど」


 そう言うとモニタにジェリス艦長が割り込んで来た。


「初めて君と会って助けて貰った場所に行くんだろ?そこまで私達も行くので同道しても良いかな?」


 ボク達の警護と言う訳じゃ無いらしい。


「ヴァイラシアンが滅亡しファルデウスに吸収された以上、元ヴァイラシアン兵もファルデウスの国民だ・・・遺体を出来る限りは回収し弔って上げたくてね」


 成る程あの場所には敵兵士の遺体を放置したまま・・・ヴァイラシアンと言う国が滅んだ以上は彼等もファルデウス帝国民、ならば回収し家族の元に届けてやるらしい。


「了解しました。通常空間に出るまでは、この侭で・・・・・」


「通常空間に脱出まで後330秒・・・・・」


 今回の旅は楽だろうと肩の力を抜くと、間の抜けた顔をしてたのだろうミューズに少し揶揄われる。


「お兄さま緊張感が抜けてますよ?」


「そんなコト言ってもな・・・地球と彼の居た惑星の自然環境は確かに莫大な利益に成る宝だけど他の連中は場所を知ら無いし、コッチは回収に行くだけ何だから今迄に比べ可成りイージーな仕事に思えるんだ」


 そう言うとドリンクホルダーのジュースを取って一口飲んだ。


「ワープアウト100秒前、通常空間への浮上前に周囲の確認を・・・問題は無いと思われ・・・・・」


 ワープアウトの直前に、通常空間に戻る地点と進行方向に障害物が無いかチェックする。


「流石に今回はハードな戦闘なんか無いと思うんだけど・・・・・」


「そう言うのはフラグって言うんじゃ無いか?そう言う事を言ってると・・・・・」


 ダーグ・・・お願いだから怖い事言わないで、本当にボクの場合は何か引き寄せて問題に成るんだから!


「キッド様は持ってますから♪」


五月蠅(うるさ)いぞ、アリス!」


 ボクは念の為にパイロットシートに戻り、


「本当に皆、止め様よ・・・不吉な事言うと・・・・・」


「ゼロ、脱出します」


 通常空間に戻って360°星空に囲まれると、上下左右から赤い警告灯が点滅しながらアラームが鳴り響く!


「囲まれてます、大規模な艦隊・・・約1万以上!」


 とアリスからの警告メッセージ・・・


「ホラ、皆が不吉な事ばかり言うからっ!(怒)」


「そんな事を言ってる場合ですか!」


 ミューズに叱られるけど、


「そんな事を言ってもさ・・・・」


 スターシップの戦闘プログラムを起動し全兵装・防御機構をバトルウェイト状態にする。


「最近は敵さんが常に価格破壊のバーゲンセール中で大インフレなんだ・・・スグに大群が押し寄せて来るから、もう万単位じゃ驚けなく成って来てるよ!」


「そうね・・・ドバ~~~ンと100万くらいの艦隊に囲まれて見たいわよね!スリル有って面白そ・・・・・」


「キッド君、ジュリア・・・後で私の私室に顔を出す様に、お説教だ2人とも!」


 ジェリス艦長にも怒られちゃった!




「上方より5000近い敵艦が覆い被さって来ます!」


「右翼3時 上方30度より敵艦隊・・・展開しながら3000!」


「同じく左舷10時方向・下方15度より3000の艦隊が展開中!」


 合計11000位か・・・それほど驚異的な数じゃ無いかな?


「後方より新規10000!コチラを包む様に展開しながら・・・・・」


 まあ多少食いでが出たな!


「ジェイナス婆ちゃんとイリスそれにポップさんはリビングで待機、イメンケさんとアイギスさんも・・・・・」


 リビングを耐Gルーム化したんだ♪


「空いてる砲台が有るなら私も・・・・・」


「私の狙撃センスはキッドさんもご存じでしょ?」


 空いてる砲台を全部アリスに任せるより分担して人間に撃たせる方が精度は高い!

 それに宇宙空間の艦隊戦って全周囲から攻撃出来るし攻撃される事も有り、警戒出来る人数が多いのもアドバンテージに成る。


「全てを賄う必要は無いから手に負えるだけ担当して、右舷と左舷をアイギスさんとイメンケさんに、上方の砲台は引き続きダーグに・・・・・」


 スターシップやエルミスは高速戦闘艇や艦と呼ばれるジャンルの船、その性質上 如何しても火砲は正面に対して厚く成り、それはボクとミューズが担当する。


「じゃあ私も艦底と後方のフォローに参加します・・・アリスさんからシュミレーションでは合格点を頂きました」


 今回はポップさんも参戦するらしい!


「ジュリアさん聞こえるっ?艦隊は最大で全速前進・・・向こうよりコッチの方が足が早いんだから、振り切って体制を整えようよ!」


「勿論その戦法を取るわよっ!全艦隊に告ぐ、遅れたら戦闘後の反省会で吊るし上げて御仕置きだからね!」


 ボクが苦笑しながらスターシップを加速させると、ロイヤルフェンサー1のエルミスⅡタイプが全員食い付いて来た♪


「チョッと待て!エルミスタイプと違い、ヴィダーシュペンスティガー級はソコ迄早くは無いんだぞ!」


 と言いながらもジェリスさんは必死に食い付いて来た。


「150ベッセル引き離したら反転し敵に突っ込む!ジュリアさん先に行くよ!?」


「すぐに追い付くから待っててね♡」


 やっぱりスターシップの方が早くロイヤルフェンサー1すら引き離し、その前で急速転回すると敵兵の中にコッチから飛び込む!

 包囲戦し様と展開したんだろうけど中に閉じ込める筈のボク達に逃げ切られ、無様でスカスカな陣立てを晒しながら隊列を整え様としてる。


「もっと密集してくれてた方が・・・・・」


 敵の中に飛び込み全火器のロックを解除・・・


「撃ち落し易かったんだけどね!」


 ()りっ(たけ)の火砲を前に向かってブッ放した!




 小1時間後・・・結果として所属不明な艦隊は自力航行 出来る数を半分以下に減らした所で、こちらに降伏の通信を送って来て自発的にジェネレーターを停止し始めて戦闘が終わった。

 ところが敵が降伏した所で敵艦の中で主力級の艦が次々と自爆し宇宙の藻屑へと消えて行く、その光景にボクは思いっ切り気色悪いモノを感じた。


「これは如何言う事だ・・・・・」


「証拠隠滅って事なんだろうね・・・・・」


 ダーグの疑問にボクの予想をブツけて見る。


「そう言う事だな・・・おそらく爆発しなかったのは大半が傭兵か海賊それに指揮官か御目付け役として軍人が同行し、そしてソイツ等は私達に漏らされては困る所まで情報を知っていた。そんな所だろうね・・・首都星に連絡し応援を呼ばなくては、早速キッド君に譲って貰った真偽解析機❝アルファ・トライシクル❞の出番だ」


 そう今回は・・・生き残った敵兵全員をウソ発見器に架ける必要が有る!

 何故なら生き残った彼らの中に間違い無く自爆スイッチを遠隔操作した者が居るから、いや爆発した当人達は多分そう言う事に成ってたと知らなかった筈・・・ならば自爆と言う表現は不釣り合いかも知れない。

 それに・・・・・


「見た事も無い艦影ばかり、ジェイナスお婆様・・・・・」


「ああ・・・これはファルデウスともヴァイラシアンとも作風が違う、これはノスモー帝国の船の造りじゃあ無い・・・ノーマいやヴィエンドの船だと思う、フォルネドって事は先ず無いだろうね」


 ジェイナス婆ちゃんが外見から艦の出自を推理し、


「って事はコイツ等はヴィエンドの手の者だ・・・と考えるのは早計、多分だけどノスモーの奴等が送り込んで来たんだろうね」


 エッ?・・・ヴィエンドって国の船なんだろ、なら断定するのは早いかも知れ無いけど逆を張るのも早過ぎないか?


「キッドちゃんもマダマダ若いねぇ・・・良いかい?ヴァイラシアンを潰した現在、ファルデウスにとって主な敵対国はノスモー・ヴィエンド・フォルネドの3つだ。船の造りはノーマかヴィエンドに近いけど、私の見立てではヴィエンドで間違い無いと思うよ・・・・・」


 懐からタバコを取り出して空気清浄ドローンを呼び、頭の上に浮いたドローンがタバコの副流煙を全て吸い込んでくれ・・・そしてタバコと一緒に出したボクから召し上げたジッポーで火を点けると満足げに煙を吐き出した。


「このライターで火を点けると本当に美味しく感じるんだ・・・さてこの艦隊は傭兵や海賊を金で搔き集めて組織されてる、他国に強盗に入るのに正規軍を使う訳には行かないからね。でも自分の国で搔き集めた破落戸(ゴロツキ)を、自分の国の軍隊に率いらせて他国に泥棒行かせるかい?」


「国が組織したとは限ら無いんじゃ・・・いや限るな」


 ボクも納得した。


「そう万単位の艦隊なんぞ国か財閥じゃ無きゃ組織出来ん、そして財閥がそんなに大きな艦隊を国に関係無く組織出来る筈も無いから間違いなく国が絡んでるんだ。つまり国主導で犯罪を犯すか国の認可を得て財閥が犯罪を犯すか・・・そのドチラかしか無いんだ」


「でも摑まったら自分の国に不利になるのでは?」


 とミューズが可愛い推理をするが、


「他国に攻め込んだ傭兵や海賊など捕虜に成ったら生涯強制労働さ・・・これが戦争なら捕虜交換とか賠償後に釈放が有るかも知れ無いけど、お高い報酬に釣られた星間犯罪行為じゃソウも行かないだろう。当事者国は知らぬ存ぜぬ、それを知りながら犯罪に手を染める奴が故国の安全など考慮しないだろ?」


「と言う事で集める方も自国じゃ集めない、出来る限り仲の悪い国の破落戸を搔き集める・・・と言う事でしょうね?」


 ボクの意見をイメンケさんが補完する。


「と言う事で・・・この旅は本当に面倒くさい事に成りそうだぞ?」


 ボクはチョッと嫌な予感がし始めている。

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