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ボクは墓まで持ってく決意をした・・・・・

 こう言うのも悪く無いと思いながらデッキチェアに寝そべり、ビーチで(はしゃ)いでいるミューズとイリスを眺める。

 2人とも可愛らしいビキニを着ており、この世界にもチャンと水着が有るんだと安心しながら・・・夏も海水浴も水着も無い世界だったら、ボクは来た事を心の底から後悔していた事だろう!


 そんなボク等が遊んでるビーチを囲む様に黒服の警備が囲んでいる。

 ただこのクソ暑い最中(さなか)に黒づくめの服で警護に当たっているなんて、警備の人に同情してしまうのだが何で彼らは拷問的な任務に勤しんでいるのだ?


「そりゃ救国の英雄と皇女殿下が遊びに来てるんだもん警備も厳重になるわよ♪それに伯爵令嬢にして領主の娘も来てるし、でも温度的には私達より余っ程 快適で涼しいと思うわよ?」


 とはボクの隣でデッキチェアに横たわるジュリアさん、ここはバーカンディ伯爵家が領有する惑星の一つで中でも自慢の観光地だそうだ。

 だけどアノ格好でソレは無理があるだろ?


「あの防弾仕様の背広は表面は太陽光吸収素材で出来てて、それを動力に冷房と除湿をしてるんだから私達より快適かもよ♪」


「随分ハイテクだなぁ」


 変な所に感心させられながらフルーツで飾り付けられたトロピカルドリンクに舌鼓を打った。

 この辺の感覚は地球と似通ったものが有って助かる。


「しかしキッド君も大変ね・・・観光地を11ヶ所も梯子させられるんだから」


「それに加担してる11分の1がジュリアさんの両親だよ?」


 実は受勲の式典の準備が整うまでボクは帝国に留め置かれるのだが、その間にドコでバカンスを楽しむのかと検討を始めたら・・・ボクそっちのけで陛下達が争い始めたのだ!

 ボク達にドコで休養させるかについて・・・如何やら自分の所有する観光地に、英雄が遊びに来たと言う箔を付けたいそうだ!


「アハハ・・・ゴメンね、でも最終的には・・・・・」


 そう全員ミューズに正座させられ叱られた・・・ただボクはドコでも良かったので誰の領地か判らない様にして極短いプレゼンを何十も受け、その中から11ヶ所を選んで時間の許す限り周って残りも後日来訪する事にした。

 選んだのは11ヶ所なのに加担してるのは8人なのは、その11ヶ所の観光地の内3か所が爺様の直轄領だから・・・悔しそうなジェリス艦長達を尻目に爺さんホクホク顔だったらしい!

 ちなみに意識して無かったけど殆どの領から1か所づつしか選ば無かったのに、意図せず陛下の所の3ヶ所とレインズ公爵の領地だけは2ヶ所選んで仕舞った。


「お爺ちゃんと陛下の所は歴史的にも文化的にも重要な古い町だから・・・」


「お爺ちゃんってレインズ公爵?」


 そう言えばジュリアさんの お爺ちゃんは皇帝陛下の爺さんの弟だった。


「そっ♪お父さん悔しがってて次の観光地に移動する時、どさくさに紛れて途中で もう1ヶ所ドコか(ウチ)の観光地に寄って行けって言ってる」


 困ったもんだ・・・任せてたら何ヶ所観光地を巡らされるか分からない。

 ただボクはジックリ腰を据えて観光したいタイプなので、ツアーの様に弾丸強行な観光はしたく無いから当然全部は廻れ無い。


 それに正直に言うとドコも負けず劣らず魅力的に見え決められず、だから最初にドコ行くかはプレゼンに来た各領の観光課職員さん達によってのジャンケンで決められた・・・それで勝ったのがジェリスさん所バーカンディ伯爵領の観光課長さんだった!

 悔しがった陛下と他の領主はジャンケンに負けた観光局の局長さんや観光課の課長さんを罵倒、2番手目以降はカードやマージャン・ボードゲームで陛下の爺さんや領主さん達が直接勝負して決めてるらしい!?


「いまミューズ(惑星の方)の宮殿ではキッド君達の4番目の観光先を決める大マージャン大会が開催されてるの・・・キッド君は1~2ヶ月のバカンス楽しむと言ってたから、5位以降は確実に今回お預けに成る!だから白熱してるそうよ・・・・・」


「イヤ4位にだって行けるか如何か・・・・・・」


 ちなみに2番手はポーカーで3番手は将棋で決めたそう、ボクの持ち込んだ地球のゲームが大流行してる!

 でも逆にボクは最近コッチの世界のゲームにハマってる、勿論コッチにだってカードゲームやボードゲーム位有った。


「マアお蔭でユックリ出来るし陛下の爺ちゃんには感謝しか無いけど、ところで何でジュリアさんまで一緒にバカンスしてるの?」


「トゥーニックや光神教狂信派の残党が残ってるかも知れないから、どうせ休暇で観光地に行くのなら出来るだけキッド君達に引っ付いてろって、お父さんと陛下にと言われたのよ。上手く行ったわ♪」


 ジェリス艦長の声色を真似ながらジュリアさんが言った。


「ご迷惑を御掛けして・・・って何が上手く行ったの?」


「そりゃ半分仕事に成るんだから当然バカンスの延長を認めさせたわ、オマケに必要経費としてタップリお小遣いを・・・陛下の懐からねっ♪」


 ボクは頭が痛くなった。

 ちなみに地球のイギリス王室と同じく、皇帝である陛下の爺様は国所有で無く個人所有の不動産を大量に持ってる。

 その家賃収入だけで相当な額に成るそうだ!


「そこは何で陛下の懐から・・・」


「だって国民の血税使ってバカンスなんて心から楽しめ無いモノ、陛下の懐なら良心も傷まないし・・・かなり水増しして搾り取ってやったわ!」


「ジュリア・・・休暇が終わったら私の所へ出頭しろっ!キッドに習って、その尻を思いっ切り引っ叩いてやる!」


 途端にジュリアさんがデッキチェアから飛び上がる。


「な・・・何で陛下が?」


「4番目決定戦に早々に負けちゃったから、通信対戦でボクが遊んで上げてたの・・・・・」


「負けたは言わんでも良いわっ!」


 爺ちゃん元気だね♪


「水増しとは良い度胸だ・・・一体何を水増しした?」


「・・・・・昼食(ランチ)間食(オヤツ)それに観光先の入場料とかアクティビティ料金を・・・・・」


 通信の向こうで陛下が盛大にコケ、その音がコッチにまで聞こえて来た。


「そ・・・そんなモノくらい堂々と請求せんかっ!」


「だってコノ歳に成ってマダお爺ちゃんからオヤツ代を貰うの恥ずかしくて・・・・・」


 忘れてた・・・この人も一応は筋金入りのお嬢さま、それに直接の孫で無くとも陛下にとって孫同然だったな?


「それを内緒にしたくて水増し請求とか言ってる方が恥ずかしいわっ!それに公費から出しとるんじゃ無いんだから、水増し請求と言うのは文法的に・・・・・」


「あっ・・・陛下それロンッ!」


 陛下の表情が歪み、


「多重ロンOKルールだよね?なら私もロンだよハインツ・・・跳満だ♪」


 ジェイナス婆ちゃんが通信越しに言った。

 気分を味わう為に最初だけビーチに出て来たけど、日焼けに弱いのでホテルに戻りラウンジでビールを飲みながら通信対戦してたんだ♪


「あの~申し訳御座いませんが、私もロンで御座います・・・倍満です」


 ジェリスさんに言われて陛下の顔が怒りで赤く成った!

 ちょっと怖い・・・これでボクの役を見たら?


「キッド・・・お前の役は?」


「爺ちゃん、ゴメン・・・」


 ボクは確定キーを押して自分の手牌を公開した。


「四暗刻、単騎待ち・・・」


「役満か~~~~~っ!」


 陛下の悲鳴がビーチにコダマした。


「最下位でダブル箱、もう半荘するかい?」


「もう良いです・・・私は降ります。支払いはクレジットで・・・・・」


 すると後ろからミューズに叱られた。

 その後ろにはイリスも一緒に居る。


「お兄さま、子供の内から賭け事など・・・・・」


「いやボクも賭け事とは今まで知ら無かった・・・そもそもレートだって決めて無かったけど?」


「いや最初にメールで、キッド君がいたから私も如何かと思ったのだが・・・・・」


「私のメールにもハインツから・・・悪戯かい大人気無い!」


 いつの間にか賭け事に成ってたのは、如何やら陛下の悪戯だったらしい!


「お爺ちゃんっ・・・逃げたわね?」


 陛下ったらコッソリ回線を遮断してた。

 全く・・・・・


「それより お兄さまも、海に来てまで端末でゲーム何て・・・それより私達と一緒に泳ぎましょうよ!」


「海の中まで綺麗に見えて、お魚いっぱい居るよ!お兄ちゃん行こうよ♪」


 とイリスもボクの腕を引っ張る。




 いつの間にかミューズとイリスは本当の姉妹の様に仲良く成って居た。

 彼女達の処遇だけどボク達の心配を余所に市民からの感情は同情的かつ好意的だった・・・マアあのマルドゥース公爵の嫁と娘と言っても、その所業を正面から非難した挙句に逃亡したのだ!

 しかも その後はナスティーズ枢機卿に捕らわれて辛酸を味わってた、彼女達を悪く言う奴は殆ど居無い・・・と思いきや今回の一軒で粛清の対象に成った者の近縁者が半ば嫌がらせで彼女達も罰するべきと声を上げた。


 彼女達に何の罪が有ると言うんだ・・・今回の暗殺事件を糾弾する帝国議会の貴族院の方で、そう言う事を言う貴族に対し証人として喚問されてたボクが言ってやった。


「良いぜ・・・文句が有るならボクが相手に成ってやるよ!どこ領のダレ様だい?自分が正しい事を言ってると思うなら堂々と名乗りなよ!」


 そこで名乗ろうモノなら脅しで無く本当にボクがスターシップで駆け付ける・・・そう成ったらオマエに勝てるのか?と、そう言う風に声に出さ無いで脅してやったら何も言え無かった。


 情けない奴等だ!


 マアそう言う事で、やっぱり危ないから当分アイギスさんとイリスはボクの船に居候する事に成った。




 ボクはサングラスを外して立ち上がると、


「そうだな・・・チョッと泳いで来るかな?」


 ミューズとイリスを連れて海に繰り出すと、周囲の観光客が手を上げて挨拶してくれる・・・殆どが見知った顔で休暇中のロイヤルフェンサーやディフェンサーの軍人さんだ。

 そうこのビーチはバーカンディ伯爵のプライベートビーチで遊んでいるのは軍人の皆さんとその家族、普段は観光客に開放してるみたいだけど今回は身内のみの貸し切り状態・・・まあコレなら不審者も入る隙は無いだろう。


 ここは大きい入り江の内側が遠浅のビーチ・・・そう言えば良くアニメでビーチで主人公達が入ってスグ下に頭を向けて泳げる様な深い海に成ってるけど、そんなビーチが本当に有ったら物騒だと思いませんか?

 絶対に溺れる人が出ちゃうよ・・・で深い所に飛び込みたい人は湾内のマリナーにある堤防の上を歩いて行き、そこから深い海に飛び込む様に成って居る♪

 ボクも堤防の先端に行くと驚くほどの深さと透明度で、ミューズとイリスは少し怖がっていた。


「溺れたら大変だから無理なら絶対に飛び込むなよ?浮き輪を使って浮いてれば良いんだから・・・・・」


「そ・・・そうします」


「お姉ちゃん、あそこで浮き輪が借りられるよ!」


 2人が浮き輪を借りに行くと、バカンス中らしいクランキー大尉に声を掛けられる。


「キッド君は泳げるのかい?」


「これでも海有り県の海岸線育ち・・・と言っても分かんないか?父がですけど船も所有してたし・・・・・」


 それで海に出てミューズに出会ったんだよな・・・壊されちゃったけどさ!

 堤防の先には飛び込むのは順番で屈強なお兄さんやお姉さんが並んでる、やっぱり見覚えの有る顔ばかりが並んでいる。


「不審者が入ったら気が付く様にさ♪」


「そう言えば大尉はジェリス艦長の部下でロイヤルフェンサー2の所属だよね?フェンサー1と一緒に休暇にしちゃって良いの?」


 交代でバカンスって聞いてたんだけど?


「なるべくキッド君とミューズ様の周囲を顔見知りでガードする為と、ロイヤルフェンサーで使ってるエルミスタイプを交代で改修する為さ・・・ほら陛下達の設計に軽い欠陥が有っただろ?」


 ジェイナス婆ちゃんが激怒してたアレね・・・この際一斉に回収するらしく、エルミスタイプの船を持つ艦隊が優先的にバカンスに入れられたそうだ。


「ところでキッド君は泳ぎに自信が有りそうだね?」


「そう言うクランキー大尉も中々良い身体をしてるじゃ無いですか♪」


 互いにニヤリと笑い合うと沖にあるブイを顎で指す。


「子供にはチョッと厳しいかな?」


「エンジンさえ強力なら、船体はスリムで軽量な方が有利なんですよ?」


 堤防の先に並ぶ列に2人横に並んで加わり、順番が来ると交代で安全確認してる監視役がスターターの役をかってくれ・・・いつの間にか浮き輪で海に浮かんでたミューズとイリスも黄色い声援を上げた応援してくれてる♪


「飛び込んだら、あのブイを触って戻って来る・・・戻って来たら、この堤防にタッチしてゴールと言う事で良いですね?」


「敗者は勝者にビールを進呈すると・・・如何だい?」


 ボクは少し考えて・・・・・


「フルーツビールでも良いですか?まだ普通のビールは美味しく無くて・・・・・」


「ドリンク類でも構わないさ♪」


 スターターに促されて横に並び、スターターが掛け声と同時に上げていた手を振り下ろして叫んだ!


「Go!」


 ボクは海に向かってダッシュしかけたが、


「若者よ、甘いぞ!」


 忘れてた・・・クランキー大尉って結構トリックスターだった!

 あの野郎スタートと同時にボクのスイミングパンツを掴んで下ろしたのだ!


「わわっ!」


「「「「「キャァァ♡」」」」」


 何とか前は抑え込んだけどオシリ丸出し、後ろに居た女の人が一際黄色い歓声を上げる!


「お先に♪」


「汚いぞっ!」


 先行するクランキー大尉にボクの闘志が燃え上がった!




 十数分後・・・・・


「わ・・・悪かった、俺が悪かったから返してくれ~~~っ!」


 出遅れたボクはクランキー大尉に続いて海に飛び込むと、すぐ追い付いて脇腹に突きを一発・・・そして余裕のブッチ切りでレースに勝利すると、遅れてゴールした大尉に襲い掛かって彼のスイミングパンツを奪ったのだ!

 堤防の上で飛び込みの順番待ちをしてた連中が、飛び込むのを忘れて大尉を指差し大笑いしてる!


「何でも言う事を聞くからパンツを返してくれっ、これじゃ海から上がれないし巡視員が来たら罰金を取られる!」


 そう成ったらボクも同罪に成るかな?

 それは面白く無いかも・・・・・


「さっきの慰謝料として?」


「好きな飲み物を何杯でも奢りますから!」


 ボクはニンマリ笑って、


「ここに居る全員にね♪」


「イヤそれは無いだろ・・・・・」


 途端に海上に浮いてる者と堤防の上から盛大な歓声が巻き起こり、クランキー大尉が観念してガックリ首を降ろすと彼に頭の上にスイミングパンツを置いた。

 そして皆がクランキー大尉では無くボクに礼を言いながらビールを受け取り、チョッとした❝お祭り騒ぎ❞が始まった。


「何してるの・・・チョッと大尉っ、何をしてるのよ!」


 様子を見に来たジュリアさんが水面に浮きながら、器用にパンツを穿くクランキー大尉を見て悲鳴を上げる。


「人のパンツを公衆の面前で下ろすからだ・・・反省しろ!」


 後で聞いたけど結構 遠慮無く皆が頼んだので、可成り手痛い出費に成ってクランキー大尉を泣かせたとか?


「ミスター・勝利者(ウイナー)も一杯如何ですか?あの大尉さんに払いは廻して良いんですよね?」


 海上に浮かぶ小舟を改造したバーの様な店が近付いて来て言った。

 そう言えば何軒か海上に浮いてて、でも飲みながら泳ぐのって危ないと思うんだけど?


「まあ危険なのは確かですから、アルコール類を注文した お客様にはコレを着用して頂く規則に成ってます」


 太めのリストバンドの様な物を出され、それは上腕に巻き付けて使うらしい。


「非常時には緊急信号を発し同時に膨らんで浮き輪に成ります・・・そしてドローンが引っ張りに来るのですが、それでも無理に泳ぎ続け様としたら電撃を放ってオシオキを・・・・・」


 救助もハイテクだ。

 そう言えば男女を問わず上腕にソレを着用して泳ぐ人は多い。


「ところでイメンケさん・・・そんな所で、そんな格好して何をしてるの?」


 ミューズがビックリしてる。


「いや驚いたな・・・この変装、見破られた事無いんだけど」


「いや変装ナンかして無いじゃん、普段の格好と違うから雰囲気全然違ったけど・・・・・」


 イメンケさんは不思議そうな顔をして、


「あのですね・・・普通の人は行き成り雰囲気をガラッと変えただけで、早々気が付かないモノですよ?それに今まで一度も気が付かれた事は無かったのに・・・・・」


 なんか自信喪失してるらしい・・・・・・


「で・・・如何します?一杯飲みますか?」


 ボクは小舟の横に浮かぶフロートに腰掛けてフルーツビールを、ミューズとイリスにはトロピカルドリンクとパフェを注文した。

 リストバンド型の携帯端末から引き落としのアナウンスが流れ、堤防の上に上がったクランキー大尉が叫んでいる。


「お前らチョッとは遠慮しろっ!だれだスパークリングワインをボトルで・・・ジュリア中佐っ!アンタ一応未成年だろっ、アッ、コラッ、お代わりは無しだ、お代わりは無しだってばっ!」


 楽しい事に成ってる♪


「ところでイメンケさんはバーカンディ・グループに戻ら無いの?会社に迷惑かけない様に辞表出しただけでしょ?」


 イメンケさんは笑みを浮かべて、


「マアあの殺し屋に対し少しムキにも成ってましたからね・・・今だから白状しますが私はグループの中で訳有りの顧客専門だったんです、当然ですけど顧客の警護も仕事の内でしてね」


「ボクが撃たれた事で・・・・・」


「いえキッドさんは関係無いですよ・・・私が警護も担ってるなんて知ら無かったし、傷付けられたプライドの回復に直接対決したかったのは私の問題ですから」


 そう言ってアームバンドを差し出した。


「これ・・・お酒なの?」


「それほど度数は高く無いですが・・・違うと思ってたのですか?」


 一応規則らしいので上腕にバンドを巻き付けながら、


「ボクにも飲めるって皆が言うから、名前がビールってだけでノンアルコールだと思ってたんだ・・・それにボクにも美味しいと思えるし」


「マダマダお子様ですね♪」


 失礼な・・・とは思わない、ボクは立派な❝お子ちゃま❞だから!


「まあ希望先に再就職出来無い様なら、バーカンディグループに出戻るのも無くも無いかと・・・でも第一希望は別に有るんですよ」


「ヘェ・・・どこなんです?」


 彼は(しな)を作る様な感じで、


「キッドさんの所に就職させて頂け無いかと・・・・・」


 ボクは思いっ切り上半身を反らせて彼から距離を置き、


「ボ・・・ボクはミューズ一人で十分だし、同性の人と永久就職・・・・・」


「そう言う意味じゃありませんっ!」


 逆にイメンケさんが乗り出して来て叫んだ。


「全く・・・そう言う意味じゃ無いって解かっててやってるでしょ、スターシップのクルーとして雇って貰えないかと言ってるんです!」


 怒りながら言われてしまう。


「キッドさんも知っての通り、これでも私は戦闘は一通り(こな)せますし諜報・潜入・調査に関しては抜きん出てると自負しています」


「何せ・・・」


 聞かれる心配が無い様に周囲を確認してから、


「伝説の諜報員、ミスター・エアだもんね♪」


「どこにでも必ず居ます、そして絶対見得ません・・・それに・・・・・」


 彼は自分の資格を表示したタブレットを差し出し、


「スターシップのマネージメントも♪実際私がいればキッドさんは面倒な運営を私に丸投げ、しかもスターシップにはミューズ様と言う財務管理者もいるから・・・・・」


「ミューズの財務管理、怖いんだけどね?」


 ミューズが不満そうな顔をして、イメンケさんが不思議そうな顔をする・・・・・


「私が見た感じ、遺漏の無くキッチリ管理されてるかと・・・・・」


「そっちは心配して無いけど、コイツお姫様だけ有って信じられない様な額の収入・支出に全然動じ無いんだ。見てて怖くなる・・・・・」


 ミューズとイメンケさんに思いっ切り笑われた。




 その夜ホテルのスイートルームで、


「イメンケさんは雇って正解だったと思いますよ、お兄さまも信用出来るから戦いに同行させたのでしょう?」


 ソファの上で遊び疲れて眠り込んでるイリスを膝枕し頭を撫でながら言った・・・アイギスさんが恐縮してるけど、ミューズは妹が出来た様で大はしゃぎだ!


「ついでに❝お母さん❞にはアイギスさんに成って貰ったら?」


「アイギスさんは❝お母さん❞ってより❝お姉さん❞て感じだから・・・」


 まあ確かに見た目が20代前半位にしか見え無いからな。

 アイギスさんは照れて頬を赤く染めてる、結構お転婆で過激な事も出来る人だけど・・・普段は清楚な貴族のお姉さんだ。

 彼女は水着に成ってビーチに出る事は無く、ジェイナス婆ちゃんやボク達の世話をする以外は読書をしている。


 水着に成ったりビーチに出たりするのが嫌な訳じゃ無く、自分がマルドゥース公爵の家系である事に遠慮してるらしい。

 無理強いはしないけど、そんな事を気にしないで遊べる様に成ってくれたら良いと思う。


「でもアイギスさんの水着姿には興味有るでしょ?」


「それなっ♪」


「当然です♪」


 イメンケさんとは息が合うけど、合流したポップさんも同意してくれ・・・ボク達の頭にミューズが投げたコースターの手裏剣が刺さる!


「ポップさんはスターシップの整備してから来てくれたんだよね?ダーグは?」


「沖合に停泊中のスターシップの甲板で日光浴をしています・・・海水浴や日光浴は好きだけど、人の多いビーチの様な場所は苦手だそうです」


 楽しんでるなら良いけど、


「後この度、正式にファルデウス帝国軍からスターシップに出向した技術武官と言う立場に成りました。先の功績に関する恩賞の一部として、そしてスターシップの技術供与の窓口として・・・・・」


「それって技術系のスパイって事じゃ・・・・・」


 ポップさん大慌てに成って


「キッドさんが嫌がる物は出しませんし、盗む積りは無いですからっ!」


 するとジェイナス婆ちゃんも、


「それにコイツが帝国に(もたら)したアサルト・ノーダーの技術が認められた・・・今後は各艦隊に機動海兵隊として配備されるらしい」


「それに階級はそのままですが、上級佐官並みの給与が・・・これもキッドさんの協力でノーダー開発に成功したお蔭・・・・・」


 ポップさんったらウットリした顔してる・・・・・

 一応いまだに正規の公務員であるポップさん以外、ミューズとダーグとジェイナス婆ちゃんには給料を支払うと言ったのだが、ダーグは受け取ってくれてるけどミューズとジェイナス婆ちゃんは受け取ってくれなかった。


「と言うより必要無いよ、私は戦闘して無いし戦闘中は対G中和カプセルの中で寛いでるし!それに・・・もう使い切れ無い程の報酬が、今だってガッポガッポと入って来る。キッドちゃんのお陰でね・・・・・」


「ジェイナス先生と私には帝国から新型艦・設計図の供給報酬が、スターシップのワイズマンズ・ライブラリーやアリスの協力で高性能の新型艦が・・・その金額ですけど、お兄さまは聞かない方が良いかと思いますよ?また頭痛が起きますから・・・・・」


 婆ちゃんは兎も角、ミューズはボクと一緒の財布だから受け取ら無いんだと思ってた!


「い・ま・だ・に太り続けてますよ、お兄さまのお財布・・・金額、聞きたいですか?」


「聞きたく無い!聞きたく無い!」


 ボクがベランダに逃れるとミューズが追って来る、眠そうにしてたイリスはアイギスさんがベッドに運んでた。


「財布の中を聞くのが怖く成って来た!それにしても、やっぱりミューズはお姫様だけ有って動じないな・・・・・」


 だけどミューズは寂しそうな顔をして、


「私が高額の金銭に動じ無いのは、その本当の値打ちを知らないだけですよ・・・お忘れですか、私お姫様として生活した事も教育を受けた事も無いんですよ?」


 そうか・・・ミューズは物心付くまで虐待され続け、救出されても療養生活だった。

 余命幾何も無い状態で・・・当然 皇女たる教育だって受けて無かった筈だ。


「そうか・・・ゴメン・・・・・」


 するとミューズは弾ける様な笑顔でボクに抱き付き、


「でもその分、今は()っごく幸せ!だって物語のヒロインみたいな・・・では無く本当に物語のヒロインに成ってるんだもん♪壮大なスペースオペラ、宇宙を股に掛ける超問題児キャプテンキッドの相棒ミューズとして・・・」


「・・・チョッと待て、誰が超問題児だ?」


 抱き付いたミューズのオシリをペチンと一発叩いてから、ボクはミューズの両眼を覗き込み抱き寄せると・・・そっと静かに唇を合わせた。

 室内の方から息をのむ音が・・・静かに見てるなら許してやるけど、何でベッドに行った筈のイリスまで一緒に成って盗み見てるんだ?


 でも今更ヤメる訳にも行かず・・・ボクはミューズを抱きしめたまま、踊る様に回転しながらベランダのカーテンを閉めた。


「お兄さま・・・大好き♪」


 唇を一旦離して言ったミューズの唇を再び奪う・・・当分これ以上先に進む積りは無いけど、接吻(コレ)だけでボクは幸せな気分に成れた。

 漸く唇を離したミューズは薄っすら涙を浮かべながら、何と表現したら良いのか判らない表情をしてた。

 でも間違いなく幸せそうに見えたし、ボクも幸せだと断言出来る・・・この幸せをボクは絶対に壊す積りは無かった。


 その為には・・・アズミーナよ、貴様の事は絶対に明かさない!

 貴様の事は墓まで持って行くよ!




 その翌日の昼前・・・ホテルのロビーで土下座してるクランキー大尉に、ボクは椅子を振り上げながらホテルの人に羽交い絞めにされていた。

 その前にはタブレットが転がっており表示されてるのはゴシップ誌や写真週刊誌の様なモノで・・・この世界にもパパラッチがいるらしく、昨日のビーチでのアクシデントを全世界に公開された。

 そうクランキー大尉に巫山戯(フザケ)て海パンを下ろされ、御開帳と成ったボクのオシリが世界的に公開されて仕舞った!


「ひ・・・平にお許しを・・・・・」


 マジ手打ちにしたろかと思ったけどジェリス艦長の大切な部下を叩っ斬る訳にも行かず、ミューズとジュリアさんの執り成しもあって落ち着きかけたところに・・・転がってたタブレットを拾ったイリスちゃんが声に出して記事を読み始める。


「これなんですか?エッと・・・この様な海パン姿を見せられても我々の信念は揺るが無い、我々の天使は間違い無く女の子の筈だ!この写真はきっと我らを欺く為に、いやコノ美しいオシリが男のオシリの筈が無い!我らの天使は胸が未成熟なだけなのだ・・・天使って性別が無いんじゃ無かったでしたっけ?」


「イリスちゃんっ、これ以上燃料投下しないで!」


「お兄さま落ち着いて~~~っ!」


 怒れるボクを皆で宥めてる・・・・・

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