キッド視点での結末
時間は少し巻き戻り、ここは講演会場でイメンケが暗殺者を撃退した直後・・・・・
ジョブ・トゥーニックから送られて来た暗殺者をイメンケさんが片付けたのだろう、正面上方から感じてた強いプレッシャーが消える・・・2度も取り逃がした奴は自分で片を付けるとイメンケさんは言っていた。
正直な話トゥーニックが送り込んだ暗殺者が一番手強いのは、イメンケさんと離れた場所で数瞬対峙する奴を見ただけで理解出来・・・アイツを相手に勝つ自信は全く無く、良くて辛勝 悪ければ敗北か相打ちだろう。
イメンケさんが片付けてくれた事に心の底からホッとするボクであった♪
『イメンケ氏より、ここからは大人の時間なので子供は覗か無い様にと言伝を・・・』
まあ言い方はアレだけど様はボクやミューズに聞かせたく無い、かなりダークで悪質な解決法を選んだのだろう。
『他には?』
『今のところ他の暗殺者およびアズミーナ・マルドゥースらしき者は会場周辺には見当たりませんが、構内には疑わしい者が大分侵入しています。ミューズ様が休憩されてる事に成っている部屋にも、近付く者はおらず・・・待って下さい』
何かに気が付いたらしく待つ様に言われ、ボクは講義を続けながら彼女の返答を待った。
『裏口から花屋が花束を持って来たのですが、中に爆薬が隠されてる様で・・・かなり巧妙な仕掛けですがロイヤルディフェンサーの方々が発見し偽の花屋を拘束しました』
講義をしながら報告を聞くのは難しいな・・・・・
『おっと陽動だったみたいですね・・・その隙を突いて暗殺団8名が別口から侵入し様と試み、ウェルム少将と部下の皆様と銃撃戦が始まりました。またロイヤルフェンサーのウェルム少将に応援を頼んでるんですね・・・・・』
あの爺ちゃんも元気だからなぁ、応援を頼まれてると言うより自分から手伝いに来ちゃうんだ♪
『どちらも襲撃犯のレベルはソコまで高くは有りません・・・従って恐らくトゥーニックの手の者では無いかと、ですがアズミーナが雇った者でも無いと思われます』
『なんで?』
『これだけの手勢を雇う金はアズミーナには無く、またトゥーニックが雇った者なら最低でも一流以上だからです。他にもキッド様を邪魔に思う者は大勢います、ソイツ等から送り込まれたと言いうのが正解だと・・・まっ炙り出しは陛下に任せた方が早いでしょう。続けて会場内外を索敵しますので、キッド様は原稿を読む事に集中して下さい』
『お前が直接読んだ方が早くないか?』
そう言ったがボクが技術を提供したと言うネームバリューも必要だそうで、却下されて引き続き講師役をさせられる。
そして講演が終盤に差し掛かると・・・・・
『キッド様・・・見付けました』
とアリスから通信が届いた。
まあ民主化は大分進んでる様だがファルデウスは帝国、当然ながら帝政の専制政治で貴族なんかがヤッタラ跋扈している。
今回の公演にも明らかに貴族然とした身形の者がおり、ただソレ等の貴族が教授や企業のトップを兼ねてる可能性も考えられた。
その中にジュリアさんに似た綺麗なお姉さんを見付け、良く見たら案の定マリアさんだったりするのだが・・・他にもチラホラ女性貴族または貴族の夫人が見られる。
それ等の講演を聴講してる人をアリスは一人づつスキャンしていた・・・貴族用の席は席次が決まってたので名簿と突き合わせ、ネットやデータベースから引っ張り出した情報と一致するか確認していた。
とある貴族の席に女性が座っているが、その席に座る筈の貴族の妻とは容姿が異なった・・・更に確認し娘や近親者・部下にも該当する者がいない。
そして監視カメラの映像から解析し変装したアズミーナ・マルドゥースと判明した!
『何でコッチに来たんだ・・・ボクを殺す積りだろうけどアイツが逆恨みしてるのはミューズの筈、そもそもボクを殺すのだってミューズの絶望する顔が見たいからだろうに?』
『それは早計と言うモノです、マダ決まった訳では無いでしょう?そこ迄アタマが回らずミューズ様を直接害する可能性も・・・』
『それなら控室の方に行くさ・・・見付かる危険を侵して迄コッチに来たのは、やっぱりボクを殺してミューズに見せ付けたいんだと思うんだけど?』
ミューズが会見するのはココでは無い、この後で記者会見をエントランスで行う予定だ。
『会見場所じゃ無くて講堂に来た理由は何だ?アリス・・・車から降りた所でミカさんの眉間を撃ち抜こうとしたのは、この女が雇った暗殺者で間違いないんだよな?』
『アノ状況からはソウ見るのが一番可能性が高いかと思います』
まあ間違い無いだろうけど可能性の域は出ないと言う事か?
『じゃあ逆に考えて見よう・・・アズミーナの婆ァはアノ位置にいて、あの位置から見られる場所にミューズが現れるとしたら・・・・・』
ボクは講堂のステージ上ほゞ中央に居て貴族席は比較的前の方に固まってる、あの女が座っているのはボクから見て左側・・・つまりアノ位置から表情を見物する積りなら、ミューズはボクの右手から出て来なければ成らない。
ボクも右手から出て来たし、その時に立派な花束を見かけた・・・講演が終わったらボクにくれるのだろうか?コッチでも同じ様な風習が有るんだな?
そう思った時、ボクの頭に中で何かが繋がった。
『アリス、あの女はボクの死ぬ瞬間をミューズに見せ付ける事に固執してる!この後ミューズが舞台の下手ボクから見て右から入って来るとして、そのミューズにボクが殺される様を見せ付けるとしたら・・・・・』
『先ほどの様に眉間を撃ち抜ける場所に、狙撃手を潜ませる場所は有りません・・・それならキッド様の側頭部を派手に撃ち抜かせる方がインパクトが強い、ですがソノ場所に潜んでたのはトゥーニックの雇った暗殺者でイメンケさんが排除しました。今では警備の者が常駐して警戒を・・・・・』
早くしてくれ、もうすぐ講義が終わって仕舞う!
『大口径の熱線ブラスターで頭を吹き飛ばす!』
『それなら真上からの射撃が効果的っ!』
高質量の熱エネルギーを真上から撃ち込まれると一瞬で頭が吹き飛ぶ!
ボクはブリーフケースの中の銃を握り締めると、舞台の袖・下手の方に若い女の人が入って来たのを視界に捉える。
そして花束を抱えるとボクに渡そうと舞台に進んで来た・・・あの役をミューズがすると思ってたんだな?
『アリス!講堂内の照明を全てオフにして、同時に作業用の足場の・・・』
『作業灯のコントロールを奪い・・・エネルギー反応、ジェネレーターが起動してます!』
それを検知したミカさん達が舞台袖で慌ててる。
『やれっ!』
視聴席を含む講堂内の照明が一斉に消え、同時にボクは飛び退いて場所を移動する。
撃たれるかと思ったけどジェネレーターが発したエネルギーを、射撃出来るほど貯めるのには間に合わなかったらしい!
そしてボクが体勢を立て直して両手で銃を保持し、上に銃を向けた所で屋根裏の様な舞台の上方に作業用の照明が灯ると、その中で照明を吊り下げた長い足場に銃を持ってる男が居るのを確認出来た!
「その位置ならボクを撃ち殺して、そのまま逃げるのは楽だっただろうけどさ・・・・・」
そいつを出来る限り下半身に集弾させ下から3発 発砲したら上手い具合に両足を撃ち抜いたけど足場から転落し、ぶどう幕を掴みながら落ちたので勢いは殺せたけどソレでも数メートルの高さから転落して来た。
しかも丁度ボクの上に狙った様に落ちて来る・・・ボクは余裕をもって冷静に転がりながら転落して来た暗殺者を避け、落ちて来た暗殺者の顎を蹴り上げた!
「かわいい女の子なら抱き留めてやっても良かったんだけどな」
意識を刈り取るつもりで思いっ切り蹴り上げたのに、思いの外タフらしくヨロヨロとした足取りだけど立ち上がった・・・けど今度は側頸部を横薙ぎに、もう一度 蹴りを入れて今度こそ眠らせる事に成功する。
ふとアズミーナの方を見ると彼女が・・・いやアノ女だけで無く全員が外に誘導されて避難中、まあ貴族や有力者ばかりの前の席は仕方無いだろう。
『アリス・・・』
『こちらでも追跡中、心得てますので御安心を・・・キッド様の行動にミューズ様はマダ気が付いてません』
ここから先は絶対にミューズに見せる訳にはいかない。
ミカさんに転落して来た殺し屋を任せてボクは帝国大学から出ようとする、ここでアズミーナを取り逃がしたら最悪マタ女装して自分を餌にしなくては成らないからね・・・もう絶対にやりたく無いんだよ!
「なのに何で出て来るんだ?」
教授か講師っぽいのが前から談笑しながら近づいて来る。
その人数は5人、擦れ違い様に銃を抜いたが解っており、銃を忍ばせてるのはアリスに警告されていたからね。
「なっ!」
逆にバックステップで敵の中心に飛び込み蹴りを交えながらゼロ距離発砲を繰り返し、少しガンカタっぽい動きに成ってグリップの台尻で相手の頭を打ん殴りながらモノの数秒で無力化する!
『キッド様が移動したので暗殺者達が動き出しました・・・これなら敵を選別し易く見付けた奴等は帝国側に情報を伝達、私はスキャンに全神経を集中してるので兵士への伝達・配備はミューズ様に頼んでいます。ですから忙しくてキッド様の事を追跡する暇は無いかと・・・・・』
「アリガト、助かるよ・・・・・」
面倒に成って来たので脳内での通信では無く言葉に出して言う、言葉を口から出さ無いで脳内で会話を伝え様と念じるのは地味に疲れるんだ。
『しかしキッド様は大人気ですね・・・判明してるだけで未だ8つの殺し屋さん達がキッド様を追跡中、よほど普段の行いが・・・・・』
「ケンカ売ってる?」
少しカチンと来たので声が不機嫌だと自己主張してる。
ちなみにアリスが敵を8つと表現したのは、ソロから団体まで混在してるからだ。
『そうは言ってもコレだけ恨まれるのって、中々達成出来ないかと・・・・・』
「奴等は真偽解析機が出回ると自分の首が危ないと思ってるだけだろ?別に恨まれてる訳じゃ・・・抑々ボクを恨んでる奴は大抵が悪党か外道、そして実行に移す奴の漏れなく全員が悪党・外道だかんな!コレだけは言わせて貰うぞ!」
弾倉を交換しながらアリスとの漫才が始まった・・・
「そんな事より・・・・・」
『あの女はもう学校の敷地から出て仕舞いました。キッド様は暗殺者達を避けながら進んでるので・・・でも安心して下さい。私も追跡してますし、暗殺者も後一集団 4人組を倒せば他からは逃げられます』
ボクを見付けて記者らしいのが走り寄って来るが、視界にはエネミーと表示されておりカメラ等が銃器である事も表示されている。
ボクは笑顔で手を振ってから徐に銃を引き抜いて発砲、皆なんで暴露たんだって顔をして倒れて行く。
「先っきのを含め余裕が有ったから殺さなかった、ミカさん達に回収頼んどいて・・・・・」
ボクは可成り高目の塀に飛び付き懸垂の要領で乗り越え通りに出ると、通り掛かったバスに乗り込みカチューシャの電子マネー支払いソフトで料金を払う。
『チャンと追い掛けられてるの?』
『ご安心を・・・あの女は現在ハイヤーで、この道を先行しています。時々監視カメラやスターシップの索敵の穴に入りますが・・・行く先を予測してカメラ等をハッキングしてますので、すぐに捕まえてますから御安心を♪』
休める内に少し休もうと身体の緊張を解き眼を瞑った・・・10分足らずでアリスに声を掛けられ乗降口に向かうと、それを察知して運転手が止めてくれ、そこから少し歩くと目の前に大きなビルが見得て来る。
『アズミーナは3人の人間を引き連れてました・・・一応は協力者だったのでトゥーニックから付けられてた様です。ですが先ほどアズミーナの元から断らずに離脱し消えました。如何やら雇い主のトゥーニックに何か有った様ですね?』
「イメンケさんだな・・・」
恐らくトゥーニックは生きてはいない。
「供の者が消えたのでアズミーナが大騒ぎし始めました・・・ホテルも対応に忙しそうで、潜入するなら今がチャンスだと思いますよ。如何しますかキッド様?」
「当然入らせてもらうさ♪」
ボクはアリスの案内で非常口からホテルに潜入する。
トゥーニックから派遣されてた者が急に居無く成った事で、アズミーナが派手に暴れたらしい・・・ホテルの人達が最後には諦めて退出して行った。
壊された物はトゥーニックに請求すると言ってたが、もう生きてはいまい・・・チャンと請求出来るのか他人事ながら心配に成るけど、トゥーニックが死んでてても党の方で払って貰えるかな?
『この部屋は防音性は最高で、最大出力で熱線ブラスターを発砲しても外部に音は漏れません』
アリスの分析にボクは満足した。
「何故・・・何故あんなガキ一匹を殺せないのよ!」
一人に成ると防音が良い事を知ってるのか、アズミーナは金切り声を上げながらソンナ事を喚き出し・・・オイオイいくら何でも不用心過ぎ、ホテルの者に聞かれたら如何するんだと思う。
ところでガキってボクの事だろうけど、殺せないのはオマエ程トロく無いからさ!
「あのガキすら殺せれば・・・あの子を心の底からで絶望させられるのに・・・・・」
あの子はミューズの事だよな・・・ボクは肉親の情と言えば母さんと爺ちゃん婆ちゃんしか知ら無い、悪戯好きで子供っぽかったけど大好きだった母さんや優しくてボクを大事にしてくれた爺ちゃん婆ちゃん達の事をね!
だからダラスの様に娘の存在を完全に無いモノとして扱ったり、お腹を痛めて生んだミューズをアズミーナの様に虐待出来る・・・そんな外道の気持ちや考えが全く分から無かった。
「あの子は幸せで居てはイケナイのよ・・・あの子は不幸じゃ無いと!少なくとも私が不幸な間は、あの子は地獄の苦しみを・・・・・・」
だから何でだよっ!
「それにはアノ子の見てる眼の前で、あのガキの命を奪わないと・・・それも考えられる限り残酷に!」
なんかミザリーとかRUNとか、昔見た狂気じみた映画を思い出す!
「そうよ・・・こんなに私が不幸なのに、あの子が私より幸福でいて良い訳が無・・・」
「アンタが不幸なのはアンタの自業自得、今ミューズが幸せなのは彼女が努力した結果だ!貴様に文句を言われる筋合いは全く無い・・・・・」
聞いてるのも我慢し切れ無く成って、ボクは隠れていたカーテンの陰から出て行った。
丁度ベランダに面した掃き出し窓に隠れるだけのスペースを見付けたので、外から侵入すると同時に隠れて様子を窺ってたんだ。
「お前は・・・・・」
テーブルの上に置いてあるハンドバックに彼女が飛び付き、中から銃を取り出してボクに向ける・・・ボクは銃が向けられてから、その手を熱戦ブラスターで吹き飛ばす!
耳を劈く悲鳴を上げながら痛みのあまり彼女は床を転げ廻り、その様を見下ろしながら質問したボクは自分でも驚く位に冷たい声が出た事に驚いてた。
「あれだけミューズには苦痛を味合わせて来たのに、自分の痛みに関しては驚く位に盛大で派手に悲鳴を上げるんだね?」
そう言って反対の手も吹き飛ばす、熱戦ブラスターの出力は最大で両手首から先が完全に消し炭に成って吹き飛んだ。
「貴様・・・私の事を誰だと思っ!」
再び悲鳴が上がる・・・今度は足首の先からを吹き飛ばし、そして反対の足も同じ様にした。
この世界ならソレほど重要視され無いかも知れないけど、この女の身元を完全に判らなくする為に指紋を確実に消去する。
まあ後始末には確実に陛下が手を廻す、この女の正体が露見する心配は無いだろうが、それでも危険性は排除して置きたいと考えたのだ。
「五月蝿いババアだなぁ・・・」
思わずボクは本音を漏らして仕舞う。
「良く判ったよ・・・お前は自分が優越感を感じる為にミューズを虐待し、その見下してたミューズが自分より幸せであることに我慢出来無かったんだ?」
「そうよ・・・あの子は地べたを這いずり廻ってるのが、お似合・・・」
本当に解かり易い奴で両眼の間に銃を突き付けたら黙り込む、それでも眼だけが異様に爛々としてて不気味に感じるのは気の所為だろうか?
「それとも私の面倒を、そうよ娘なのだから私の面倒を見る義務が・・・」
「もう良い・・・お前は、もう黙れ!」
何を図々しい事をと思いながらボクは呆れながら引き金を引き・・・奴の腹部に3発撃ち込むと、えっ?と言う顔をして崩れ落ちる
そんなに何を不思議そうな顔をと思ったけど、多分ミューズの母親だからボクは殺そうと迄はしないと思ってたのかも知れない。
「撃たないと思った?なら大分考えが甘いと思うんだけど・・・・・」
この事をミューズに話す積りは無い。
それでもコノ事がミューズに知られ、ソレが原因でボク達が離れる事に成るとしても・・・この女をボクは生かして置く積りは無かった。
この女は間違い無く、今後もチャンスが有ればミューズに害を及ぼすだろう。
ある意味この女は害虫と同じ早目に殺して消毒すべき、誰かが言ってたじゃ無いか「汚物は消毒だ」って!
「あっ・・・ま・・・・・」
待てとでも言う積りだったのだろうか?
ボクが再び顔の真ん中に銃を向けると、アズミーナは怯えた顔で何かを言おうとする。
でも止める積りは無く、出力を最大まで上げて頭を吹き飛ばそうとしてた!
「お前の存在自体がミューズにも害を及ぼす毒なんだな、だから正体が判ら無い様に頭部を完全に消し炭にさせて貰う・・・大人しく死んでくれ!」
その眼が恐怖で大きく見開かれるとボクは引き金を引き、そしてこの女の頭部を完全に吹き飛ばした!
「これで生活の事を心配する必要無く成っただろ?これ以上ミューズの人生に影を落とさないでくれ・・・・・」
ボクは物言わ無く成ったアズミーナの死体を一瞥すると、何かやるせない気持ちに成って落ち込んでいる。
それでもコノ場に留まる訳にも行かず、ボクはホルスターに熱戦ブラスターを仕舞って退室する。
その場を後にしホテルから脱出したボクは出た所で黒服の人間に声を掛けられ、黒塗りの車が並んでいる方に誘われ一台のリムジン・・・と呼ぶのか知らないけど、そう言う感じの車の前に案内される。
その中に居たのは我らが皇帝陛下、黒服の人達はファルデウス帝国の暗部に関わる人間なのだろう。
「あの外道は?」
「始末したよ」
ボクが車に入るとの黒服の何人かと車数台はホテルに向かい、後始末は彼等が片付けてくれると思われた。
「この事は・・・」
「ミューズには絶対に話さない、アンタも・・・あの女の事で少しでも悲しい思いをさせたく無いし、させる積りも無い。それにアノ女にソノ価値が有るとも思え無い」
ボクがダラスを殺した時もミューズは「悲しいと思わないけど心の中に穴が開いた様な気がする」と言ってた、つまりアンナ男が相手でも死を悼む気持ちは有ったのだろう・・・なら同じ思いをさせる必要は無くミューズと関係無い所で消えて貰う
「その件に関しては私も同じ意見だが・・・そんな事よりオマエの様子が気に掛かる、大分 気を病んでいる様に見受けられるが?」
と言われても・・・確かに今まで感じた事の無い気分の悪さを感じてる、だがソレがアズミーナを殺した所為の筈は無かった。
あの女に関し少なくともボクは殺意を感じても同情や憐憫を感じてる筈が無く、むしろ積極的に殺す事を考えてた位だった。
アリスの分析でもアズミーナは今後もミューズに危害を加え続け、今回は姿を眩ますだろうけど確実に再度何かを企むと目され、その確率は97.5%を超えていた。
「確かに何かオカシイんだけど、何がオカシイのか判ら無いんだ・・・陛下は解るかな?」
正直に今まで何を思い、何を考えたのか説明しながら聞いて見る。
「簡単だ・・・お前は理解が出来無いのだよ、何の罪も無い子供を蔑ろに扱い虐待出来る親の存在をね。見た事とも聞いた事も無い新手の化け物を見て、お前の頭が考える事を拒絶してるんじゃ無いかな?」
そう言えば無意識にダラスとアズミーナの事を頭から絞め出そうとしてたかも知れない、奴らが何故ミューズを虐待したのか想像しても途中で考えを放棄してたのを思い出す。
確かにアレは化け物でボクには人間として見る事が出来無い・・・奴等は明らかに狂っているし、そう言う奴をボクは人間として認められない。
そう感じてたのは悍ましさだったのだろう。
あいつ等は存在自体がボクにとっての禁忌だったのだ。
「そう言う時には、これに限る・・・・・」
陛下がグラスに酒を注いでくれたが、
「いいよ・・・此間ジェイナス婆ちゃんに飲ませて貰ったけど、全然おいしく感じ無かった。大人はソンナモノのドコが良いの?」
「別に味を楽しめと言ってるんじゃない」
ボクにグラスを渡して、
「鼻を摘まんで一息で飲んでしまえ、そうすりゃ眠れる・・・思いっ切り寝たら多少はスッキリするだろう」
渡されたグラスを暫く睨んでから、ボクは鼻を摘まむのを忘れ一息で飲み込んだ。
うん不味い・・・こんな物を良く飲むよね大人って!
「確かに眠れそうだ・・・」
ひょっとしたら何かを盛られたのかも知れない。
ボクの意識が急速に暗く成って行く・・・・・
ジョブ・トゥーニックが自分の雇った暗殺者に殺された事は、翌日のニュースを大いに賑わせセンセーショナルに報じられた。
トゥーニックの政党は陰謀論や民主主義への弾圧と声高に声明を発表、しかし仕事に失敗した現行犯の暗殺者が追跡された上に逃げ込んだのだ!
んで更にトゥーニックが殺されたのだから言い訳なんか効きゃしない、これ以上騒いでも間違い無く自分の足元を削るだけ・・・と来たら暫くして黙るしか無い事に気が付き沈黙する。
実際トゥーニックが殺し屋を雇った証拠は正式に調査が始まったらマアわんさかと出て来るのは間違い無い、高度にデジタル化された世界で資金の流れは隠し切れ無く日本の様に「記憶に御座いません」と間抜けな言い訳が利く筈も無いのだ!
「一つだけ懸念が有るとすれば暗殺者がトゥーニックを殺した理由だが、まあトゥーニックが何か裏切り行為をした・・・か、逃亡の手助けを頼まれ断ったトゥーニックに暗殺者がキレて殺されたと言う話で落ち着くだろう」
「本当にトゥーニックを殺したのは実は陛下の手の者だった・・・なんて噂が流れたりしない?」
そうならチョッと迷惑を掛ける事に成るが、
「本当に私が殺そうと殺して無かろうと、その噂は必ず流れるから気にするな・・・実際トゥーニックや奴の政党は私にとって目障りだったし、これを機会に完全に消滅させるから如何やってもソノ手の噂は流れるだろうな」
大白くも無さそうに言う爺さんに、
「と・・・言う事ならボクの役目は終わった。さて出航の準備でも・・・・・」
と言って立ち上がろうとした途端、両サイドから腕を掴まれてソファの上に引き戻された。
引っ張って来たのはミューズと爺さんだ!
「お兄さま・・・旅も良いですが、その前にチャンと休息をとって下さいね!」
「最低限の公式行事には付き合うと言ってくれたよな?少なくとも叙勲と式典には出て貰う、国の対面が保てないからな!」
何だかんだ言って何気に息の合ってる2人、叙勲なんて面倒くさいから逃げ様と思ってたのに・・・・・
「そんな事だと思った・・・・・」
「絶対逃がさんからな!」
両腕を掴んだ二人が放してくれない!




