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色々裏が見えて来る!

 うちの船のスタッフの中で一番最後に起きたのはボクで時刻は15時ごろに相当、ただし場所は第7ステーションに戻ってたので時差が有りプラス3時間は眠ってた事に成る。

 乗員が増えて来たので一応個室や客室を造ったけどボクは殆ど使って無い、いつもコクピット後方の茶の間(リビング)で寝てるからね・・・この部屋は食堂(ダイニング)台所(キッチン)も付いてるので実際はLDK、どうせ皆もソコに居るだろうから向かった所・・・案の定 全員居たんだけど陛下の爺さまがジェイナス婆ちゃんに胸倉を掴まれ締め上げられてる。


 何が有ったんだ?


「キッドちゃん・・・コイツからキッドちゃんが眠れ無いんで私の酒を飲ませたと聞いたけど?」


 何か嫌な予感がする。


「うん、勝手に飲んでゴメンね」


「そりゃ良いんだよ、私も飯や住居を提供して貰ってるんだから♪でもね・・・どの位飲んだんだい?」


 爺さまが婆ちゃんに気付かれない様に目配せで合図を送ってる・・・ので大体の話の流れは掴め、陛下はボクを眠らせた後ジェイナス婆ちゃんの酒を失敬し続けていたな?

 まあ気を使ってくれたんだし助けてやろう♪


「グラス1杯・・・・・」


 嘘は行って無い!

 グラスに数㎜だろうが表面張力が出るまで注いであろうが、グラス1杯には変わり無いだろう・・・ところが爺さまは顔を()らして呟いた。


「終わった・・・」


「へっ?」


 間抜けな声を上げるボクの前、ジェイナス婆ちゃんが凄い怖い顔で怒鳴った!


「何杯分だと思ってるんだ、ボトル半分以上減ってるじゃないか!」


「キッドよ・・・もう少し下駄を・・・・・」


「いや無理でしょ、誤魔化し様が無い!一体何杯飲んだのよ・・・」


 そんなにボクが飲んだ何て通用する筈が無いでしょ!


「キッドちゃん、正確には?」


「グラスに小指半分位・・・」


 もう誤魔化し様が無いから正直に言った。


「師匠、新しいボトルを2本進呈しますから・・・」


「3本だよ!」


 皇帝陛下の謝罪にしては世故(せこ)い取引だなあ・・・


「五月蝿いわい・・・ところでアイギス達は?」


「まだ眠ってますよ、起こしますか?」


 ジュリアさんもアイギス母娘の監視と言う名目でスターシップに居る、実際には監視で無く警護なんだけどね!


「過酷過ぎる生活をして来たんだ、暫く休ませてやれ・・・事情聴取は後でも良い」


「それよりナスティーズ達は如何成ったんだい?」


 すると何故かスターシップに来て食事してるウェルム少将が答える。


「手遅れになる前にワシが駆け付けたので尋問出来る程度には生きてますが、精神的に大分参ってるらしく支離滅裂な事しか言ってません。ですが医者の話では1週間から10日ほどで回復すると・・・・・」


「支離滅裂?」


 皆が首を(かし)げる。


「悪魔化したアイギスが自分を殺しにやって来るとか、寝言にまで行ってましたよ」


「アイギスは私達とずっと一緒に居たんだ・・・誰の事を見て悪魔化したアイギスと思ったんだろね、キッドちゃん?」


 ボクはソッポを向いてチョッと上達した口笛を吹いて誤魔化した。


「お兄さま、誤魔化せてませんからね?」


 ミューズが冷たい・・・


「ところでウェルム少将、随分と美味しそうなものを食べてますね?」


「美味そうだろ?」


 イリスちゃんの腕くらいある巨大なエビ、それをエビフライにして食べてる・・・調理したのはスターシップの自動クッカーだろうけど誰が操作したんだろ(スターシップの設備は登録されて無い人は使えない)

 エビフライはコッチの世界にも有ったけどタルタルソースは無かったのに、何故かウェルム少将の食べてるエビフライにはタップリと掛かって湯気を上げてる・・・そんなの見せられ涎が垂れて来そうだ。


「うちのスターブルーム農場で一番デカいエビだ!オマエに自慢し様と態々生かしたまま持って来て、ミューズ様に調理して貰った・・・・・」


 このクソ爺!


「タップリと土産に持って来た!キッドも後で食うと良い♪」


「ウェルム爺ちゃん大好き!」


 思わずウェルムさんに抱き付いて仕舞う。


「まったく何だかんだ言ってオマエもハインツと同様、キッドを孫扱いしてデレデレしおって・・・・・」


「それを言ったらジェイナス殿もでしょう?」


 婆ちゃんも顔を赤くしてソッポを向く。


「冗談はさて置きナスティーズは兎も角、光神教の方は?」


「施設を完全に制圧して取り敢えずアイギス殿誘拐事件に関わる者は、ほゞ全員捕らえた・・・だが捕らえ残しは居るだろうし、そこからは警察の仕事・・・既に警察に引き渡し済みだ」


 タップリとエビフライにタルタルソースを絡めながら続ける。


「戦闘ポッドまで隠し持ってたのだから関係者は軽くても終身刑、それも重労働を科せられる様な最悪の監獄でね・・・ナスティーズ枢機卿は本来死刑だろうが、もっと苦しめろと言う陛下の命で終身刑に出来無いかと検察に相談してる」


「シンパの貴族や信者からの反発は?」


 彼はエビフライを美味しそうに咀嚼しながら・・・


「それが全く無くって驚いてる・・・シンパである貴族共はキッド君の方を恐れ、ナスティーズ枢機卿へ下手に手を差し伸べたらキミに噛み付かれないかと恐れてるんだよ」


「そんな人を狂犬みたいに・・・」


 まあ大分貴族を破滅させたから、ところが・・・・・


「狂犬・・・お兄さまって、そんなに可愛いモノかしら?」


「キッド君なら獅子かワニかサメとか・・・・・」


「そんな現実の動物で吊り合いますか?ドラゴンですよ質の悪い♪」


「イメンケさん・・・車の件だけど?」


 ボクの脚に縋りつくイメンケさんを無視して、


「じゃあ信者の方も?」


「むしろ捕らわれ無かった連中、つまり清廉潔白な信者は逆に喜んでるよ・・・悪質な信者が消えたとね」


 そんなモンで良いのか?


「これで後はボクを背後から撃った奴の依頼主だけだね?」


 ジョブ・トゥーニック・・・だけどマダ証拠が無いし、全面対決するのは少し後に成るだろう。


「正直オマエは常に最強の戦闘宇宙船に乗ってると思って簡単に襲われると思っていなかった・・・私の責任だ」


「鉄火場に自分から飛び込んだ自覚はあるから文句を言う気は無いけど、それにしたって警備がザル過ぎじゃ無かったかな?」


 ジュリアさんが狙われた皇帝の会見の話だ。


「いやボクにはスターシップとアリスの様な高性能な分析屋(アナライザー)が居たから見付けられただけか、普通の暗殺者に対してなら十分以上の警備だったのか?」


「いや我々が甘かったのは確かだ・・・だがナスティーズ枢機卿一派が一流所の暗殺者を揃えていた事も確かだな。ただ・・・」


 陛下は一息入れてから、


「ジョブ・トゥーニックが飼ってるのか雇ったのか、キッドを撃った奴は並大抵の暗殺者じゃ無い・・・超一流だ」


 流石に背筋に冷たいモノが走るな。




「ミスタ・トゥーニック・・・キャプテン・キッドは子供と言え救国の英雄、そんな奴を狙うのに場所を考えていられると思いますか?実際アナタが文句を言ってる記者会見での襲撃、私は全力で当たったのに失敗しましたよ」


 線の細いカマキリの様なイメージの男が言った・・・右腕を吊っている。


「だが会見の場で襲った所為で報道が大騒・・・」


「あそこにはナスティーズ枢機卿の一派も居たんだし、全部アッチに押し付ければ良いじゃ無いですか?」


 そう言う男は薄笑いを浮かべながら言うが、


「そのナスティーズはもう捕縛済みだ・・・資金の流れや尋問で奴等の雇った殺し屋は全て洗われる、つまり奴等がキミを雇って無い事もスグに判明する・・・あの皇帝を甘く見るな」


 そう言いながら強い酒が注がれてるグラスを一息で開けた。


「ミスタ・トゥーニック・・・そんな事を言ってては奴を殺す事は出来無い、チャンスが見得たら即座に撃たなければ獲物は得られない」


「それでも今回は失敗した・・・次が有るとは限らんだろう?」


 不機嫌そうに吐き出すジョブ・トゥーニックだったが、


「そうビクビクし無い事です・・・なに次は確実にキャプテン・キッドを仕留めますよ、今度こそ確実に・・・・・」


 そう言って髪を描き上げながら、


「私の肩を撃ち抜いた奴も一緒にね♪」


 と微笑んだ。




 アイギス母娘が眼を覚ましたとアリスが教えてくれ、ミューズにリビングへ案内する様に頼む・・・正直ミューズの虐待が彼女の所為だと言うのが気に掛かっていた。

 ミューズに連れて来られた彼女はマダマダ憔悴(しょうすい)してる、あんまり長時間掛け説明させ無い方が良いだろう。

 スターシップのクルー以外は爺ちゃんとジェリス艦長にジュリアさん・ウェルム少将・アヴァ元帥にイメンケさんも居てアイギスさんの口からミューズの虐待に関する真相が語られる。


「アズミーナが本当に憎んでいたのは私なんです・・・だから隔世遺伝で私と似て仕舞ったミューズ姫は、私の代わりに八つ当たりで酷い目に・・・」


 おい爺さま・・・その女がマダ生きてるなら、今から殺しに行っても良いか?


「やめよ・・・既に罰は下してある。これ以上何かするなら私刑でしか無いから、私は全力で止めざるを得ない・・・マア気持ちは解かるし私も同じ気持ちだよ」


 ボク同様に怒ってるのにボクを止められる辺り、爺さまは確かに良い治世者だけど・・・正直言って全く納得出来無かった!


「アズミーナは何でアイギスさんを恨んでるの?何か恨まれる様な事を・・・」


「そこは私の方から説明し様と当時の調書を持って来た・・・あの女は正直言って幼少期から甘やかされ、家族には可愛がられていたモノの外では性根が腐ってると蔑まれていた。また学業も疎かで劣等生のレッテルを張られ、夜な夜な外で遊び回ってたんだ」


 ボクが聞いた事に陛下が答える、確かに犯罪者として訊問したなら彼の方が正確な情報を持ってるだろう。


「そこでダラスに引っ掛かったって訳だ」


 ミューズが身体を強張らせてるので抱き締め、少し震えているので頭を撫でて落ち着かせ様とするとボクに身体を預けて来る。


「マアそんな所だ・・・年齢が一回り以上離れているアイギスが優秀な成績で学業を修め、そして本家の次期当主の許嫁にと請われ劣等感が爆発したんじゃな・・・・・」


 テメェと親が悪いだけだろうが!


「そんな中でダラスに引っ掛かり、子を宿して次期皇妃に成れるかもと考えたら天にも昇る様な気持ちだったろう・・・ところがダラスはアズミーナの子供を自分の子だと認め無かった!」


「そうです・・・しかも生れて来たのが劣等感の元である私にソックリと来ては、性格の捻じ曲がって嫉妬深いアノ(ヒト)がミューズ様を虐待するのも当然だったのです」


 ボクの奥歯がギリッと音を上げる。

 そんな下らないコトで娘を死ぬほど虐待したのか?

 呆れてモノが言えない・・・・・


「あの女は努力と言うモノを全くしない、自分はする必要が無いと本気で思ってる・・・なのに自分が誰かに比べて劣ってると評価されるのが我慢出来無いんです・・・・・」


 ウンウンそう言う人って偶に居るよね?


「陛下、自分の立場は弁えてる積りです・・・この私を如何か公開処刑に!そして御願いします・・・頼める立場で無い事は重々承知してますが、如何かイリスだけには寛大な・・・・・」


 イリスが泣きながらアイギスさんに抱き付く。


「論外だな・・・・・」


 と言いながらも陛下はアイギスさんを如何するのか見当が付いてる。

 ボクの見込んだ爺さまだよ♪


「オマエを処刑すれば折角 取り戻した孫娘は私を見限り永遠に私の前から姿を消すだろう・・・それに私には孫にしたいクソ生意気な小僧が居るんだが、ソイツだってオマエを処分したら私を見限る!漸く取り戻した孫達を貴様は私から取り上げ様と言うのか?酷い奴だな・・・・・」


「素直に殺したくないって言えば良いのに・・・それよりクソ生意気な小僧ってボクの事?」


「他に誰が居る?」


「お爺さまも素直じゃ無いんだから、だからケンカしつつも仲が良いのよね・・・似た者同士♪」


「「五月蝿いよ(ぞ)、ミューズ!」」


 ミューズを抱き寄せてオシリを撫で廻し、横から陛下の爺ちゃんに「いい加減にしろ」とゲンコツを落とされた♪


「オマエの処遇は追って知らせる・・・オマエ達母娘は、この船から沙汰が有るまで出無い様に」


 そう言って帰り支度を始めた。




 爺さん達を送りながらイメンケさんとの約束で車のディーラーに行くと言って出て来た・・・車はリムジンじみた大型車で運転席にはイメンケさんと助手席にはジェリス艦長に、後部の対面して座るタイプのシートにはボクと陛下にアヴァ元帥とウェルム少将が座っている。

 正直言って色気も潤いもヘッタクレも無いメンツだけど、殺し屋に狙われている以上ミューズを連れて来る訳には行か無い・・・それにミューズに聞かせたく無い話も有った。


「私達は狙われても良いのか?」


 と言う陛下の言葉に、


「良いんじゃない?巻き添え食らったにしても、どうせ残ってる余生も然程長い訳じゃ・・・・・」


 言い切る前に陛下の爺ちゃんから❝チョークスリーパー❞が炸裂、横から手を伸ばしたアヴァ元帥に❝ウメボシ❞をされ、正面からウェルム少将に❝電気アンマ❞で攻撃される!


「キッド君!君と一緒に居る御三方は兎も角、私の余生は大分あると思うのだが・・・・・」


 まあジェリス艦長は燻し銀のオジサマだけどマダマダ若い、一緒にされたく無いのは分かるけど発言のタイミングを考え様よ・・・後ろから乗り出したアヴァ元帥にチキンフェイスロックを・・・古い技ばかり使いやがって!


「冗談はさて置き、1~2年で良いからアイギス母娘を・・・」


「暫くスターシップで面倒を見ろでしょ?それが一番無難かもね・・・」


 陛下はニヤリと笑みを浮かべ、


「やはり心得取ったか・・・・・」


 と言った。


 まあ最初からそう成る様な気はしてた・・・アイギス母娘を不問にするのは生い立ちから考えて当然、ここで彼女達を処分しろ何て言う奴が居たらボクが相手に成ってやる!

 だけど市民感情は兎も角・・・軍関係者は納得がいかない人だって出て来る筈、特に家族や友人を戦役で亡くした人や負傷した人、それに反乱軍に無理矢理 徴発された人達やその家族や友人だ!

 アイギスさんやイリスに罪が無いと分ってても、彼等の怒りの矛先が2人に向かう可能性は十二分にある。


「2人をマルドゥースの嫁と娘で無く、キャプテンキッドの一味にしたい・・・と言う事でしょ?」


「正解だ♪」


 ボクは少し考えてから、


「船賃は高いよ?」


 陛下が驚いた顔をする。

 アイギス母娘の事に関し、ボクが交換条件を出すと思わなかったのだろう。


「アンタが追跡して無い筈は無い・・・何もされない内から殺しに行かないから、ミューズの母親と一族の動向を教えて?」


 それかと言う顔をすると陛下は意外と素直に語り出す。


「ミューズの生家・・・マルドゥース公爵家の分家であるマルドゥース伯爵家は、ミューズの母親たち兄弟姉妹と その親であるマルドゥース伯爵と伯爵夫人が3人・・・そしてミューズの虐待に関わってたなら使用人達も含むな」


 顎に手をやって思い出しながら、


「先ず伯爵当人と2人伯爵夫人は毒を煽って自害、まあ爵位を取り上げ領地も財産も没収した・・・絶望したんだろうがミューズが会わせられた眼に比べれば苦しむ期間が少なかっただけマシだ!第3夫人はアイギスの母親だが、公爵家に嫁いでたので難を逃れた・・・だがアイギスの失踪を手助けした後に自害してる、まあこの女だけはマトモな思考の持ち主だったのだろう」


 それに付いては同感、


「続いてミューズを生んだ女アズミーナには二人の兄と姉が一人、更にアイギス以外の妹と弟が一人づつ・・・腹違いの子も混じっては居るが、ドイツもコイツも虐待に関わってたクセに自分は関係無いと言い続けてた。それでも暴き切ってやったがな・・・結局ミューズを傷付けたモノは、殆どが無様な最期を遂げている。ただ・・・・・」


 一息区切ってから、


「ミューズの母親アズミーナだけは最後が分からない、暗部の者を調査に向かわせたのに足取りがパッタリ途絶えたのだ。身体を売って生計を立ててたらしいが、性格の所為でロクな客が付かず・・・だからドコかで誰にも気付かれず野垂れ死んだのだと思ってたのだ」


「暗部の人が出張って足取り掴めなかったの?」


 陛下は鼻を鳴らし、


「アズミーナの最後は自治されてる廃棄コロニーで迎えた・・・普通のコロニーでは貌が知れ渡り迫害の対象にされてたから、自分がミューズにした事を自分の身体で存分に味わって廃棄コロニーに逃げ込んだのだ」


 ボクの感覚で言うとスラムや貧民街に該当するコロニーだったと思う。

 ならず者や犯罪者等が逃げ込んで治安最悪の場所だった筈・・・・・


「そう言う所って宗教団体が炊き出しとかしてるんじゃ無いの?」


「ちょっと判らないな?」


 陛下も誰も知らなかったのでカチューシャ経由でアリスの聞いた。


『行ってる筈です・・・ジュリアさんちの牧場で培養肉を試食したでしょう?ああ言う物を焚き出してたみたいですね・・・・・』


 うん安いだけが取り柄で人間の食物じゃ無い奴ね!


「アリスの話じゃ光神教も焚き出してたらしい・・・」


「それが何か関係有るのか?」


 皆が首を傾げる。


「ナスティーズを痛め付けながら情報を出来る限り吐かせていたんだ・・・ナスティーズはアイギスさんやイリスの情報を、ある女から入手したと話してた・・・実はアイツに火を点けたのは、その女の事を知らなかった腹癒せだったんだ♪」


「オマエと言う奴は・・・」


 ウェルム少将は呆れ顔だ!


「正確には子飼いの信者がナスティーズに引き合わせたんだけど、そいつは庭の銃撃戦でジュリアさんに蹴り殺されちゃったんだよね・・・ノーダーで!」


 暫く生きてたけど助け様が無かったんだ。


「年齢は40代後半・・・髪はブロンドで眼はグレー、全体に細い躰で細面・・・・・」


「年齢と体型以外はアズミーナと合致しないですな?」


「外見はカツラやコンタクトそれに整形も有るから参考に成らん・・・それに体型だって簡単に手術で・・・・・」


 皆が言うが、


「爬虫類それも蛇を思わせる眼をしてたそうだよ・・・・・」


 皆が一斉にコッチを向いた。


「初めてミューズを生んだ女の写真を見た時、愛し合って無くても同類って引き付け合うのかと思ったんだ・・・陛下には悪いけどダラスを見た時に蛇みたいな印象を受けたんだけど、アズミーナの写真を見た時にも同じ気色悪さを感じたんだよ。コイツ蛇っぽいってね・・・・・」


 皆が厳しい顔をしてる。


「光神教はファルデウスだけで無く広く宇宙に普及してる宗教何でしょう?本当の意味で信仰してる人が激減していても、そう言う組織が姿を眩ませたり整形するのに協力するなら?」


「逃げるのは比較的楽だな・・・」


 ジェリス艦長が呟いた。


「まあ教団が手配したにしても、ソコ迄はナスティーズも関わって無く知らなかったけどね・・・そこの所も尋問する様にして貰って良いかな?」


「安心せい、元より遺漏の無き様に取り調べる予定だよ」


 ウェルム少将が自信タップリに言うとボクも安心して、アリスに頼んでスターシップの状況を確認した。

 ポップさんはノーダーの改良を、ミューズはジェイナス婆ちゃんと一緒に陛下の新しい船を設計している。

 その横でジュリアさんはオヤツを・・・太っても知らないからな!


「アリス・・・他の皆には内緒で、アイギスさんに繋げる事は出来る?」


『アイギス様は客室でイリス様を寝かし付けてます・・・自分の方が疲弊してますが、イリス様も中々重傷で・・・・・』


「イリスの睡眠は?」


『かなり深く当分起きませんね』


 そう言う事で繋げて貰った。


「アイギスさん、少し内密で話が有るんです」


「な、何かしら?」


 このヒト絶対にオバちゃんって言え無い、如何転んだって❝お姉さん❞だ。


「貴女の主観で良いし間違ってて構わない、一意見として扱いますので正直に返答して貰いたい・・・アイギスさんから見たアズミーナは、ミューズが幸せを掴んでも黙って見過ごせる女ですか?」


 絶対に祝福する事は無い事だけは解ってる。


「それは如何言う・・・」


「ミューズはファルデウスを救った英雄キッドの相棒にして恋人、その不幸な生い立ちも含めて国民から悲劇のヒロインと認識され、そして帝国を救った英雄を引き連れて来た少女と認識されてます。世間での人気は鰻登りで・・・・・」


 チョッと自分で言うのも恥ずかしいけど、


「そう言えばファルデウスではミューズ様もアイドル化して、キッドさんに次ぐ人気を誇っているな?」


「そのボクの人気って英雄としてだよね!アイドルとしてじゃ無いよね?」


 ジェリス艦長の言葉に凄く心配に成ったので聞いて見たけど、彼はソッと視線を外した・・・何で!


「その事は後で詳しく・・・で如何でしょう?どん底まで落ちたアズミーナは、ミューズが持て囃される事を・・・」


「絶対に認められ無いでしょうね?」


 力強く断言する様に言った。


「あの女は自分が嫌いな人間が自分より褒め称えられ認められる事、そして何より自分より幸福に成る事を絶対に許せない人間です。もし生きているなら何が何でもミューズ様を害そうとするでしょう」


 そう来るだろうとは思ったけどね!




 爺さま達を政庁に送りイメンケさんに新しい車を用立てる・・・そしてスターシップに戻るとコクピットに一人篭もり、他の人間の入室を艦長権限で禁じた。


「誰かに篭ってる事を気付かれたら教えて・・・」


 そう言ってアリスと共に情報を漁るが、


「前回は暗殺が特定の場所で起こると条件付けられたので発見出来ましたが、今回の様に不特定多数の情報の中から特定の人物を索敵するのは・・・・・」


「流石に難しいか?」


 何か調べる指標が有れば・・・


「逆にアクションを起こして敵を誘う方が有りかとも・・・」


「それしか無いのかな?」


 折角ナスティーズを潰して敵に挟まれてる状態から脱したのに、新たな敵が発生して結局2つの敵にサンドイッチにされている。


「ボクはハムや卵じゃ無いんだから・・・」


「食欲も無さそうですしね・・・夕食は軽くサンドイッチでも如何でしょう?BLTサンドで・・・・・」


 ボクが立ち上がりながら部屋の施錠を解除させる。


「スクランブルエッグも加えてB()LTサンドにして置いて♪」


「スクランブルエッグはチーズ入りですね?」


 先ずは工房に向かうと何か改良点が有ったのだろう、ポップさんがノーダーの関節部分を稼働させていた。

 一方でミューズとジェイナス婆ちゃんは新生アトロペルスの設計図を見て微笑み合ってる、如何やら満足の行く設計に向かっているらしい。

 ちなみにコクピットを出てスグのリビングでは、ジュリアさんと何時の間にか来てたミントさんがホッコリしてて・・・ボクの作らせた羊羹に満足してるらしい。


「アリス・・・叙勲や式典の予定表を送る様に陛下に連絡、プログラムが送られ次第 暗殺されそうな方法や場所を考察して」


「了解です」


 多分ジョブ・トゥーニックとアズミーナ・マルドゥースは繋がっている。

 ボクがジュリアさん暗殺に対応してる時、偶然チャンスを見付けて襲い掛かって来た訳じゃ無い・・・最初から計画的にボクを殺す為、囮としてジュリアさん暗殺を嗾けたんだとね!

 アズミーナがジョブ・トゥーニックより頭が良いとは思え無い、多分マリオネットはアズミーナの方だ・・・そしてトゥーニックの目的はボクの暗殺、アズミーナの目的はボクを殺してミューズを苦しめる事!


「なんだ最初から目的は兎も角、獲物は同じだったんじゃ無いか!」


 そんな事を思ってると陛下の爺さんから通信が入る。


「貴様・・・自分を囮にする積りか?」


「ミューズと乗員の安全に配慮頂ければ・・・・・」


 務めて明るく言った。


「覚悟が出来てると言う事だな?だがミューズを悲しませる真似は・・・・・」


「奴の狙いはミューズの絶望、絶対にさせ無いしボクも絶対死なないさ」


 ババァ・・・テメェは絶対に叩き潰す!




 その頃・・・とある貧民窟の安宿・・・・・


「何で私が、こんな場所で・・・・・」


 贅沢するからスグに金が無く成ると・・・教えても無駄なので誰も言わなくなっていた。

 この女が馬鹿な真似をし無い様に見張る為、交代制で付けられた執事とメイドが一人づつ居る。

 この女に自分等の雇い主が全てが終わった事を確認して残金を支払うまでは、何が何でも付いて無くては成らないが正直言って苦行と言えるレベルの仕事だった。


『ボーナスでも出るならマダ我慢出来るが、それともコノ女を自分達の手で殺す機会が有るなら・・・・・』


 仲間が皆同じ事を考えている。

 一方で付き添われてる女はと言うと


「私がコンナ目に会ってるのに・・・あの女にソックリなアノ子は英雄の一人として持て囃され、そんなのは絶対に認められ無いわ!」


 そう言うのはミューズの母親アズミーナであった!

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