似非宗教家の最後と・・・その後?
ボクに背を向けて走るナスティーズ枢機卿を、どこかのホラー映画の殺人鬼みたいに速足で歩いて追い詰めるボク・・・13禁だっけ13金だったけ?
大柄と言え歩いて追って来るバケモノの殺人鬼から走って逃げてる犠牲者役は逃げられ無いのは御愛嬌、映画の演出にケチを付ける様なツマラ無い事はしちゃいけない。
でボクが現実でジ〇イ〇ン化してるのは超常的バケモノと化したからでは無く・・・正面から見るとスッポンが直立した様に見得るほど太ったナスティーズは走っても速足で歩くボクより遅いだけ、そして簡単に殺せるほど奴の罪が軽く無いと判断したボクが嬲り殺しにする為に時間を掛け追い廻してるだけなのだ!
「ギャアァァァ~~~~~ッ!」
盛大な悲鳴を上げながら無様に転げ回るナスティーズ、奴の右手の指を全部飛ばしたので今度は手首から吹き飛ばしたのだ!
痛みに逃げる事も忘れて転がり回ってる奴の腹の脂肪を、レーザーを数発掠めて削り取って行く・・・漸く立ち上がるとヒィヒィ言いながらマタ逃げ出した。
ちなみに既に左手は肘から先が無い・・・・・
「た・・・助けてくれっ、助けてくれぇぇぇ~~~~~っ!」
五月蝿いから腹の脂肪を抉ってやる・・・レーザーでは無く熱線銃を持って来た方が良かった、アレなら効率的に奴のダイエットと止血を繰り返せるのに♪
「バ・・・バケモノッ!」
さっきまでは手当たり次第に物を投げてたけど、両手とも破壊してやったので出来無く成ってる♪
「早く逃げ無いと、お腹の肉をもっと削って強制ダイエットさせちゃうぞ♪」
レーザーで更に奴の腹の肉を削って行く・・・ただ何か様子が可笑しい?
そりゃ殺され掛けてるんだしボクがトドメを刺さ無い事を奴は知ら無い、でもマダ銃弾を撃ち込まれる前からボクの事を見て怯え捲っているのだ!
「悪魔だ・・・」
バケモノの次は悪魔かい?
「クソッ、アイギスに悪魔が乗り移ったか?!」
ボクの事をアイギスさんと勘違いしてるらしい・・・そう言えばナスティーズの愛人は男性で同性愛者の人だった筈なのに、アイギスさんがコイツ本人にも身体を汚されたと言ってたな・・・ヤダなぁドッチもイケる人だったんだ!
それでボクの事をアイギスさんが悪魔化したモノだと思ってる訳だ・・・なにせ今ボクは元の黒髪と黒色の眼に戻してる、金髪に緑の瞳だったアイギスさんが黒く染まったらと考え安直だけど悪魔憑きと思ったのかも知れない。
そう言えばボクはメディアの前に出る時はミューズと同じ色の髪と眼の色に、この色は元々ボクが住んでた世界からコッチに来る際ミューズが悪戯で自分と同じ色に変えたモノだった。
「ぐぎゃぁぁぁっ!」
今度は足を削って行く。
折角だからアイギスさんに成り切って置こう♪
咄嗟の思い付き何で用意もして無いが、女っぽい声を出して奴に言った・・・女の声色って難しい!
「如何したの?私には、もっと酷い事したクセに・・・もう降参?」
「ぎゃあああああっ!」
反対の足の甲を撃ち抜き、足の指を一本づつ弾き飛ばす!
「ゆ、許してくれぇぇぇ~~~~~っ!」
また背を向けて走り出すが遅い・・・ボクは歩くペースを落としながら、レーザー銃でナスティーズ枢機卿をネズミの様に弄ぶ!
今日のボクは残酷なネコさんだ!
「こんな所で話を続けるのも何だ、取り敢えず話の続きは船に戻ってからし様じゃ無いか?」
「でも、お兄さまが・・・・・」
キッドちゃんは何処かに行ってしまったけど、何をしてるのかは解っている・・・こんな目にアイギス母娘を会わせたナスティーズを、ネズミを甚振るネコの様に追い掛け回しているだろう!
まあ少なくともスターシップに乗ってる人間で奴の同情する馬鹿な奴は居ない筈、自業自得だから精々苦しみ抜いて地獄に落ちると良い・・・そっちはキッドちゃんに任せて私達はスターシップに帰る用意を始める。
一応コッチでアイギスから聞いた情報はアリスがまとめキッドちゃんに転送する予定だけど、それはウェルム少将の部下がキッドに追い付いてナスティーズの身柄を受け取ってから・・・追っかけてる最中に余計な事吹き込むと勢い任せてキッドちゃんがナスティーズを殺しかねないからね。
「年寄りに徹夜とは身体に応えるよ・・・今日は一日寝て過ごす、勿論ミューズもアイギス達もだよ。お肌の何よりの大敵は寝不足、ガサガサに成った貌でキッドちゃんに見られたたく無いだろ?」
途端に貌に手をやって手触りを確認し、ホッとしてるミューズに・・・・・
「そうやって油断してると・・・すぐボロボロだよ!」
まあ実際はナノマシンや薬剤で補修は効くけど、やっぱり本当にナチュラルの綺麗な肌の方が手触りが良いからね♪
「と言う事でスターシップに帰って寝るよ、大丈夫キッドちゃんはナスティーズの奴をボロボロにするのに夢中で当分の間は戻って来無いだろうから」
そう言って撤収準備を始めた。
「陛下も生死不問って言ってたし、ボロボロで済めば良いのですが・・・」
「大丈夫でしょ、私からも生かして連れて来てねって頼んで置いたし・・・」
イメンケが心配そうに言うのにジュリアが一言言ったが、
「それじゃ駄目でしょ?身体が生きてたって心が死んでたら証言も取れません!お嬢さまはソコで「尋問出来る程度に」と念を押すべきでした!」
「そんなコト言ったって・・・・・」
「キッドちゃんだってソコ迄やり過ぎは・・・・・」
私は少し考えてから・・・・・
「するね!」
「尋問は最短でも半年後だね」
イメンケも同意見の様だ。
「チョッとウェルム少将、来るのが早過ぎるよ!」
ワシの顔を見たキッドが発した最初の言葉だったが、
「遅過ぎた位だ・・・ここまでボロボロにする必要が有ったか?」
最初は何だか判らなかったが、キッドが足蹴にしてるのは巨大なボロ雑巾の様な物体だった・・・まさかソレがナスティーズ枢機卿の成れの果てだったとは!
「足りない位だよ!コイツ等がやった悪事に比べれば・・・・・」
「そりゃ同感だが罰は法で裁いてから刑として与えるべき・・・・・」
その時キッドは何かを見付けた様だ・・・彼が見付けたのは強い酒でコッソリ背後で酒瓶を倒し、カウンターの上を流れた酒がナスティーズに降り掛ける。
そう言えば二人を見付けた部屋は遊興室、そこにナスティーズは逃げ込んで追い付かれたキッドに蹴飛ばされバーカウンターへ頭から突っ込んだのだ!
その後も何度も酒瓶で頭や脛を酒瓶で殴られてた・・・それも瓶が割れるほど強く殴られ続け、そこへ追い付いたワシ等に羽交い絞めにされて取り押さえられた・・・勿論取り押さえ止めたのはキッドの方で、これ以上 重症化したら訊問出来無いので止めさせたのだ!
「このクソ野郎にはシンパが多い・・・それも貴族の中に、公正な裁判が行えるのかな?」
「確かに横槍は入るだろうが・・・・・」
するとキッドはカウンターに置いてあった酒瓶を掴み、中の酒を頭からナスティーズに浴びせる。
あれは98.5度もある世界一強いと言われる酒❝スタピリス❞、傷口に沁みるだろうナスティーズがギャアギャア騒いでるが・・・ワシはキッドの企みに気が付いた。
「おいキッド止めんか・・・」
「おっと手が滑った♪」
何か小さいモノがキッドの手から零れ落ち、それが火種を伴ってる事に気が付いた。
「バッ、バカモノ~~~~~ッ!」
「ぎゃああああああああ!」
悲鳴を上げながら転げ回るナスティーズ、部下が消火器を持って群がり火達磨に向かって噴霧する!
「マダマダ元気だったじゃん・・・もうチョッと可愛がって殺っても良かったかな?」
「オ・・・オマエと言う奴は・・・・・」
口笛を吹きながら立ち去るキッドを、ワシは頭痛を覚えながら見送るのだった!
表で出るとファルデウス軍人さんとジェイナス婆ちゃんが言い合ってる、如何やら帰らせろと言ってる婆ちゃんをウェルム少将の部下が押し留めてるらしい。
如何やらアイギス母娘を当面はスターシップで保護すると言うのを、ファルデウスの軍人さん達が難色を示している・・・まあソレは仕方が無い事だろう。
今やミューズは立派なファルデウス帝位後継者、その順位はジュリアさんを抜いて第3位に登っている・・・それに対してアイギスさん達はマルドゥースの直系でミューズを虐待し殺し掛けた家の人間だ
しかも離婚もせずに逃げ出したのだから今でも反逆者マルドゥース元公爵家、その(故人だけど)後継者の妻と娘なのだ!
多分だけど2人をスターシップで保護し様と考え付いたのはジェイナス婆ちゃんで許可を出したのはミューズ、その意を伝えて婆ちゃんがウェルム少将の部下に許可を出せと詰め寄っている!
まあウェルム少将が出て来ないと話は始まらないけど出て来た所で陥落し許可を出すのは時間の問題、皇帝陛下の爺さまをやり込められるジェイナス婆ちゃんに人の良いウェルム少将が叶う訳が無い・・・まあ言い争いではね♪
ウェルム少将の部下さん達は数人掛かりでもジェイナス婆ちゃんにタジタジ、今ウェルム少将がコッチに向かってるから待ってくれと言っている。
多分コッチに走って来てるよね若く無いのに可哀想にとは思わ無い、ウェルム少将あの御歳と身体(少しズングリ体型をしてる)でも走るとボクでも追い付くのが難しいほど早い!
いまだに身体を鍛え抜き歩兵の突入部隊を陣頭指揮して、ズングリ体型だけど決してポッチャリでは無いマッシブな爺ちゃんなのだ・・・そう言えば前に爺ちゃんの前で「陛下に比べたらマダマダ若い」と発言し「10も違わないだろう!」と怒られてたっけw
ちなみに勝手に話を進めてとか許可出して無いのに何てケチ臭い事は言わ無い、どうせ頼まれたら断ら無いしミューズが手間を省いてくれた様なモノだからね
そう思いながら皆に近付くとカモミールとホットミルクの良い匂いがして来た・・・呆れた事に婆ちゃんは帝国兵達を言い負かしながら、ミューズに手伝わせて簡易コンロでホットドリンクを作ってる。
それを大声で捲し上げ詰め寄ってるウェルム少将の部下にも振舞ってるのが笑えた・・・ボクも一杯頂こうかとソッチに向かう。
「あっ、このホットミルク甘くて美味しい♪」
「如何やって作ったの?」
ジュリアさんとイリスが聞いてジェイナス婆ちゃんが答えている。
「これ造ったのはミューズなんだよ♪おいミューズや・・・・・」
「エッと温めたミルクに蜂蜜で甘みと、お兄さまの故郷から持って来たハーブで香り付けして・・・・・」
「そんなモノまで持って来た・・・ミューズちゃん、如何かしたの?」
ミューズの言葉が途中で止まり、異変に気が付いたジュリアさんが声を掛けてる。
「大変・・・お兄さまの箱舟、地球遺産とC4895遺産、放置したままだった!」
ミューズが青い顔をしていた。
「キッド君の箱舟?それは何・・・」
ジュリアさんの問いに答えず頭を抱えて唸ってるミューズがカワイイ♪
そう言えばソンナ物が有ったね?
「お兄さまの居らした地球と❝彼❞の居たC4895・・・あの界隈に人が生息可能な惑星は2つだけでした。その両星の生物を余す事無く・・・その惑星の生態環境を完全再現出来るだけの、卵子・精子・種子・細胞のコレクションを用意したのです!」
「そ・・・それは・・・・・」
ジュリアさんとイメンケさんが顔色を変える、それは自然惑星発見に準ずる凄い財産だからね!
「スターシップに積み込まなかったの?」
「それ程の積載量はスターシップに無かったの、だからコンテナ・トレーラーにして牽引して来たんだけど亜空間突破の時の磁気嵐で・・・お兄さまも私も何で忘れてたんだろ?」
「いやボクは忘れて無かったけど、コッチに来る事無く亜空間に流れてったんじゃ・・・・・」
「お兄さま♪」
「キッド君!」
様子を伺ってたボクは声を掛けながら出て行った。
「亜空間に潜行して途中までは意識はあったしカーゴも付いてたけど、磁気嵐の中で意識も朦朧としてたし・・・そこでボクの方は意識を失ったんだよね?」
「もう少し後まで私は意識が有りましたけど、それでも保護カプセルの中まで過電流が・・・で意識を失って気が付いた時は、身体も無いから自分がアリスだって思い込んじゃったのよ!お兄さまの方は、もうチョッと重症だったから・・・・・」
「そのままカプセルの中で手当てされ、そのまま終ったら冷凍冬眠か・・・・・」
で同時進行でスターシップは補修され、結局最初からの目的地だったファルデウスを目指す・・・記憶を失う前は爺さまに謁見して協力を仰ぐ手筈だったから!
「じゃあカーゴトレーラーが吹き飛んだのは・・・・・」
「亜空間の壁を破ってコッチの空間に現出した時、だから亜空間と言っても表層部分に浮遊してる筈なのよ!」
それならば・・・・・
「キッドさん♪」
「宝探しね!」
そう成るな・・・二つの惑星の自然環境を完全に再現出来るだけの資産、ジュリアさんとイメンケさんが眼の色を変えるのも分かるけど・・・ガツガツし過ぎじゃね?
「コチラの世界に現出してからの移動履歴は残ってますから、それから現出地点を逆算するのは不可能では有りません。ですがアリスに頼んでも計算には多少の時間が掛かりますね」
そうだね・・・ボク達の記録は宇宙の真ん中に突然現れてからの航海記録しか無く、それしか無いから過去の推察とか出来無かったんだ。
まさかワープアウト直後に船を補修して行動開始したとは、流石のボクも思っていなかったんだ。
「ミューズが忘れてたのもウッカリって訳じゃ無いね・・・多分今まで本当に記憶を失ってた、カモミールミルクを飲んで記憶を取り戻したんじゃない?」
「そう言えば・・・」
ボロボロに成ったスターシップに自分が船のオペレーションシステム❝アリス❞だと思い込んでたミューズ、しかも当時は完全に記憶を喪失してた・・・今までも一部の記憶を喪失してたとしても気が付ける筈が無い。
「むしろ宝探しの楽しみが増えたんだから気にするなよミューズ、まてよ・・・と言う事は地球の空間座標のデータも?!」
ボクは地球にも戻れるかと思って喜色めく!
少し前まで帰る気なんか無かったけど、その理由はスターシップいや当時のエルミスを狙った大国や、ボクの両親の遺産を奪った叔父、そう成ら無い様に母さんが手続きしてたのに面倒臭がって叔父に丸投げし結果泥棒に手を貸した国への不信感から・・・それ等の理不尽にも今なら自力で跳ねのけられる!
「お兄さま・・・残念ながら箱舟の方に座標等の記録は残って無いかと、航法はスターシップで一括管理してましたから・・・・・」
アララ・・・そりゃガッカリだ!
でも沈んでるミューズの頭を撫で、
「チョッとガッカリしたけどミューズが気にする必要は無い、ボクは自分の意思でコッチに来たんだし、抑々最初は帰る積りが全く無かったんだからね」
そしてオデコにキスをして、
「ミューズが居るならソレだけで十分・・・むしろミューズが居無い、アッチに帰る値打ちは無いんだから・・・・・」
ミューズがボクの胸の中に飛び込んで来て、強引に唇を奪われて仕舞う・・・周囲でウェルム少将の部下さん達が口笛を吹いて囃し立てた。
そう言えばウェルム少将の部下さん達は見覚えの有る人ばかり、一緒に訓練したり幽霊団地の掃除をした人ばかりだった!
「あ~~~ミューズちゃん、ソロソロ良いかな?もう3分以上いや5分近く、キッド君 窒息の心配は?」
「ジュリアさんの意地悪っ!」
ミューズが真っ赤に成って言い返すけど、そんなに恥ずかしがるなら皆の前でキス何か・・・ボクだって恥ずかしかった!
「それよりキッド君・・・地球の生物環境を完全再現出来るなら、当然だけど家畜の遺伝子も持ち込んでるのよね?うちの農場で商売に成りそうな物は・・・イメンケさん、このビジネスチャンス逃しちゃ駄目よ!」
「お嬢さま、勿論ですっ♪」
すると背後から声が掛かり、
「オマエ等だけ狡いぞっ!ワシのスターブルーム海洋農場も・・・・・」
そう言えば先程ウェルムさんも来て、ジェイナス婆ちゃんに詰め寄られて許可出してたな・・・アイギスさん保護の♪
「邪魔する気は有りませんよ?うちは農畜産業だし、ウェルム少将の家は海洋農場だし・・・・・」
「キッド君・・・漁業・養殖業に関し、魚卵も冷凍保存してあるよな・・・・・」
ジュリアさんとウェルム少将に詰め寄られるボクをジェイナス婆ちゃんが庇ってくれ、
「それ以上はスターシップで話しなっ!こんな所で話す物じゃ無いだろ!」
と叱ってくれた。
元々制圧メンバーでは無く私怨から光神教をボコりに来たジュリアさんと、光神教の制圧は既に終わってるので部下に任せられるウェルム少将もスターシップに来る事に成った。
スターシップにはウェルム少将が軍の車で送って売れたのだが、同乗するイメンケさんとウェルム少将が大騒ぎをしていた。
「まだ早過ぎるだとっ!こんな大きなビジネスチャンスを前に何を馬鹿な事を、スグに総裁を叩き起して農耕コロニーの建設を検討させろ!3基・・・いや5基は必要だ、後は環境保全でテラフォーミング済みの惑星を・・・ウェルム少将、貴方の所で使える惑星は?」
「すでにテラフォーミングは終わってて自然環境の再現済み惑星しか無い、ソッチにあるなら地球環境とC4895環境は・・・・・」
「その環境再現は皇帝直轄領で・・・・・・」
会話にミューズまで割り込んで、
「恐れながら未使用のテラフォーミング済みの惑星が2つも有りますか?バーカンディ家は複数持ってますが、私の知る限り皇帝陛下所有の未使用惑星は一つしか・・・・・」
皆、貪欲だねぇ・・・・・
「ウェルム少将、この際手を組みましょう!地球かC4895の再生事業は当方で行いますから、そこから持ち上げた遺伝子や品種改良済みの家畜や魚介類甲殻類を!キッドさん・・・今回アイギスさん達救出を手伝った御褒美に、バーカンディ家に畜産や養殖に有利な方の環境再現を・・・・・」
「オマエ狡く無い?」
呆れてしまうが、
「C4895は完全に野生化した惑星でした・・・農畜産業や養殖業には地球環境の方が・・・・・」
固く手を握り合うイメンケさんとウェルム少将・・・完全に今回は押し切られちゃったよな!
地球を飛び出して火星の軌道上でミューズを取っ捕まえオシオキした・・・その後一緒に彼が居た惑星C4895に向かい、エルミスを墜落させながら着陸した。
そして彼に会い・・・どうせ残り少ないからと自分の寿命を使ってミューズの治療してくれ、同時にボクの身体もクリーチャー体に移し変えて元の身体はミューズの治療に素材として使われた。
その後ミューズを治療してる間に初代エルミスの船体と、彼の居た施設に会った素材でスターシップを建造したのだ。
ただ・・・その時のスターシップは今の姿と違い大きなカーゴコンテナを牽引する様な形に成ってて、その中にはC4895のあらゆる生物を再現出来る遺伝子を搔き集めて保存してあったのだ。
勿論その後・・・地球にも寄って数少ない友人と最後の別れを交わし、地球の遺伝子もドローンやナノマシンを使って掻き集めコレクションして来たのだ。
そんな事をした理由は彼から知識を授けられたからと言って、素人のボクの造った船で亜空間を超える事が出来るのか疑問だったからだ。
チャンとココに来れるか如何かも判ら無かったし、渡る事が出来ても帰って来られ無いかも知れない。
だから最悪適当な星をテラホーミングして、ボクとミューズでアダムとイブにと言う可能性も考えてたんだ。
まあ道中で磁気嵐に襲われると思って無かったけどね!
「場所は見当が付いてるんでしょう?」
「まあ大体は・・・・・」
スターシップに戻るとジュリアさんに聞かれたので答える。
こちらの世界に来て・・・いやボクとスターシップが始めて戦った宇宙での戦闘、ジェリス艦長たちを助けたアノ宙域の近辺である筈だ!
「とにかく計算はアリスに任せるよ・・・その間ボク達は少し身体を休めるから、もっともソノ前にジョブ・トゥーニックにも御礼しとか無いとね!」
まあナスティーズの奴ほど頭に来て無いんだけど、それでもボクにブラスターをブチ込んでくれた奴を見逃してやるほど甘くも無いんだ!
さて・・・アイギスさんが何かミューズに謝罪しなくてはならない事が有ると言ってたらしい、だがボク達がアッチから来る時にカーゴコンテナ・トレーラー通称❝箱舟❞を持って来た事を漏らして仕舞う。
その為ジュリアさん達とウェルム少将が暴走し話をする余裕が無かった、それに疲労困憊だろうから先ずは二人を休ませ・・・そしてボク達も休息を取る事に成った。
ウェルム少将は一旦部隊に戻ったが、すぐにコッチに来て話の続きに混じりたいそうだが・・・皇帝陛下の爺さま迄コッチに来ると言い出してスグに現れたのだった!
「そんなに他の星の遺伝子が・・・・・」
まあ産業的にも科学的にも医学的にも、凄い利益を生むそうだから気持ちが分からなくも無いけど・・・・・
「馬鹿タレッ!アイギスと話をする為じゃ・・・早い所マルドゥースとの関係を断ち切ってやらなきゃ、安心する事も成らぬだろがっ!」
「ウン解ってた、爺さまの そう言う所が気に入ってるんだよ♪」
陛下はふんっと言って顔を背けるけど、
「照れるなよ、気持ち悪い・・・」
「貴様・・・この皇帝たる私に対し、いやソレ以前に年長者に対する尊敬の念と言う物を・・・・・」
久し振りに互いのホッペを抓り合おうとしたが、
「フザケルのは今日の所は止めとこう・・・何か真面目な話に成りそうだから、アイギスさんミューズが迫害された理由が自分に有ると言ってたらしいんだけど?」
「それはメールでミューズから聞いた・・・だが私には一向に見当が付か無い、ミューズは寝たな?」
ボクはアリスにも完全に寝入ってる事を確認し、そして目覚めたらスグ知らせる様に命じた。
すると皇帝は同行した秘書から受け取ったタブレットをボクに渡す、中はアズミーナの調書だった。
「捕らえて相当厳しく訊問したがダラスの子を産んで皇太子妃に成れると思ったら、自分とは遊びに過ぎなかったと言われて切れミューズに怒りをブツけた・・・その内に虐待する事自体が優越感を覚え楽しく感じる様に成ったらしい」
とんだクソババアだが、
「何で自分の娘に・・・・・」
「虐待したのは皇帝たる私の娘、世に出れば皇位継承権はダラスに次いで2位に成る・・・今では私の弟とその息子に次いで3位だが」
こないだ迄そこにはジュリアさんが座っていた。
「ジュリアは気にしておらんな・・・と言うより順位は参考に過ぎず、能力によって次期皇帝を決める事に成ってる。保安問題も絡むので余り正直に全てを話せぬが、実際の皇位継承権は素質や今後の成長も期待してジュリアが第2位だ」
「へぇ・・・」
これは少々意外だった。
「本来第1位の私の弟つまりジュリアの祖父は能力は申し分無いが歳だ・・・私から継承したのがマタ爺では、すぐに継承騒ぎに成るだろう?だから彼の方から自分になど継承させるなと言われたよ・・・皇位の代わりと言って秘蔵の酒を何本か奪われたが・・・・・」
思わず笑って仕舞った。
「2位の私の甥、ジュリアから見たら叔父だな・・・彼は人間としては申し分無いが資質が・・・まあハッキリ言うと人が良過ぎて皇帝には向かない、彼も常日頃から自分に継がせるならジュリアに継がせろと・・・・・」
「彼には皇位の代わりに何を上げたの?」
ボクの冗談が気に入ったらしく笑いながら、
「皇位の代わりに物で釣られる様な・・・いや奴にも腹を割って皇位の話をした後、頼まれ事をしたな・・・・・・」
何だよ爺さんの親族は俗物ばかりか?
「失敬なっ!それに頼まれ事と言っただろう、物で釣った訳では・・・・・」
「で皇位の代わりに?」
「今の女房との仲を取り持ってやった♪」
おいファルデウス皇族、お前らボクを笑い死させる気か?
「まあ冗談はさておき・・・本当にアイギスがミューズ迫害の原因に成ってたとは、当時の捜査報告書を見ても感じられる所は無い」
「つまり家族間の私的な感情など、外から見え難い事から来てるんじゃない?」
ボクの返答に陛下は首肯する。
「私はアイギスに悪感情を持っておらん・・・マルドゥース公爵家はミューズの事が露見した際、すぐに分家を見放して切り捨て自分等とは何の関係も無いと言った・・・それは事実だったし私も責める気は無かった。だが数年後マルドゥース公爵は原因はミューズに会ったのでは無いかと社交界で言い振らした・・・あらゆる場所で分家の不祥事を揶揄われた所為かも知れんが、それの八つ当たりや責任転嫁をミューズに向けて如何するのだ!」
うんムカ付く奴だ・・・殺した事に罪悪感を覚えなくて済むね!
「むしろ彼女はマルドゥース公爵家を非難し、公爵家内で孤立し迫害され始めた・・・まあ本家も分家も、その性分は大して変わら無かったんだな。そして身を盾にしてイリスを守りながら、最終的には家から逃亡を・・・・・」
「まさに不滅の盾だね♪」
ボクの台詞に陛下が怪訝な貌をする。
「地球ではアイギスって神の造り出した神話上の防具なんだ・・・盾であるってのが通説だけど、皮鎧だったとか胸当てだったとか異説も有る」
そのアイギスの英語読みがイージス・・・イージス艦やイージスシステムのイージスの事だ!
「そう言えば同じ神話の虹の女神の名前がイリスだったな?」
「奇遇だな・・・こちらの世界でもイリスとは虹の女神の名前だ、もっともアイギスは盾の名前では無く花の女神の名前なんだが」
奇遇だろうけど偶然だ・・・同じ様な形状を持つボク達地球人とコッチのヒト型人類、外見と内部構造も似てるなら声や文化も似て来る。
それなら名前を含む同じ様な文化や風習が発生したって可笑しな話じゃ無いとはアリス先生の解説、まあ全く同じには成らず地球での男性名が女性名にとか全く違ったり逆の意味に成る事は多々あるだろう。
地球上でだって文化の交流の無かった国同士で同じ音の言葉が存在する事や、同じ様な言葉なのに意味が全く違う事は多々ある事・・・地球でも❝エロマンガ島❞とか❝スケベ人間❞とか❝キ〇タ〇ー〇国定公園❞とか日本人にはシモネタ以外何物でも無い地名が有るし!
「とにかくオマエも少し休んでは如何だ?そもそも骨休めをする為に、ファルデウスに来たのだろう?」
「都合良くボケ無いでね・・・ミューズにはアナタに半強制的に引っ張って来られた、まあ了承したんだから来た事自体に文句は言わ無いけどね!でもアリガト・・・ただ思い切りアタマに来させられて暴れた直後だからか全然眠く成らない、もう少し様子見て眠れないなら薬でも飲むよ」
いつの間にかジェイナス婆ちゃんが持ち込んでた酒瓶を陛下は勝手に持って来て、
「少量なら毒にも成らないだろうから、薬を飲むならコッチにしとけ・・・」
グラスにチョッとだけ注いでくれた。
「まだローティーンなんだけど・・・・・」
まだ確実に美味しいと思え無いだろうと一息で飲み込んだ。
案の定・・・美味しい不味いと思う前に喉がカッと熱く感じただけだった。
 




