エセ宗教家に鉄槌を下す!
「ねえイメンケさん、このヒト本当にアイギスさんで良いの?」
念の為に聞いてみる・・・イリスちゃんのお母さんなら30を超えた年齢と思ってたけど、如何見ても20ソコソコいや10代後半位にしか見得ない女性だったからだ。
いや貌だけ見たら完璧なんだ・・・ボクにソックリつまりミューズにもソックリで、ただ完全に❝お母さん❞じゃ無く❝お姉さん❞にしか見得無い!
多分ボクとミューズそれにイリスちゃん母娘の4人で並べば、イヤだけど間違い無く4人姉妹と言われ・・・ボクが言った奴の首を絞める事に成る!
「いや貴族の結婚なんて早々に進んじゃうモノですから、まして政略結婚など・・・言ったでしょ16で出産って、彼女は15で嫁いで翌年にはイリス様を生んでます。ですから本来なら20代なんですが、放射線の治療で何年かコールドスリープされてますから・・・その分成長が止まってるので実際に若く成っちゃったんでしょ♪それにコールドスリープに掛かると、見た目の老化が遅くなる傾向にあり・・・・・」
それでワザと短期間コールドスリープする貴族や金持ちも居るそうだ!
さて被爆したのが数年前でアイギスさんの方が長い間、治療に掛かっていたらしい・・・と言うより逃亡しながらイリスちゃんを優先的に治療してたので重症化したのだ。
「そこを誘拐され治療を盾にイリスは脅迫されてたのか・・・・・」
「その可能性が高いでしょう・・・イヤほゞ間違い無いと思いますけどね!」
それなら彼女が皇位簒奪に加わってたとしても納得出来る。
「イ・・・リス?・・・・・」
ボク達の会話を聞いてたアイギスさんが声を絞り出す様に言うと、虚ろな眼に力強さが表れて来たのでボクは彼女の耳元で説得を試みる。
「初めまして、キャプテン・キッドと申します・・・皇帝陛下からの勅命で貴女とイリス様の救出に参じました。私めの指示に従い脱出に協力して頂けますか?」
この際だ・・・爺さまの名前を使わせて貰う。
文句が有るなら後で受け付ける、そもそも爺さまの治世が行き届いて無いからこう言う事に成ったのだ。
「お願いします・・・私は良いからイリスを・・・・・」
「それじゃ駄目ですね!貴女が一緒に行か無いなら、イリス様が協力してくれると思えません」
彼女が唇を噛む。
「二人とも救出しますので全力で協力をして下さい!その為には火急的速やかに回復して頂きます・・・・・」
彼女の前腕に点滴パックを巻き付けて手首に注入パットを装着する・・・針は使用して無いが薬液は身体に注入される謎技術、それに点滴も高低差による水圧を利用してる訳じゃ無いので高い所に吊るす必要は無い。
「安静にしてて下さいね」
「私が背負いますので戦闘はルピナスさんに御任せします」
ボクはレーザー銃を受け取りながら、
「折角美女を背負える役得が廻って来たと思ったのに・・・・・」
「戦闘能力に関してはキッドさんの方が高過ぎるくらい高いでしょ!適材適所、私だってスケベ心から役得奪った訳じゃ・・・・・」
叱られて仕舞った。
さて警戒しながら先を急ぐが、その時にアリスから緊急連絡が入って来た。
拙い事にミューズが起きて仕舞い、病み上がりに危ない真似をしてると怒っているらしい。
「アリス・・・ミューズに繋げて・・・・・」
視界の一部が切り取られミューズの顔が浮かぶが、
「ミューズ、良い子だからワガママはよしなさい!コッチだって好きでやってんじゃ無い、仕方なくやってんだから・・・・・」
「それにしたって・・・」
ほっぺを膨らませて可愛いのだが♪
「良い子にしてれば、お土産持って帰るから・・・・・」
「お土産なんかより、お兄さまの無事です!全く無茶してバッカリなんだから・・・・・」
今回は無茶しておらんぞ?
「そうだ・・・ミューズは頭はスッキリしてるのか?疲れは残って無いか?」
答える前に釘も刺す。
「ボク達の命を任せる事に成るかも知れない」
カチューシャの通信機能経由でも。ミューズが緊張したのが分かった。
「自覚は有りませんが3日以上寝てませんでした・・・倦怠感とかは無いですが、疲労等が抜け切って無いと判断すべきです。最悪ナノマシンか薬剤で覚醒させますが・・・・・」
ボクは感心してミューズの貌を見詰めた。
「な・・・何ですか?」
「いや成長したなって・・・」
ちょっと前のミューズなら間違い無く大丈夫と言い張って動こうとし、今回は不調を自覚して無いにも拘らず体調が万全で無い事を主張してる。
「ミューズ・・・大分前から思ってたけど、オマエはとっくにボクに相応しい相棒に成ってるよ♪」
ミューズの貌が紅潮していた。
「体調が多少万全で無くても信頼出来るオマエにしか頼めない、内容は護衛対象有りの軽微な戦闘だが出来るか?」
「ナノマシンを注射して待機してます!コロニー外で戦艦戦ですか?」
ミューズは針を使う注射器を用意しながら言った・・・彼女は皮膚が弱いのでパッドやガンタイプの注射器で薬液を注入すると痣に成る、痛い思いをしても傷は残したく無い女の子心なのだ。
「コロニー内でノーダー戦だ!アリス、このコロニーの市長は・・・・・」
「残念ながらナスティーズ枢機卿から鼻薬をタップリ嗅がされてます」
では話に成らない、コロニー内での戦闘を許可出来る立場の人間と言えば?
「佐官以上の軍人なら許可を出せます・・・うちのジュリアお嬢さまに!」
「それより今回のジュリア中佐暗殺未遂事件は、ウェルム少将が対策本部の長なんだよね・・・確か第7コロニーに捜査本部が・・・・・」
「そんな下っ端じゃ無く、もっと簡単に・・・チョッと待っててね♡」
いやジュリアさんやウェルム少将を下っ端何て、お二人さんは佐官に将官なんだよ?
2人を不憫に思いながらも、最近お姫様の立場に目覚めて来たミューズさんは・・・・・
「執事長さんですか?申し訳ありませんが、すぐにお爺さまを叩き起して下さい!」
オイッ!
行き成り皇帝陛下を叩き起してるんじゃない!
ミューズには詳しい話はして無い処か、アイギスさんやイリスの事すら知らせて無かった。
だからミューズは自分で説明出来無いので繋ぎだけ取ってくれ、皇帝陛下の爺さまがボクに直接連絡を取って来たが・・・ミューズは寝てた所でボクが勝手に出て来た事に何かを察したらしい。
自分から回線を遮断して話を聞こうとし無かったのだ。
『終わったら全部話して上げるから・・・・・』
そう思いながら爺さまに今回のジュリアさん襲撃は彼女の暗殺、そして次いでミューズも暗殺してボクにイリスをくっ付け懐柔し、最終的には先古代文明のロストテクノロジー引いては帝国を奪う事である計画を暴露する・・・ボクの推理も入ってるけど間違い無い処か完全に確定だ!
「で・・・如何致しますか、陛下?」
そう言ってやればボクの意図を察してくれる。
「勅命いや依頼だ・・・お前は私の臣下じゃ無いからな、キャプテン・キッドに依頼するアイギスとイリスを救出せよ!そして生死は問わんから、ナスティーズを捕らえてワシの前に引き摺って来てくれ!」
よし言質は取ったよ♪
「後付けで良いのでギルドにも依頼を、それと捕縛に信用出来る部隊を向かわせて下さい・・・流石に皆殺しじゃ拙いでしょ?」
「その前にオマエは一言相談する事を覚えろっ!なんで何時も騒ぎを起こしてから、ワシに話を持って来る?」
ボクは一呼吸置いてから、
「ミューズに聞かせない為ですよ・・・陛下も注意しといて下さいね、ミューズが子供を残せ無いかもって話が広まってる!それで良からぬ事を考える奴等も・・・・・」
「オマエの子供を取ってロストテクノロジーの相続権を主張する気か・・・・・」
クズの考えそうな事は長年相手をして来ただけあって察しが早いね!
鐘楼なのだろうか・・・イリスが囚われてるのは塔の様な建物の最上階、アイギスさんの監禁場所は判らなかったが彼女が捕らえられてる場所は最初から判明していた。
それが解ってるからボクとイメンケさんの偽名をルピナスとパインにした、コッチに来る直前にテレビで放送されてた劇場版を見てたから・・・あの話も囚われの御姫様を救出する最初期の作品だった。
でも爺さまから勅命を貰った以上もう偽名を使う必要は無かった!
「一人で大丈夫ですか?」
イメンケさんから聞かれるが塔から飛び降りて脱出する積りだから実際一人の方が良い、ボクの着て居る機動宇宙服は三人以上の体重を持ち上げる力が無いのだ。
「この服の名前もソロソロ真面目に考え無いとな?」
まあ機動宇宙服を英語に直訳すれば解かる事だが、この服の本来の名前は某有名ロボットアニメの商標に思いっ切り引っ掛かってる・・・まあ先古代文明時代の名前でも発音が違うだけで被っているのだ。
コッチは世界なんだしリスペクトしてるって事でパクっても問題無いだろうけど、知らないで使ってたなら未だしも1ファンとしてパクりたく無いと言う心理が働いて仕舞う・・・ボクの場合はだけどね♪
まあ実際ファンだからこそ使いたいって人もいるだろうし、異世界なんだから商標権も及ば無いだろうけど・・・・・
「キッド様・・・階段を登り切る前に上の警備兵を排除しないと、このまま登ったら撃たれて仕舞います」
登り切る前に殺せる位置に陣取ってるんだな・・・ボクはレーザーを構え階下から奴を狙い撃つ、ボクの放ったレーザーは床を突き破って奴の股間から脳天まで貫いた!
「如何した?うっ!」
隣の奴も同じやり方で沈黙させ、可愛そうだけど恐怖や痛みを感じる暇すら無かったと思う。
「急いで登り切って下さい・・・巡回する警備兵が・・・・・」
ボクは階段を駆け上がると周囲を伺い先ずは巡回で歩み寄る二人組の片方を、続いて相方が撃たれたのを察知し身体を投げ出しながら警報を鳴らそうとした奴を射殺する。
「警備兵の練度が高いな・・・」
撃たれながらも身体を床に投げ出したのは相当訓練が身に付いてる証拠、ひょっとしたら軍人上がりの信者が警備を担ってるのかも知れない。
「イリス様の部屋の前の警備2名、それでラストです!」
今度はボクが身体を前に投げ出しながら発砲し正面から2人を射殺、そしてアリスに周囲を警戒させて扉の鍵を開錠させる。
やはり塔は鐘楼だった様で最上階は全開口窓に囲まれた広い空間、但し中央部は吹き抜けており上の鐘を鳴らす為の馬鹿みたいに太いワイヤーが何本もブラ下がっている。
ここからも鐘が下から見得て、鐘が鳴ったら五月蠅い所の騒ぎじゃ無い・・・こんな場所に監禁するなどナスティーズ枢機卿と言うのはクズに違いない事を再確認させた。
「お姉ちゃん、誰?」
声までミューズに似てると思いながら、またしても女に間違われた事にガックリ来てしまう。
「❝お姉ちゃん❞じゃ無くて❝お兄ちゃん❞ナンだけどな・・・初めましてイリスちゃん、ボクはキッド・・・巷じゃキャプテン・キッドと呼ばれてる」
彼女はボクの顔をマジマジと見詰めると、
「お兄ちゃんはイリスの本当のお兄ちゃんなの?」
マアこれだけ貌が似てたらソウ思うのが妥当だよね?
「イリスちゃんみたいなカワイイ娘が妹なら最高なんだけど、残念ながらキミとボクが似てるのは偶然なんだ♪今日はキミを・・・・・」
盗みに来たはパクリにも程が有るから止めて置く!
「助けに来たんだ・・・ナスティーズはキミを使って悪い事をし様としてる、そんな事に協力しちゃイケナイのは解ってるよね?」
彼女は可愛らしく首をコクンと縦に振った。
でも・・・
「ゴメンなさい・・・それでも私は行けない。お母さんが・・・私が逃げたり言う事を聞かないと、酷い事をされるんだって・・・・・」
すでに酷い目に会わされてた・・・あれは明らかに拷問の様だが、彼女から何を聞き出す積りか言う事を聞かせる積りだったのだろう?
ただナスティーズ枢機卿よ・・・今オマエの運命が決まった、思いっ切り残酷に殺して上げる♪
「勿論お母さんも一緒だよ、実は既に助けて下で待ってる!」
『アリス・・・アイギスさんの様子は?』
『ナノマシンで外傷は、あくまで見た感じではと言うだけですが・・・』
『イメンケさんに言って塔の下まで出て来て貰ってくれ!』
カチューシャの通信機で声に出さずに会話してから、
「今お母さんが出て来る・・・コッチに来てね」
窓からベランダに出て階下を見せるとイリスは泣きそうな貌をした・・・イリスちゃんを放射線治療に掛けた後、攫われてから一度も会わせて貰って無かったそうだ!
さあナスティーズよ・・・如何殺してやろうかな?
「絶対に助けて上げるから、お母さんと一緒に逃げてくれるね?」
「お母さんだけ助けて・・・私はココから逃げられ無いの・・・・・」
彼女が左足を差し出す・・・ボクも気が付いてたけど、武骨な足枷と鎖で繋がれてた。
怒りが更に燃え上がる・・・ナスティーズさんよ、もう燃料の投下は良いから!
「チョッと外すから待ってて・・・」
「駄目よ、外したら警報が・・・それに首にも」
『彼女の足枷は外した途端に警報が、そして首輪には位置を知らせる発信機の機能が付いてます。共に私が監視システムの方を破壊しますので、カウントダウン後0を合図に30秒以内に破壊して下さい』
「大丈夫ボクに任せな♪」
アリスがカウントダウンしたのを合図に身構え、レーザー銃を使いゼロで首輪と足枷を撃ち抜いた。
『もっと完全に破壊を!』
手早く足で搔き集めて踏み付けたが思ったより頑丈、壊れ無かったのでレーザーで撃ち抜き捲った。
『機能停止しました・・・いつ見付かるか解りません、早く逃げて下さい』
「良いかい・・・今ここから飛び降りるけど、ボクの服にはスラスターが付いてて無事に下りられる。怖いかも知れないけど我慢出来るかな?」
彼女が力強く首肯した。
「眼を瞑ってて・・・」
彼女に恐怖を与えない様に飛び降りるのは止めバーニアを吹かし離陸、ただし余り時間を掛ける訳には行か無いので素早く落ちて植え込みの中に隠れてたアイギスさん達と合流した。
「お母さ・・・」
まあ赤ちゃんじゃ無いけど小さい子って親を見たら無条件で駆けだす事が有るよね・・・イリスもアイギスさんを見かけて駆け寄ろうとしたけど、走られても大声を出されても洒落に成らないほど困る!
ボクは咄嗟に彼女の服を掴んで・・・いや変な所を掴んでビリビリしちゃったら洒落に成らないので、なるべく真ん中の所・・・イリスの腰の上で彼女の着てたワンピを掴んだ。
その時に何か伸びる物を感じ・・・「しまった!」と思いながら彼女を引っ張り寄せ、咄嗟に左手で彼女の口を塞ぐとボクの掌の内側に彼女の悲鳴が当たる感触がした。
この様子じゃ思いっ切り食い込んじゃったな・・・そうボクはあろう事か彼女のワンピだけじゃ無く、おパンティーを掴んで引っ張って仕舞ったのだ!
眼の前でイメンケさんとアイギスさんの目が点に成ってる、まあ感動の再開をオジャンにしちゃったけどココがドコなのかは思い出して欲しい!
さらにジタバタ暴れるイリスにチョッとボクはムカッとしてる、敵に聞かれたら如何するんだよ・・・ボクはオシオキを兼ねて彼女の口を塞ぎながらパンティを掴んだまま捻って上に持ち上げる・・・と彼女の息が詰まって悲鳴が停止する!
「ココがドコだか解ってる?敵の真っただ中で走ったり大声を上げたりしちゃ駄目だし、こんな場所で感動の再開してる時間は無いんだよ?」
ボクは少し凄みを利かせた声で彼女を叱り付け、彼女は何度も首を縦にコクコクと振った。
「走っちゃダメ、大声出しちゃダメ、ボク達の指示に従わなくちゃダメ!感動の再開は後でユックリ、さもないとお母さんの命だって危ないの!解かった?」
彼女はパニックに成りながらも何度も首を縦に振った。
「今度ナニかしたらウチの子と同じ、皆が見てる前だろうと お尻ペンペンで お仕置きするからね!手加減無しだから相当痛いよ!」
素直に首を縦に振りながらソレでもボクを恨みがましい眼で上目遣いで見て来るイリスちゃんに、スカートの上から持ち上げてるパンティーを放してやる。
すると鮮明な映像など行って無い筈なのに、どうせアリスが告げ口したのだろうカチューシャ越しにミューズからツッコミが入る!
「お兄さま・・・言ってる事は正しいし止めざるを得ない事は解ってるけど、それでも敢えて言わせて下さい・・・お兄さまアナタは最低ですっ!」
「言っとくけど服の上から下着掴んじゃった事は偶然だからね?」
『でも引っ張ったり捻り上げて持ち上げたり、食い込ませて虐めたのは意図的でしたよね?』
アリス五月蝿い、お仕置きで虐めじゃ無いんだぞ!
「さてと・・・用が済んだなら、さっさと帰って一杯・・・・・」
「そう上手くいくかな?」
イメンケさんの言葉を遮るボク・・・こう言う風にお姫様を救出した直後、大抵のフィクションだと気付か無い内に囲まれて(どんだけ鈍いんだよ!)たり、あと一歩で脱出出来ると地点で先回り(トロ過ぎるんじゃない?)されてるモノだが実はボク達も徐々に包囲されてたりする。
『移動して狭い場所で包囲完成なんて嫌だな・・・・・』
「でも既に包囲され掛けてますね・・・狭い場所で押し寄せられたら対処出来無い、コッチで休憩しながら待ち構えましょう」
態々コッチから見通しの良い池の上の島に設えた四阿に皆を誘い、ポケットに仕舞い込んでいたキャンディーやビスケットとバックパックからジュースのボトルパックを出す。
「こう言うの持ち歩いてる所はキッドさんも年相応の男の子なんだけど・・・・・」
「年齢は関係無くないですか?イメンケさんも食べない?」
「いただきます・・・・・」
ボクが飴玉を舐る横でイメンケさんもビスケットを齧り・・・その様子に呆れながらもイリスちゃんは我慢出来なくなったのかチラリとアイギスさんを見て、アイギスさんが首を縦に振るとオズオズと手を出した。
「あっ・・・コッチのポケットにもクッキーとココナッツバーが、チョコも入ってる♪あと胸ポケットには茎わかめと貝紐が・・・・・」
「随分渋いモノまで、それに一体どの位お菓子をポケットに入れて来たんですか!」
イメンケさんが呆れてたけど実際はイリスちゃんが虐待され、ロクなモノ食べさせて貰って無いんじゃ無いかと気にしてたんだ♪
「ア・・・アイツ等の姿がチラホラと見得て来て、こんな事をしてて本当に良いの?」
アイギスさんが心配そうに言う。
「多分大丈夫・・・ボク達が堂々とオヤツ何かしてるから、ナニか企んでるんじゃ無いか?仕掛けや罠が張り巡らされてるんじゃ無いかと警戒してるんだ!だからアイギスさんも出来る限り楽しそうに、お茶してくれると助かるんでけど」
「無・・・無理よ・・・・・」
アイギスさんは流石に心配してるけど、イメンケさんは逆に開き直ったのか堂々と倒しそうにオヤツを食べてる♪
「開き直ったんじゃ無くて、キッドさんに慣れたんですよ・・・キッドさんの非常識さにね♪」
「あっ、このヤロ車のグレード落とすよ?」
「それだけは許して下さい」
この馬鹿みたいな会話にイリス母娘の表情も緩む。
「この会話も集音マイクで拾ってるだろうし・・・・・」
「ならネタ晴らしは拙いんじゃ?」
この中ではアイギスさんが一番心配症だね。
「今の会話を聞いてボク達が時間稼ぎをしてる事に気が付いて、突入した途端に仕掛けた罠が・・・・・」
先頭に関しては上の人間の方が練度が低いモノだ・・・それに戦略に関しても現場を離れてたりソノ任に付いて無いなら、現に敵の一部 茂みに潜んでる奴等がザワッとした。
あそこに居るのが教団上層部の人間、ナスティーズって奴もいるなら面倒が片付くんだけど・・・・・
「イリスちゃんが居る前で聞くべきじゃ無いんだけど、奴等の動向を解析したいんだ・・・答えたく無いなら答えなくても良い」
「助けて貰ったんですもの、何でも答えるわ」
するとイリスちゃんは話を聞かせたく無い事を察し、ボクがマフラー代わりに掛けて上げた保温シートを頭から被って耳を塞ぐ・・・カワイイ♪
「何で暴行いや拷問されてたの?」
「私からもナスティーズに協力する様にイリスを説得しろって強要されてたの・・・でも犯罪しかも露見したら確実に死刑になる様な事を、娘にさせたがる母親が居る筈無いでしょう!」
憎々しげに包囲してる教団の人間を睨み付ける。
「拒否したので拷問を・・・・・」
「精神的にも性的にも嬲って痛め付け楽しんでたわ・・・それこそ何度も身体を汚された!勿論ナスティーズ枢機卿にもね・・・」
彼女の眼が潤む。
「言う事聞かせるのに性的拷問とか最低だし女を無理矢理って辺りクソだけど、アイギスさん美人だから理性が・・・いや理性が無いからこう言う事をするんだろうね!まぁアイギスさんを狙ったあたり女の趣味は良いのかな」
「アリガト」
無理して笑う。
「マァそれは置いといてアイギスさんにはナスティーズに仕返しさせて上げるよ!そいつ等が居たら手は貸して上げるから、自分の手で仕返ししてみない?」
と言ったら、
「イリスが見てるんだもん・・・幾ら外道が相手だからって、あの子の見てる前で人殺し何か絶対に出来無いわ」
判った・・・その分思いっ切り暴れ、残酷に成るのがボクの仕事だ!
「キッドさん、動き出しましたよっ!」
遮蔽物に隠れてた奴等が姿を現し、堂々と包囲を狭めて来る・・・ボクの先程の発言から「罠が」をハッタリだと判断し、そしてボク等を捕縛し様と行動し始めた様だ。
甘いんだよ!
「抵抗し無いなら・・・・・」
と言ったヤツ諸共、次の瞬間 大勢の敵を巻き込んで芝生から爆炎が上がった!
「な・・・」
アイギスさんが眼を見開き、あまりの大きな爆音にイリスちゃんもモゾモゾと保温シートから出て来る。
「実は本当に罠仕掛けてたんだよな~~~っ、コレが♪」
「最初はナイフで芝生に切れ込みを入れて、何をし始めるのかと思ってました♪」
この池を取り囲む芝生の彼方此方を❝コ❞の字型に切り取り捲って土を掘って池に放り込む、そこに地雷を置いて芝生を戻せばアラ不思議・・・簡単に地雷原が出来ちゃうんだな!
「簡単じゃ無い、結構疲れたんですからね!」
「あの塔を戦いながら駈け登るのとドッチが良かった?」
そうボクが一人でイリスを助けに塔を駆け上ってる間、アイギスさんには隠れて休んで貰い、そしてイメンケさんにはボクが持ち込んだ❝思考性地雷❞を周囲に散布して貰ってたのだ・・・手本で最初の一個だけボクが設置して見せたけどね♪
ちなみに思考性地雷は❝指向性地雷❞の誤記では無い・・・ボクの視界に赤いマーカーで表示され、ボクの頭の中で指示すると爆発するから思考性地雷なのさ!
「キッドさんの場合❝嗜好性❞の方が正しい気がする」
「黙れっ!」
イメンケさんにツッコまれながら奴等が隠れてる植え込みや遮蔽物の影を吹き飛ばし、隠れてる場所から押し出された所を開けた場所で纏めて吹き飛ばす!
まあ爆発力の割に地雷は小さいんだ・・・バックパックに入れてボクが持ち込めた位なんだから、煙草の箱くらいの大きさで平べったい円柱状をしている。
「イメンケさん、全部設置してくれたの?」
「その時間は有りましたから・・・でも中腰で畑仕事の様な事はチョッと・・・・・」
若いクセに何言ってるんだか・・・・・
「何をしてるっ!最悪イリスだけでも・・・・・」
一際大声で叫んでる男が居る。
「キッドさん、奴がナスティーズ枢機卿です!」
その顔・・・しっかり覚えたからね!
銃声が音を潜め爆発音が止むと、奴等はボク達が地雷は使い切り弾は打ち尽くして四阿に立て籠もってると判断した。
隊列を整え絶対の布陣でボク達を取り囲んだ・・・ところで残ってた嗜好性地雷を一斉に爆発させ、同時に敵兵に銃弾を浴びせかける。
いかん・・・自分でも❝嗜好性❞である事を認めて仕舞った!
「エ・・・エネルギー切れの振りをして・・・・・」
ナスティーズの顔が屈辱に歪むが地雷は売り切れ、まあボクが「全弾、爆破っ!」って叫んじゃったからね・・・その事に気が付いたイリスが心配そうな貌をしてる。
ただナスティーズはマダ隠し玉が有るんじゃ無いかと動けない!
「大丈夫・・・十分時間は稼いだからね!」
次の瞬間5機のアサルトノーダーが横から滑り込む様に飛び込んで来て、
ガゼボを取り囲む様に布陣し防御を固めるとリニアガンやビームガンを構える!
「アレッ、数が多く無い?」
ミューズとダーグの2機は解かる、スターシップのメンバー化してるポップさんが乗ってても可笑しく無い。
後の2機は・・・・・
「私の命を狙うたぁ良い度胸してるじゃ無い♪」
その内一機のノーダーがスピーカーで怒鳴りながら光神教の警備兵を蹴散らし始めるがアレは酷い・・・警備兵をノーダーで蹴り飛ばし、しかも転んで這う様に逃げてる警備兵を後ろから足だけ狙って踏み付けていた・・・いくら腕や足の1本2本なら再生出来ると言ってもコレは酷過ぎるよジュリアさん!
「陛下より反逆罪の容疑で光神教徒とナスティーズ枢機卿に逮捕せよと勅命が降った・・・逆らうなら命の保証はせぬぞ!」
うっわ~~~っ、ジュリアさんったら本気で怒ってるな!
「キッドさん無事ですか?」
やっぱり一機はポップさん、では最後の一機は?
「中佐っ、敵が・・・・・」
「アイツ等、こんなモノまで隠し持ってたのか?」
逆関節2脚の首無しダチョウ型・・・ヴァイラシアンで散々お世話に成った無人戦闘ポッド、なんでファルデウスに有るの?
「ファルデウスでファルデウス製の戦闘ポッドを違法入手するのは難しい、それなら他国のを買って密輸する方が楽なんですよ!」
「そんなの聞きたく無かった・・・」
「先手必勝っ!」
5機目のアサルトノーダーが腰撓めにしていたノーダー用レールガンを発砲、3機出て来た首無しダチョウを一瞬で沈黙させる。
「その声は・・・婆ちゃん?」
呆れた事に乗っているのはジェイナス婆ちゃんだ!
「私・・・ノーダーは専門外だけど弄って見たく成る、このアサルトノーダーと言う奴も中々面白いモノだねぇ♪」
と感心してる。
「もう一度言う・・・オマエ達 光神教には反逆罪が適用され、討伐の勅命が陛下より下った!抵抗すれば反逆者として容赦無く討つ!」
流石にノーダーの銃を突き付けられちゃ、奴等の信仰など屁のツッパリにも成らない。
あちこちで信者達が銃を置き跪いて抵抗の意思が無い事を示す、そんな中一人だけ・・・数歩後退ってから背を向けて走り出す男が居た。
「ミューズ解っているな?」
「アイギスさんとイリスさんの事はお任せ下さい♡」
2人の事は任せてボクはナスティーズ枢機卿の後を追おうとしたら、イメンケさんから声を掛けられる。
「アイギスさんの分の仕返し御願いしますね♪」
「任せて!」
ナスティーズの奴には思い付く限り残酷に殺して差し上げるさ!
「そんなキッドさんに朗報、これを聞いたらキッドさんの残酷度が爆上がり!」
「な・・・なんです?」
なんか嫌な予感がして聞きたく無いんだけど・・・
「キッドさんの姿を見たナスティーズ、アナタを奴隷にして可愛がるから無傷で捕らえろと言ってました」
あいつは男も女もOKの変態だったね!
でも・・・
「・・・変だな?意外と頭に来ないぞ」
「意外ですね?」
うん自分でも意外だと思ったけど考えたらスグに判った!
「イリスとアイギスさんの事だけで、ボクは限界まで頭に来ているからだと思うよ!」
ボクは銃を手に走り出す!
そろそろ時間的に惑星ミューズの影から出て第4ステーションに太陽が当たる・・・つまり夜明けと言う事、あまり年寄りが夜更かしするモンじゃ無いね?!
私達のアサルトノーダーが援護する中でウェルム少将と部下達が突入して来て光神教の信者を次々と拘束して行く・・・キッドちゃんに眠らされてた者達も薬がキレて起きて来たらしく、ナスティーズ枢機卿の愛人だった男と取り巻きが証拠を携えて出頭して来たそうだ。
それを読みながら私はジュリアが狙われた理由を知りミューズ達に伝えると、ジュリアの奴がナスティーズ枢機卿を逃がして仕舞った事に地団太踏んで悔しがった。
「ミューズ様は・・・アイギス様とイリス様に何か思う事は無いのでしょうか?」
当たり障りの無い所だけ簡単な事情を説明したが、イメンケはミューズに2人を如何思っているのか聞いていた。
なにせマルドゥースの家に虐待され死にかけたのだから・・・ところが小さく「えっ!」と声を漏らしたミューズは、可愛らしく首を傾げながら何を言われたのか解からないと言う貌で・・・・・
「なんで?」
と答えたのだった。
「だって二人はマルドゥースの家の者ですよ?」
「それを言ったら私だってマルドゥースの人間よ?もっとも私はとっくに縁を切ってるし、マルドゥースの奴等が出て来たらブッ飛ばしちゃう積りだけど!」
ミューズはコクピットの中でシャドーボクシングする様に拳を繰り出しながら言った。
だがイメンケが気を使うのも解かる気がする、マルドゥースの家の者と言うだけならミューズと一緒だけどアイギスに至っては反乱の首魁の一つでもあるマルドゥース本家に嫁いでいる。
しかもマルドゥースの本家もミューズの母やアイギスの実家である分家も、絶対に合意する筈も無いから離婚もせずに逃亡・・・つまりアイギスは未だに反逆者マルドゥース公爵の長男の嫁でイリスはその娘なのだ!
「アイギスさんって私が お爺さまに救出された後・・・マルドゥース公爵が私にも虐待される原因が有るなんて言った時に、その言葉に異を唱えてマルドゥースの元から出奔されたのでしょう?敵意など微塵も有りません、それより早く保護して上げないと・・・・・」
ミューズが言ってエクセリオンから降り様としたのでジュリアが止め、銃を持つと自分が降りてアイギス達の保護に向かった。
まだ戦闘艦とアサルトノーダーでの戦い以外にミューズを使うべきじゃ無い、銃の腕は上がったけど本格的な戦闘訓練をした訳で無くマダマダ一人で闘わせるレベルと言えない。
「オマエの言う通りだけど割り切れる人間ばかりじゃ無い、それなのに寛大な心で許せるミューズは間違い無くハインツの孫だ・・・アイツの気質を十二分に引き継いでいるよ」
「えへへ♪」
嬉しそうに微笑むミューズだが、それでも周囲の警戒は怠らずレールガンを構え索敵を続けていた。
彼女だけエクセリオンに騎乗し、私達4人は乗っているのはカブリヌス・・・一度だけエクセリオンに乗らせて貰ったけどアンナ扱い辛いモノは私には無理、と言うより本場本物のノーダー乗りだったダーグでさえ「性能は良いけど乗り難くて扱い辛い!」と匙を投げている!
一応スターシップには念の為の新たに予備を造って合計5機のエクセリオンが常備されてるが、実際に使っているのはキッドとミューズの二人だけだった。
そんな事を考えてると行き成り無線通信にジュリアの悲鳴が響いた!
「きゃぁぁぁ~~~~~っ、ミュ・・・ミューズちゃんのオバケェ~~~~~ッ!」」
「失礼ねっ!誰がオバケなんですか!?」
ミューズが怒って言い返すが、
「ち、違うったら!ミューズちゃんがオバケなんじゃ無くて、ミューズちゃんのオバケが出たのよっ!」
如何言う意味だ・・・何の事か解らないので困惑したミューズがエクセリオンを跪かせると降り、私はミューズに危険が及ばない様にカブリヌスでダーグ達と一緒に護衛する。
「こりゃ確かにミューズのオバケだね♪」
腰を抜かしてるジュリアの先で首を傾げてる2人を見て私達3人は大笑いをしてしまう、そこには大人に成ったミューズと若返ったミューズが居たからだ!
そこへミューズが駆け寄ると流石に驚いて立ち止まりアイギスと一緒に硬直するが、イリスの方は気になる様でアイギスの背後に隠れながらもミューズを伺う。
考えて見たら2人はキッドには会ってるのだから、同じ貌を2連続で見せられ驚く前に慣れ始めるか?
「初めまして・・・私はミューズ、アナタがイリスちゃんね?」
「貴女がミューズ、アズミーナの娘の・・・・・」
アズミーナと言うのはミューズの生物学上の母、でもミューズの母親を名乗る資格は微塵も無いけどね!
ただミューズに名乗られたアイギスは辛そうな貌をしてる、そして手を出そうとしては躊躇いながら意を決した様に口を開いた。
「貴女に一目会ってお詫びしたいと思っておりました・・・ミューズ姫、貴女の不幸は全て私が原因なのです」
ミューズが何を言われたのか解からないと言った顔をしてる、もちろん私にも解からない。




