助けに行く!イヤそりゃ可愛い女の子だもん♪
イメンケ先生の御教授によると人類が宇宙に進出し様がマトモに信仰する者が極端に減ろうが、宗教が滅びる事は無いと言う事だった・・・まあ人間はロマンを求めるモノだしソレは地球もファルデウスも変わら無いだろう。
人は結婚する時は永遠の愛を神に誓い、宗教が無く成れば人が大好きな祭りも侭成らない・・・結局は持ちつ持たれつの関係なのだ。
それでも人類が宇宙にまで進出すれば信徒の数など激減し、結婚式や葬式の場を提供したり宗教施設を観光地化したり・・・宗教は生き残る為に生存方法を模索する事に成る。
「と言う事で帝国の実権を握って宗教国家にでもする積りか・・・・・」
「いえ飽くまで自分の贅沢の為でしょう・・・言ったでしょ、俗物の中の俗物だって!」
イメンケさんの光神教への評価は底値を更に下へボーリングしてた。
「いいえ光神教会では無くナスティーズ枢機卿への評価が低いんですよ・・・諜報員時代に仕事で教会に潜入してたんですが、若い修道士に化けてたんで大分派手に虐められました」
個人的な恨みも有るって事なんだね?
「まあ変装してたのでアイツは会っても私とは判ら無いでしょうけど、その時は宗教を利用した違法送金を調査してたのです・・・まあ違法送金じゃ大した罪に問えなかったんですけど・・・・・」
それでも前科が付いたのに宗教家を続けられてるのだから、随分と面の皮が厚いと見得るね!
「まさか帝国の乗っ取りまで企めるほど大悪党だとは思いませんでした!私も人を見る眼が未熟だった様で・・・・・」
イヤ多分違う。
「イリスちゃんを手に入れたから帝国の乗っ取りを企んだんじゃ無いかな?彼女を確保したのは間違い無くボクが現れる前だろうし・・・そうかっ!」
そこで考えが閃いた。
「元々はイリスちゃんをミューズに仕立て様と考えてたんじゃ無いかな?髪も永久に脱色するか何かして・・・だけど準備が整う前にボクが現れミューズが帰って来た、だから予定を変更して・・・・・」
「ミューズ様達を排除してイリス様をキッドさんに・・・・・」
そう考えたなら当然・・・・・
「イリスちゃんも皇帝の血脈だ・・・ミューズが死んだ後に彼女に近い血脈のイリスを爺さんに近付け、仲良く成った所で多分爺さまを殺す所まで考えてると思う」
「キッドさんとイリス様をくっ付けて帝国を継がせるか、イリス様を女帝にすると言う遺書をデッチ上げれば!」
まあ皇帝暗殺まで企んでたかは言い切れ無いが・・・それでもミューズ達を殺す事を企んでたなら、イリスちゃんを使ってボクを操る所までは間違い無く考えていただろう・・・絶対に許さない!
それに爺さまが生きてる内はファルデウスを好きには出来無いし、時間を掛ければ企みに気付かれる可能性も出て来る・・・そう考えると皇帝暗殺まで考えてると考えた方が自然なのかも知れない。
「母親のアイギス様は行方不明ですが、あの塔の最上階にイリス様は囚われています・・・アイギス様さえ見付けられたらイリス様の説得も簡単なのでしょうけど」
「は良いんだけど・・・イメンケさんも来るの?」
ボクはスターシップに積んであった機動宇宙服を着てる、あのテュホーンで銃撃戦した時に使ってた奴だけど、イメンケさんも黒っぽい戦闘服の様なモノを着込んでいた。
周囲の環境・・・風景や明るさに背景色それに光の向きによって色彩の変わるハイテクな戦闘服だ。
「まあトレーニングだけは欠かしてませんが暫く現場から離れてたので、正直に言えば私も出たくは無いのですが・・・眼の前でキッドさんを撃たれちゃったんで頭に来ちゃいましてね♪アイツ等の鼻を明かしてやらないと気が済ま無い、それに元と言え戦闘諜報員として少々プライドも傷付きましてね!」
と悪戯っぽく笑った。
「プライドを傷付けられたって事は、イメンケさんはボクの警護もしてたんですか?」
「いえいえ現在の私は完全に民間人のビジネスマンですよ、まあ前職が前職なので雇い主に無茶振・・・イヤ余計な手間を頼まれますけど」
マリアさんだな・・・
「あの時は上からキッドさんの周囲を警戒してたんですけど、まさかコロニー警備官に化けてたとは・・・抜いた銃をキッドさんに向けた瞬間に私も銃を抜きましたが3発も撃たれ、直後に上から奴の肩を撃ち抜くので精一杯でした」
確かに炸薬式の拳銃で無いので銃声は小さい・・・ボクも雑踏に紛れて全く聞こえ無かったけど、多分 聞こえてたとしても1発分しか聞こえなかったと思う。
ほゞ同時に3発の弾丸がボクの背中を貫いた、正直ボクは説明をされるまで3人から個別に撃たれたと思った程だったのだ!
ボクを撃ったのは熱線銃で、あの出力では炸薬銃並みの反動が有る・・・それを一瞬で3発打てたのだから腕の方は折り紙付きだろう!
「なるほど・・・つまり眼の前で重要人物を撃たれ、元プロフェッショナルとしてのプライドが傷付いたと?」
「眼の前で友人傷付けられた事がプライドを抉りました、これでも要人警護は成功率100%を誇ってたので・・・ただ上から肩を撃ち抜いたのに逃げ切れた暗殺者はタダモノじゃ無い、多分ジョブ・トゥーニックの・・・・・」
子飼いの暗殺者だろうね・・・それにしても情報局員が要人警護なぞするかとも思ったが、他国からの重要人物の亡命などを受け入れる事もしてたそうだ。
「では囚われの姫の所まで行くとしますか」
陽気にイメンケさんは言うけど、
「えっ?行かないよ?」
ボクの言葉にイメンケさんは眼をパチクリさせ、チョッと大きな声でボクに言った。
「じゃあ何の為に遥々第4コロニーまで来て、何の為に忍び込むんです?!」
「なんだ・・・解かって無かったんですか?」
ボクの方こそ驚いている。
「良いですか・・・今までイリスちゃん母娘はマルドゥースの手の者から隠れ、ずっと一般市民として幸せに生活して来たんですよ?」
それはイメンケさんの見せてくれた報告書からも明らかだ。
「お母さんのアイギスさんは偽名で文筆業を生業とし、母娘の評判は職場・学校・近所を問わず共に最高・・・特にイリスちゃんは周囲から可愛がられてたと・・・そんな娘が行き成り皇位簒奪を企む様な野心芽生えさせますかね?まだ幼い彼女が・・・・・」
それが真実なら実は稀代の悪女だったなんて代物じゃ無い、女の悪魔か邪神が爆誕した様な話だ!
「母親のアイギスさんもミューズへの仕打ちと暴言を聞いて出奔する様な方ですよ・・・そりゃ聖女から悪女が生まれたって不思議じゃ無いけど、調査じゃ本当に仲の良かった母娘だったと有ります。幼女が余程巧妙に本性を隠してた悪魔だったなんて話じゃ無かったなら、アイギスさんの性根を多少でも受け継いでると考えるのが自然でしょ?なら心を占める悪の割合度は、比較的にでも低いと考えるべきです」
ボクは自分の考えを整理しながら言う。
「先も言った通りナスティーズはミューズの替え玉に使う積りで彼女達母娘を誘拐・・・監禁した」
「ええ、キッドさんが現れる直前まで・・・そしてキッドさんが現れる直前に親子で失踪してます」
「そんな彼女に無理矢理言う事を聞かせるならば・・・・・」
「アイギス様を人質に・・・・・」
先ず間違いが無いだろう!
「分かりました・・・つまり先にアイギス様を?」
「いやイメンケさん監禁場所を知ってるの?」
・・・・・
「じゃあ結局・・・忍び込む理由は何なのです?」
ボクは深々と溜息を吐きながら作戦を説明する。
聞いたイメンケさんは最高に呆れ果てながらも、
「さてと・・・経験は私の方が有るので具申はしますが、基本的にキッドさんの考え方のレベルも身体的スペックも方が高過ぎる。アナタの指示に全面的に従いますので」
そう言ってボクの背中に廻り後から追いて来てくれるのだった♪
刑務所じゃ有るまいし高い塀で囲まれている宗教施設、教会と言う物は開かれているべき場所では無かっただろうか?
近年はモラルの低下と治安の悪化に伴い日本のキリスト教 教会でも施錠する様に成ったけど、最後まで神父様達は「協会は開かれる場所であるべきだ」と主張し反対したと聞いている。
それでも鍵を掛けざるを得なかったのだから、元と言えボクは日本人として恥ずかしい限りだった。
「キッドさ・・・その反則技は何ですか!」
お姫様抱っこされながら抗議するイメンケさんを抱え、ボクは服のバーニア・スラスターを使って塀を飛び越える。
周囲の警戒設備をジャミングしてバーニアは出力を押さえて光と音を無くし、そして植え込みの中に着陸して建物を伺い・・・庭を走り抜いて侵入した。
「普通は侵入した建物内で、こんなにスイスイ動け無いのですが・・・・・」
呆れてるイメンケさんを置いて先を急ぐ・・・周囲は全てアリスにチェックさせ警備システムにはアリスがハッキング済み、ボクの視界には敵の警備兵の場所やら何かが全て表示され、警報機は鳴らず監視カメラ等は全て偽の映像を流している。
『チョッと遠回りに成りますが・・・・・』
『この先の警備兵は居眠りを・・・・・』
『次の扉の錠は外してあります・・・・・』
イメンケさんのレシーバーにもアリスの声は届いている。
「何て緊迫感の無い潜入任務だろう・・・普通に施設内を歩き回ってる」
「一応ここも教会でしょ?別に潜入も歩き回るのも、そこまで厳重に警備されてる訳じゃ・・・・・」
そう言いながらボクは忍び込んだ部屋の窓ガラスを出力を絞ったレーザーガンで焼き切り、吸盤付きの取っ手で保持していたイメンケさんが焼き切った後に取り外す。
この窓は隣の建物の非常階段に近いのだ・・・警備兵の前を通らずに抜けるルートが無い為、ここから隣の建物に飛び移る。
「目的の人物は此の向こうの建物の最上階か・・・気が重いなぁ」
ボクは苦笑しながら階段を登る。
「何か有るんですか?」
「覚悟は決めて来たからやり抜く積りだけどね・・・敵に対してなら殺す事に抵抗は無いんだけど、こう言う真似は正直言ってしたく無いんだよ」
情けないけど本当の事を言って置く・・・一緒に来て貰った以上、万が一の時には彼にフォローして貰う必要が有るからだ。
「えっ・・・その為にキッドさんは、私を誘ったんじゃ無いんですか?」
イメンケさんは不思議そうに言うが、
「なんでよ・・・ボクはイメンケさんを一言も誘って無いです、それ処か勝手しかも強引について来たんじゃ無いですか!」
イメンケさん少し考えて、
「そう言えば誘われてませんでしたね・・・でも強引について来た積りは無かったんですけど・・・・・」
「いくらボクが危険だからとか責任が取れ無いと言っても、❝まあまあ❞とか言って結局来ちゃったんだから・・・それに「私に何か有っても勝手に付いてくんだから、キッドさんが取らなければならない責任なんか無いですよ♪」とか、自分が勝手について来た自覚が有ったみたいな感じだったけど・・・・・」
するとイメンケさんは罰が悪そうに、
「仕事上、都合が悪い事が有っても惚けて仕舞う癖があるので♪」
おいファルデウス製のビジネスマン、そんな事で良いのか・・・・・・
「それにコレは僥倖ですよ♪」
彼は懐から黒いケースを出す。
「私は情報部の諜報員だったんですよ?そう言う事は得意中の得意で・・・・・」
正直に言うと覚悟は決めて来たけど自信は無かった・・・だからイメンケさんがソッチの経験者で自信が有ると言われ、ボクは助かったと思いながらも❝拙いヤツ連れて来ちゃったかな❞と少し心配に成った。
光神教は一枚岩では無く信仰を大切にする昔ながらの修道士・修道女と、権力と利権にしか興味が無いナスティーズ枢機卿を主軸にする一派の間で争われて・・・いなかった!
良くも悪くも真摯な宗教家は貧しくとも清廉に宗教に没頭している・・・金の力で同僚が権勢に没頭してても、その金で貧しい困ってる人々を救ってさえいれば文句を言わない。
信徒からの寄付を着服したり自分の贅沢に使ったり、犯罪行為に手を出さなければ・・・・・
「幼い少女を誘拐して脅迫してたんだから・・・これから可成り揉めるだろうけどね!」
爺さまには悪事に加担しなかった奴まで責め立てる事の無い様に進言して置こう、その為に真偽解析装置を譲って上げたんだから♪
「これはファルデウス帝国との直接取引だから大分儲かったんだろうな~~~っ!」
それはミューズに一任して有る。
「うちも関わらなかったですからね」
とイメンケさん・・・ジェリスさんがバーカンディ・グループを通さないで爺さんと直接取引する様に、と言うよりボクが窓口に成ってと頼もうとしたのだが公平性を疑われない様に直接取引した方が良いという話に成ったんだ。
「居ましたよ・・・アイツです!」
目的の建築物の最上階・・・ペントハウスみたいな造りのソコでは、教会のトップに座る連中が毎晩宴会を開いている。
それもチョッと人に言えないタイプの宴会を・・・まだ若く美しい容姿の女が数人の美男子を侍らしながら、酒池肉林までは行かないけど豪勢な酒と肉欲に興じていた・・・こいつ等が光神教の修道女と修道士だと言うのだから呆れる
イメンケさんが小声で、
「全員ナスティーズ枢機卿派の権力欲の権化どもです・・・真摯な修道士達には気付かれてませんが寄付金の横領も・・・同情の必要も無いですよ」
「大丈夫・・・納得出来無い事をしないだけで、正義の味方を気取る気も無いし自分の手が血塗れな事くらい知っている。こいつ等を拷問する事に躊躇いは無いよ・・・・・」
そうボクはアイギスの居場所を知る為、彼等に暴力をふるいに来たのだ!
ボクは持っていたレーザー銃をイメンケさんに渡すとナイフを抜いた・・・するとアリスから報告され、
「キッド様の拳銃を使っても問題ありません・・・この建物に奴等意外の人はいませんし、乱痴気騒ぎを隠す為に防音対策はバッチリですよ・・・・・」
危機意識の薄い奴等だ・・・ボクはナイフをホルスターに戻し、建物に入ると銃声が漏れ無い様に閉めて施錠する。
そして髪を纏めてショートのウェッグを被ると貌をマスクで隠し、ショルダーホルスターからオリジナル仕様のコルトガバメント・コピーを抜いた!
イメンケさんが居てくれて助かったと心の底から思う・・・今では正直言って最後まで拷問をやり遂げられたとは、自分でも全く思え無いし自信も全く無かった!
ボクはイメンケさんと一緒に飛び込むと中に居た1人の女と8人の男を瞬く間に制圧・・・ボクは女と6人の男を銃で膝を撃ち抜いて動けなくし、そしてイメンケさんは一人に発砲し一人を体術で肩を外す。
そして制圧が終わると止血だけ(可哀想に肩の脱臼は放置・・・)して、結束バンドの様な簡易拘束具を使い手足の親指を拘束して行く・・・ボクも手伝った。
「ルピナスさま・・・部屋から出てますか?」
イメンケさんが言ってくれた・・・ルピナスは前以て決めて有ったボクの偽名だ。
「自分でする事の責任は自覚してるのでパインさんも御気遣い無く」
ちなみに今回ボク達の偽名は潜入と美女(美少女)救出のミッションから、とある人気キャラクターの大泥棒から・・・本人が自分を義賊だ等と思って無い所も含めて使ってる。
ルピナスの英語名は彼の名前その侭だし、英語で松の木を言うと❝The Pine❞それがフランス語だと❝Le Pin❞に成る(間違ってたら誰か教えて♪)らしいが、その読みは日本人のボクには彼の名前と同じ(実際は少し違うらしい)に聞こえる・・・でもパインさんだとアップルトン大尉と被るんだよな?
「じゃあ早速始めよう、知ってる事は素直に言って貰えると助かる。言わない場合と嘘を言った場合は・・・少々洒落に成らない事に成るから・・・・・」
そう言うとイメンケさんは先程の黒いケースを懐から出して開く・・・中に在ったのは文房具かソーイングセットの様な物はだったが、色彩が統一されてるので医療用具っぽくも見える。
「先ずはキミからだ・・・・・」
彼が選んだのは唯一の女性・・・アイギスさんを何所に監禁してるのか聞くと最初は知ら無いと答えたが、イメンケさんが拷問の道具を持って近付くと顔色を変えてペラペラ喋り出す。
あの道具の使い方を知ってるのだろう・・・ボクには径が1㎜以下の太目のワイヤー、それが束ね丸められてる様に見得る。
その時カチューシャ越しにアリスの忠告が囁かれた・・・・・
「パインさん、その人の言ってる事はウソです。その場所にアイギス様は居無い・・・・・」
それを聞いた途端、今度はギャアギャア喚き出し・・・本当はアイギスさんの場所を知らないんだと言い出した。
「今のも嘘です・・・このヒトはアイギス様の居場所を知ってるらしい」
「暫く話さなくて良いですよ・・・続きはチョッと痛い目に会ってから話して貰いますから」
イメンケさんは女の人の足首を掴んで・・・耳を劈く凄まじい悲鳴が上がって、ボク自身は何もされて無いのに気持ち悪さと吐き気を催した。
数秒後には女の人はボク達に泣き叫んで謝りながら聞いて無い所までペラペラ喋り、男達の方も何もされて無い内から何でも話してくれた・・・それを情けないとは思わなかった。
なにも女の人から拷問に掛けなくても・・・なんて馬鹿な事も考え無い、女性から拷問に掛けたのは彼なりに考えか何か理由が有るのだろう。
「これで大丈夫だと思いますよ」
イメンケさんに言われる・・・真偽解析機と拷問のダブルパンチじゃ、コイツ等も真実を隠し通せる筈も無い。
もっともその引き換えにボクは精神的に何かをゴッソリ削られ、吐きこそしなかったけど生理的嫌悪で頭に靄が掛かってる様な感じに成っていた。
多分顔色も悪いだろう・・・そんな事ならカチューシャ経由で真偽解析機を使うだけにしとけば良いって事は出来無かった、沈黙して何も喋ら無いと言う手や嘘は言わないけど肝心な所を暈すと言う手に出られたら何も出来無いからだ。
「なら早い所、先を急ぎましょう」
そう言うとボクは銃を彼等に向けたまま立ち上がる。
殺されると思った男達は命乞いをし、女の人は既に諦めてるのか「苦しまない様に殺してくれ」と言い出した・・・そんなに簡単には殺しゃし無いがボクが殺人鬼にでも見得るのだろうか?
でも気持ちは解からないでも無い・・・軽く最初のワンアクションで折れたと言え拷問などされたのだし、何をしたかされたか見ただけでボクも気持ちが悪く成った・・・数秒か十数秒の話なのにだ!
「キミ達が馬鹿な真似をし無いか警戒をしてるだけ、言う事を聞いてる内は殺しはし無い・・・抵抗をするなら話は別だけどね」
一応に安心した顔をするが、女の人だけは放心した様な顔の侭だった。
「今から相棒がオマエ達に投薬する。1~2日くらい眠り続けるけど死ぬ事は無い」
本当に眠剤か疑う事を言い出したが、
「殺すならコイツの引き金を人数分引くだけで済む、こんな説明する必要は無いだろ?ただし・・・・・」
ジリジリと後退しながらコッチを警戒してる青年いや少年か?・・・彼の眉間に銃口を向けると、少年の顔が恐怖に彩られる。
「警報機に接近する様な真似をしなければね」
「待て、分かったかっ!くえっ?」
ボクは黙って引き金を引くと、乾いた音を立て少年の頭を打ち抜いた。
その場に居た者でボク達以外が途端に悲鳴を上げて泣き叫ぶが、ボクは恫喝する事もせずに黙って見詰め続けると・・・やがて怯えながらも一人一人と黙り始める。
恐慌状態の時に怒鳴り付けるのは結構悪手、まあ状況や相手の状態にも因るんだけどね。
「静かに・・・そして抵抗するな・・・そうすれば生き残る道くらい残してやるから・・・・・」
皆が落ち着いたのでイメンケさんが注射器の用意をする・・・地球の物と違い針すら付いて無く、銃身の短い拳銃の様な形をして居る。
「良い子だ・・・静かに成った御褒美に良い事を教えてやる。さっき約束した通りオマエ達が生き残る方法だ!オマエ達が関与したのはナスティーズ枢機卿による皇位簒奪未遂、このまま行けば全員問答無用で死刑だよ?オマエ等が監禁してるイリス様は皇帝の血族なんだぞ・・・・・」
連中の顔が一様に蒼く成る。
「彼女の貌がミューズ様と同じ事に気が付かなかったのか?そもそもナスティーズ枢機卿にはファルデウス帝国軍・ジュリア中佐暗殺未遂事件の嫌疑も掛けられてる・・・オマエ達が公開処刑されるのは時間の問題なんだぞ」
よしガタガタ震え出したな?
そこまで関与して無かったらしいが、散々信者の浄財を着服して贅沢して来たんだ・・・オシオキ代わりにチッとは怖がれ!
「明日か明後日に眼を覚ましたら帝国警察に駆け込んで自首しろ、出来る限りの証拠を捜し持参してな・・・皇位簒奪まで知らなかったなら情状酌量されて命だけは助かるだろう。ただしアイギス様・イリス様の誘拐拉致監禁に関しては正直に話し、その罪を償うんだ・・・良いな?」
皆がガクガクと首を縦に振ると、ボクはイメンケさんに指示して彼等に注射をさせた。
それが終わるとイメンケさんは、
「もう・・・注射は数時間しか効きませんよ?精々5時間、明日までドコロか朝までだって絶対に持ちません」
「そうなんですか?睡眠薬持ってる事は言われて知ってたけど、どの位まで持つかは聞いて無かったから・・・・・」
せめて朝まで寝てて欲しかったんだけど、
「って事は残り時間は今深夜だから5時までか・・・まあ別の建物と言え同じ敷地内、何とか成るでしょ♪」
「ドッチから救い出しますか?」
ボクは少し考えてから
「この隣りの建物の地下ですし先ずはアイギスさんを助けましょう・・・・・」
ボクがアイギスさんを優先したのは嫌な予感がしたから、動けない状態にあるのかも知れない。
拷問で得られた情報にアイギスさんがイリス説得に同意しないため、痛め付けられてると言うのが有ったからだ。
それなら健康状態が良い・・・と言うより表に出した時に身体に傷が付いてると言う訳に行くまいイリスは大切に扱われてるだろう。
ともあれ動きに支障の無いイリスからと言う考えも有るが先にアイギスを助けて状態を確認、場合によっては別口で逃がす必要が有る。
アイギスが酷い目に会っててソレを見せられたイリスがパニックに成らないとも限らないから、せめて傷付いてても自分の脚で歩けるなら良いのだが・・・まあソレは本人を見て確認してからで良いだろう。
「地下5階でしたね?」
堂々とエレベーターに乗り込むボク達・・・システムはアリスの影響下なので、監視してる者が居ても見付かる心配は無い。
「監視カメラとか設置されて無いんです、この先が監禁に使われてる様ですが中までは解りません」
ボクは嫌な予感が強く成る・・・何で監禁してる人間がいる場所にカメラの一つも無い?
そりゃハッキングを警戒してオフラインにしてるかも知れないけど、アリスの性能ならオフラインでも設置してる機械を利用して意外と隙を突ける・・・本来の用途で無くても電波やニュートリノを発生させる機器が有れば、それに情報を乗せて横流しが出来るのだ!
マア確実にとまでは行かないけど・・・それに堂々と拉致・監禁なんて事ををする輩は総じて意味不明の自信家で危機意識が薄い・・・自分だけは大丈夫で敵に出し抜かれる筈が無いと、相手を見縊り正体不明の自信に溢れてるのだ!
それなのに付け入るスキが全く無いと言う事は、よほど見られたくない事を中でしてるのかも知れないと思ってしまう。
「攻撃の用意をして下さい・・・エレベーターが止まったホールには武装した警備兵、その数は8・・・・・」
「キッドさん・・・・・」
アリスとイメンケさんに声を掛けられるが、
「大丈夫、心得てますよ・・・全員沈黙させます」
拘束する時間も惜しいし息が有ると何かされる可能性もある・・・さっきの馬鹿者どもなら未だしも、武装して警備にあたってる奴等に手加減など出来無い!
エレベーターが地下5階に到着する・・・敵が身構える前にボクが飛び出してイメンケさんは射撃を開始、到着音も無く扉が開いた途端に銃撃が始まる・・・さぞかし相手も驚いただろう。
銃声の大きな銃を持って来たボクはナイフを使い、次々と敵の喉に突き立てイメンケさんも相手を射殺して行く・・・数秒で相手は殆ど沈黙した。
最後に残った・・・5人の内一人は若い女だったがボクは躊躇う事無く咽喉を切り裂き、同時にフロアのシステムをカチューシャ経由でハッキングさせる。
「現在監禁されてるのはアイギス様お一人の様です・・・現在この奥で拷問されおり、その数は8名・・・・・」
ボクは銃を抜きながら奥へ進むが、
「正面の扉を施錠されて無いの蹴飛ばして下さい・・・5m進んで突当り右8mに見張りが2名 左側ですが、薄い扉の中で拷問が行われており音を出さずに・・・・・」
「視界に3D化したマップとターゲットを、ボクが突当りを曲がったら廊下だけ照明をカット!」
小声で言うと銃をホルスターに戻し、右の利き手に再びナイフを握り締めた。
同時に視界にある全ての物体がポリゴンの様に白い❝辺❞に囲まれ、これは視界が闇に覆われても消える事は無く敵の位置を表示する。
だけどボクは突当りのT字路を曲がった所で敵の一を記憶し・・・敵が動く前に1人目の喉を切り裂き、2人目が身構える前に喉にナイフを突き立てて捻った。
「お・・・うっ・・・・・」
「あ・・・・・」
不様だろうと悲鳴を上げたら中の人間に異常を知らせる事が出来たが、ボクにとっては運の良い事に敵は殆ど声を出さずに息を引き取る・・・その身体を倒さない様に支えていると、後から来たイメンケさんが一人を引き受けてくれた。
音を出さない様に横たえると扉の前に立ちアリス経由で打ち合わせ、ボクが先に飛び込んで左に、彼には続いて右に飛び込んで貰う様にマップを見せながらジェスチャーで説明した。
3Dマップを見ると中央に女性が吊るされている・・・多分この人がアイギスさんだ!
ボクはショルダーホルスターの銃❝ガバメントカスタム❞を抜くと、同時に腰の後ろに差して置いたサイドアームのリボルバー❝M686❞の3インチバレルモデルを抜いて左に持った。
アリスの指示で5カウント・・・カウントをするのに最初から1秒遅らせて有り、ゼロでボクが飛び込むと遅れてイメンケさんも飛び込んだ!
「なん・・・」
鎖で無造作に手首を縛られ吊るされてる全裸の女性・・・身体中が殴られ傷だらけな彼女の貌を見てボクは驚く、イリスちゃんやミューズは娘であり姪なのだから似てて当然だけど赤の他人のボクともソックリ!
まあ似てて当然か・・・そもそも偶然と言えボクとミューズが瓜二つなんだから彼女達にボクが似てても当然のこと、ただ前以てイリスちゃんの事は知ってたけど行き成り3人目のドッペルゲンガー出て来ちゃ驚かずにはいられない!
と言っても驚いてばかりはいられないず、その周りに鞭を持って突っ立てる男が3人と座りながら酒を飲んでる男が3人に女が2人・・・上で先程ボク達に〆られた奴等はナスティーズ枢機卿の愛人と取り巻きだったがコッチは更に高位の聖職者達の筈だった。
ちなみに愛人はアノ女の人じゃ無く男の内の一人、少々呆れてモノが言え無い・・・・・
「待てっ、金なら・・・・」
悪党の言う事はフィクションでも現実でも同じなのかな?
少なくとも地球では現実に司法職員が踏み込んだ際、気のきいたセリフや命乞いが出来る奴は殆ど居ないと読んだ事が有る・・・元FBIの捜査官が書いた手記か何かでだ!
大概は八割方が呆気に取られて何も言え無いか、パニックに成って意味不明の事を叫び続けるかだそうだよ
ボクは冷酷に一人づつ頭を打ち抜いたやろうかと最初は思ってたが、思い直して両肩と両膝を丁寧に打ち抜いて行く。
今後一切コイツ等は偽証する事が無いなら、この場で何か出来無い様にしとけば問題は無いだろう・・・一息に殺すよりは生きてタップリ苦しんで貰う方がコイツ等には相応しい!
だから確実に膝と肩を破壊して行く・・・この世界の技術なら再生や代用が可能な怪我だが、少なくともボク達が行動する間は這い擦り廻ってて貰う!
「パインさん・・・彼女を降ろして下さい、ボクでは手が届きません」
制圧した奴等に銃を向けたまま、アリスの指示で警報機とかを破壊して行く。
成人男性より子供のボクの方が羞恥心を感じないかとも考えたんだ、けど彼女は高い位置で鎖に縛られて手が届かない。
「キッ、失礼しました。ルピナスさん駄目です、私でも届きません」
こいつ等は如何やって吊るしたんだと思ったらシャンデリアの様な豪勢な照明が幾つも吊るされてて、それと同じ装飾された金具の穴からシャンデリアを吊るしてるのと同じ鎖で縛られ吊るされてるに気が付いた。
ボクは壁を見渡すと思った通りスイッチが、多分ダウンはコッチだろうと思い押すとユックリと彼女の身体が下降して来る。
「ビンゴッ!」
ボクは彼女に駆け寄って鎖を解くと手持ぶたさに成ったのか、眼のやり場に困ったのかイメンケさんは周辺の引き出しを開けて中のモノを漁り出す・・・何か犯罪の証拠と考えたのかも知れない。
「パインさん、そんな事より何か着る物を捜して」
そう言いながら彼女の手当てを・・・酷く鞭打たれてたが思ったほど重症では無かった様で、回復薬とナノマシンを注射すると彼女は意識を取り戻した。
同時にイメンケさんはバックパックに予備の服を持参してたらしく、下着は無いモノのジャンプスーツとスニーカーの様な物を用意してた。
まだ意識は戻ったモノのハッキリして無いらしく虚ろな表情の彼女に服を着せて行く、ナノマシンが急速に身体を修復しているが心までは簡単に治せない。
 




