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撃たれる・・・初めてだったけど、けっこう痛い・・・・・

「あと私が思いつくのは他国がキッドさんとファルデウスの離間を狙って・・・」


「それは流石に無いでしょう」


 そこまで他国で辻褄を合わせられる工作は難しい・・・なにせボクにはアリスが付いているし、それにソレを黙って見逃す程ファルデウス首脳陣も無能じゃ無いだろう!

 それに爺さまが黙ってる筈が無い・・・その事は他国も解ってる筈だし、暗躍が万が一露見したらヴァイラシアンを滅ぼした狂犬の牙が自分の尻に噛み付く事に成る!


「では一体・・・」


「結局ジョブ・トゥーニックとは別口だったんですよ・・・そもそも2人を始末したらボクだってファルデウスと繋がってるとは限ら無い、ミューズやジュリアさんの命を狙う理由は別にあったんです」


 確実とは言えないけど大体の見当は付く・・・かなり確率も高いんじゃないかな?


「ファルデウス国内で爺さんの治世に反発しながら、皇帝の血脈か準じる血筋をキープしてる奴が居ませんか?もしくは・・・そう言う人物を囲っている奴がね!」


 イメンケさんがニヤリと笑う。


「その心は?」


「敵はボクの持つ先古代文明のテクノロジーを手に入れ、その力でファルデウス帝国を自分のモノにしたいんだよ・・・だから先ずは邪魔なミューズを、何せミューズとボクが結ばれたら爺さまとボクの結び付きは今以上に強固なモノに成り手が出せ無く成る・・・と思ってる!まあ今更の話でボクは爺さまとは結構 信頼関係築けてると思うんだけど、でもボク達の事を良く知らない部外者が外から見る分にゃ・・・・・」


 イメンケさんはタバコと携帯灰皿を出して吸い始めながら、


「同時にミューズが死んでボクが帝国への興味を失ったら、次に皇帝に成るのは継承権第三位のジュリアさんでしょう・・・そしたらジェリス艦長やマリアさんが脇をガッチリ固めるし軍も全面的にバックアップする、ミューズ以上に手が出せないし・・・抑々そんじょソコラの雑魚にジュリアさんを操れるとは思えない。ただ・・・・・」


 ボクには一つ分らない疑念が有る。


「敵が帝国に色気を出してるのは間違い無いと思うし、その為にボクの持つ先古代文明の力を狙ってる事も確実だと思うけど・・・なのにミューズを殺してボクを懐柔出来ると思ってるのかな?」


 ジュリアさんの事は好きだけど今の所それは姉に対する様なモノ・・・周りの人はジュリアさんがボクを異性として意識してる様な事を言ってるけど、普段の扱いから見てボク自身は今一つ信じられ無い。

 でもミューズに関しては違う・・・彼女が殺されたらボクは絶対に耐えられ無い自信があり、この世界から消えドコかに行って仕舞うだろう事は想像に難しく無い。


「推理としては完璧ですね・・・そこら辺は、もう少し探らないと分らないでしょう。でも帝国での内情なら私でも、もう少し掘り下げられますが・・・聞きますか?」


 そう言ってタブレットを操作しながら言うけど、この様子だとイヤな話が出て来そうだった。


「ここからは凄く嫌な話に成りますので、ミューズ様には絶対に秘密でお願いしますよ」


 ヤッパリ・・・そう言いながら煙草を吸わないボクが近くに居るのに紫煙を吐き出す、よっぽど苛ついて居るんだろう気配りの塊みたいな彼なら普段は絶対しない!


「先古代文明の技術を持って治療されたミューズ様の身体も、完全に元通りに成ったとは言い難いんでしょう?特に女性独特の器官に関しては・・・違いますか?」


 正直ボクは驚いている。


「その通りですけど何で知ってるんです?この話はミューズすら教えて無いのに・・・まあ暴露(バレ)てるんじゃ仕方無いな、確かにミューズは子供を残せ無いかも知れない。虐待していた母親の家の者に腹部を蹴られ、卵巣にダメージを負ってたんだ。それも何度も・・・だから卵巣には両方共ダメージを負っている」


「先古代文明の技術でも不可能だったと言う事ですね?」


 ボクは首を縦に振る。


「その事を最初に知ったのはジェリス様です・・・陛下が母親とその一族から虐待されてたミューズ様を救出した際、医者によって細密に診断されたカルテをジェリス様も見た事が有ったのです」


 やっぱりミューズの母親と一族、そして虐待に加担してた使用人は見付け出してケリを付けたろかな?


「そして先日サンティアラ等から(もたら)された医学の知識に関し、こんなレポートが上がっていたんですよ」


 実際はワイズマンズ・ライブラリーから限定的に開放し提供したのだが、もう結構前の話だけど確かに陛下に届けて貰う為にジェリス艦長に渡したのだ。


「①先古代文明の技術なら生物の営みに反し、ゼロから生物の肉体を完全に創り出す事が出来る・・・だが魂・精神・心と言う様なモノを造り自我を持たせる事は不可能である。マタその身体にサイキックレベルA以上の者なら自我を移す事が可能・・・ただし現在の人類に提供するには、その技術は時期早々と判断し叱るべき時まで封印する。そして創り出された身体のパーツは確実に拒絶反応を起こす為、生体移植に使用する事は絶対不可能である!」


「つまりゼロから身体を作って魂を移植する事は出来るけど、そうやって作った身体をパーツ化して移植する事は出来無いんだ!そしてミューズのサイキック能力はレベルB・・・絶対不可能な訳じゃ無いけど成功率は2~3割くらい、とても実行出来る数値じゃ無いんだよ」


 その為に仕方無くミューズに身体を提供し、失った身体をクリーチャー体に置き換えて甦ったのがボクだ。


「②完全な遺伝子情報または当該臓器の健全な細胞が残っていたなら、一部を培養生育させたクローニングパーツと置き換え可能。その場合は拒絶反応が起こる心配は100%無し・・・・・」


「そう、その通り・・・それが無い以上は不完全な遺伝子情報を修復するか、壊れてたり他の部分から流用した細胞で代用しクローニングするしか無い・・・ミューズの身体は限界を超え壊され過ぎてたんだ!そうすると生存するには問題無く(実際ボクと一緒で一般人より()っぽど丈夫)ても、その機能・・・子供を作る能力まで備えられるかどうかは全く未知数に成り、確率的に完全な五分と五分の確率で実際に使って見ないと判らない」


 何を使って見るかって・・・こう言う時にソウ言う冗談言うと、本気で50口径のマグナム弾ブッ放すからね!


「ジェリス様はミューズ様の・・・その女としての部分が手酷く壊されてる事を知っており、偶々レポートを陛下に渡す前に読んでミューズ様が完全に身体を直せなかった可能性がある事を理解しました。そしてコノ知識も学会を経由して広まり、同時にミューズ様の過去のカルテも流出してます・・・そこで良からぬ事を考える奴等にも伝わって仕舞った、そう言う奴が実際に出て来ないか監視してたんですよ!」


「ボクは爺さまの管理の元、医療関係と言え暫くは情報・・・と言うか知識は公開しない様にしたかったんだけど・・・・・」


 結局は爺さんに押し切られた。


 途中から息子が加担した革命とヴァイラシアン帝国の侵攻、この戦乱で傷付き倒れた兵士の数は文字通り天文学的数値・・・彼等を健常な身体に治療し、そして死の運命から救いたいと思うのは当然だろう。

 ボクはファルデウスの文明レベルじゃマダ早いと危惧したが、爺さまは医学分野に限ってだけはとボクに土下座してまで頼み込んで来て・・・結局ボクが折れざるを得なかった。


「だからミューズ様とキッドさんの子供が残せない時の事を考え、陛下が考えてるだろう選択肢を私は二つ予想しています。一つは健常な卵細胞が手に入らない以上、キッド様とミューズ様の細胞からクローンベイビーを造ろうと考えている」


「一つだけ断言出来る・・・その考えが確かに頭を(よぎ)った事くらい有るかも知れないが、それでも爺さまはソノ選択肢を絶対に選ば無い」


 それだけは断言出来る。


「なんだ・・・キッドさんは陛下の事、何だかんだ言いながら凄く信頼してるんですね。ですが私は・・・如何してもミューズ様の血脈を残したくて、陛下が強行しないと言い切れ無いのです」


 そう言われるとボクも断言出来る根拠は無い、それでも陛下がソノ方法を選ぶとは思いたくは無かった。


「そして第二の選択肢は・・・」


「フムフム・・・」


 ボクは前のめり気味に話を聞くけど、


「キッドさんには本妻のミューズ様の他に側室としてジュリア様を娶って貰い、ミューズ様の子供が出来ない時は諦めてジュリア様との子供に・・・・・」


「いやチョッと待ってくれ!」


 支配階級の侍や貴族、昔の豪族でも有るまいし・・・何でボクが重婚しなきゃ成らないの?


「そんなの絶対イヤだよ、何でそんな話に成るんだ?」


「そんなに可笑(おか)しな話ですか?」


 そんな事をシレっと言うイメンケさんが、ボクには逆に信じられ無いのですが?


「確かにキッドさんは貴族じゃ無いですが、ミューズ様は皇族と言う立派な貴族です・・・側室を持ったとしてもイヤな貌はしないと思いますが?」


「ボクが嫌だよ!」


 さらに訳が分からないとイメンケさんはキョトンとする。


「な・・・何でですか?それだけの力も財力も有るキッドさんなら、側室を娶った所で・・・それともジュリアお嬢さまは好みでは無いとか?」


「そんな事無いし寧ろドストライクだけど、その話は無しだからボクにしないで・・・最近のラノベじゃ有るまいし男のロマンである事は解らないでも無いけどボクは御断わりだよ!こんな話は絶対ミューズにはしないでね!」


 するとイメンケさんは不思議そうな顔で・・・


「そんなに変な話ですかね?やっぱり地球人と言うのは私達と考え方や感覚が違うのか・・・・・」


 うん絶対に違ってる・・・と断言しかけ、ボクはアラブでは上限が有ったが重婚が認められてる事を思い出す。

 勿論それはアラビアンナイトの国の伝統、否定する積りは無いけどさ・・・ボクに出来るかと言えば絶対にNOでミューズを裏切る積りは無かった!


「その話は お終いね・・・そうだイメンケさんの車は、ボクが弁償しますから新車の請求書送って下さい。勿論アップグレードでも別車種でも構いませんよ?」


「ほ・・・本当ですか?」


 イメンケさんがボクの両手を握る!


「有り難う御座いますっ!実は先ほど総帥に相談したのですが「こう言う事が有るから社用車使えと言ったのに」と叱られまして、私物には保険が利かないので自分で何とかなさいと言われてたんです・・・助かりました!」


 手を上下にシェイクされる!


「それと眼の前で銃をブッ放しちゃって・・・」


「あっ・・・それは気にしないで下さい!あれが無ければ私が動き出すまで、数分要した筈ですから・・・・・」


 まあコッチも無理矢理動かす為に脅したのは確かだけどね!


「じゃあ話を戻しましょう・・・つまりジョブ・トゥーニックはキッドさんが邪魔、そしてミューズ様とジュリアお嬢さまが目障りな奴がドコかに居て・・・・・」


「待ってっ!」


 その時ボクの眼に、


「その話は後で、じゃあボクは行くねっ!」


 そう言ってモールか何かの商業施設3階分の高さは有る所から、急遽設えた会見会場に向かって飛び降りた。

 元々の会見会場はボクが消火剤撒いて使え無くしたからね・・・ジュリアさんの背後にいたスーツ姿のお姉さんが、何気無い仕草で彼女の背後に廻ろうとしてる。


 ボクはジュリアさんと襲撃者の間では無く陛下の爺さまと襲撃者の間に降り立って、そこから銃を抜きながら襲撃者に飛び掛かった!


『やっぱりボクは警護には向か無いな・・・・・』


 そう思いながら襲撃者に迫ると、誤魔化すのは不可能と考えただろう彼女は表情を変える・・・冷酷そうな眼付きに成ってナイフを抜き、接近し過ぎたと思った時・・・わき腹に熱を感じた!


『これは拙いヤツだな・・・・・』


 銃の台尻でコメカミを横殴りにすると女が体勢を立て直す前に、銃弾を顔面に()ち込んだ・・・手加減する余裕が無いので頭を狙って仕舞った。


「キッド君っ!」


「キッドォォォ―――ッ!」


 ジュリアさんと陛下の声がコダマしてボクの視界が揺らいだけど・・・ボクは爪先に当たった襲撃者のナイフを拾い、そのまま太腿に突き立てた!

 痛いけど仕方無い、薄れかけてた意識が鮮明に成った所で爺様の声が聞こえた。


「何を馬鹿な事を・・・」


「報道陣の後ろ・・・柱の影・・・・・」


 止めに入る爺さまを手で制し、明瞭に成る視界とアリスの指示で見付けた最後の襲撃者をロックオンした!


「うおぉぉぉ・・・・・」


 ボクは両手で銃を持ったまま報道陣を突っ切って、その向こうに居る襲撃者の男に迫るとレーザー銃をコチラに向けていた!

 奴の銃弾・・・と言ってもエネルギー弾だけど、思いっ切り頬を掠めて熱いと感じた。


「プロが外してるんじゃ()ぇよ!」


 ボクは銃を持ってる方の肩に45ACPを()ち込むと、クルリと回転しながら倒れ込んだ奴の口に銃を突っ込んだ!


「まだ()るかい・・・ボクは構わ無いけど?」


 そう言って睨み付けると・・・同じく睨み返していた奴が眼を伏せ、首を無理で無い程度に左右に振った。

 その直後に如何やら別方向から銃で撃たれたらしく、ボクは背中に熱い刺激を3度受け映画の様に前に吹っ飛ばされる!

 オイあれは映画がオーバーな表現してるだけだろ?と思い・・・そして自分を撃ったのが炸薬式の拳銃弾では無いだろう事を思い出しながら、ボクは周囲が暗く成って行くなと思っていた。


 ウェルム少将達が駆け寄って来るのを感じる・・・・・




 眼を覚ましたのはスターシップの医療カプセルの中だった・・・酸素マスクをさせられた状態で、補修薬液の中にプカプカ浮いている。


『アリス・・・どの位ボクは寝てたんだ?』


 返答が帰って来ない・・・カチューシャが外されていた!

 ボクの視界がハッキリして来ると、医療カプセルの外でミューズが盛大に泣いてるのが見えた・・・ボクが目を覚ましたの見てたのだろう、心配かけて悪い事をしちゃったかな?

 カプセルが立っている状態から横に倒れて行くと、ボクの身体から色々なホースやチューブが抜かれて行った・・・お願いだから詳しい事は聞かないで欲しい。

 ボクだって嫌だけど排泄物が浮かんだ風呂に、キミだって入ってたくは無いだろ・・・そう言う事だ!

 全てのチューブや点滴まで抜かれ酸素マスクも外されるとカプセルの蓋がスライドして開き、ボクはフラ付きながら立ち上がり出ようとするとミューズが手を貸してくれる。


「お兄さま・・・もう危ない事は・・・・・」


 ミューズに泣きながら言われたが、


「心配させてゴメン・・・今後は慎重に行動するけど、危ない事をするなと言うのは聞けないんだ。ボクは爺さまもジュリアさんも、勿論ミューズも殺される訳には行かない・・・・・」


 生まれたての鹿の様に脚が覚束無いが、それでも立ち上がって自分の足で歩こうとする。

 そして・・・・・


「必ずミューズの所に帰って来ると約束する・・・この約束は絶対に破らないから・・・・・」


 ミューズが胸元に飛び込んで号泣し始め・・・ボクは彼女が落ち着く迄そのまま時を待つ、そしたらミューズの奴ったらボクの胸に貌を埋めたまま眠って仕舞った。


「おいアリス・・・ボクが眠って居たのは・・・・・」


「3日間です・・・正確には3日と8時間、ファルデウスの医学レベルなら2ヶ月・地球のなら一生モノの重症いえ重体でしたよ!」


 その間ずっと寝ないで付いててくれたんだね?

 その事をミューズの様子から察するとボクは目頭が熱く成り、彼女を部屋に運んでベッドに寝かせるとオデコにそっとキスをする。


「ゆっくりお休み・・・起きたら御褒美は大人のキスだよ♪」


 露出癖が有る訳じゃ無けど頭に来てて、服も着る事も忘れてボクはコクピットに向かった。


「アリス・・・イメンケさんに連絡は取れる?」


「出来ますが、陛下とジュリアさんには・・・」


「申し訳無いけど後回しだ!」


 今は彼にとって夜時間だったらしい、寝ぼけ眼で貌を出したイメンケさんがボクを見て驚きの声を上げる。


「キッドさんっ!大丈夫なんですか?」


 心配させちゃって悪かったな・・・・・


「大丈夫、心配かけてスミマセンでした」


「勿論 心配しましたとも・・・主に新車の♪」


 あっ・・・このヤロッ!


「あの後で何か・・・」


「凄い事が分かりました・・・ミューズ様とお嬢さま2人が邪魔だからと言って、簡単に殺しに来れた理由が判明しましたよ!あっ・・・チョッと眠気を覚ますんで待ってて下さい」


 そう言うとイメンケさんは背後の多分洗面所に駆け込んで、盛大に水の音をさせ顔を洗ってる。

 そして出て来ると自分の両頬を大きな音をさせて引っ叩き、冷蔵庫から出した栄養ドリンク2本を次々と一気飲みにしてモニタの前に立った。


 パンツ一丁で・・・まあボクも全裸の侭だし人の事は言えない、お互いに裸の付き合いって事で♪

 イメンケさん寝る時はパンツ一枚なのね?


「アリス・・・ミューズが起きる心配は?」


「正直言うと疲労困憊の状態でしたから、かなり深く眠ってます・・・起きる心配は有りませんが、万が一起きたら最優先で知らせます」


 イメンケさんも用意が整ったらしい。


「ミューズ様の健康状況と、帝国での彼女を取り巻く御立場は復習する必要ありませんね・・・ではキッドさんに質問します。もしミューズ様を・・・そして続いて姉同然であるジュリアお嬢さまも失ったら、アナタは正気を保っていられますか?」


 ド直球な質問・・・それだけに答えは自信を持って言える。


「絶対に無理だね・・・暴走まではしなくても、正気を保ってはいられ無いだろうと思う」


 その答えにイメンケさんは満足そうに頷いて・・・


「じゃあミューズ様を失って失意に暮れるキッドさんに・・・この娘が髪を脱色して接近したら、絶対に靡かないと言い切れますか?」


 イメンケさんが画像データを表示すると・・・そこにはミューズと全く同じ顔をした、金髪の美少女いや美幼女の姿が映し出されていた。


「これは・・・流石にチョッと驚かされたね」


「ミューズ様の従姉妹に成るのかな・・・ミューズ様にとって血縁上の母親、その妹の孫で名前をイリス様と言います」


 本当に良く似ており髪の色を変え無くても十分姉妹と言って誰も疑わ無いレベル、年齢さえ同じなら双子でも通用するだろう・・・そうイリスの方が明らかに幼く正直言って同い歳で髪色も同じならボクでも見分けが付くか如何か判らない。

 それほど迄に良く似ているが幼い所為かミューズが逞しく成長した所為か、今のミューズと比べると庇護欲を誘う感じが強くするのだが、ただ・・・・・


「実際ミューズ様より5つほど歳下です・・・・・」


「気に入らないね・・・」


「えっ!?」


 そう彼女イリスの眼が本当にミューズにソックリ、それが嫌にボクの癇に障る・・・何故なら今のミューズの眼では無く、初めて会った時の運命に絶望し切ってるミューズと同じ眼をして居るからだ!


「血縁的には二人とも同じマルドゥースの分家の者でありますが、ミューズ様の母親とイリス様の母親は全く違う点が二つあります・・・一つはミューズ様やイリス様とソックリな美しい貌をしてる事」


 一度データとして見せて貰ったけどミューズの母ちゃんは不細工では無いけど、顔全体から意地の悪さや気位の高さが滲み出てる様な感じがしてボクには蛇を連想させる・・・まあミューズに対する仕打ちを知ってるから、そう見えただけなのかも知れないけどね!

 と言う事は・・・ボクともソックリな貌をしてると言う事だよね?


「もう一つはマルドゥースの家の者にしては珍しく、リベラルで心根の優しい謙虚な方で選民思考とは無縁だった様です・・・ただ何と言うか少し過激と言うか苛烈な所も有った方だったみたいで、ミューズ様の救出時に彼女に原因が有ったのでは無いかと言うマルドゥース本家が言い出した時、娘であるイリス様を連れて公爵家を出奔しまして・・・・・」


「ミューズの母ちゃんの妹なら分家の伯爵家の方じゃ無いの?」


 近親結婚に成らないのかと聞いて見る、するとイメンケさんが説明してくれ・・・・・


「本家と分家が分かれたのは可成り昔の話で今では血縁も薄く、本家であるマルドゥース公爵の長男に嫁いでたんです。そして彼女はマルドゥース公爵家を出奔した際に公爵に取って❝可成り腹立たしい絶縁状❞を残してたらしく、マルドゥースが必死に行方を追ってたのですが何度か追い詰めたモノの捕らえる事は出来ませんでした。勿論ですけど陛下も探してましたが今回バーカンディ・グループがキャッチするまで、その行方は全く誰にも知られないまま・・・・・」


 相当 有能なオバちゃんだったんだね・・・公爵の息子に言い寄られて無理矢理結婚させられ、何と16の時にイリスちゃんを身籠ったらしい。

 そしてミューズが救出され暫くドタバタが続いた後に、例のマルドゥース公爵の「虐待されたミューズに責任が有った」発言を聞いた彼女は公爵家に絶縁状を残して蓄電したと・・・あれ?


「イリスちゃんの年齢が合わなく無いか?」


「早っ!そんなスグに気付かれると思いませんでした・・・マルドゥース公爵の手の者が彼女達母娘を追い詰め掛けた事が有ったのですが、その時に宇宙港で逃げ様とする彼女達の動きを封じ様とエアロックの外壁を開いて宇宙港に出られ無くしたのです!その所為で彼女達は宇宙線で被爆し・・・逃亡は出来たのですが、暫く身を隠して身体から放射線を抜く治療を・・・その間ずっと人口冬眠(コールドスリープ)させられてたらしい」


 ドクズ共が・・・マルドゥース公爵を簡単に殺した事が悔やまれる。


「そのイリスちゃんの父親は?」


「マルドゥース公爵の息子ですね・・・先の革命で惨殺されましたよ、アナタに♪」


 それは何より♪

 どの程度の惨殺さ加減だったのかな?


「キッドさん御得意の艦橋ヘッドショットで・・・ブリッジを突き抜けた荷電粒子砲に下半身を焼かれながら、全身に荷電粒子が食い込んで3日程苦しんでから死んだそうですね」


「おっしゃ!良くやったぞ自分」


 ボクは善人でも正義の味方でも無いからね・・・イヤな奴は思いっ切り残酷に殺す、再放送で見た必殺仕事人が大好きだったけど簡単に苦しむ暇もなく殺しちゃう所は納得出来なかったのさ♪


「思い通りに動く筈も無いミューズとジュリアさんを殺し、言う事を聞く様に調教済みのイリスちゃんをボクに宛がう・・・そしてボクを操って帝国を乗っ取る積りなんだね?公爵家なら陛下とも一応は血縁なんだろうし・・・」


「無茶苦茶遠いですけどね・・・でもキッドさんを手に入れ一年隠し通せたら、帝国を引っ繰り返して自分のモノにする事が出来ると思いますよ。ボクの計算では・・・・・・」


 ボクの事を過大評価し過ぎじゃないかしら?


「つまりイリスちゃんを囲ってる奴が今回の犯人って事だね・・・・・」


「正解♪キッドさんが倒した暗殺者共は、皆ソッチから送られて来ました。ただキッドさんを背後から撃ったのは・・・・・」


「ジョブ・トゥーニックの手の者でしょ?」


 ボクは一呼吸置いてから答えた・・・それ位は想像が付いたさ♪


「で結局ミューズとジュリアさんを狙ってるのは?」


「光神教会のナスティーズ枢機卿、このナスティーズ枢機卿と言うのはマア思いっ切り俗物でしてね・・・」


 宗教関係者の名前が出て来てボクはチョッと意外な気がした。

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