次の舞台は政治なのか?
ジョブ・トゥーニック・・・彼はファルデウス帝国の政治家だった筈だが、正直言えば詳細な所まで正確には覚えて無い。
だけど渋いナイスミドル然とした見た目とは裏腹に話術の才能に恵まれただけの俗物で帝国最大政党の党首に登り詰め、そして裏ではロクでも無い事ばかりするうえ自分の汚い所を巧妙に隠蔽する才能には長けた人物である事は覚えている・・・どっかの長編スペースオペラ小説に似た様なキャラが居たからね!
あの頃はミューズ自身が自分の事をアリスだと思い込んでいた時期の話で、ファルデウス帝国革命が勃発する前ファーレンを脱出する時にミューズが搔き集めてくれた情報の中で見た覚えが有った。
「正解、良く御存知ですね・・・確かに彼は帝国で最も人気のある政治家、でも裏を覗けば疑惑の見本市で真っ黒ですよ!奴の名前は忘れ無いで下さい・・・・・」
「彼の周りで起きてる事件・・・疑惑で片が付けるには物事が彼に都合良く終わり過ぎますね、爺さまの治世で証拠を残さず逃げ遂せてるので優秀なオツムを持ってる事は確からしいけど♪でもイメンケさんは政府や捜査の関係者じゃ無いですよね?随分詳しく無いですか・・・・・」
再び深い溜息が漏れる。
「我がバーカンディ・グループにとっても宿敵でして、何度利権を奪われ掛けた事やら・・・まあ黙って奪われるほど我が社のトップは甘く無い、それに本気で敵対するなら帝国最大の財閥が対抗政党に肩入れするのが解ってるのでアッチも本気で最後まで争わないのです。でもソコがマタ嫌らしくて本当に頭に来るのですよ!」
うんイメンケさんが嫌ってる事は解った。
「で・・・ボクの命を狙っている訳だ」
「何で解るんです?」
そりゃ当然アイツはボクを殺さないと枕を高くして眠れ無い、イヤそう思う込んでいるだろう事は想像に難しく無いのだ。
政治家やシンパは偏見だと宣うが実際政治家とは金の亡者で無きゃ務まら無いし、奴等は本当に何をするにも金の力を多用して動かして行く事しか出来ない!
そして何より政治家でいる事自体に金が掛かるし、当然綺麗なお金だけで賄う事は不可能で清廉潔白な政治家などフィクションの中にしかいない!
そんな中でボクはコノ世界での水準では考えられないほど高性能の真偽解析機をファルデウスに提供し様としてる。
そんな物を提供されては汚職や資金供給は隠し切れ無いし犯罪行為も暴かれ後ろ暗い奴等にとってボクの事は爆弾並みに恐ろしいだろう・・・だが奴等は大事な事が解ってい無い!
その真偽解析機それとも嘘発見器の方が通りが良いかな、兎に角ソイツはとっくに帝国に供給済みでソレ所か既に実証実験も終わりかけているのだから・・・そこでボクは気が付いた!
「ジジイ・・・ハメやがったな!」
ボクは皇帝のジジイの思惑を感じ取り悪態を吐いた。
「ジジイって皇帝陛下なんだし私も一応は陛下の事を尊敬してますから、あまり不穏当な発言は・・・・・」
「ハメられた人間の当然の権利ですよ!」
本当はダッシュボードを蹴飛ばしたかったけど、やったらイメンケさんに悪いから止める。
「如何言う意味なんです?」
「その真偽解析機はとっくに納入してて実証実験も終盤、それを知ったらトゥーニックも今後は慎重に成らざるを得無い・・・でもソノ事を内密にして、その前に奴にボクを襲わせたら?」
イメンケさんも意味が分かったらしい。
「堂々と逮捕して訊問し放題ですな、新型の真偽解析機付きでね・・・・・」
「それでボクを囮にしたんだよ!」
あのクソ爺・・・腰に来る関節技を掛けてやる!
「つまり我が社の情報部が掴んだ情報に間違いは無かったと言う事ですね、ただ安心しましたが少し不可解なモノが混じってまして・・・・・」
「何か変な話でもあるの?」
イメンケさんは運転中だった所為か暫く口を噤み、そして信号機(この世界にも有る)で停車すると黙ってボクにタブレットを手渡して来た。
表示されている内容を読んで見る・・・チョッとボクの頭が痛くさせ、そして大いに頭に来る内容の話が記載されていた。
そこには社会の裏に流れてる情報や金の流れとマークされてる要注意人物の動き、そしてその人物が如何言う仕事や片付け方を得意としてるか・・・個人情報から今までやって来た悪事に関してまで書かれている。
もっとも証拠が無い所為か野放しなのだが、そこから推理されたバーカンディ・グループの情報部の結論は・・・・・
「これがボクを一人で引っ張り出した本当の理由だったんだね?」
「マアそう言う事です」
冗談じゃ無い・・・ボクの事なら幾らでも襲ってくれば良いけど、何で彼女達を狙って来るんだ?
そう暗殺を依頼されてる人間の情報や手配の動きから、狙ってるのがミューズもしくはジュリアさんらしい事が予想されると書かれていた!
「何でこう成ったのか理由は見当付きますか?」
「あの愚物革命で腐敗貴族が大掃除されましたからね・・・腐敗政治家達も次は自分と思ったでしょうし、競合相手の腐敗貴族が一掃されたので一時的に力を持った事も確かです」
先の腐敗貴族が起こした反乱は現在は❝愚物革命❞と呼ばれている・・・上手い名前を考え付いたなとボクも感心してて、確かに参加した貴族達は少なくとも主犯格は漏れなく見事に全て愚物だった。
「多分ですけどジョブ・トゥーニックの方は別に子飼いの暗殺者をキッドさんに差し向けてる筈・・・そちらの方の動きはバーカンディ・グループでも追え無かったのですが、ほゞ間違い無いですよ差し向けている事だけは!」
「まあ自分の死刑執行人みたいなモノだからね・・・・・」
彼は紫煙を吐き出しながら、
「同時にアウトソーシングする可能性も有ったので念の為に裏社会を監視してたら、偶然に他のルートが見付かったんですよ・・・ただコチラの方は資金の出所がハッキリしない」
「ねぇイメンケさん・・・商社部門のビジネスマンと言うには、幾ら何でも詳し過ぎるんじゃない?そろそろ本当の身分を教えて貰いたいんだけど・・・・・」
バーカンディ・グループは財閥であると同時に帝国貴族を頭に据える軍閥でもあり、ビジネスマンの皮を被った諜報員が居ても何も不思議では無かった。、
でもイメンケさんは清々しい程に人好きする笑みを浮かべると・・・・・
「いや本当に商社部門のビジネスマンなんですよ・・・少なくとも今は!実は過去そう言う部署に勤務してた時期が有ったんですけど・・・あっ!その部署がドコだったかは守秘義務があるので勘弁して下さい、兎に角その頃は若さも有って少々天狗に成ってましてね・・・・・」
いやアナタまだ20代でしょ?
「若気の至りで一人でチョット手強い相手の所に侵入したんですが、見事にバレて身元まで特定されちゃったんですよ・・・当然それで諜報員は出来無く成り事務方にナンて絶対にイヤだったから自主退職・・・・・」
「そしてマリアさんに拾われてバーカンディ・グループの諜報員に?」
するとイメンケさんは首を振って、
「拾って下さったのはジェリス伯爵で、その御蔭で帝国軍からの移籍もスムーズに・・・いけねっ!」
結局 元の所属も口にしちゃったねw
「ボクは何も聞こえませんでしたよ♪ところでアウトソーシングされた殺し屋さん達は、トゥーニックと繋がりは有るんですか?」
「いや無いですね・・・過去に使った形跡も無し、抑々トゥーニックは子飼いの暗殺者を抱えているでしょう。でも雇われたのは一流所の暗殺者で、相応の力を持ってる奴で無いと雇えないのですが・・・・・」
車の中でボクはタブレットの様な端末からデータを読み捲る。
「先ず推測出来るのは依頼主はトゥーニックで、ミューズ様達を害する事でキッドさんに圧力をかける積りだと言う物ですが・・・・・」
「先の革命の首魁どもと違いトゥーニックは全くの馬鹿でも無い・・・そんな事をしたらボクが自棄に成って、ロストテクノロジーを総動員して自分を潰しに来る事くらいは想像出来るでしょう。一応その時は陛下がボクを制止しようとするだろうけど、ミューズを失った直後にボクを止め切れる力が残ってるかな?」
その時のボクは邪魔をするならファルデウス帝国でも潰せる自信が有るよ♪
「むしろトゥーニックの政敵が奴の仕業に見せ掛けて、ボクとブツけ様と企んでるって方が自然に思えるけど・・・・・」
と思ってる事を言って見たら、
「それが出来るだけの政敵がトゥーニックには居ませんね・・・正直言わなくても彼の政敵は雑魚ばかり、そこまでの大事を仕出かして彼と争おうと言う気概の有る奴が居ません」
ファルデウスの民主政治は終わってるな・・・・・
「ただキッドさんが政治家として立たれるなら、あっと言う間に彼を席捲出来るでしょう・・・その事をトゥーニックは警戒してるかも知れませんが、まあ私達はキッドさんの政界入り何て考えられませんしね」
噴出しながらイメンケさんは言うけど確かにボクも絶対にイヤだね!
「死んだ母さんの遺言で口先で人を騙す事を仕事にする様な人間には成るなって・・・でもソウ成ると一体誰が2人の命を狙って・・・んっ?」
チョッと待て・・・ボクを動かす手段として狙うならミューズだけで、いや内情に詳しい奴が企んだならジュリアさんを狙うのも判るけど・・・この資料によると狙われているのは2人同時にって事だよね?
「そうですね・・・それぞれ明らかに別口で2人を狙って動いてます、金の動きは掴めたのですが出所迄は追えませんでした。でも恐らくですが暗殺を依頼したのは同一人物だと思われ・・・・・」
2人が狙われる理由つまり共通点が有る筈、それも殺したくなるような理由・・・2人が命まで狙われる理由など考え付か無いから、その理由は確実に利的なモノか逆恨みだ!
そこでボクは一つの可能性に気が付いた!
「取り敢えずミューズはアイスコフィンの更にスターシップの中だし、ジュリアさんも航海中・・・今の所は・・・・・」
「ジュリアさん達なら皇帝陛下と一緒に先に帰って来てますよ?」
ボクの背中がス~っと冷たく成る。
「如何やらキッドさん達が先に帰っちゃったので陛下が癇癪起こして、五月蝿いから皆がジュリアさんに泣き付いて先にフリッパーで陛下を送って来たんです…現在エルミスⅡAクリッパーがアイスコフィン2にドッキング中ですが・・・・・」
ウン自分の顔から血の気が引いたのをボクは今確かに感じたよ!
「行く先を変更っ!すぐにアイスコフィン2のドッキングベイに向かって」
「えっ?」
キョトンとするイメンケさん、でも悪いけどさ・・・この間すら時間が勿体無い!
「スグにアイスコフィン2のドッキングベイに向かえっ、モタモタしてたら殺すぞっ!?」
ボクは彼の眼の前に銃を突き出して発砲しサイドウィンドをブチ抜いた・・・勿論だけど弾が変な所に飛んで行かない様に街路樹に当たって止まる様にしたけど、彼は何も言わずに車を中央分離帯を乗り越えてUターンさせる。
同時にフロントウィンドに「通行区分違反_運転者イメンケに罰金14万クレジットおよび減点5」と表示され、交通取り締まりもハイテクだね?と感心しながらも・・・そんな事に構っている時間が無い!
ボクはカチューシャから通信をオープン、
「アリスッ!アイスコフィンかクリッパーに直接会話を・・・」
「申し訳アリマセン・・・スターシップは民間船の登録なので軍用回線は臨時での許可しか貰って無く、ヴァイラシアン残党との戦闘も一段落付いたので更新してませんでした」
なんてこった・・・
「至急誰でも良いから帝国軍人と繋げろっ!繋がったら最優先でコッチに廻せ・・・・・」
「た・・・多分それが繋がるより先に、私達がドッキングベイに到着します!」
イメンケさんが叫んだ。
「ミューズに・・・」
「繋がりました」
アリスの返答に、
「お兄さま、如何か為さいましたか?」
とミューズの声、
「ボクが帰るまでスターシップから一歩も出るなっ!オマエだけで無くダーグも婆ちゃんも皆だ!!命の危険でも無い限り誰か一人でもスターシップから出たら、ボクは自分で自分の膝を銃で撃ち抜く!!!」
そう言って通信を切る・・・酷い事を言ってる自覚は有るけど、ミューズを確実に足留め出来る唯一の脅迫だ!
「アリス・・・この後の皇帝の行動パターンは?」
「ハッキング中・・・ジュリアさんので無くても良いのですか?」
ボクは発砲した一発をマガジンに足しながら、
「艦隊司令官と言え一中佐の行動予定なんか見付け難いだろ、ジュリアさんが爺さまと一緒なら暫く行動は共にする筈・・・その間でジュリアさんを狙う可能性が高い殺し屋をイメンケさんの資料からリストアップ、そいつ等の手口から狙いそうな場所を・・・・・」
「殺し屋D、狙撃手・・・狙いそうな場所を確定しましたが候補は2ケ所、私の指示通り動いてくれれば2か所とも制圧可能です。殺し屋HおよびK、Kは女で共に銃かナイフを使うと思われ・・・・・」
「キッド君・・・ゲートで門番さんが居るんだけど・・・・・」
止まって緊急事態だと言ったら確認と言い始め・・・・・
「イメンケさん、説明しといてね!」
彼を蹴り出すと運転席に収まり、思いっ切りアクセルを踏み込んだ!
後ろから銃弾が飛んで来る・・・銃弾と言ってもエネルギー弾で、ゲートの脇の監視塔にレーザー機関銃が設置されてた。
民間車であるイメンケさんの車は紙の様に燃え上がり、ボクは車から転がりながら出ると走り出した・・・後で新車を買ってあげるからイメンケさん許してね♪
ちなみに機関銃とか機銃と言うのは本来は火薬を使う弾を連射する機関を持ってる銃の事だが、コッチの世界ではレーザーやビーム兵器の銃でも連射出来る機関を持つ銃 全般を指している。
「おいアイツ・・・レーザー機銃の弾を全て避けて走り去ったぞ!いや映画じゃ無いんだから・・・・・」
門番が警報を鳴らす事も忘れ、そうボクの事を言ってたとアリスから聞いた・・・アリスが周囲を警戒し会話もチェックしてたのだ。
こっちの世界でもアクション映画の主人公は戦闘シーンで弾に当たら無いんだね・・・まあ当然だろうね、当たったら話が終わっちゃうもの♪
「キッド様!暗殺者は4人チェック出来ましたが警備は全く気付いた形跡無し、私もジュリアさんに死んで欲しくは有りません・・・効率的に撃破しますので私の指示に従って下さい」
「ヤーッ!」
ボクは彼女の指示した通り正面のビルに駆け込むと、3階まで登ってエレベーターに駆け込んだ!
「呼吸を整えて下さいキッド様・・・エレベーターはハッキング済みで途中で止まりません、15階で止まりますので一階分駈け上がって屋上に出て下さい」
ボクは銃を抜くと呼吸を整えると、視界に屋上のマップが表示され作戦支持をされた。
「そこに狙撃手が居る可能性60%、居なかった場合は・・・・・」
「了解・・・でもオマエ・・・怖い事させるよね?」
ボクはエレベーターが止まると横に在った階段を一階分駈け上がり屋上に出る・・・足音を忍ぶ余裕は無いので全力疾走、敵が体勢を整える前に叩く!
かくして目的の場所に狙撃手は居なかった!
だが其の侭ボクは走り続け、15階建てのビルから叫びながら飛んだ!
「届かなかったら説教だからな!」
いや届かなかった場合は説教する事は出来無い!
かくして全力で助走してビルから飛び降りると・・・隣接する12階建てのビルの屋上に飛び降り、飛んだ時にはコッチを見上げながら間抜け面を晒す狙撃手2人と護衛らしいのが3人眼下に見えた。
その向こうでは皇帝の会見らしき物が開かれている。
ボクは空中でガバメントモデルを抜き、45ACPを模したオリジナル弾を奴等に2発づつ撃ち込んで護衛と狙撃手の一人を射殺した。
更に着地して転がりながらマガジンチェンジし、起き上がり様に残った狙撃手を射殺すると・・・そのまま駆け去ってビルの中に飛び込んだ。
「エレベーター前に敵影2・・・」
アリスの指示で見張り役を射殺、どうせコイツ等は依頼主の事など知ら無いだろうし確実に殺して行く。
「皇帝の警備、ガバガバじゃ無いか!」
ボクが毒吐゛いたが、
「革命と敵国の侵攻・・・同時に片付けたので気が抜けてた事は否めませんが、このタイミングで暗殺を企まれるとは流石に考えて無かったでしょう。さらに狙われてるのは陛下で無くジュリアさんなのですから・・・・・」
「イメンケさんはボクの味方に成ってくれるかな?車壊しちゃったし・・・・」
緊急事態なので脅したが、彼には何の関係も無い・・・・・
「彼はキッド様が思ってる以上に骨のある男ですよ・・・眼の前で銃をブッ放されたと言うのに協力的でしたし、今も門番の詰め所でキッド様への協力と陛下達への警護を・・・いや本当に骨のある方ですよ!」
「どしたの?」
アリスが本当に感心していた。
「キッド様にイメンケさんからメールです・・・皇帝陛下を狙った暗殺者について、可及的速やかに沈黙させて欲しいと・・・・・」
凄ぇなイメンケさん・・・ジュリアさんを狙った暗殺を皇帝暗殺に掏り替える積りだ!
「一階に到着しました・・・さあ走って下さい!」
ボクは全力疾走して・・・・・
会見場所であるアイスコフィン2の展望ホールに向かって、報道関係者をゾロゾロと引き連れた広報官・・・ファルデウス帝国は完全絶対君主制でも社会主義でも無いから報道の自由は全面的に認められている
ただし日本とは違い❝報道の自由❞を認めると同時に❝報道の責任❞も明確に負わされており、いい加減な情報や嘘の発信そして世論の操作や誘導は決して許されない。
その責任が発生した場合の賠償は無限責任で罰金と共に絶対に逃げられ無い、だからファルデウスで報道関係者は尊敬される職業でありマスゴミと呼ばれる様な者は殆ど存在し無い。
そう殆ど・・・厳密に言うと若干存在してたのだが彼等がゴミとしての本性を現した途端、犯罪者または受刑者・債務者に成るので追い回されて塀の中に入るか債権者に追い回される事に成る。
こうして見ると専制政治や社会主義の様に報道の自由が無い訳でも無く、日本など責任も取らないマスゴミを放置する民主主義より、絶対君主が居る上で責任追及が徹底されている半民主主義が一番理想的なのかも知れない。
「こちらで御座います」
そう言って広報官がホールに入った途端、そこでは皆が呆気に取られる光景が繰り広げられていた。
マアそうだろうね・・・皇帝の座るべき席に女の子にしか見えないボクが、デカい面をして両脚を組んでテーブルの上に乗っけてたんだから!
「天空の女神様?」
ボク好みのカワイイ女のレポーターが言たんだけどカチンと来るので、チョッとオシオキする事にする。
テーブルの下に隠しといた消火器を出して・・・・・
「外れっ、女神じゃ無いよ、頭を冷やしてね!」
そう言って消火器を噴霧する・・・地球の様に粉が溢れるのでは無く、冷たい泡が報道関係者を覆って行く!
キミ達に恨みは無いけど勘弁してね・・・キミ達の中に暗殺者が紛れ込んでて、ボクの視界では一人の女性記者が赤くマーキングされるんだ。
怒号と抗議の声が上がるがスグに皆が沈黙した・・・彼等が気が付いた時にはボクは銃を抜き、一人の女性記者の胸に突き付けていたのだから!
「そのペン型銃を動かしたら殺すよ・・・この銃は敵を一息で殺せる様には造っていない、抑止力を高める為に襲撃者をトコトン苦しめて殺せる様に造って有るんだ♪」
スミマセン大嘘です・・・ただの炸薬式の弾丸、でもコノ世界で炸薬式の銃を見た事のある人なんか居無いからな!
「それにボクは女性には優しいけど、女装してるオッサンには優しく無いんだよ!まあ本当に女だとしても、陛下を狙う暗殺者に手心を加える積りは無いから大人しくするんだな・・・・・」
暗殺者が動けないでいると見覚えのあるウェルム少将の部下が数人駆けよって来た・・・彼等に暗殺者を任せるとボクは次の暗殺者に向かう、次で最後の筈だよな?
「キッド様、新たにターゲット+2が判明し残り3です」
チョッと待て殺し屋と複数重複させて依頼すると、プライドを傷付けたと仕返しされるんじゃ無いの?
「キッド様の世界のフィクションならば・・・実際には複数で動いた方が成功率も生還率も上がりチームで暗殺に動く事は合理的、報酬に差異が出ない限りは問題に成ら無いでしょう」
まあ現実はそうかも・・・・・
ジュリアさんの控室に忍び込むと序にシャワーを使わせて貰うが、勿論巫山戯てやってるんじゃ無く考えがあっての事だった。
外からモニターしてた奴がシャワーの使用を察知して入って来る。
「失礼します・・・ジュリア中佐は・・・・・」
中々の役者でシャワー中だと気付か無かった風に装って入って来ると、脱いであるボクの服を見てシャワーを使ってる事を確信しただろう・・・まあサイズ的にボクの方が小柄だから女物に見得るだろうし、脱いだ服が無かったら怪しまれる。
ナイフを抜いてシャワーカーテンに手を掛けるが、
「動いたら撃ち殺すよ?」
暗殺者の動きが止まった。
「カーテン越しでも君の事はシッカリ見えてる・・・ナイフを捨てて手を頭の後ろに組め!」
一瞬 戸惑ったが大人しく従ってる。
「後ろを向いて背中を向けろ・・・ボクの友人を狙うなら女だろうと手加減はしない、何かし様としたらタダじゃ置かないよ!」
カーテン越しでも彼女が緊張したのが解る・・・ボクはカーテンをスライドさせて風呂から出ると銃を構えたまま彼女の背後に立ち、彼女の正面に鏡が張って有りボクのヌードを御開帳する事に成ったのは計算外だった。
だが、その御蔭で彼女が躰の前で銃を隠し持ってる事に気が付く!
「ボクの出せる温情はコレだけだからな!」
振り返りながら銃を構え様とする彼女のオシリに向かって、ボクは持っていたテーザー銃を撃った!
地球産のテーザー銃を参考にしてるけど、紐付きでは無く純粋に電気だけを相手に射出する・・・原理は知らん!
彼女は壮絶な悲鳴を上げながら痙攣し動か無く成った・・・自分がズブ濡れでも、シャワーを浴びながらでも撃てる不思議なスタンガンだ。
「大丈夫ですかキッドさ・・・キャッ♡」
入って来たミントさんが嬉しそうに悲鳴を上げ、ボクはボディドライヤーで身体を乾かし服を着た。
ボディドライヤーとは、シャワー室への通路の一部が上下から温風が吹き付けるブースの様に成ってるのだ。
「どうせ背後関係なんか解かって無いだろうけど、一応情報は聞き出せるだけ聞き出しといて・・・・・」
そう言って次に向かう・・・残りの暗殺者は2人。
報道関係者にシャワーと着替えが用意され、着てた物は後でクリーニングして届けられるらしい・・・その辺の気配りは地球の公務員には考えられない手厚さだ♪
上の階からホールを見下ろし・・・ファルデウス軍人や憲兵隊の動きを眺める、ボクの事を必死で探してるのだが顔を出すのは得策では無かった。
「暗殺者2名は隠れてしまった様ですね・・・・・」
「このまま撤退する可能性は・・・無いよね?」
アリスとの会話・・・むしろ暗殺者は何人か死んだので、これで全員かとコッチが油断すると考えるだろう。
「イメンケさんもキッドさんと繋ぎを取れと五月蝿く言われてるので逃げ廻ってますよ」
「会見が中止に成る可能性は?」
中止に成るなら出てっても良いが、
「テロに屈する事を良しとしませんよ・・・会見は必ず行うでしょう」
ボクも同じ考えだ。
「ここに居ましたか・・・」
イメンケさんに声を掛けられる。
「胃に物を入れない方が良いでしょうから、栄養剤を持って来ました・・・何かあったら剥がすだけで良いので」
何と点滴の様なモノらしい・・・チューブ付きだが針を指す訳じゃ無く、代わりにAEDのパット見たいなモノを張り付けられ、これで栄養剤が入って行くのだから何度やっても不思議で理解が出来無かった。
「この錠剤と水を・・・胃を保護する薬と空腹を抑える薬です」
素直に飲んで周囲を伺った。
「次は如何動きますか?」
「動きません・・・アリスに任せてます」
ボクが動くより確実だ。
「それよりイメンケさんは情報員としては優秀だったんですね?」
「ええ自信が有ります♪」
中々良い性格をして居る。
「それで・・・ミューズ様やジュリア中佐が狙われる理由に関してですね・・・・・」
イメンケさんは話し始める。




