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次のヤッカイが迫って来る!

 別に元々覚悟の上でやった事、ボクは後悔はして無いしソノ責任をミューズが感じる必要も無かった・・・ただ寂しさを感じていなかったかと言えば嘘に成る。

 ボク達いや現在コチラに居る人間は勿論アッチに居る人間も、意図して二つの世界を行き来する事は絶対に出来無く成ったのだ。


 この世界は亜空間と言う何も無い時間すら流れぬ空間を挟んで、それこそ数え切れない無限の世界が連なっている・・・それを異次元と言うかパラレルワールドと呼ぶかは呼ぶ人の意図に任せよう。

 その世界の一つが今ボク達が居る❝この世界❞や地球の有る❝アッチの世界❞なのだが、この世界にアッチからワープして来た時に電磁場嵐に会いボクとミューズは一時的に記憶を失った。

 また船体も大分酷く壊されたのだがソレはスターシップのプログラムとドローンで修繕され、元々目的地にしてた惑星ミューズ(まだ当時の名称はファルデウス帝国 首都星)に一路向かってたのだが・・・それだけなら良かったのだがスターシップのデータバンクは一部損壊し、地球のある世界のデータは永遠に失われて仕舞ったのだ!


 先にも書いたけど世界は亜空間を挟んで無限の数が繋がってて行きたい先を指定するには、コチラの世界から幾つの亜空間を❝どの程度❞の出力で❝どの程度❞の回数❝どの程度❞の時間スキップし続けたのか綿密なデータが必要に成る。

 その組み合わせは天文学的数値以上ハッキリ言って無限に存在する・・・そりゃソウだろう無限に連なる異世界が連なり、その中から一つを選んで選択するのだから。

 とても記憶出来る単位では無く何桁在ったのかも不明、しかもその乗が数値に成ってるのだ・・・絶対に解析出来る筈が無い!


 ボクはリビングの壁をスライドさせ壁面水槽をオープン、それを見たイメンケさんが立ち眩みをしていた。


「気に入った熱帯魚や水草は全て採取や購入しといて良かったよ♪」


 スターシップのテクノロジーでは完全に自然環境環境を再現出来る、そんな環境で飼育が出来その上 天敵も居無いから繁殖もし放題だ!


「先程も熱帯魚とかの余剰卵を提供したけど、今後も取れた卵や子とかは販売して欲しい?」


「凄くして欲しいです♡」


 イメンケさん言葉が変に成ってるよ・・・・・


「それと当社のエンターテイメント部門から、如何してもキッドさんの映画化権を取得して来いと・・・・・」


「それだけは絶対イヤだ!」


 何の羞恥責めプレイだ!

 絶対に受けないよ!


「そんな事を言っても非公認で勝手に作られますよ?チョッと名前とかを変えて、フィクションだと言い逃れする用意して・・・・・」


「ウググ・・・」


 そう言うパクリ映画、確かに地球でも有ったよね?


「それなら多少は融通を利かせられる様に真実じゃ無い(フィクション)だと明記した上で、意図し無いモノは作らせない様にした方が良いんじゃないでしょうか?」


「それに私、お兄さまが主人公の映画が出来たら見てみたいな・・・・・」


 アリスがイメンケさんの味方に成り、ミューズまで上目遣いで御願いして来た・・・だけどボクは首を縦に振らない。

 そこへ・・・・


艦長(キャプテン)、少々よろしいでしょうか?」


 アリスが言った・・・彼女がボクを艦長と呼ぶ時は、公的な事案が発生してる場合だ。


「なに?」


「急遽、面会希望が来てるのですが・・・・・」


 ファルデウス帝国は宇宙に進出してるも貴族社会、一定の地位に就いた人間に対し先ずは面会を要請するのが普通だ。

 アリスが会話の途中で話を捻じ込むと言う事は希望と言っても当人がソコまで来てる状態だろうし、アポも無く来ると言う事は火急の要件か高い立場の人間か・・・後者が地位を盾にゴリ押ししてるなら思いっ切り断るんだけど♪


「いや高位貴族なのは確かですけど下出に出てますし要望のメールも懇切丁寧でして・・・ただコノ程度の代物なら幾つも来てるので無視しても良いのですが、相手が「家のモノが面会中で交渉してるので私も加えて欲しい」と・・・・・」


 と言う事は・・・ボクはイメンケさんを見る。


「私の帰りが遅いので痺れを切らして社長が来ちゃったかな?今回キッドさんは嫌がる事は想定内だったので、でも映画化権はバーカンディ・グループの至上命令でして・・・私も見て良いですか?」


 スターシップの外部に接続されてる搭乗橋ボーディング・ブリッジの先には、ステーションコロニーから直通の通路を通って来たのだろう巨大なリムジンが停車している。


「ここまで車で入って来られるんだから、よっぽどの信用がある人間だね・・・・・」


 と言ったのはジェイナス婆ちゃん、続いてイメンケさんも・・・


「あの大きさのリムジンは高位貴族でも使いません、どこの見栄っ張りが・・・ゲッ!」


 リムジンから下りて来た人は女性・・・サングラスをしてるけど中々の美人で、その人を見たイメンケさんが何かドン引いている。

 スーツ姿の出来る女と言う感じの(ヒト)で、ドコか誰かに似てる気がする・・・いや間違い無くアノ人の血縁者だな!


「社長さんじゃ無いの?」


「その上の人間です」


 って事は?


「我が財団・・・バーカンディ・グループの総帥です!」


 と言う事は~~~っ!




 サングラスを外して見せてくれた貌は多少おっとりした感じがするモノの間違い無くアノ人の血縁者、その美貌は失礼ながらジュリアさん以上のレベル・・・主にスタイルいや胸で!

 だけど正直最初の一言である挨拶の段階から度肝を抜かれる事に成った。


「初めまして小さな英雄さん♪うちの主人と娘が御世話に成ってます・・・・・」


「チョッと待って!お姉さんじゃ無くお母さんなの?」


 思わず大声を出したボクに一瞬キョトンとしたモノの、彼女は大人の余裕でコロコロと笑いながら訂正する。


「まあ御上手なこと、これでも三十路過ぎのオバさんなんですよ♪それに主人との間にはジュリアしか子供は居無いし、ジェリスは愛人を囲うタイプでも無いですし」


「若い頃は爺さんに連れられて娼館に入ったと聞いてますが・・・・・」


 初対面の人に失礼な事を言ったかと後悔したけど、娘が知ってるんだから問題では無いか?


「私と付き合う前の話ですよ♪当時はタダの上官と部下の関係で・・・辛うじて通信端末だけ掴んで逃げ出したんですが、ほゞ全裸で公園に逃げ込んで植え込みに隠れてたんです。頼まれて着る物を届けたのが馴れ初めの始まりで・・・あっ、この話で主人を揶揄わないで下さいね?私が叱られちゃいますから・・・・・」


 そう言うとミューズの前に跪き、


「ジェリス・バーカンディが妻、マリア・バーカンディです。姫様の御帰還、心より喜び祝わせて頂きます」


 貴族の礼を取る・・・流石は元軍人さん、その動作が非常に滑らかで美しい。


「と言っても私は少尉で退官し主人と結婚しましたので、その後は鉄砲玉の主人に代わり家を支えて来ましたので・・・・・」


 と言う事は可成り出来る人なんだね?


「と言う事で・・・映画化権だけで無く小説やコミック等それにキャラクターの利権も、我が財団バーカンディ・グループのエンターテイメント部門に御任せ頂ければ・・・・・」


「本当に出来そうな女の人(ヒト)ですね・・・・・」


 ボクは呆れ気味に言った。




 結局押し切られ落ち込むボクをダーグとポップさんが慰めてくれ、その向こうではミューズやジェイナス婆ちゃんがマリアさんと一緒に楽しそうに御茶会を始めて仕舞った・・・もう実働時間20時間を超えてるんだけど!


「それはスミマセン!コロニー時間ではお昼頃なので・・・・・」


 お茶と一緒に軽食が提供されてる筈だ・・・ちなみにチョっと前、星を跨いで移動する時に到着先の星の時間に合わせると記した気がするけど間違えてた!

 実際には「到着先の惑星の着陸する都市の時刻に合わせる」が正しい、当然だけど惑星上にも降り立つ場所によって時差が発生する。


「とにかく一企業だけ依怙贔屓(えこひいき)すると言われるのはグループにも良く無いでしょう、ジェリスさん達には良くして貰っているけどバーカンディ・グループだけに利益を集中させる積りは有りません」


「その点はコチラも考慮します・・・それにしてもキッドさん、とても見かけ通りの年令には思えません。老成されてるのね・・・・・」


 その老成してるって言い方はチョッと嫌だな・・・・・


「まあ地球に居た頃、理不尽に権利を奪われた事が有るので・・・それと公式に許可を与えたのは、あくまで創作物を作る権利に関して与えただけです。ボクの自伝では無く許可を得た創作物である事は明記を・・・・・」


「心得ております♡」


 こう成っては仕方が無いが創作物(フィクション)と明記してもボクがモデルなのはバレバレ、精々ボクにとって不本意なモノは作られない様に監視しておこう。


「と言う事でボクは休むよ・・・みんなも無理しないで、所でミューズ・・・・・」


 サンドイッチを咥えたミューズの耳元で囁いた。


「食べてスグ横に成ると・・・太るぞ?」


 ミューズの手と口が止まったw




「しかしキッド様は大きな利権では有りますが、総帥 自ら御越しに成るとは思いませんでした・・・矢張(やっぱり)お嬢さまの御相手の事が気に成りますか?」


 マリア伯爵夫人は意外と鋭かった部下に感心しながらも、


「オフィスに戻ってからなら兎も角、車の中と言え外出中に口にする事では無くてよ?」


 と注意した。

 ところが意外と骨が有る男だった様で、雇い主であるマリアに噛み付いて来た。


「そう御思いでしたら総帥自ら足を運ぶのは控えるべきでしたね・・・貴女が直接キッドさんの顔を見に来た事で、余計な事を考える奴等が間違い無く動いて来ますよ」


「残念だけどソレは既に手遅れなのよ・・・・・」


 マリアはタブレットの様な情報端末を開いてイメンケに渡した・・・中には英雄キャプテン・キッドと相棒であるミューズ皇女を讃える記事、そしてキッドとミューズ皇女が相思相愛の仲である事を記していた。


「この帝国に住む者の中で心ある者ならば、今まで悲劇のヒロインとして辛酸を舐め続けたミューズ様の幸せを祈らない者は居無いわ。でもね・・・貴族も民も関係無く全ての人間にマトモな心が有るとは限ら無い、自分の利益が絡んだ場合は特に・・・・・」


「あれだけ大掃除して腐敗貴族を一掃したのに、また何か悪企みしてる奴等が出て来たんですか?マアどんなに腐敗貴族を駆逐して後釜に聖人君子を据えても、利益を目の前にブラ下げられては俗物に成り下がるケースも有るでしょうけど」


 何か情報を得てるのだろうと思うがイメンケの所まで来る話では無い、だから彼は軽く冗談めかして終わらせ様とした・・・自分の所まで来る話では無いと思っているからだ。

 だけど彼の予想に反し・・・マリア伯爵夫人はイメンケの手から端末を奪い、別のページを表示させてから再度渡した。

 それを見たイメンケは微かに怒りを滲ませながら・・・・・


「これを何故キッドさん達に知らせなかったのですか?」


「ミューズ様の前で言えると思う?」


 そこにはキッド達を・・・いやファルデウス帝国を狙う新しい敵が動き始めてるらしい予兆と、ミューズ皇女の健康状態に対する専門家の考察による報告書が表示されていた。


「車を止めて頂けますか?」


 マリアが運転手に停める様に指示を出した。


「ここで失礼させて頂きます」


「何を企んでるのかしら?」


 マリアに問われるが、


「私が企む人間だと思ってたから話したのでしょう?」


 その答えを聞いて満足げに笑みを浮かべる伯爵夫人だった。


「一つだけ伺いたいのですが?」


「何かしら?」


 イメンケは珍しく厳しい顔をして居る。


「相手が・・・いえ敵が誰なのかは?」


「残念ながら断言出来るだけの証拠が無いの・・・だから言えない、けどココまで言えば貴方にだって想像が付くでしょう?」


 イメンケは気怠そうに溜息を吐く。


「ジョブ・トゥーニックですか・・・・・」


 心の底から嫌そうな声を何とか搾り出すイメンケであった。




 その日は昼から眠り出し結局起きたのは翌日の昼過ぎ、更に皇帝の別邸で一日休んでから行動し始める・・・積りだったけどイメンケさんから電話が来た。

 個人的な携帯端末の連絡先(アドレス)は先日教えて有りソチラに連絡が来た、これに電話もメールも送られて来るのだがカチューシャに内蔵されている機能である。

 その事は整備の話が有ったのでスターシップに戻り、ついでに朝食を取ってるとミューズの方から聞いて来た。


「イメンケさんから連絡が有りまして、お兄さまを今日一日貸して欲しいと言われたのですが・・・・・」


「ソッチにも連絡が来たんだ・・・ボクの所にも昨日連絡が来た、ついでにギルドに顔を出して来るから車で送ってくれるそうだけど」


 トーストにクリームチーズを塗りながら答える。


「でもミューズに聞かせたくない事って何なんだろ?」


「実はイメンケさん・・・その気が有って、お兄さまに・・・・・冗談ですっ!冗談ですってばぁ!!!」


 ミューズのオシリを強めに抓り上げ・・・そんな事をしてるとコール音が鳴って知ってる初老男性の顔が映し出され、監視カメラの向こうに居るのはファルデウス帝国軍のアヴァ元帥だった。


「久し振りだね・・・チョッと良いかな?」


 ウン、軍人さんが来る事は解ってたけどさ・・・まさか帝国元帥本人が来るとは思わなかったよ!


「そりゃ当然そうなるだろ?例えば見知らぬモノや大した繋がりの無い者が来て、私に寄越されたと言われても君は簡単にハッチを開けてスターシップの中に招き入れるのかい?」


 確かに その通り・・・何も言い返せません!


「で・・・そっちの人達は?」


 アヴァ元帥の背後に男女が5人づつ、10人が立っている。


「君達の護衛だよ」


「ヤッパリ・・・小生意気で頭に来るクソガキですけど、ヨロシクお願いします」


「自覚は有るんだね?」


「そこは「そんな事は無い」と言ってよ!」


 ジェイナス婆ちゃんから突っ込みが入る♪


「キッド君が素直に受け入れてくれて良かったよ、追い返されないかと冷や冷やしてたんだ」


「コッチから頼もうと思ってた、ミューズに就ける護衛を・・・・・」


 流石に皇女様を一人に出来無いからね。


「意外に素直に受け入れたな・・・要らないと拒否するかと思ってたんだ」


 ダーグにも言われたけど、


「敵を倒す事に掛けては誰にも負けない自信が在るけど、敵から守る事に掛けてはボクは専門家とは言えない。そんな事で見栄を張ってミューズを危険に晒す程、ボクは馬鹿じゃ無い積りなんだけど」


 何故か皆がボクの頭を撫でてくれるが、こう言う扱いに関しては拒否させて貰いたい。

 子供なのかは確かだけど明白(あからさま)な子供扱いは、地味にプライドが傷付くんだよ・・・子供のプライドがだけどねw


「そう言えば子供扱いされて怒るのが子供の証明だとか言って、ボクを挑発し様としてた馬鹿が居たな・・・ブリッジごと吹き飛ばしてやったけど♪」


「ガスター攻略戦の時でしたね・・・あの方の方こそ頭が子供で馬鹿だったのでは無いでしょうか?だって大人に子供扱いしたら当然 怒るでしょうし、子供だって子供扱いされたら面白くは無いでしょう・・・結局 子供扱いは誰にしても不興を買うのです」


 するとボクとミューズ以外は・・・


「なんだココに居る子供達は・・・こんなに老けた考え方する子供は見た事は無い!」byアヴァ元帥


「自分が子供だと自覚してるクセに、ちっとも子供らしくない・・・・・」byジェイナス婆ちゃん


「可愛気の無い子供達だよねw」byポップさん


「普通の子供らしさを求める方が間違ってるだろ?」byダーグ


「皆さんケンカ売ってます?」byミューズ


 さてと・・・


「ミューズは今日は如何する?」


「お兄さまと一緒なら お出掛けしたかったですが、如何やらポップさんは二人きりで相談したい様子・・・それならジェイナスお婆さまとスターシップで図面を引いてます」


「如何してもハインツはミューズに自分の船をデザインさせたい様だ・・・本当に孫馬鹿で見てて恥ずかしいとも思うけど、どうせ乗るなら可愛い孫が造った船に乗りたいと言うのは分からない訳じゃ無い」


「陛下も結構 倹約家ナンです・・・それで別に性能的にも問題が無いと使い続けてましたが、実はアトロペルスって軍艦としては結構な老朽艦で就航してから80年経ってるんですよ」


 とジェイナス婆ちゃんとポップさん・・・この世界のリサイクル技術は地球に比べて当然ながらレベルがメチャクチャ高い、壁紙の繊維まで再利用出来るなら再利用しコストも考えられないほど低かった。

 だから旧式化したモノは平気で簡単に潰し、素材化して再利用し新しい艦を造って行くのだ。

 コッチの世界では耐用年数が尽きてガタの来て無くても、少しでも旧式化して改造で性能を補えなく成った艦は老朽艦と呼ばれ・・・そろそろアトロペルスも造り替える方が良いと言う話に成ってるらしい。


「そう言う事ならジェイナス婆ちゃんにミューズの世話を任せても良いかな?」


「そりゃ私も楽しめるし構わないね♪」


 と言う事でミューズの世話は婆ちゃんに頼んだ。


「必ず出かける時は護衛の人と一緒に行動する事、こっそり一人で出掛け様としたなら・・・解ってるよね?」


 皮革製のスリッパを握るボクを見て、怯えてるミューズとても可愛い♪




 如何やら護衛はミューズだけじゃ無く、ダーグやジェイナス婆ちゃんにポップさんとボク以外のスターシップ搭乗員は守って貰えるらしい。

 ボク?

 一人で行動する分には護衛なんか必要無いし居たら反って邪魔、そもそもウェルム少将の部下の人達と一緒に訓練させて貰って可成り戦闘能力が上がってるんだ!


「お待たせしました、どうぞ乗って下さい」


 流石に納品の時は別で輸送車ごと来られるんだけど、イメンケさんの立場ではマリアさんの様にアイスコフィンの中にまで車で入って来れない。


と言う事でアイスコフィンとNo7ステーションコロニーを繋ぐ連結アームの先で、一般人立ち入り禁止区画まで乗り入れてたポップさんの車に乗り込んだ。


「ここ迄ならポップさんも来るまで入れるんだ?」


「流石に総帥みたいにアイスコフィンの中まで車で乗り入れられ無いよ、それでも君を外に来て貰って車に乗らせたりしたら・・・現に今もゲートの先には報道関係者が待ち構えてて・・・・・」


 そう言いながら変装用らしい、帽子(キャップ)とサングラスを差し出してくれる。


「ボクの容姿はミューズと同じ銀髪だと思われてるんだよね?」


「最初に流出した写真の通りにね・・・・・」


 つまり今の黒髪だと変装する必要も無いかも知れない。


「しかも未だに大多数の人から女の子だと思われてるから・・・・・」


「泣くぞ!」


 イメンケさんが笑うの我慢している・・・停車したら上腕の内側を抓り上げてやろうか!




 自分の身体を自己調整出来る事を知った時は記憶が戻って無かったけど、取り戻してからは元々の姿に戻してたのは瓜二つのミューズと並ぶと紛らわしいと思ったから・・・あの時は絶対に彼女を治して一緒に並んで歩くと決めてたからね!

 でも元々ボクは日本人の平均値に比べると悲しい事に下回ってる位のチビで、しかも母さんとも姉妹に間違われ年中 女の子と思われていた・・・のは自分の趣味でボクを長髪にしてた母さんが悪いと思う!

 そう言えば初代エルミスの出港準備が整うまで結構ミューズと地球で遊び歩いたけど、その時もミューズと姉妹に間違われ良く「妹さんの面倒を見て良い❝お姉ちゃん❞だね」って言われてたっけ(涙)


 そんな訳でボクの外見は母さんやミューズにソックリ、しかも女顔の上に肌も色白だったので良く女の子に間違われてた。

 その母さん譲りの長い黒髪は女の人に羨ましがられる位で、眼の方も黒く見える濃い鳶色の瞳をしており母さんが沖縄の方の人だった事に由来するらしい。

 鳶色と表現したのは濃い色ながら赤っぽいので、日本人で黒い瞳だと言われる人は大抵「黒く見えるほど濃い茶色」なのだが、ボクや母さんは「黒く見えるほど濃い鳶色(赤茶)」で髪と同じく綺麗だったんじゃ無いかな?




「じゃあソロソロ聞かせて貰っても良いかな?ボクを引っ張り出した理由を・・・・」


「ビジネスの話ですよ・・・ミューズ様たち女性陣に席を外して頂けたらスターシップの中でも良かったんですが、広いと言え女性陣の居る船内で話すよりは外に連れ出した方がキッドさんの警戒も緩むだろうと思いまして」


 警戒レベルを上げよう・・・


「つまりボクが警戒する様な話なんですね?」


「先ず間違い無く・・・・・」


 何を話し出すのやら・・・


「キッドさん・・・」


「ハイ・・・」


 思わず唾を飲み込んでしまう・・・こう言う時は本当に飲んじゃうモン何だね!


「大人向けのエッチな映画なんかのデータって存在します?」


「はぁ?」


 うん思わず声が出て仕舞ったね・・・呆れてだけど!


「だってキッド君も、そう言う事に興味ある御年頃でしょ?そう言う物を持ち込んでても不思議じゃ無いかなって・・・勿論ですが私が興味あるだけですから会社には内緒で、ただ販売も許して貰えるならチャンと会社通して契約も交わしますから・・・・・」


 ズッコケてシートから滑り落ちて仕舞ってた身体を引っ張り上げながら、


「無いですよ!でも確かにソウ言えば、何で持ち込まなかったんだろ?」


 自慢にも成らないけどボクも人並みに相当スケベな方だと思う。

 お尻を引ん剝いて直にお尻叩きとか、結構ミューズとは過激なスキンシップをしてるし!


「そんな下らない事を相談する為に引っ張り出したんですか?」


「何を言います!生物の本能に準ずる純粋な好奇心から・・・・・」


 呆れてモノも言えない!


「そう言う物は本当に持って来なかったんですよ・・・でも確かにオカシナ話だよね、ボクだって人並みに興味が・・・・・」


 でも少し考えたら、すぐに理由を思い出した。


「そうか・・・あの時はミューズが居ればソレで良いって思ってたんだ!それにそこまで進行してたとは知らなかったけど、それでもミューズに死期が迫ってる事も告白されてボクも焦ってたし考える余裕も無かった。抑々あの映画や音楽のデータだって集めて船に積んだのはボクじゃ無くてミューズだったし・・・・・」


 初代エルミスの修理には相応の時間・・・まあ地球の技術力じゃ信じられ無いほど早く修理出来たけど、それでも作業ドローンが修理してる間はボク達もする事が無かった。

 その間はミューズと二人でバカンスを楽しんでたんだけど・・・一方でミューズはスターシップやドローン達に指示し長い船旅でボクが退屈しない様に様々なモノをデータに変換してエルミスに積載、エンターテインメントだけで無く美術や工芸に風俗(いやらしい意味では無く本来の一般市民の生活風俗と言う意味でだよ!)まで地球の文化を再現出来る様にされていた!

 もっともエルミス内に水槽部屋造って熱帯魚を集めてたのは、途中からミューズの奴が夢中に成って集めてたんだけどね・・・抑々ボクの趣味でも有ったけど元々は母さんの趣味だった♪

 その後も一回コッチに来る前に地球に寄ったけど、その時はミューズを治し切れなかった事で結構ガックリ来てた・・・だから地球に残して置いたデータ等収集ドローンを回収し、仲の良かった友人に最後の別れを告げるので精一杯だったんだ。

 


「そ・・・そんな下らない事を相談する為に・・・・・」


「そう言う建前で連れ出させて貰ったから、ミューズ様達には話を合わせて頂きたい・・・・・」


 ボクは一気に下がってた警戒レベルを再び上昇させる、つまり本音の話が有る訳だ・・・早速だけど彼の真意を聞いてみる事にする。


「では本音の相談は?」


「相談じゃ無くて警告ですよ、私じゃ無くて総裁からのね・・・キッドさんはジョブ・トゥーニックって名前を聞いた事が有りますか?」


 イメンケさんの声が緊張を帯び、その名を聞いてボクは不快なモノを感じる。

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