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ムカ付いた奴を消し、老人が一計を案ずる。

 シールド護衛艦さえ居なければ後は普通に艦隊戦、ジュリアさんの敵では無いだろう・・・なにせ未成年(わかい)と言え百戦錬磨の女狐さんだ♪

 早々に艦隊を展開し包囲・・・本体から離脱したイクッシには逃亡を許さず降伏勧告を、そして戦闘不能・航行不能な艦には抵抗し無いなら攻撃はしないと告げる。

 そこへフェスケーク侯爵夫人よりイクッシ各艦にジュリアさんの艦隊への攻撃命令・・・当然ながら全てのイクッシが命令を聞かず、ところが命令を聞かないイクッシにリヌ・マジワから砲撃し攻撃し始める!


 イヤ抑々、行動不能にしたのはドコのドナタでしたっけ?


 結局 無事だったイクッシが動けないイクッシを庇い、その前に立ちはだかってシールドを展開した所で戦況が膠着状態になり・・・ついにポップの組織したアサルト・ノーダー隊が日の目を見る事に成った!


「リヌ・マジワを制圧せよ、全機突入!」


 リヌ・マジワを掠める様に飛んだマリンシールからアサルト・ノーダー2個小隊32機が突入、リヌ・マジワの防衛機構を破壊して行った・


「アッチは任せて大丈夫だな・・・ならボクは・・・・・」


 迎えに来たスターシップの底部ハッチから中に侵入し、エクセリオンを係留アームに固定・・・同時に飛び降りてコクピットに向かった。


「お帰りなさい♪採点は・・・・・」


 チュッ!とオデコにキスをして・・・


「満点だ♪後で大人のキスを教えてやる・・・・・」


 自分の席にコントロールを戻して貰い、スターシップを巡らせヴァルトンの乗艦に機首を向ける。


「さてと・・・お膳立ては整った・・・のかな?」


 艦尾から光子(フォトン)の粒子が迸る。




「ブツけてでも止めろと言ってる、それだけで良いと言ってるだろうがっ!」


 この乱戦じゃレプトン通信は使えない、敵のレーザー通信でヴァルトンのモノらしいダミ声が響いている。

 ヴァルトンは乗ってる艦の損傷が増えると無事な艦に乗り換える、だから乗ってる艦が解からなく成ってる・・・ヴァイラシアンの艦籍コードが解析し切って無いのだ!


「それでも・・・必死で後退しながら配下に前へ出る様に言ってる艦が居たら、間違い無くソイツがヴァルトンの乗ってる船だよな?」


 敵艦の動きをアリスに解析させながら、果敢にスターシップへ迫る艦の艦橋(ブリッジ)を中性子ビーム砲で射抜いて行く。

 勿論ブリッジを破壊したって完全に戦闘不能に成る訳じゃ無い、だが命令・通信・系統は完全に混乱し索敵能力は極端に低下している・・・その状態で戦闘に参加しても良い(カモ)にしか成れないのだ!


「最奥手前に居る艦が味方を盾にしながら後退しています・・・ほゞ間違い無くヴァルトンの乗艦かと」


「何とか通信が取れないかな?」


 ミューズはパネルを操作しながら、


「やって見ます・・・」


 と答える。

 ミューズが分析に専念したので弾幕が一瞬薄まった・・・だがレーザー兵器の担当をダーグが代わってくれ、雑多な兵器の操作をアリスが受け持った。

 そのまま敵艦隊の中へ押し進むと・・・先程までボク達の船を取り囲んでたと思ってた敵艦が三味線を弾かれてた事に気が付いて動きが乱れだした。


「お兄さま・・・」


 ミューズがコチラを見て頷きボクも頷き返すと、モニターの一部を切り取って待ち焦がれた男の顔が大写しに成った。


「よう♪」


 ボクの挨拶に鼻白むヴァルトン・・・・・


「き・・・貴様がファルデウスの・・・・・」


「特務艦隊の長さ・・・命を奪う前に御挨拶をと思ってね♪」


 ネズミを甚振るネコの様、ワザと奴の乗艦にプラズマブラスターを掠らせる!


「貴様っ!」


 と強く出て来るがハッキリ言って、それはもう惨めな位に腰が引けてる。


「あんな幼い子供を玩具にする為、船に無理矢理 乗せたオマエだ・・・ここでボクに殺されたって文句を言う筋合いは無いだろう?覚えが無いとは言わせないよ?」


 奴はボクの事を睨んでいる・・・アイツの顔が大写しに成ってる様にアッチにもボクの顔が見れてる筈、まあ表情を見る分には自分のやった事が外道の所業である位は理解してるらしい。


「ただ如何しても理解出来無いんで二つほど御教授願いたいのだけど良いかな?」


「なんだ・・・」


 スターシップが本気で進めば即届く事は理解出来てるらしい。


「ボクもスケベだから大きなコト言えないけどさ・・・それでもアンなに小さな子供を性の玩具にし様として、痛む良心は持って無いのかい?」


 すると奴は醜く顔を歪め、


「だから如何したのだ!全ての低民は我が身に奉仕する栄誉を・・・・・」


「聞いたボクが馬鹿だったよ!」


 思いっ切り冷たく言い放つ!


「もう一つ分ら無かったのは、あんな小さな子供を相手に()()()()()のかと成人女性は相手にしないのかってコトだったんだけど・・・理由が解ったから答えなくて良いや!オマエの様なゴミを相手にマトモな知性を得た成人女性は相手()し無いし、相手()()しない!普通の女性が相手に出来無いじゃ無くて、力尽くで幼児しか相手に出来無かったんだろ?」


 頭の良い奴だとは思って無かったけどアイツの顔が挑発に歪む、本当にチョロい奴だな!


「もう良いよ・・・死んでくれ、これ以上 同じ宙域に存在されるとボクの精神衛生に良くない!」


「こ・・・この小娘が!」


 普段なら女と間違えてムカッと来るんだけど、それ以前に限界を振り切って頭に来てるから小娘呼ばわりは頭に来ない。

 それどころか冷静に奴の首を狙いに行ける!


「死になっ!」


 スターシップは急加速し敵の中に飛び込んだ・・・宇宙船は全速力を出せば光速すら超えて航行出来るけど、そんな事をしたら戦闘なんてする事は出来無い。

 亜光速から超光速まで速度が出たら精々最初の一撃を相手に打ち込む位で、マトモな艦隊戦など出来る筈も無いのだ・・・それを超高性能コンピューターや熟練の船乗りの技術、それに時には薬物でドーピング迄して漸く制御出来る速度まで落として戦うのがコノ世界の艦隊戦だ!

 その中でボクは普通の人間では制御出来ないレベルに一歩踏み込んで敵の中を貫いて行く・・・相手にし様とする艦が少なく成って来て、もう諦めて逃亡する艦の方が増える。


「あの艦を何とか止めぬかっ!」


 そう言いながら全速力で後退し始めるヴァルトン、その艦に追い縋って行くスターシップ・・・・・


「貴様等っ、何をしてる!持ち場に戻らんか!?」


 如何やらブリッジクルーまで逃げ始めたらしい・・・まあブリッジに居たら確実に巻き添えを喰らうしね!


「音声を拾う限りブリッジで銃撃戦が発生してますよ・・・ヴァルトンが逃げ様とする家来に発砲し、家来の方も撃ち返しています。その所為でヴァルトンはブリッジに釘付け、出入り口付近を部下がバリゲード化させて・・・・」


「まあ一緒に逃げたら一緒に吹き飛ばされる・・・ヴァルトンを絞め出した者の中には、奴の行為に同調したりオコボレに預かった奴も居るかもしれないけどさ・・・・・」


 ボクはビーム砲を最小出力に落として荷電粒子砲に切り替えた。


「ソイツ等の炙り出しはファルデウス帝国の戦犯追跡委員会に任せて、ボクは奴の・・・・・」


「おうっ、ワシ等に任せろ!」


 幻聴か・・・爺様の声が聞こえた様な気がした。


「死なせはしない・・・タップリ苦しみ抜きなっ!」


 奴の乗艦のブリッジを撃ち抜いた!




 最小出力に絞った荷電粒子砲・・・荷電粒子がブリッジ内で跳ね廻り、ヴァルトンは全身大火傷で搬出された。

 身体中焼け焦げた状態で・・・あの状態なら長くは持つまい、しかも神経に突き刺さった荷電粒子は電気信号を際限無く放ち続けている。

 その信号は人体には痛みにしか感じられず、彼は死ぬまで苦しみ続ける事に成る・・・鎮痛剤は通用しない!


「オマエも残酷な事をするなあ・・・まあ敢えて言うと良くやったと褒めてやるけどな!」


 そう言ってウェルム少将がボクの頭を撫でる・・・あの時 聞こえた皇帝陛下の爺様の声は幻聴で無かった、その爺様の警護についてウェルム少将もコッチに来てたのだ。


「少しは気が晴れたか?」


 爺様も声を掛けてくれた。


「スッキリしたとは言えませんが、多少は自分に納得させられたと思いますね・・・・・」


「それで良い・・・オマエは軍人じゃ無いし成る必要も無いし、心を捨てる必要も無いんじゃよ」


 その時 若くは無い女性の金切り声が周囲に響き、透明にしたドラム缶の様な容器に押し込まれたババアが転がされながら運ばれて行った。


「もしやアレは・・・」


「フェスケーク夫人じゃ♪」


 反逆者の烙印を押された段階で爵位剥奪と言え一応は元貴族だよな?


「フェスケークの領地は直轄にしたし、あ奴に取ってコレからは地獄の日々に成るじゃろうな・・・楽しみで仕方無い!ミューズを手籠めにしろ等と言った報いじゃ!」


「キッド君、拘束した段階でアナタに手は出せ無い!私刑(リンチ)禁止だから諦めて、銃から手を放しなさい」


 ジュリアさんに言われて舌打ちするとミューズに後頭部を叩かれる。


「そう言えばミューズ様だけで無く、キッド殿も手籠めにと抜かしてましたな・・・まだキッド殿を女の子と思ってるのでしょうか?」


 爺様とウェルム少将がニコニコ笑ってやがる!

 ボクが女の子だと言う間違った情報を、この2人の悪戯で修正されて無いのだ!


 ただウェルム少将には通用しないけど、爺様には最高に効果的な仕返しの方法が有る♪


「おいミューズ・・・」


「お兄さま、何ですか?」


 近寄って来たミューズの唇を奪った。

 爺さんが怒りの表情でボクを睨み、中々ボク達が離れないのを怪訝に思ってたら・・・ミューズがトロンとした眼をして漸く気が付いた。


「約束の御褒美・・・大人のキスだよ♪」


「お・・・お兄さまぁ♪」


 腰を抜かして立て無く成ったミューズをボクは横抱きにした所で、爺様の頭が再起動し怒りの表情でボクに怒鳴った!


「キ・・・キッドォ~~~~~ッ!」


「お爺さま、余韻を楽しんでるので静かにしてて下さい♪」


 爺様は口をパクパクさせながら言葉を紡げない。


「お兄さま、お代わりプリーズです♪」


「そう簡単には上げ無いよ」


 ボクの言葉にミューズは不満気だ!


「お兄さまのケチ、せめてもう一回ワンモアぷり~ず♪」


 ミューズはボクに抱き抱えられながら甘えている。




 意外にもミューズへの「大人のキス初体験」は、爺様だけで無くウェルム少将へも手痛い仕返しに成ったらしい!


「陛下が怒るわ拗ねるわ泣くわで大変だった・・・宥めるのに何時間かかった事やら・・・・・」


「そんなに掛かっとらんわい!」


 それでも大分絡まれたらしく、ウェルム少将がゲンナリしている。


「さてと・・・冗談はソレ位にして、今後は如何するのキッド君達は?」


「我が姫の望むままに・・・・・」


 ジュリアさんの問いにボクは少しだけ巫山戯ながら冗談を交え答えた。


「じゃあ提案が有ります・・・少し休養を取りましょう」


 ミューズはボクの頬を両手に挟んで正面から眼を覗き込みながら言った。


「お兄さまは少し疲れてますよ・・・肉体だけで無く精神的にも、ここ等で少し休みましょう。お爺さま達も私達に首都星に来て欲しい様ですし・・・」


 ヴァイラシアンは滅亡したんだから、今更ボク達を足止めさせる必要無いだろ?


「馬鹿タレ・・・キッドの叙勲にミューズの御披露目、それに会見と色々有るわい・・・もうヴァイラシアンの脅威は無く成ったから、オマエ達の旅を止める積りは無い!だが出掛ける前に最低限の公式儀式には参加して貰うからな!」


「え~っ、面倒だなぁ・・・」


 爺様のゲンコツが振って来たけど躱してやった♪




 ファルデウス皇帝 座乗艦アトロペルスの一室で・・・・・


「キッドの奴は?」


「寝ています・・・ナンだカンだ言ってもヤッパリ疲労が蓄積してまして、特に精神的な疲労が大分・・・ミューズ様の方は?」


「スターシップの工房でジェイナス技師とアトロペルスの建造案を、全く新しい船を造るのに没頭してますね」


 集まった大人達が悪企みをしている。


「式典は派手に豪勢に・・・しかし一発勝負で予行練習は無しで、同時に公式会見も一回きりで質問の類の重複は無いように調整しろ!個別のインタビューは厳禁だ・・・・・」


「叙勲は良いのですが爵位は・・・・・」


「一応声を掛けるがマア断るだろうし、2~3度は受ける様に説得するが諄くはしない・・・ヘソを曲げさせぬ程度にするのだ」


 キッドの性格を分析している。


「その後は暫く惑星上でユックリ休ませ、体調が整ったら旅立たせる・・・十分楽しんで満足させる為にな♪とにかく出来る限り若い内に満足する事を覚えさせ、その後に腰を据えても良いかと思わせるのだ」


「ゆっくり休ませると言うと良い保養地が必要ですね・・・我がバーカンディ伯爵領には、良い保養地が・・・・・・」


「待て待て・・・何でオマエの領地に引っ張るんだ?帝国直轄領にも良い保養地が・・・・・」


「ドコを選ぶのもキッドの自由でしょう?ならばスターブルームにも良い所が・・・・・・」


「呆れた・・・みんな自領の観光地宣伝にキッド君とミューズちゃんを使いたいだけじゃ無い!」


 ジュリアの呆れ顔に皆が黙った。


「あんまり見っとも無い所見せると二人に呆れられますよ!」


「解ったから、そう言うな・・・・・」


「最近さらに強く成ったな・・・・・」


 祖父の様な人達と父親に言われて苦笑する。


「兎に角キッドは若い所為で自分の疲弊に全く気が付いておらん・・・自覚させ様としても言葉で理解出来ても内心では分からんだろうし」


「そこは我々老人が気を利かせて休ませ様とするしか・・・我等が心配すれば気を使って休んでくれるでしょうし」


 するとジュリアに向かっても、


「これでヴァイラシアンも少しは落ち着いたし、休暇を返上してた部隊は交代で休ませられる・・・ロイヤルフェンサーもな!」


「それじゃぁ・・・・」


 ジュリアの瞳が期待に見開かれる。


「緊急事態宣言の終息とロイヤルフェンサーにバカンスを認める・・・交代でバカンスを取るプランを作成せい、先にロイヤルフェンサー1と3次に2と4だ・・・・・」


「ヤッタァ!」


 大喜びで飛び上がるジュリアに、


「コラコラ・・・身内ばかりと言え・・・・・」


「失礼しました・・・これよりジュリア中佐、事務仕事に勤しむ為に退席させて頂きます♪」


 敬礼をして嬉々と会議室を退出した・・・アトロペルスからランチでフリッパーに向かうと、皇帝の随伴艦の中に旧ラグナレクと同型艦が見えた。


「アレも全てエルミスかヴィダーシュペンスティガーに改装されるのよね?」


 と感慨深く想った。




「ジュリアは行ったか?」


 皇帝が声を潜めて言った。


「では大人の密談の続きと行こう・・・観光地の振興と言って何か所か廻らせキッドを極力休ませる、特にゾンビ化してると言え幼子に銃を向けた事は心に傷を残している。それを忘れさせられん迄も、傷が癒える程度にはな・・・・・」


 皆が頷いた。


「それにジュリアを同行させるのだ・・・名目はフェスケークの縁者がキナ臭いとでも言って・・・・・」


 ジュリアを側室にと言う計画も進んでいる。


「ミューズとジュリア、二人も娶ればキッドも腰を据える事を考えかも・・・だが焦ってはいかん」


「我ら老人で若い奴等を誘導・・・ジェリス如何した?」


「私は・・・まだ老人では有りません!」


 会議室で何故か乱闘が勃発する。

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