そろそろ奴にトドメを刺そう!
ジェリス艦長にジュリアさんとパイン大尉、それにジェイナス婆ちゃんやヴァッサー大尉 等々がスターシップに乗り込んで来た。
リビングでボクを取り囲んで何か言いたそうにしているが、コッチとしたら文句を言われても困る。
「ガスターが2基も居たら邪魔で仕方無いでしょ?鈍足でも軌道エレベーターから切り離せば、移動能力も有るんだし・・・手っ取り早く敵を減らす事に関しては、事前に了承を得ていたじゃないか?」
「そうだけど、もう少し穏便に沈黙させられ無かったの?」
そんな事を言われても困る。
「軌道エレベーターのシャフトで貫かれてたけど、そもそも乗員が退避してたのは進行方向に月が有ったからでしょ?鈍いと言っても移動出来るんだから、ガスターが合流したら目も当てられないし・・・」
「だからって月に突っ込ませるなんてアンタ・・・・・」
パイン大尉が呆れている。
「それよりもガスターが月に衝突します!」
ミューズの声に一同の眼がディスプレイに剥く、丁度ガストンの月にガスターが衝突する所だった。
「ああ・・・月の引力に引かれて・・・・・」
「突き刺さるってより、横から殴られる様な感じだな」
ガスター2は軌道エレベーターのシャフトに貫かれたまま、月の表面に激突してグシャリと潰れて行った。
「見事に潰れるな・・・流石にバウンドはしないか?」
「あの構造に質量ではバウンド何かしませんよ♪」
これもある意味コロニー落としか?
「お兄さま何か言いたいのですか?」
「いや何も?」
鋭いな?
「でガスター1は?」
「こちらは何とか軌道エレベーターの切り離しに成功し、ガストンを挟んで反対側で静止しました。そちらにヴァルマーが居る事が確認されてます」
アリスが言う。
良かった・・・コッチにから脱出した艦船に、アイツのモノらしき艦船は無かった。
そりゃ他の艦に乗り込む事は有るだろうが、通信を傍受してもヴァルマーらしき奴が乗ってる話が出ていない。
この艦隊の一応は首魁、乗ってれば奴を中心に艦隊が動く・・・だから存在が確認出来無いのにガスター2に居たなら、死んでた可能性が高かったのだ。
「これで思いっ切り残酷に殺してやれるな♪」
と楽しみにしてた所に、
「緊急事態が発生しました」
今度は何だよ?
「この侭では自分達の立場が危ないと、自発的は方々がガスターに攻撃を始めました。ですが戦力差は圧倒的で次々に撃沈されて行きます」
思わず溜息が漏れて仕舞う。
「折角一般兵の犠牲が少なく成る様、馬鹿を巻き込む様にガスター飛ばしたのに・・・突撃の指示を出すバカ貴族は何人いるの?」
「あと2人だな・・・ドサクサに紛れて後ろから撃てないし、コッチには拘禁する権利も無い。時間が有ればAD通信で陛下に御伺いを・・・・・」
コイツ等は反乱にも関与しなかったから、馬鹿でも野放しだったそうだ。
「流れ弾が都合良くって訳には行かないか、まあ獲物を横取りされるのは面白く無いが、その心配は無さそうだ」
「それに付き合わされる兵士の皆さんが可哀想です」
ミューズは悲しそうに言った。
戦闘時は敵に容赦しないけど、その分それ以外の人には優しい。
「じゃあ止めて上げるよ♪アリスそのバカ貴族に繋いで・・・・・」
コクピットのディスプレイに2人の貴族の顔が移しだされた。
何の用かと誰何される前に・・・・・
「オマエ等・・・今の状況解ってるの?」
2人はキョトンとした顔をした。
「ここにボクが居る、皇帝陛下を爺さん呼ばわりして親しくしてるボクがね!ミューズも居るよ、爺さまが眼に入れても痛く無いって程 可愛がってるミューズが・・・そして同じく孫の様に可愛がってるジュリア中佐に腹心のジェリス少佐・・・・・この状況下で今自分が何やってるのか解ってるのか?」
「如何言う意味だ!」
片方の貴族が顔を引き攣らせて言った。
「オマエ等はタダでさえ棺桶に片脚突っ込んでるのに、もう片方の脚も自分で仕舞って自ら埋葬され様としてるって事さ!ファルディウス帝国では自分の領民や指揮下の軍人も、領主だからって好きに出来ない事くらい解っているよな?」
あの爺さまの治世下じゃ当然だろう。
「勝手に艦隊を動かし既に3割近く失って、しかも敵ならまだしも自軍の兵を何人殺してるんだ・・・ガスター落しても、オマエ等が功績を上げた何て爺さん認めるか?」
2人の貌から血の気が引いた。
「さっきからミューズが部屋に籠って必死で報告書を作成してる、艦内のエネルギーレベル下がってるからAD通信で送ってるな・・・次に爺さんからAD通信来たら、間違い無くオマエ等の捕縛依頼だぞ!」
この2人は自発的なバカ貴族の中では比較的若かった。
唆され釣られて来たのは間違い無いだろう。
「今ならボクの忠告を聞いて、オマエ達は艦隊を退げたと口添えしてやる。まあ爵位剥奪は免れないだろうが死刑は無いだろう・・・だがコレ以上、無謀な突撃を続けるなら、一時間後には間違いなく皇帝から勅命が降る。下手をすれば討伐依頼の・・・あのジジイの性格を考えな!」
「オレは退却・・・いやミューズ殿下の指示に従う」
「オレもだ・・・今後は従うよ・・・・・」
ちっぽけなプライドを守る為にジェリス艦長で無くミューズに従うと言ってるが、彼等の先行きは限りなく暗いモノに成るだろう。
実際には爵位を返上せざるを得ないし資産は大分削り取られ、だが上手く行けば全ては取られ無いだろうし間違い無く命は助かる。
「ジェリス司令、後はお願いします」
そう言って通信を遮断すると、シートの裏からミューズがピョコンと顔を出す。
「本当に良くポンポン嘘が飛び出しますね・・・誰が部屋に籠ってるんですか?」
「あれっ、こんな所に居たのか?てっきり部屋に籠っているかと・・・・・」
我ながら白々しいな♪
「でも良く説得出来ましたね?失礼ですけど歳若いお兄さまに言われたら、逆上して言う事を聞かないと思ってたのですが・・・・・」
「そうでも無いだろ?」
手も無く特攻してバンバン数を減らしてたんだ、この侭なら全滅だってアイツ等が馬鹿でも解ると思うよ。
そう成ったら家族だって爵位返上と全財産没収を掛けられ爆死、路頭に迷って首を括るか身を売るしかない・・・一生家族は無能な当主を呪い続ける。
同じ呪われるなら自分も家族が生存出来て、呪われる恨みも浅い方が良いだろう。
「ジェリス艦長・・・」
「分ってるよ♪」
コイツ等の今後は丸投げしよう。
「取り敢えず布陣を整えるのが先でしょう、奴等が退却して布陣が整ったら一度話し合いましょう」
そう言うとリビングに集まってた仲間が、軽く挨拶をしてから次々と自分の船に戻って行った。
実はジェリス艦隊にはメディアが乗り込んでおり、まあ距離による遅延は有るが今回の戦いは帝国中にリアルタイムで放送されている。
それは皆が周知してるし作戦上支障のある情報は、流石に当然ながら隠されていた。
過去には軍事機密を敵側に流し❝報道の自由❞と宣った馬鹿も出たらしい、当然だが末路は公開死刑だったそうだ。
さて・・・そんな報道を見た自発的な方々の関係者は如何しただろうか?
勿論 黙ってれば身いや家の破滅、素直に黙って受け入れる馬鹿は居ない。
絶縁・断絶をした者も居れば、資産を隠そうとする者、コネを使って家の危機を回避し様とする者や、自分達は関係無いとソッポを向く者もいた。
そして中には・・・キッドを逆恨みする者もいた!
「ガスターは敵の要塞、攻撃するのに何の問題が有る?そして最初から戦線を構築してたジェリスを押し退け乱入したオマエの夫が、最初から計画されてた作戦の決行時に巻き込まれた責任をジェリス達に取らせろと言うのか?」
その場にキッドが居たら❝厚化粧のオバさん❞と言い出すかも知れない、歳の割には厚化粧の老けて見える女に、ファルディウスの皇帝陛下は深々と溜息を吐いた。
キッドに「覚えて置く値打ちの無い」と言い切られた自発的な方々の首領格フェスケーク侯爵、その夫人が夫を謀殺したキッド達を処断せよと迫ったのだ。
当然ながら皇帝陛下の爺さまは聞く耳を持たない、夫人に会ったのも余計な事をし無い様に一応クギを刺して置こうと思っただけだ・・・無駄だとは思うがw
「私の命も得ず勝手に徒党を組んで艦隊を率い、たかが1万余の艦隊で倍以上の艦隊に、しかも艦隊1万隻に匹敵する戦力であるガスターを2基も有する艦隊に、何の算も無く飛び込んだオマエの夫がジェリス達に忙殺されたと訴え出てるのか?」
「しかし・・・」
物凄い気迫を発する爺さまに正面から言えるだけ大したモンだが、言ってる事に何の理も通って無かった。
「死者は何万に上った・・・オマエの夫が率いた軍での損耗だ。それに対し敵にドレだけの損害を与えられた?」
「・・・・・・・」
当然だが何も言い返せない。
「幾ら新型艦で構成されてると言え、高が500の艦隊でジェリスは有効な打撃を敵に与えている。それに引き換えオマエの夫が敵に与えた損害は限り無く零に近い!限り無くな・・・・・・」
夫人は歯を食い縛って黙り込む。
それを皇帝は冷たく見降ろした。
「なかなか面白い冗談だった・・・私を笑わせてくれた事に感謝する。追って沙汰を下す、それまで謹慎していろ!」
項垂れたフェスケーク侯爵夫人は、礼儀を守りながら退出した。
それを見送った皇帝の執務机に秘書が茶を置いた。
「お疲れ様でした」
皇帝の好みはコーヒーも紅茶もブラックだが、
「脳が疲れておる・・・砂糖は大目だ」
秘書が驚いたが、すぐに砂糖の容器を持って来た。
それを紅茶に入れて出し直すと、皇帝は口を付けながら再度 深々と溜息を吐いた。
と同時に文官が部屋に入って来た。
「あの女が何か馬鹿な事を・・・・・」
「そうですね、馬鹿な事をしなければ良いのですが」
皇帝陛下は大袈裟に溜息を吐いた。
この文官を頭が良いので可愛がっては居るが、少々機転が利かず呆れさせてくれる男だ。
頭が良いコトと利口である事、それは必ず一致する訳では無い。
「あの・・・また間違えたでしょうか?」
コイツは救援信号を送って来たジュリアを、キッドが助けに行った時もトンチンカンな事を言ってた・・・・・
「大間違いだ・・・私は「あの女が何か馬鹿な事をしてくれないか」と期待しておる♪お前は頭が良いくせに洞察力が・・・そんな事では・・・・・・」
「私は両親家族から恩師・友人・知人に至るまで、頭が固過ぎるとか融通が利かないと注意されてばかりいました。それを気を付けては居るのですが、やはり生来のモノで中々治らない様です」
そうは言っても有能は奴だ。
無下に扱う積りは無い。
「その他の点で、お前は誰より優秀だ・・・別に気に病む必要はない」
この男は人が1週間以上かける仕事を3日で終わらせる。
「でも私からも一つ・・・最近の陛下はキッド様の影響を受け過ぎじゃ無いですか?」
「何だと!?」
私は少々怒りを滲ませながら言った。
あの悪ガキと一緒にされては堪らない!
「わざと敵に何かをさせて逆にカウンターを狙って叩きのめす・・・キッド様の発想そのモノでは有りませんか?」
「くっ・・・」
言い返せない私はカップを持ち上げる。
磨き上げたプラチナの様な光沢を放ってるが、銀食器や金属では無く磁器である。
「口が過ぎました御容赦を・・・」
そう言って退室する文官に皇帝が口を開く。
「私も一言言わせて貰う・・・そう言う貴様もキッドの影響を受け捲くっておる!私の背後で見られて無いからとガッツポーズなど取り追って!」
文官が焦ってるのでカップを見せ付ける。
奴の行動は映し出されていた!
「それ以外の奴等もだ!隠れて忍び笑いなど漏らしおって・・・不敬罪で裁いてやろうか?」
途端に周囲が慌てて仕事に走るが、こう言う所もトリックスター的なキッドの影響なのだろう。
さて・・・
「アヴァよ・・・ファルディウスの中で整理する必要のある貴族は?」
「小物まで全てと言う訳には行きませんが、フェスケーク侯爵夫人が声を掛ければ雑魚が大分賛同するかと・・・後は貴族では無いですが・・・・・・・」
「ナスティーズ枢機卿とボルワーズ商会か・・・奴等の性格から言って、近い内にキッドと殺り合ってくれるかも知れん」
そう言う皇帝の顔は何故か楽しそうである。
数の上ではマダマダこちらの方が少ないが、それでも距離を取り陣形を整えて対峙する事が出来た。
むしろ各館の艦長や兵士の練度はコチラの方が高い、艦隊戦でも互角以上いやコチラの方が有利に戦う事が出来るだろう!
「って事でノーダー部隊による突入作戦を決行します!」
「何故」×指揮官の人数
いやコチラの方が有利と言ったって艦隊戦すれば少なく無い被害が出るし、それを最小限に収める為に決まってるじゃ無いか?
「ジェリス艦長には陽動で敵に攻撃して貰う。そしたら鹵獲した敵艦に大出力のイオン反応炉エンジンとノーダーを載せて敵に体当たりさせるんだ!」
「ノーダーの乗員死んじゃうでしょ!」
ジェイナス婆ちゃんのツッコミが入る。
「直撃する直前に艦から飛び出すの!当たり前じゃ無い、ボクの事を如何思ってるの?」
「そう言う作戦、オマエなら立てそうだ」
ボクはパイン大尉を睨み付ける。
「で中を潰しながらヴァルマーを捕らえる、宇宙要塞の中ならノーダーが動き回れるんじゃ無いかな?」
「それはそうだが・・・・・」
ジェリス艦長は賛成しがたい雰囲気だ。
「カブリヌスが4機の乗員は、ファルデウスの軍人さんの中からポップさんが選んどいて♪1機はダーグが使うから・・・・・」
「ハ~イ、1機は私が乗る!お父さんが艦隊戦の指揮取るんだし、私が外れても問題無いでしょ!」
ジュリアさんがミント大尉に迫る。
ミント大尉とジェリス艦長が溜息を吐いていた。
「問題はエクセリオン、3機有るけどボク以外乗れないし・・・・・」
「ナニ言ってるんですか?1機は私が乗りますよ♪」
ミューズがニコニコしながら言った。
「却下!」
「明確な理由を!」
少し怖い顔をしてミューズを睨むボクに、ニコニコしながら対峙するミューズ!
「オマエは戦闘訓練を・・・・・」
「そう言われて対ゾンビ戦の時は外されましたが、ノーダーは軍人の皆様と同じ訓練を・・・・・」
「シュミレーション訓練だけだろ?実戦の経験が・・・・・」
「誰でも初戦はあるでしょ?そもそも お兄さまとジュリアさんとダーグさん以外は全員初めて、しかもジュリアさんだって一度しか実戦を・・・・・」
「そもそもオマエのノーダー適性は幾つなんだ?」
「知らなかったんですか?私お兄さまを除けば、この艦隊で一番ノーダー適正値が高いんですよ?」
そう言えばそんな話されたよな?
ボクは背後を振り返ると、ダーグが苦笑いしている。
「キッドの様な非常識なのを除けば最強だよw」
ナンだよソレ!
「私が8200・ジュリア女史5400・キッド36700・・・何の数値か解るよな?」
「ダーグとジュリアさんはA級、ボクはS級のノーダー実戦シュミレーションのスコアだろ?」
まあダーグを除けばジュリアさんを含めて、ノーダーの実戦経験者と言える程の者はいない。
ジュリアさんもノーダーに乗ったってだけの感じで、大して戦果は上げられて居なかった。
「もう一つ付け加えれば私とジュリア女史はカブリヌスのプログラム、キッドはエクセリオン・プログラムでだ・・・そしてミューズはエクセリオン・プログラムのS級でスコア12700だ」
これでは文句の付けようが無い!
「ボク達が二人して出撃したらスターシップは・・・・・」
「本格的な戦闘も有りませんし、ポップさんとアリスで充分でしょ?」
すでに頼んで有るそうだ・・・クッソ~~~ッ、堀を完全に埋め立ててから交渉に付きやがったな!
「言っとくけど・・・」
「お兄さまからは絶対に離れません!お尻が痛いのも恥ずかしいのもイヤですからね、私だって・・・・・」
そう言ってミューズは微笑んだ・・・が・・・・・
早速ミューズは皆の前で、ボクに抱えられオシリを叩かれながら泣き顔を晒す事に成った。
もっとも出撃前だったし、これで本当に出る気は無かったと言ってるのでスカートの上から叩く・・・これで本当に出撃し様としたら皆が見てる前でスカートと下着ひん剥いて、その尻が真っ赤に成るまで叩いてたからな!
「ミューズ君、何か言う事は?」
「ゴメンなさいっ、冗談です口先だけです!この侭で本当に出撃する気は、本当に有りませんでした~~~~~っ!」
スターシップの格納庫でノーダー搭乗員に見守られ、苦笑されながら泣き顔を晒していた。
「全く自分専用機にするのは良いけど、何で明るいピンクに調色する何て考えるんだよ!アニメの世界じゃ無いんだぞ、態々的に成り易い機体にして如何するの?」
そうミューズはエクセリオンの1機を自分専用機にしてピンクに調色したのだ!
当然お仕置きである!
ちなみにボクの言ってる調色とは本来の意味である絵の具とか混ぜて色を作る事じゃ無く、実はノーダーも航宙戦闘機も自在に色を変えられるのだ!
そもそもコーティングされてる塗料が同じで、それに一定の周波数のマイクロウェーブを流すと自在に瞬時に色が変えられる。
イーグルや水鉄砲にも使われてた❝可変ステルス素材❞も延長線上にあり、正式には❝可変調色ステルス素材❞と言うのだ。
取り敢えず今はボクのエクセリオンはダークブルー、カブリヌスはダークグレーに偏色してある。
勿論だが視認性を下げながら仲間の位置を視認する為で、仲間と突入するのにステルスに成ったんじゃ同士討ちし放題だ!
「色の違いや弾一発で死ぬ事だって有るんだから、私だって本当に出撃する気は無かったってば!ホントだよ~~~~~っ!」
まあソレが解ってるなら許してやっても良いかと思うのだが、
「キッド君も許して上げてよ、本当に実行する気は無かったみたいだし・・・・・」
正直に言うと本当に冗談だけだったのか疑わしいのだ!
「鹵獲した敵方の主力巡洋艦を一隻改造した・・・今は月の裏側に隠してあるから、早いトコ移動しよう」
エクセリオンで月の裏側へ移動し、その間ポップさんは選んだ3人の搭乗員と話していた。
「良いか!対艦打撃力の問題が解決できた以上、オマエ達の働き如何によって機動海兵隊設立の可不可が決まるんだ!期待しているぞ!」
ポップさんが熱く語っていた♪
船の操縦はミューズに任せてある。
遠隔操縦で船をコントロールするのはミューズの方が上手い。
月の影から敵の鹵獲艦をに乗り込み、戦闘中の敵艦隊に向かい航行する。
「船首を敵に向けるなよ・・・あくまで敵の艦隊に合流する様な感じで・・・・・」
「うん」
こう言う細やかな操作はミューズの独断場だ。
「よし順調に・・・」
と思った途端に警報が鳴り響く!
「艦体コードの偽装がバレたみたい!敵がコッチに照準・・・・・」
「ミューズッ!」
ボクが怒鳴ると同時にミューズが最大船速に!
ボク達の居た空間に中性子粒子砲の光が交差する。
何発か艦尾に着弾する。
「ケツに当たった!ケツに当たった!」
「早く逃げろ!」
「大丈夫だよ、ミューズは躱してる」
取り合えず初弾は躱せたが、
「次々と打って来るよっ!躱しながらガスターに突っ込むから」
ミューズは船首をガスターに向ける。
「おおっヤレッ、どうせ何時までも躱し切れん!それより問題は・・・」
ボクは隣に居るミューズのエクセリオン、その更に隣のカブリヌスのコクピットを覗いて・・・・・
「大きな声でケツがケツがと騒いだ女性が一人・・・・・・」
「忘れて~~~っ!」
ジュリアさん真っ赤に成ってる。
「お兄さまもジュリアさんを構って遊んで無いで下さい!軌道エレベーターの残骸の影に、ガスターの死角に入ります」
ガスターからの攻撃が軌道エレベーターで遮られるが・・・・・
「流石に死角には・・・」
敵艦隊が防御網を張っていた。
「早さ以外ではコチラにアドヴァンテージは有りません。躱します・・・・・」
「イヤその躱し方は如何かと思うよ・・・・・」
ミューズは艦を軌道エレベーターの中、中空部分に飛び込ませる。
「無茶だろ!」
「死ぬ気かっ?」
「当たる・・・」
皆が肝を冷やしてる♪
「正直ボクも怖い・・・」
「普段 私より過激な機動してるのに?」
「自分で操縦してないモノは駄目なんだ・・・・・」
「絶叫マシーンで悲鳴上げてましたモンね♡」
どうせジェットコースターで泣いちゃいましたよ!
「それにしても何で暴露たんだろ?やっぱり艦列整えに来てるのに、エンジンをバトルウェイトにしてたから・・・・・」
「しかしアイドリングにしてたら、あの攻撃は逃げられ無かったよ?ミューズの判断間違って無いって・・・・・」
そうこう言う内に出口が見えて来た。
「解ってるな?」
「解ってます♪」
軌道エレベーターを飛び出す直前を狙い撃ちにし様としてた敵艦、その狙いを躱す為に急制動を掛けながらエレベーター自体の内部を攻撃する!
ボク達の乗ってる敵の巡洋艦と一緒に、多数の残骸が吐き出されてく・・・・・
「全員騎乗っ!指揮はダーグに・・・」
「何だかんだ言ってキッドが一番指揮も上手いよ!キッドが指揮を取れ」
ダーグに言われる。
「ミューズ解ってるだろうけど、戦場で逆らったら本気でオシオキだからね!」
「解ってますよぅ・・・・・」
お仕置きが怖いミューズが身を縮こませる。
ボクは無重力なのを良い事に、ミューズのエクセリオンまで飛び彼女のオデコにキスをした。
「本当に本気で言ってるからな!危ない事したら一週間は椅子に座れなくしてやる」
「もう・・・お兄さま過保護です」
そう言ってボクの頬にキスを返してくれた。
「あ~お二人さん、戦場なんだから・・・・・」
「既に艦の制御はオートモードだよ」
無粋なダーグに行って自分のエクセリオンに戻るとコクピットシールドを降ろした。
隣でもミューズのエクセリオンがコクピットを閉める。
彼女のエクセリオンは暗めのワインレッドだ。
「全機、聞こえますか?」
全員が親指を立てる。
「全機 戦闘態勢に・・・60秒以内に射出、ガスター表面まで100メートル足らずです」
「ガスターに着床するのは、この船が打ち当たって吹き飛んでからだよ!」
「了解!」×5
ボクとミューズの声に皆が答え、艦体がガスターの表面に迫る。
「全機射出!グッドラック♪」
アサルト・ノーダー全機が艦隊下部から斜め後方に射出された・・・乗って来た艦は加速しながら前進し、ガスター側面の艦橋の様に迫り出した部分に突っ込んだ。
艦首をガスターに突き立てながら・・・その艦首には誘爆防止の為に丈夫なケースに収められた爆剤が、もう捨てちゃいなさいって位に積み込まれていた!
一瞬遅れて大爆発が起こる♪
「態々 敵の内部に食い込まさてから爆破させるなんて、何てエゲツナイ・・・・・」
「こんなの私達リザーダーでも考え付かない・・・・・」
「もちろん人間だって考え付きませんよ!」
「鬼だな?」
「鬼です」
「ア~・・・キミ達、誤射と流れ弾には十分注意する様に!」
途端にジュリアさん達の口が閉まるが、こう言う時一番余計な事を言ってボクを怒らせる娘が何も言って無い事に気が付いた。
「ボクのお仕置きの賜物かな、余計な一言を言わなくなって偉いぞミューズ良い子になった♪」
「イエお兄さまが鬼だ何て今始まった事じゃ無いし、今更ナニを言ってるのかと思って・・・・・」
前言撤回!
ナンも変わって無いなオマエ!
「ミューズ、今晩お仕置き30発ね♪」
「お兄さまが振ったんじゃない!」
「戦闘中にイチャイチャしないの!」
ジュリアさんよりツッコミが入るw




