それでも女に間違えられ誘拐されかかる!
ファーレン星系は本来ブラックホールに飲み込まれる処、そのブラックホールに中性子爆弾を投下して重力を中和した過去が有る。
その為にブラックホールに落ちかけた星系と言う名前に成ったそうだ。
星系最大の中継ステーションであるファーレン第8ステーション・コロニーは、全長5000メートルに及ぶ巨大な脱出船が横付けされ一躍ファーレン星系最大の観光スポットに成って仕舞った。
まあ実際もっと大きな建造物等有るモノの、危機的状況化で脱出用に造られたと言うストーリーがウケてるのだろう。
ステーション・コロニー自体も全長45㎞直径8㎞と大きいが、船単体で全長5㎞のアイスコフィンは十分迫力が有るのだ。
ところでステーション・コロニーの形は、店頭で焼かれているバームクーヘンに似てる気がする。
「圧巻だなァ・・・」
アイスコフィンの中から引き出される艦艇を見て見物人が呟いた。
アイスコフィンは分解され資材として流用される予定だが、敵国製と言え高性能な戦艦エンジンやコールドスリープ用カプセルは、今から商社が大挙して押し掛け購入希望しているそうだ。
「とにかく今は身元を確定させないと・・・・・」
黒塗りのリムジンの様な車で、医療センターに連れていかれメディカルチェックを受ける。
この世界ではタイヤは健在の様だ。
「男子、推定年齢12~3歳。身長144㎝・体重37㎏、傷病なく健康体・・・・・・」
特に異常は見られなかった。
次に連れてかれたのはギルドで、ボクとスターシップを登録され、一応職業が❝船長❞になる。
「こんな子供が・・・いや失礼しました。これでギルドに登録されたキッド様は、ランクEクラスの会員に成りました」
「ではコチラの戦績を加算して下さい。事後依頼に成りますが、ギルドにも手数料を支払いますので・・・」
職員の神経質そうなオジサンが送られて来たデータを照合する。
「畏まりました・・・ではX2857-24宙域における、ヴァイラシアン帝国軍討伐戦・戦艦8重巡4巡洋艦10軽巡洋艦14駆逐艦・小型戦闘艦31の計67隻・・・開拓団および帝国軍人の救出、海賊船掃討戦で大型船4の小型5に懸賞金がついて・・・さらに違法傭兵団掃討戦で戦艦5重巡洋艦8巡洋艦6軽巡洋艦と駆逐艦それと小型攻撃艦21で40・・・計25億クレジットにBクラスに昇格・・・・・失礼ですがキッド様、一生豪遊して暮らせますよ?」
いやソレじゃ生き甲斐って奴が無いでしょう?
ところでこのクレジットと言う通貨は独自通貨を使用する国も有るモノの、この銀河系ほぼ全ての星域で使える所謂ところの仮想とか電子通貨と言うモノだ。
ファルディウス帝国では一般的な標準通貨として扱われ、各種端末や自分の躰にインプラントして手ぶらで買い物も出来る。
ちなみにボクはアリスに頼んで、ヘッドバンドの中に内蔵して貰った。
「ヘッドバンドと言うよりカチューシャの方が合ってるんじゃ無いかな?」
「カチューシャじゃ女の子のアクセサリーみたいで嫌なんだけど!」
買い物に行くと言ったら、何故か付いてきたココさんに言われる。
それどころかラグナレクの女の人達が数人付いて来ている・・・まあ美人のお姉さん方とお出かけは楽しいので悪くは無い。
ところで通貨の話だが、この世界で缶ジュースならぬカプセルジュースが500㏄ので一本100クレジットする。
他にも100クレジットで買える物は、菓子パンやHOC(この世界の車等に使う、水素と酸素を常温で均一に混合され安定させた液体燃料)1ℓに普通の家庭で食べるお肉100g弱だ。
これが300クレジットだとスタンダードのハンバーガーの様な物や酒場のチョットした肴にビールの500㏄缶(何故か発砲するお酒は未だに缶で売られている)に成る。
500だと安くて速い食堂やファーストフードの一番安いランクの食事や落ち着いた喫茶店のお茶一杯!
1000だと映画の一人分やチョッと張り込んだランチ・・・大体の感触だが1クレジット1円で考えて良いかも知れない。
アレッ・・・ところで1円ってドコの通貨単位だ?
「お待ちかね、次はキッド君が行きたがってた衣料品店よ!」
「・・・って、この店はチョッと待ちなさい!」
ジュリア大尉も何故か付いて来たが、何故か店の前で狼狽えてるんだけど何故だろう?
でも止めるジュリアさんも間に合わず、勢いで店の中に入って彼女の慌ててる意味がスグに分かった!
すぐにソノ店から飛び出して、ココさん達のオシリを蹴っ飛ばそうと追い掛け回した!
女性用のブティック、いや下着専門店だったのだ!
「ネェ、冗談じゃない♪」
「機嫌直してよw」
「もうココさん達は信用しません!」
今度はジュリア大尉に案内して貰って、マトモな衣料品店を紹介して貰う。
チェーン店だが品質の割に値段が抑えられており、男性専門と言う訳では無いが上着から下着まで全て揃うそうだ。
「先ずはシャツにズボン・・・アッ、デニムも有る!それにコレってフライトジャケットぽくって良いな♪」
「いやこう言うモノが良いなら、軍装品店に行こう。放出品や民生品も置いてあり、宇宙船乗りも良く愛用しているよ」
「ジュリアお姉さんは、ココお姉さん達より頼りに成るなァ」
さっきの仕返しに嫌味タップリ言ってやると、なんだか凄く悲しそうな顔をした。
虐め過ぎたかな?
「その位で許して上げなさい♪」
「まあ良いでしょう」
ボクは下着売り場で店員さんに声を掛けた。
「もう少し楽な下着が欲しいのですが、トランクスって・・・」
「「「「「「この子の下着はボクサーブリーフかスパッツ、ビキニタイプなら尚良し!」」」」」
「ジュリア大尉・・・前言撤回、当分コイツ等許さない!」
ボクの額には青筋が浮いていたに違いない!
さて会計を済ませるとボクは買った物のパッケージやタグを外し、カーゴボックスに詰めて船に送って貰った・・・余計なゴミを船に持ち込まない為だ。
するとジュリア大尉が薄い青色をした清楚なワンピースを見ていた・・・彼女に良く似合うだろう。
ボクは店員さんにコッソリ彼女に合うサイズの同じモノを、ラッピングして用意して貰った。
「ジュリアさん、買い物の案内をして下さった御礼です」
「エッ!」
嬉しそうな顔をするモノの手を出すのを躊躇った彼女に、断られる前に押し付け持たせて仕舞った。
「あとアウターと靴のお店も教えて下さるんでしょ?お願いしますね・・・」
ボクは彼女の背を押すと、後ろからココさん達のブーイングが飛んで来る。
「ココさん達・・・買い物の手伝いしてくれました?邪魔しかして無いですよね・・・・・」
ジト眼で言うと、さすがに彼女も堪えた顔をしている♪
船に直接戻ると報道関係者に囲まれるので、ボク達は用意された宿舎に戻った。
軍関係者や公安機関が色々使う、セーフハウスの様な物らしい。
さて漸く女物の服から解放されると思って別に包んで貰った服を開ける・・・出て来たのはピチピチサイズのボクサーブリーフだった!
アイツ等・・・いつの間に・・・・・
しかし女物の服を着るよりマシかも知れない。
ボクは溜息を吐きながら全裸に成ると、ボクサーブリーフに脚を通す・・・と背後から邪な気配を感じ振り返った!
そこにはボクの着替えを覗き込む女デバガメが数匹・・・・・
「また・・・オシリを引っ叩かれたいの?」
バタンと扉が閉まる。
だが反対側の扉が開いてジュリア大尉が勢い良く入って来た。
「キッド君、悪いんだがっ!ス・・・スマナイッ!!!」
彼女は慌てて手で顔を隠した・・・が、少し待つと指の間がコッソリと言う感じで緩やかに開いた。
その指の間から彼女の眼を覗き込み、
「ジュリアさんにも、オシリ叩きのオシオキ必要でしょうか?」
と言ったら彼女の指がピッタリと閉じた。
だが彼女は公正な性格らしい。
「ゴメンなさいっ!」
と言うと手で顔を隠したまま、後ろを向いてオシリを突き出した。
勿論、叩く積りは無いけど・・・そんな彼女が可愛くてボクは大笑いしてしまった。
専用の通路を使い、ボク達はアイスコフィン号に戻った。
まだスターシップはアイスコフィンの中に置いてある。
宿舎での事を話すとジェリス艦長は大笑いし、ジュリア大尉を赤面させ恥ずかしがらせる。
その姿を暫く皆で堪能してから、ジェリス艦長は口を開いた。
「本当にアイスコフィンを軍で譲って貰っても良いのかい?結構良い値で売れると思うが・・・・・」
それはそうだ、敵国製と言え大型戦艦のエンジンを多数括り付けて有るのだ。
だが行き成り大金を稼いで仕舞ったので、これ以上ガツガツしても如何かと思う。
「良いですよ、何か使い道が有るんですか?」
「軍本部から申し出が有って、補強して移動ドック船として使いたいみたいだね」
コンソールを叩くスタッフに何かを告げる。
「さて残念だが御別れの時間が迫ってる・・・キミは今すぐ出立の用意を整えて待機するんだ」
なんだ行き成り?
「軍人や貴族の一部がキミの船を力尽くで奪おうと行動を起こしている。キミの身柄もだよ・・・だが私は技術提供を求めるなら未だしも、強盗の片棒を手伝わされる積りは無いんだ。キミの為にコチラでチョッとした計画を立てて見たんだが、聞いて見る気はあるかな?」
そう言いながら宙域図を展開させた。
「仮にキミが私の計画に乗って行動してくれる場合、このままヴァイラシアン帝国方面に向かって貰う。キミが船を奪いにきたファルディウス帝国に、愛想を尽かした事にするんだ」
星域図にはファルディウス・ヴァイラシアン両陣営と、独自に私欲で動きそうな性悪な軍人と貴族の分布が表示された。
「これと同じモノをアリスに渡して、燃料や食料など物資は積み込み済みだ。キミは襲い掛かる帝国軍と貴族を、正当防衛の名の元に沈めてくれれば良い。図々しい事を言うが出来る限り殺さないで欲しい、でも旗艦の艦橋には一発入れてくれると助かる。ちなみにコイツ等がキミから船を奪いに掛かってる奴等だ」
貴族と軍人の顔がリストアップされた。
軍人も貴族も人相が悪い奴が多い。
「流石に帝国軍や帝国貴族を殺すと問題では?」
「大丈夫コイツ等は軍艦に乗った強盗と爵位を持った強盗だ!そしてマスコミに「英雄は一部の貴族と軍人の愚行によりファルディウスを見限った」と情報を流す。さあ世論はドッチに傾くかな?」
ボクは少し考え言った。
「そんな事までしてくれて、アナタ達の立場が悪くなるのでは?それに何の利益も・・・」
「命の恩人に借りを返すのが目的だ・・・が、勿論それだけじゃない。今回動き出した阿呆共は、みな私の政敵なんだ!一匹でも多く減らしたいんだよ」
「黒いな・・・・・」
命の恩人の件で感動したのが勿体無い気がする!
「ファルディウスとヴァイラシアンの国境で必ずジュリアを追い付かせる。そこでジュリアが説得し亡命を思い留まらせると言う筋書きが、私の描いた三文小説なんだが如何かね?」
「そこまで暴れたらファルディウスに居られないんじゃないかな?」
ジェリス艦長はニコッと笑った。
「その前に私が陛下に謁見し、今回の愚行を訴える。帝国で陛下が無罪の❝お墨付き❞を与えれば、貴族も軍人も手を出す事は出来ない。そして何より・・・私は軍人で貴族だが、同時に企業のオーナーでも有るんだ♪」
彼は名刺カードを差し出した。
この世界では渡すのではなく、カードのデータをコピーさせる。
「もし帝国にキミの船のテクノロジーを、少しでも恵んでくれるなら・・・我がバーガンディ・グループを如何か窓口にヨロシク」
「うわっ!真っ黒じゃない」
正直言って可成り呆れてる自分が居る。