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不本意ながら再び厄介ごとを拾う

 ボク達3隻の宇宙船が、何も無い宇宙空間に静止している。

 周囲に天体はおろか漂ってる岩一つない・・・こんな何も無い空間に、まさか最後の遺跡が隠されてるとは信じられなかった。

 宇宙空間では基本その円盤状の星雲の中心に対し、水平にして縦をY軸とし横をX軸として位置を決める。


「この位置からX軸水平にワープし亜空間へ突入、500ベッセル進んで亜空間内に停止すれば・・・・・」


「「「亜空間内で出来る筈無いだろ!」」」


 グリンさんを始め同行してくれてるファルディウス軍人が一斉に声を上げる。


「スターシップは出来るよ?ってよりエルミスでも出来る筈なんだけど・・・・・」


 ボクも設計に携わった最高の船なんだぞ?

 その位出来ない筈が無いじゃないか!


「やらせるんじゃ無いよっ!」


 怒鳴り声が響くと同時に、皆が集まってたハンガーダッシュのブリッジにジェイナス婆ちゃんが乗り込んで来た。

 そう言えばファルディウス軍本体から、高速連絡艇が一隻追い掛けて来たって言ってたな?

 乗ってたの婆ちゃんだったか・・・息を切らせて飛び込んで来たので背中をさすって上げると、ミューズが何か飲物を持って来る。


「そ・・・そりゃ理論上は出来る様に造ったさっ!でも行き成り実験もせずにやらせ様とするんじゃない、こう言うのは無人機でテストしてからに決まってるだろう?」


「そう言うモンなの?」


 ボクが聞いたらジェイナス婆ちゃんは深々と溜息を吐いた。


「やっぱり来てよかったよ・・・オマエさんが滅茶苦茶な事しないか、心配で追い掛けて来たんだ」


「じゃあ最初から同行すれば良かったのに・・・・・」


 婆ちゃんに脇を突かれた。


「ハインツが来る前にと速攻で逃げ出したのオマエだろうが?もっともエルミスタイプが同行してると知らなかったら私も二の足踏んだだろうが、同行してるなら限界を超えた時に逃げ込む先に出来る!本当は正直もうキッドちゃんの操縦するスターシップに乗るの絶対嫌だったんだけど・・・・・」


「じゃあミューズに操縦させ様か?」


 そう言うと更に腋の下をグリグリされる。


「解ってるクセに・・・ミューズの方がオマエさんより荒っぽい!絶対寿命が縮む、間違い無くキッドちゃんより大幅にね」


 ミューズが頬を膨らませる。


「兎に角ファルディウス本国で、今度エルミスタイプの亜空間静止の実験は行われる。その前にエルミスで亜空間静止をする事は止めて置きなさい・・・何か起こった時に責任取れないだろ?」


 そう言われちゃ仕方が無いか・・・・・


「って事でキッドちゃん♪ジェイナス一級技術顧問として、艦隊司令官のアンタに着任の許可を貰いたい」


「誰が艦隊司令官なのさ?そもそもドコに艦隊が有るの!」


 宇宙戦争の時代に100隻未満の艦船の集まり何て、艦体として扱われ無い筈だろ?

 すると周囲の皆が呆れた様な顔をする。


「いや艦隊扱いされなくったて、複数の艦船が行動すれば艦隊と呼ばれるよ?」


「まして皇女様が座上してるんだから、下手したら単艦に燃料補給船が同行しただけで艦隊って呼ばれるかも知れない」


「皇女様が単艦で行動何て公表されたら、狙われて危ないわ見っとも無いわで・・・・・」


「危なくは無いんじゃない?お兄さまが操縦するスターシップより、強い()()なんて聞いた事有る?」


「危ないのはオマエ等を襲う憐れな身の程知らずどもだよ・・・・・」


「そんなの自業自得だ・・・OK、たった3隻のボク達が艦隊呼ばわりされるのは解った・・・だけど何でボクが司令官に任命されるんだ?」


「「「「「逆に効くけどオマエ以外に誰が頭張るんだ?」」」」」


 少なくともボクじゃ無いだろう。




 いつの間にか艦隊司令官などと言われる事に成って仕舞った。

 ジュリアさんは最初から❝その積り❞だったらしい・・・今度こそアノ綺麗なオシリを引っ叩いてやる!


「悪戯心は有ったでしょうが、私達の事を思ってエルミスを付けてくれたんですし許して上げましょうよ・・・・・」


 ミューズが聞いて来たがオカシイな・・・ジュリアさんのオシリ引っ叩くなんて言ったんだから、ボクを抓って来るか叩きに来ると思ってたんだけど?


「Hな気分で叩こうとする時、お兄さまは笑顔に成ります。そうだったらオシリを抓り上げ様と思ったけど・・・お兄さまが引き攣った笑顔浮かべてる時は本当に怒ってる時です。この程度の悪戯で本気でオシオキは、流石にジュリアさんが可哀想ですよ・・・・・」


 十分スケベ心も有ったと思うんだけど?


「それは置いといて・・・如何するんだ?サンティアラ文化研究所ってのは、亜空間の中に静止してるんだろ?」


 パイン大尉が聞いて来る。

 彼女の言う通りなのだが・・・・・


「ワープスピードで航行しながら、サンティアラ文化研究所に飛び込む事は出来ないさ。同時にワープスピードの侭じゃ引っ掛けて牽引するのも不可能だろう?」


「キャッチすると同時にスターシップの強度でもバラバラです」


 アリスが答える・・・マッ、そうだろうね♪


「ここは大人しくスターシップ単艦で亜空間に侵入、その前で停止し中に入ってサンティアラ文化研究所ごと外に出るさ」


「研究所ごと出せるのかい?」


 ジェイナス婆ちゃんが首を傾げる。


「サンティアラ文化研究所何て名前が付いてるけど、研究所自体は全長4980mの大型の航宙艦さ。300m迄の船なら内部の収容出来るらしい・・・アイスコフィンよりギリ小さいんだね?」


 その程度は彼から貰ったデータで解った。


「ドッチかエルミスを同行させる?」


「亜空間で減速出来無いなら意味無いですよ・・・スターシップだけで行きます。ただ人手が要るかも知れないし、海兵隊には付いて来て貰いたいな♪」


 するとヴァッサー大尉が、


「海兵隊を全員連れてって良いのかい?この艦を元敵兵の私達に預けて・・・パイン大尉は早々に降ってたが、私達は・・・・・」


「オルキュロスに捕らわれてた子供を、救いに駆け付けた段階で信用してますよ。それに既にヴァイラシアンは滅んでますし・・・・・」


「なら技術者も要るだろ、私も同行するよ・・・・・」


 ジェイナス婆ちゃんが言うが、


「大丈夫?」


「戦闘行動は無いんだろ?なら大丈夫さ・・・オマエさん達が操縦して戦闘するんなら、絶対乗り込む気は無いけどね」


「そんなにボク達の操縦って荒っぽいかな?」


「そんな事は無いですよね?」


 とミューズ、するとアリスとダーグがボク達の言葉を否定する。


「この世界と先古代文明の記録を全て確認して、キッド様とミューズ様の操縦は危険行為と言うレベル以上の荒っぽさであると断言します!特に・・・この世界の人々より遥かの強靭な肉体を持つ先古代文明人リザーダーのパイロットでも、危険行為として罰則を適用されるレベルのモノです」


「正直・・・かなり我慢していた!最近はもう慣れたから大丈夫だが、最初の内はアリスに酔い止めを支給して貰ってたんだ。機動歩兵乗りでも有ったオレがだぞ?」


 正直二人はかなり我慢していたらしい。

 なんか本気でゴメン・・・・・




 その数十分後・・・ボク達3隻の船は並走しながら航行していた。


「それでは当艦スターシップはワープ航法に移行します・・・皆さんはX1952/2654でお待ち下さい」


「了解・・・サンティーウェン・ハンガーダッシュ両艦は合流地点に向かいます」


 スターシップは緑色の光を放って消滅する。

 そしてジェイナス婆ちゃんとポップさん、それに宇宙海兵隊の皆さんを乗せスターシップは亜空間に突入する。


「亜空間突入と同時に減速を開始します・・・サンティーウェン・ハンガーダッシュも合流地点にワープした模様・・・・・」


 ミューズの声が響く・・・スターシップの相棒として、大分手慣れて来た様に見える。


「レーダーに反応有り・・・金属反応高し・・・艦船の様です?」


 おっ、早速獲物が網に入ったか?


「待って下さい・・・サンティアラ文化研究所にしては大きさが小さいです。アリスお願い・・・・・」


「これは・・・先古代文明時代の艦船ですっ!艦名フルワッファ・ラファイア、550m級の戦艦です」


 そりゃ、お宝だ!


「近くに静止出来るかな・・・・・」


「ギリギリですね・・・・・」


 減速が間に合うギリギリの所だ。


「ダーグは・・・・・」


「勿論回収し役立てて貰って構わない・・・が出来るなら仲間の遺体は荼毘に伏し、大気のある惑星上に埋葬して貰えないか?」


 仲間の遺体を研究材料にはされたく無いだろう。


「埋葬前に多少サンプル等を採取する事には文句を言わないから・・・頼む」


「駄目だと言う奴が居たらボクが黙らせるよ・・・立派なお墓を立てようよ」


 すると彼は明るい貌で言った。


「我等には墓を作ると言う風習は無いんだ・・・たが自然が豊かな場所に埋めて貰えればありがたい」


 アレだけ進んだ文明の人達なのに、イヤだからこそ自然回帰欲求が有るのだろうか?

 マアなら文句を言われる前に、多少はサンプルを頂いて、自然豊かな惑星を見付けて埋葬して仕舞おう。

 文句を言われる前に・・・ネ♪


 本来流れに従って移動し続けなば成らない亜空間内で静止する・・・さっきは冗談で言ったが実際には高圧のエネルギーが充満してる空間、ロープを引っ掛けて牽引するって訳には行かない。

 幸い・・・遺体を収容する手間は掛からない、高圧のエネルギーに晒され燃え尽きて居たからだ。


「戦艦の中に予備動力があるだろうから、それを使って自力でワープアウトさせるとしよう」


 亜空間内ではレプトンでは無理だが、ADなら通常空間と通信出来る。

 パイン大尉達に戻って来て貰い、大型戦艦を通常空間で牽引して貰う。

 だが・・・


「作業用ドローンを向かわせたが、ジェネレーターの触媒が切れている。自力航行は不可能だな・・・・・」


 ポップさんがドローンから送られたデータを見て溜息を吐いていた。


「と言うより戦闘中にボロボロにされた艦で、無理矢理ワープを実行したんだな・・・触媒が突入中に暴走してジェネレーターが亜空間内で停止したんだ」


「再稼動出来なかったんだな・・・そのままこの中で・・・・・」


 ボクは戦艦を牽引出来無いかアリスに言ってみた。

 牽引したまま亜空間から出る事は不可能だが、サンティアラまで引っ張って行く事は可能だと言われる。

 ドローンに連結作業と呼びのバーニアを外部取り付け式に改造して取り付ける様に指示する。


 牽引具はカーボンロープかマニピュレーターアーム、ドチラにしてもソレで引っ張ってっても停止した途端に千切れてしまう。

 何かに当たるまで直進とか、後ろからオカマを掘られるなんて冗談にも成らない。


「作業してる間に・・・・・」


「アレを見に行きたいと言ったら蹴っ飛ばしますよ!亜空間内で余計な船外活動や乗り換えなんて、させるんじゃない・・・・・」


 ポップが残念そうに肩を落とすが、そんなモノ通常空間に出てからやってくれ!

 30分ほどで作業が終わらせ、ボク等は戦艦フルワッファ・ラファイアを牽引したままサンティアラを目指す。


「そろそろ減速を・・・・・」


 一瞬で移動出来るが目的地で止まり切れるか解らない。

 十分余裕を持って心配なら徐行する位で丁度良い。


「レーダーの反応有り!450秒で目視可能・・・・・」


 コクピット内のスクリーンに拡大されたサンティアラ文化研究所が映し出される。

 5000m近い航宙艦と聞いていたが、形状は航宙艦と言うより輸送用の航空機の様にも見える


「取り合えずボクとダーグで様子を見て来る・・・ミューズとアリスはフルワッファ・ラファイアをサンティアラに括りつけて航行出来る様にして置いて♪」


「了解しました♪」


 ボクはミューズの側頭部に手を伸ばし、そのまま引き寄せて唇を奪うと途端にギャラリーが歓声を上げる。

 だがボクはキスで騒ぐ連中に気付かれぬ様、カチューシャ経由でミューズに指令を与えていた。


「この世界にとってサンティアラ自体が手に負えない程のオーバーテクノロジーなら、事故に見せかけた爆破しなくては成らない。その前にリザーダーの卵とデータを避難させなきゃ成らないから、受け入れ準備を頼むね」


「データの受信準備は既にアリスが、卵の受け入れ準備も出来る限り早く整えます」


 ボクは唇を離してから、


「良い子だ♪後はよろしく頼むね」


 そう言ってダーグと一緒に格納庫に向かった。




 ミューズの操縦でスターシップがサンティアラのスペースドックに入って行く。

 ボクとダーグで中の安全確認をし、その後ポップ達が調査する手筈に成っている・・・表向きは!

 拙いモノが出て来たり、サンティアラ自体が不味いモノだったら闇から闇って事に成る。


「そう言えばダーグが戦士でノーダーに乗って戦ってたと聞いたけど、リザーダーのノーダーと比べてエクセリオンの出来は如何なの?」


 着床するまでヒマだからダーグに聞いてみる。


「我々が使ってたモノより遥かに小型で性能が良い、キッドの出会った❝彼❞の英知は恐ろしいほど高いね・・・だが何故こんなに火力が低過ぎるのだろう?」


 そう彼等❝先古代文明人❞改め❝リザーダー❞の戦争では、ノーダー即ち❝機動歩行戦闘機❞(リザーダーの言語を直訳)は一般的に見られた戦闘機の一種だった。

 そしてヒュンケルズで戦わされたダーグの同僚達がボク等の曰く(特殊部隊の精鋭だったが)歩兵だったのに対し、ダーグは航空または航宙戦闘機や機動歩行戦闘機(戦闘用ノーダー)に搭乗して戦う❝機動兵❞だった。

 つまり彼はボクよりノーダーの専門家だったのだ。


「流石に一発で戦艦を貫通迄は出来なかったが艦体に取り付いたらブリッジやエンジンは、数発で届く程度の火力は有してた筈だ。だが・・・これ程の機動性・俊敏性を持ちながら、エクセリオンは外部から敵艦に有効な打撃が与えられない・・・武装に根本的な問題が有るんだ!」


 まあそうだろうね・・・ダーグの生まれた時代でも主戦場が宇宙に成り、そしてノーダーが一般的な兵器だったなら、艦体に有効な打撃力を持って無いなんて話は異常だろう。


「何かが欠けてるんだ・・・ダーグは専門家だろう?」


「そうは言ってもな・・・例えばキッドの生まれた地球でも、戦闘機乗が戦闘機造れる訳じゃ無いだろ?我々の文明は専門分野に特化・細分化して発展し、正直専門以外の事は全く解らないんだ。だから構造や素材については全く解らない・・・・・」


 地球だと戦闘機乗りは戦闘機を作れなくても、機体の材質や燃料の配合くらいは知ってるらしい。

 しかし先古代文明では専門外の事に全く関わらないらしい。


「そう言うモノだと思ってたからな・・・不具合や改良点は専門家に相談するし、記録や映像を持ち帰れば分析して生かして貰える。機体は整備関係者がキッチリやるから、オマエ等は戦闘に集中しろと言われるからね」


「ソレでも何処が間違えてるのかヒント位欲しいんだよね・・・・・」


 着床したので内部に侵入する前に外部に有線端末を引っ張って接続し、内部の水や空気などが汚染されて無いか確認する。

 そしてダーグは機関部の確認を、ボクは中に入ってAIとの接触を試みようとする。

 するとアリスが通信してきた・・・ミューズの周りにはファルディウス軍で聞かれたくない事かな?


「問題が発生しました」


 イヤだ聴きたく無いな!


「中が細菌兵器か何かに汚染されてるとか?」


「一切汚染されてません。素の侭で入れます」


「内部情報が閲覧出来なかったのか?それで状況が解らないとか・・・・・」


「それどころかメインAIに直接繋がって・・・と言うより擬人化されてるAIから、向こうから判断しコチラに接触を求めて来ました♪一応確認出来たので先に報告を・・・コチラの懸念していたオーバーテクノロジー関連はサンティアラ自体には有りません」


「じゃあ・・・一体何が問題なんだ?」


「それは・・・」


 何か思いっ切り言い難そうだな?


「中に入って見た方が早いかと・・・・・」


 つまり安全だと言う事なのか?




「この❝すべすべエイリアン❞めっ、何しに来たんだ!」


 そう言われて銃らしき物を突き付けてるのは、身長がボクの腰位の高さしか無いリザーダーの子供達数人だ。

 ちなみに言語はカチューシャに内蔵されている翻訳ソフトで変換されている。

 地球の翻訳機と違い発言者の感情による言葉のセレクトまで完璧だ。


「仲間はボクが守る!オマエ等はヘブシィッ!!!」


 後ろにいる明らかに少女なリザーダーに、銃らしき物で打ん殴られて沈黙した。

 ところで彼等の武器は銃と槍が合体した様な代物で、ひょっとしたらドチラにも使えるのかも知れない。


「敵か如何かも解らない方を行き成り攻撃するなんて野蛮人がやる事よ!誇り高きリザーダー(翻訳機能で変換済み)なら、先ず会話から始めなさい」


 如何見ても少女(コチラ)の方が身体が小さく歳下に見えるが、何となくお姉さんっぽく感じるのは精神年齢の差だろうか?


「失礼致しました。私は独立国家サンティアラの住人でアーシャ0006です」


 つまり6人目のアーシャさんか?


「キッドだよ♪」


 ボクは笑顔で手を出し握手を求めたが、彼女は首を捻っている。

 握手と言う習慣が無いらしい・・・その辺ダーグに聞いて置くべきだった。


「失礼ですがキッドさんは侵略目的でいらっしゃたのでしょうか?」


「誰も居ないなら貰おうとは思ったけど、所有者が居るなら手を出す積りは無いよ♪それより大人は居ないのかな?責任者と話をしたいんだけど・・・・・」


 すると彼等は一様に顔を曇らせた。


「一応入港時に管理AIに許可貰った筈なんだけど・・・・・」


「その管理AIがサンティアラの責任者と言えるでしょう。ただ・・・・・」


 彼等の内一部の少年達が泣きそうに成っている。


「おいキッド何してる、一応機関部に異常はっ?!」


 子供達を見てダーグが言葉に詰まる。

 だが子供達もダーグを見て驚きの声を上げた。


「王種だっ!」


「英雄だっ!」


 子供達が一斉にダーグに群がった。


「英雄が帰って来たんだ!」


「外の国の騒乱は収まったのですか?」


 子供たちは口々に聞いて来る。




 外でリザーダー人類は滅んだと言っても、子供達はさして悲しそうな貌をしなかった。

 外と接触した事が無いので当然なのかも・・・何か緊急事態が発生したそうで、彼等は行き成りタマゴから孵されて、しかもマトモな情操教育も受けて無かったかららしい。

 ボク達は管理AIに話を聞きに行く・・・彼から詳しい話を聞かなくては始まらない。


「ダーグみたいにヨロイトカゲっぽいのが王種なの?」


「何かムカつく言われ方だが・・・まあその通りだ。リザーダーにも色々種族が有り、我ら王種は他の種に比べて身体が強靭、その為に戦闘職に就く事が多いんだ。だから英雄と呼ばれる軍人が生まれる事が比較的多いんだが、王種に生まれたからって英雄に成れるって訳じゃ無い。元々我等リザーダーの君主も王種で国家運営を・・・・・」


 そんな事を話しながら指令室とやらに向かった。

 指令室と言うのがサンティアラのブリッジや操舵室らしく、そこに管理AIのメイン端末が有るらしい。


「考えたら言語自体を強制的に変換させなくても、ボクのカチューシャみたく翻訳機能を付与させれば良いんだから強制的に改造する必要無かったよな・・・・・」


「確かにそうだよな、マアやっちまったモンは仕方がない・・・着いたぞ」


 やはり同じリザーダー、勝手知ったる同じ文化の船で構造は解るらしい。

 彼の先導で着いた指令室に入った。


「さてと・・・管理AIさんはドチラでしょうか?」


「本体は床に埋め込まれているが、この部屋ならドコに居ても話が出来るぞ」


 スピーカーから声がした。


「ボク達は・・・・・」


「簡単な自己紹介だけで良いよ。詳しい事はキミの所のアリスから聞いておる・・・この船を接収するのは構わんが、子供達とタマゴの救出とその後の生活は面倒見て貰えるんだろうね?」


 何か老人臭い話し方するAIだな?


「タマゴと子供は間違い無く面倒見るし、この船も持ち主が要る以上は接収させないよ」


「いや子供達の面倒見てくれるなら、むしろ代金として接収して貰って構わない。子供達の手に余るし、ここで生活させるには狭過ぎる・・・・・」


 随分と人間臭いな・・・・・


「ねェ・・・つかぬ事を聞くけど・・・・・」


「何を言いたいのか解るけど私は有機AIに構築された疑似人格さ・・・何代も代を重ねて人間臭くなっただけのね。ただ・・・もう崩壊寸前、AIの有機成分が限界なんだよ」


「それで子供達を孵化させ、代替わりさせながら運営させようと?」


「そう言う事さ・・・ただ運営じゃ無く通常空間への浮上をね。流石にサンティアラが停止したら、

タマゴ達の管理も出来ないからね」


「オジちゃん死んじゃうの?」


 一緒に来た子供達が言った。


「と言うより・・・もうとっくに限界、6割がたAIが崩壊してるのさw機械の台詞じゃ無いが気合で持たせて来た・・・・・」


「アリスッ!予備用AIを・・・・・」


「無駄だ・・・そんな事にリソースを使う位なら、その分・・・・・」


「オジちゃん如何したの?」


「起きてよ・・・お話してよ・・・・・」


「何だろ・・・この寂しい気持ち・・・・・」


 管理AIの言葉が途切れ沈黙が流れる。


「オイッ!アリス大至急・・・・・」


「無駄です・・・すでにAIは機能停止しました。人間で言うなら事切れたと言う状態です。ですが信じられません・・・確かに6割がた有機AIが崩壊してる!普通2割が崩壊したら、有機AIは起動不可能です」


「本当に気合で持たせてたんだ・・・信じられないわ?」


 アリスとミューズも信じられ無い様だ。


「なら可能性は有るかも知れないだろ?大至急スターシップの予備用AIを持って来るんだ!」


 ボクは本気で怒鳴る。




「まさか生き返らされるとは思わなかった・・・正直恥ずかしい」


「その気持ちは解る・・・実は私も同じ様な状況で助けられたんだ」


 サンティアラの管理AIとダーグが意気投合していた。


「しかし良く助けられましたね・・・普通、有機AIは2割破損した段階で起動不可能です。6割も破損して人格をも維持出来たとは・・・・・」


 アリスも呆れていた。

 現在サンティアラは整備しながら分解したフルワッファ・ラファイアを内部に収容し、そして周囲の空間に漂ってるタマゴの詰まったコンテナを回収していた。


 前に「亜空間では時間が流れて無い」と言ったけど、実際にはサンティアラやワープ中の艦船の中では時間は普通に流れている。

 それは対処する為の強力なシールドを張っていて、その中で亜空間の凄まじい圧力から守りながら同時に内部で時間も流れている様にしている。

 そうじゃ無いならボク達だって亜空間に入った段階で停止してしまう・・・永遠にね!


 だからタマゴは圧力に耐えられる強靭なコンテナに詰められ、そのままシールドを張らずに亜空間内に放置されていた。

 そうすれば時間が勝手に止まってくれるのだ。

 その内一つを回収し卵から孵らされたのが、この10人に成る訳だ。


「サンティアラの管理AIさんじゃ呼び難いから、アンタは今日からサンティーさんで良いかな?」


「構いませんが、私はコレから一体如何したら良いのでしょう?」


 ボクはミューズとアリスに自分の資産を計算させていた。


「星系一つ入手して、そこを新たなリザーダーの故郷にするってのは如何だろう?サンティーさんには、そこで初代大統領に就任して貰い運営を・・・・・」


「帝国内に別の国を作る積りですか?流石に千年後・万年後の事を考えたら、国内に別の国家作る何て許可出来ませんよ?ただ自治権くらいなら妥協させられるかも知れませんが、別の国を作るならファルデウス領からは外にお願い致しますね」


 ミューズに釘を刺される。

 流石に国内に別国家を立てられるのは危なく感じるらしい。

 まあ新国家は作れなくても、サンティーさんに引き続き管理人して貰った方が子供達も安心じゃ無いかな?


「それにお兄さまの資産なら、新しく新太陽系創造事業でも起こした方が早いでしょう。ただ・・・そう成らない方に金貨一枚かけても良いですね」


「何で?」


 ボクが疑問に思っているとミューズは子供のリザーダーを膝に抱き、頭を撫でながら答える。


「絶滅したと思われてたリザーダーが生き残り、その文化もサンティーさんから教授して貰える。お爺さまが黙っていると思いますか?彼等の新しい故郷もバックアップも全部お爺さまが用意すると思う・・・学者達と一緒に涎を垂らしながらね」


 そうかも知れないな。

 そう考えるボクの膝上にも、いや背中や頭の上にまでリザーダーの子供達に集られてる。

 サンティーを助けた事で懐かれて仕舞ったのだ。


「危険なオーバーテクノロジーは見付らなかったし、これでキッドの肩の荷も下りただろう・・・一応スターシップにもコピーしたが、自然史や医療関係・・・他にもアリスにとって公開しない方が良いモノ見付かった?」


 子供達をあやしながらタブレット型端末で情報をチェックする。


「サンティーさんも協力して貰い、人体強化改造に流用出来そうなデータは消去しました。他にも危なそうなモノは幾つか、ワイズマンズ・ライブラリーに封印します」


「皇帝陛下の御墨付きなんだ♪遠慮無く封印しよう・・・他にも蔵書(データ)やサンプルで危険性のあるモノは?」


「サンティアラには殆ど武装らしいモノは無いですし、種子や標本からも危険性のあるモノは見付りません」


 コレなら思ったより早く帰れそうかな?


「無理です!」


 サイデスカ・・・・・


「先ずサンティアラには危険性のあるモノは有りませんでしたが、フルワッファ・ラファイアの武装は一部未公開してるテクノロジーが応用されてます。現在取り外してスターシップに移動しています」


「皆にバレて無い?」


 アリスが声を潜めて行った。


「皆サンティアラに夢中で気が付いてません。フルワッファ・ラファイアもサンティアラ内に持ち込むため小さくしてるだけだと思ってますから、このまま分解してスターシップに搬入しちゃいましょう♪」


「それでスターシップを強化し様と?」


「出来ません・・・スターシップの方が強力です」


 アラ・・・


「兎に角スターシップへの危険物搬入と分解して資材化、そしてサンティアラの整備にタマゴの回収で72時間ほどですかね?一応ですが予定では75時間以内に浮上を開始する予定です」


「了解♪やっぱり早く帰れそうじゃないか?」


「そうは行きません・・・データベースをチェックしてたのですが・・・・・」


 アリスが言い淀む。


「その中で一つだけ見逃せない項目が・・・・・いつぞやのゾンビ化ウイルス・・・まだ残っているかも知れません」


 サンティアラのデータベースに、リザーダーの新聞の様なモノが残っていた。

 それをチェックしたところ自称A級市民達が、戦艦に対して使用して中をゾンビで蔓延させたらしい。

 無事な人間を脱出させた後、艦長は艦をワープさせながら・・・亜空間内で自爆させたそうだ。


「その艦の目撃情報が記事に乗ってました・・・爆発物が不十分だったのか、それとも爆破自体失敗したのか・・・・・」


「「「ハァ・・・」」」


 ボク達3人は深々と溜息を吐いた。


「しかも場所は亜空間内では無く、通常空間で目撃されてます。先に片付けに行くでしょ、キッドさんの性格から言って・・・・・」


「んな物騒なモンは即処分だ!万が一知り合いに被害が及んだら・・・・・」


「ゾンビ化したジュリアさん何て見たく無いです」


 確かに美人でも、いや美人だからこそゾンビに何か成って欲しく無い!

 そう言うフェチが有るのかも知れないが、ボクは美人でもゾンビはイヤだ!


「お・・・お兄さま、そこは美人を強調しなくても・・・身内や知り合いがゾンビに成ったら心が痛むでしょう?」


「いや別に男連中や不細工がゾンビ化しても、見苦しく無い様に即焼却っ、冗談ですっ!冗談ですってばっ!!ホント冗談だから、上腕の内側を抓り上げないでェ~~~ッ!!!」


 クソッ・・・最近ミューズの奴、間違いなく強くなって来てるぞ!


「お兄ちゃん、ここ痛いの?」


「クスクス・・・」


「コラッ、オマエ達もボクで遊ぶんじゃないっ!抓るんじゃ無い!!痛いったら怒るぞ!!!」


 チビトカゲども迄が悪戯し始める。


「この悪戯坊主どもめっ!」


 今度はボクの方が彼等を擽りだす。

 正直リザーダーの子供達は、ファンタジー創作物のリザードマンの様に怖ろしい外見はしていない。

 特に子供は小柄な事も有り、大分可愛い感じがした。


「兎に角サンティアラを整備して通常空間に浮上させよう」


「じゃあソレまで私達は・・・・・」


 ボクはリザーダーの子供達に身体中に纏わり付かれている。


「子供の相手な・・・・・」


 子供と遊ぶのは結構好きだった。

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