再び先古代文明と遭遇する!
誤魔化し様が無く成り、ボク達の目的地が敵の集結地点である事を白状する事に成った。
しかしヴァイラシアンの皇帝が軍を集結させてる所が、先古代文明の宙軍基地遺跡何て誰が思う?
偶然にも程が有る、この世界の神か作者が居たら打ん殴るから引っ張って来い!
「そんなに可笑しい事じゃ無いと思いますよ?」
ミューズが呆れた様に言った。
「何でさ・・・」
「戦争に成った時に敵の攻撃から身を隠せそうで、各方面に即座に出向く事が可能で、補給も行き来も容易い場所・・・条件に合う場所を検討すれば限られます。大気や水の有る惑星上の地形は数年で激変しますが、それ等が希薄な惑星や宇宙空間では数万年程度では早々変わらないですからね♪先古代文明人もヴァイラシアン帝国も、基地に適した場所を見付けただけですよ」
そんなモノなのか?
ただ最近ミューズの知識は先古代文明のタブレットとワイズマンズ・ライブラリーと言う教科書、それにアリスと言う教師を得て鰻登りだった。
すでにボクより頭が良いかも知れない。
「お兄さまは趣味にウェイトを置き過ぎですから・・・・・」
クスクス笑いながら言い放ったミューズのオシリを軽く叩いた。
「ヤンッ!お兄さまのHっ♪」とか言いながらオシリを抑えるミューズは、正に価格など付けられ無い可愛らしさだ♪
「デレデレするな、見っとも無い!」
皇帝が面白くも無さそうに呟く。
「で如何するんだ・・・・・」
「ぶっ潰しますよ、再現不能な位に!ヒュンケルズ宇宙軍基地ってのは、細菌兵器や惑星破壊兵器の研究所なんだ・・・ファルディウス帝国に必要とか言い出さないですよね?」
そんな事言い出したら、この国ともお別れだが・・・
「我国を見くびるな!そんなモン無くても我が国は運営出来る・・・だが万が一に備え、情報だけは確保しオマエが管理しろ・・・・・」
やっぱりボクの見込んだ爺様だ♪
「どうせバーベル星系/第5惑星のポワント宙軍基地や、惑星シィーゲルのワイズマン・ライブラリーを破壊したのはオマエだろう?」
おや暴露てたか、まあ仕方ないよね。
向うは海千山千の皇帝陛下だ。
「問題は我が国の学者共も「遺跡を残すべき」と声高に唱える者が居る事だ・・・オマエやミューズに非難が集中する事は避けたい、遺跡である事が判明する前に消滅させ後は惚けろ」
「了解」
「既にヴァイラシアン側は遺跡である事に気付いて発掘を始めてます・・・あの地を拠点にしたのは、それも有るかも知れません」
そりゃ困ったな・・・情報を抜かなくても良いなら、外からレールガン乱射出来るんだけど♪
ボクは皇帝陛下を見るが、
「細菌兵器や惑星破壊兵器の研究所なんじゃろ・・・他の遺跡から出て来たり、後世バカ者が開発したりする可能性は大いにある。情報だけはキッチリ回収して貰いたい」
まあ正論だよね♪
「さて如何対処するべきかな・・・・・」
ボクの頭が痛く成った。
で結局はミューズには猛反対されたけど、また侵入するしか無いって話に成った。
ただ今回は艦載機やロボットですら、目立って近付けないって状況だ。
「臨戦態勢でピリピリしてますから、流石に近付いたら見付って撃ち落とされるでしょう。さて如何やって接近しましょうか?」
ヒュンケルズは惑星に成り切って無い楕円球の岩石の塊で、片面が大きなクレーター状に抉れており、そこが発掘されると同時に軍事基地に成っている。
ただ質量に対する密度が小さ過ぎ、オマケに満足に自転もして無いので重力と言うモノが希薄である。
「軍事基地なら強力で正確なレーダーが張り巡らされてるでしょうね・・・キッド君、単体で潜入って流石に無茶じゃ・・・・・」
「何人も連れてって目立つよりマシだよ」
こりゃホントに最初に言った時、忍び込もうと何て思わなくて良かったかも知れない。
ミューズの頭を撫で撫でする♪
「お兄さま?」
行き成り頭撫でられて不審がってる。
ボクの映して来た映像にも、大掛かりなレーダーや探知施設が映っている。
「ニュートリノ・レーダーね・・・大きな移動物なら一発で探知される」
「大きなって言うと?」
「ノーダーや航宙機はアウトだね!それに併設されてる熱源トレーサー、やはりノーダーや航宙機なら見付かるよ」
ジェイナス婆ちゃんに注意される。
プラズマジェネレーターの航宙機なら1ベッセル以下迄は近寄れるが、さすがにヒュンケルズには上陸出来そうも無い。
「せめて航宙機より小さく、外部には全く熱を発しない乗り物は・・・・・」
「そんなモノ有ってたまるか!」
ジェリス艦長の後頭部をピスタ艦長が叩く!
「有るよ♪」
ボクが言うと周囲の視線が集まる。
その眼は猜疑心に彩られている。
「いや本当に有るんだよ♪2時間も有れば作れるけど・・・・・」
何故か皆が嫌そうな貌をしてる。
「本当にコレで行くのか?!」
「玩具じゃ無いか!」
「正気の沙汰とは思えん!」
五月蝿いなあ・・・これだって軍事転用も実用動力としても、理論的には転用可能なんだよ?
この世界にも有るだろうって思ってたけど、やっぱり子供の玩具的扱いの様だな。
まあ流石にウォーターロケットで、敵地に乗り込むとは思って無かったけどね・・・ペットボトルロケットって言った方が通りが良いかな?
「アイアンイーグルで何とか100㎞以内まで近付いて・・・その後ボクを切り離し、強行偵察の振りして大騒ぎして貰う。その間にボクは極力離れてヒュンケルズに上陸、その後・・・何とか生きてる端末を探す・・・で良いかな?」
「「「無謀です(よっ)!」」」
まあ確かに無謀かも知れないが、勝算は十分以上に有ると思う。
アイアンイーグルのステルスモードと違い、ウォーターロケットには可視光完全吸収素材で塗装して有る。
高圧縮した水を気体化させ噴出しながら動力と成す・・・こう考えれば機構的にはウォーターロケットも、普通のロケットと同じなんだが。
ウォーターロケット・・・長いな・・・良し今からオマエの名前は❝水鉄砲❞だ!
「ブレーキも姿勢制御も放出する水蒸気で行う・・・効率が悪過ぎません?」
「気密化した室内で低温でプラズマを通し、電気分解で気体化させるんだ♪熱で水蒸気化させると敵に感知されるし、宇宙空間で水蒸気バラ撒けば飛行機雲みたいに跡が残るけど、プラズマで電気分解すれば水素と酸素、水ほど目立たない」
ボクは宇宙用の戦闘服に着替える・・・先古代文明の技術で作られたソレは、アイアンイーグルのコーティングと同じ可変ステルス素材、暗いトコロでは完全に光吸収し先ず敵に見付から無いだろう。
逆に基地とか施設に入った時に黒一色では逆に目立つ、その為ゲームやアニメの戦闘服やメカの様に色や模様が変わって周囲に溶け込む事も可能だ。
「スターシップの装備は?」
「ビーム・レーザー砲台は完成し設置中です。レーザー砲台なら、もう2台建設可能ですが、時間的余裕は無いでしょう」
ミューズとアリスが身を守れれば十分さ、それにイザと言う時ボクを掻っ攫いに来て貰えればね♪
「ヒュンケルズ宙軍基地のデータ、整理が終わりました」
ボクがアイアンイーグルのスキャナーで撮影して来た情報だ。
鶏卵を若干長くした様な岩石の塊が移される・・・ヒュンケルズ宙軍基地だ。
「シィーゲルより若干小さい程度の、未完天体なのね・・・・・」
ジュリアさんが呟く。
この世界には地球の日本の様に惑星・準惑星と言うカテゴライズは無く、同程度の大きさで自らの重力で球形を保てたのが全て惑星、それ以外を小惑星と言う。
では惑星並みの大きさを持ちながら、球形を保てなかった天体は・・・それを未完天体と呼ぶそうだ。
「熱反応を見るとクレーターの外縁部にジェネレーターが集中し、内部にエネルギーを供給しています。つまり軍事施設や発掘現場は・・・・・」
「金属反応は・・・アレ?」
この世界では艦船の構造材や建築資材、その他諸々の金属資材をメタリウムと呼んでいるが、その反応がヤケに偏ってる。
先程も言った通りヒュンケルズ宙軍基地のある未完天体は少し長めの鶏卵状で、側面に直系の半分くらい深さが直系の1割程度のクレーターに成っている。
その中にヴァイラシアンの宙軍基地や発掘現場が有るのだが、メタリウム反応はクレーターと反対側に集中している。
「そしてメタリウム反応の濃い反対側には、エネルギー・熱源・動体・・・共に反応無し・・・・・」
「と・・・言う事は?」
・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
「ぶわはっはっはっはっ・・・!」
「ゲラゲラゲラ・・・」
「ブフッ、フフフ・・・・・」
「アハハハハ・・・・・」
「キャハッ、ヤダァ~~~ッ!」
皆が一斉に大笑いし始めた。
まさに大爆笑、完全に全員が笑いを止められない。
そして暫く笑い続けてもマダ笑い声が止まらず、笑いながら皇帝陛下が泣き叫んだ!
「傑作だっ!あの馬鹿ども、遺跡と反対側を発掘しておる」
全くその通りだった!
そうしてボクの潜入は全員賛成の元、決行する事に成った。
敵は惑星並みの規模を持つ、天体の反対側に駐留してるのだ!
下手したら敵影一つ拝まずに、ミッションが終了するかも知れない。
「天体を貫く様に細い一本線のメタリウム反応が有ります・・・推測ですが天体を貫く様な通路が有って、反対側にも小規模な基地か見張り用の施設が有ったのだと思います。それを見付けて遺跡と思い発掘し始めたのかと・・・・・」
「馬鹿な奴等じゃ・・・」
「お言葉ですけど・・・お爺さま達だって同じ状況に成れば、同じ間違いを犯したんじゃ無いでしょうか?アイアンイーグルに装備されてる様な高性能のメタリウム・スキャナー、お兄さまが持ってたからヒュンケルズの全貌を探れただけなんですから・・・・・」
敵を嘲笑う皇帝達にミューズがツッコミを入れると、一瞬で全員が沈黙した。
だがジュリアさんだけが違い、
「そんな事有りませんよ♪遺跡が見付かったなら、その天体は徹底的に調査されますもの・・・そうですよね?」
とジュリアさんが言うと皇帝達が尻馬に乗った。
「勿論そうじゃとも♪」
「当然ですよ!」
「当たり前じゃ無いですか!」
「じゃあナンでオマエ等、一瞬沈黙した?」
「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」
「イヤ先古代文明の遺跡には調査マニュアルが有って、発見した天体の徹底調査は明記されてるんだよ?」
ジェリス艦長も助け舟を出す。
この親子だけがヴァイラシアンを嘲笑う権利が有ると思うなw
「つまりミューズが言いたいのは、先古代文明の遺跡見付けて冷静に行動出来たかと言いたいんですよ。ヴァイラシアンと同じく浮かれてマニュアルを吹っ飛ばし、取り敢えず掘ってみようって成ら無かったと断言出来ますか?」
全員が沈黙を持って答える。
「お爺さまも皆さまも・・・為政者・官僚として、もう少し冷静に行動する習慣を・・・・・」
「オマエが言うなよ!でも・・・その様子じゃ多分7割方の確率で、ヴァイラシアンと同じ行動取ったよね?」
「お願いだから・・・その辺で許して上げて・・・・・」
ミューズとボクの追い打ちをジュリアさんが止める。
真っ暗な宇宙空間で、通信も使えずアイアンイーグルの下部に捕まっている。
正確には下部に設置された水鉄砲に・・・水鉄砲はミサイルかロケットにハンドルを付けた様な形状をしていた。
「そう言えば水鉄砲に、何か目印やビーコンは付いてるの?下手に天体上にナンか放置したら、目視で見付けるのは不可能に成るんじゃ無い?」
有線通信でジュリアさんに注意される。
完全に光を吸収する水鉄砲は、岩場に置かれたら日が当たってても見付けられない。
「このカチューシャが覚えてくれてるから大丈夫さ♪最悪の場合は水鉄砲じゃ無く、敵艦でも乗っ取って逃げる事にするよ」
「冗談でもやらないでね!」
少し怖い声で言われる。
「そう言えば子供の玩具じゃあるまいし、何で水鉄砲なの?」
「水の力で鉄砲玉みたく飛んでくから・・・別に深い意味は無いよ」
ボクはアイアンイーグルの胴体下パイロン、そこに下げられた水鉄砲に跨りながら答える。
一応シートとハンドルは作ったけどギャグマンガの表現っぽい「ロケットやミサイルに跨って飛んで行く」って感じの状態だった。
アイアンイーグル・・・少し長いから今後はイーグルと呼ぼう♪
「ヒュンケルズまで500㎞切ったわ・・・全速力でツッコむから、適当な所で切り離してね♡」
そう言うとジュリアさんが加速させる・・・本当は機構が違うけど、アフターバーナー的なモノだ。
「ヒュンケルズまで400㎞、敵の防衛艦隊が動き始めたわよ!」
イーグルは更に加速する。
「300㎞、マダマダ目視出来る範囲に敵は居ないよ」
もう少し粘るかな?
「200㎞・・・150㎞・・・ソロソロ見付っちゃうから切り離して♪」
「了解、それじゃママ行って来ます♪」
「誰がママよ!気を付けて言って来るのよ♪」
パイロンから切り離された水鉄砲は未完天体に向かった。
見付かる心配は全く無かった。
ボクを切り離した後、アノお嬢様は艦隊相手に空戦を始めて仕舞ったのだ。
単騎で・・・何を考えているんだろう?
「あの姉ちゃん、意外とバーサーカー気質有るんじゃ無いか?」
とんだバトルジャンキーだ・・・あれじゃ強行偵察には見えない。
強行偵察が凶行いや狂行偵察に成ってイヤ最早偵察とは言えず、翼下パイロンのミサイルを撃ち尽くすまで帰りそうに無い。
まあコッチにとっては好都合、ジュリアさんの悪ノリに裏が有ると考えるほどヴァイラシアンの上層部は頭が良いとは思えない。
そう実際彼女のはノリが良いだけで裏なんか無い。
ヒュンケルズには大気が無く、跳ねれば数十m飛び上がれる様な極弱い重力しか無かった。
岩陰に水鉄砲を隠すとボクは宙軍基地の入り口を探すが流石に移動は徒歩のみ、移動に車など動力を使ったら流石に敵に見付るだろう。
ただ歩いて行ける程度には入り口近くに着陸出来た筈だが。
イーグルの下に吊るされてる時からワイヤード以外の通信を切って有るから、現在はアリス抜きでカチューシャの中のAIしかサポートが無い状態だ。
カチューシャの指示に従って2~30メートル歩くと、ボクの視界に予測されたゲートの入り口付近が色付きで表示される。
「いくら弱いと言っても重力は有る、ならば塵も積もれば埋もれもするから、間違っても地面に水平には作らないで多少は高い場所の垂直面にゲートを作る」
指定範囲に岩場は一つしか無く、その陰に成っている面は切り立っている。
「アソコかな?」
機動宇宙服にはジャンプ用のスラスターも付いてるが、見付からない様に使用は控えていた。
程なく岩場に着くと非常に見破り抜くく岩場にカモフラージュされたスロープに成っていて、先はゲートに成っている。
近寄って端末を捜しワイヤードでカチューシャと直結する・・・動力が切れてたが構造は解ったので、緊急用の装置からロックを外し手動で開き中に侵入した。
勿論中に入ったらゲートは閉じておく。
「環境には悪そうだな・・・何万年じゃ済まない時間が過ぎてるのに、殆ど劣化が見られない。最深部まではどの位有るんだ?」
カチューシャのAIが計算する。
「コントロールルームまで徒歩なら15分、最深部の動力は生きている模様です」
如何やら残り少ないエネルギーを節約する為、末端まで行き渡って無い様だ。
仕方ないのでテクテク歩く・・・暗闇の中、ライトで照らされる建造物の中って気味が悪いらしい。
しかし残念ながら、ボクはその手のモノを怖がらない性質だった。
「実在するか判らんオバケより人間の方が余っ程怖い、特に怒った時の母さんなんか・・・・・」
身震いするボク、当然だがこっ酷く叱られた経験くらいあるよ。
無い子供ナンて居ないだろ?
「母さんボクが悪く無くても・・・本当の事言っただけでキレてくるからな・・・・・」
大体何を言って怒られたのか想像出来るだろう。
でも当時のボクは本当に子ども・・・イヤ今でも子供だけどさ、母親と言え相手は女なんだって事も解る筈無いじゃ無いか?
それなのにこっ酷く叱られ、少しは女心と言うモノを勉強し様と本気で思ったさ!
「ここか・・・」
自動ドアを力尽くで開けると、非常灯の様な物が付いた空間が存在する。
その中には数多のカプセルが並んでおり、中に液体が満たされてた様だが全て枯れ果てていた。
底には若干名残の様な物が有り、それが生体兵器か何かだったらと嫌な思いがする。
だが感慨耽ってる場合でも無いだろう・・・余裕は持って来たがエネルギーや水等は有限だった。
早速生きているデータバンクを捜し、カチューシャのAIを経由して携帯型メモリーにデータを移す。
ついでにトイレを探して用を足すと、ボクは食事を取りながらデータを拾い読みし始める。
「シィーゲルに有ったゾンビ化ウィルスも、ここで開発されたモノだったんだ・・・何時の時代でもマッドサイエンティストっぽいのが居るんかな?」
ここは研究所であると同時に、細菌兵器・大量破壊兵器・生物兵器の生産工場だった。
と途中まで読み進めると・・・・・
「冗談じゃ無い!こんな悍ましい事を・・・大体想像付いてたけど、A級市民ってのはロクなモンじゃ無かったな」
気が付いたら口の中に血の味が広がっていた。
そこに表示されてたのは、捕らえた敵兵を洗脳し人体改造して強化兵にすると言う悍ましいレポートだった。
立ち上がって眼下を見る・・・無数に並んだカプセル、あの中に一人一人閉じ込められ改造される画像がデータの中には残っていた。
すぐにボクは下のフロアを見下ろす、透明な素材で作られたカプセルの中は殆ど全て空だが、中が残ってる物も幾つか有った。
階下に降りて確認するが流石に残骸的なモノが下に溜まっている程度、中に満たされてる液体は自動補充される様だが、閉じ込められている人体迄は残ってる筈も無い。
底に残ってる残骸も骨格すら形を留めていなかった。
黒っぽいゼリー状のものが漂ってるだけ・・・・・
ボクは上に戻ると吸い上げたデータから、基地内部の設備と備品・資材をリストアップする。
普段のボクなら劣化しない貴重な金属素材等なら頂く余裕が有ったが、今のボクは正常と言い難い精神状態だった。
こんな悍ましい代物は絶対に残しといては成らない。
「ここを全て焼き払う程の火力は出せ無いかな・・・出来れば一発で♪」
爆発物に合成出来そうな資材は無いかと探して見るが、流石にそう言うモノは大して残って無さそうだった。
有る事には有るのだが総量が少な過ぎ、ここを吹き飛ばすには少々量が不十分、仕方無いので他のデータを漁って見る。
「少ないけどドローンが生き残ってる・・・けど❝彼❞の設計したドローンに比べると性能が今一だな。マァ無いよりマシか・・・管理AIにアクセス・・・と、良かった疑似人格はプログラムされて無い。人格有るとボクには殺せ無いからね・・・余程ムカつく性格が悪い奴なら殺れるけど♪」
我ながら物騒な事を言いながらカチューシャと携帯データ・ストレージに情報を転送させる。
前者はモニターを見る事無くボクが情報を確認する為、後者は皇帝陛下の依頼通り持ち帰ってボクが保管する為だ。
脳裏に整理されたデータの一覧が認識され、その中で見たい物を選び視覚の中に表示させる。
「先っきの捕虜改造プラントは上階と下階で2重構造に成ってたな・・・下の方が広くて奥が有ったんだ?」
大型戦艦がスッポリ入りそうな長方形のフロア、その床は金網上の素材で作られ下にもプラント設備が有った。
下は奥に延びており、もう少し大きな設備が隠されてるらしい、
「問題は・・・その部分に何が置いて有るのかデータ自体無い?」
そこのスペースに何が有るのか、データベースに残されて無かった。
何か嫌な予感がするが、取り敢えず直接確認するしか無いらしい。
プラントは中二階状のフロアに囲まれており、そこから階段で下に降りられる。
エレベーターの様な昇降設備は有ったが壊れてて作動せず、仕方なくボクは3階建ての校舎並みの高さの階段を降た。
そして更に下のフロアにも同じ位の階段を降りると、下のフロアは奥へと延びている・・・まさか別のプラントが有るのか?
何だか嫌な予感がする。
ボクは奥まで数百メートル歩いて行くと、その突き当りは一面ガラス張りでコントロールルームの様に成っていた。
こちらの方がメインなのか?
一応パネルを操作・・・出来そうも無いのでカチューシャを繋いでイメージで操作をさせる。
上のコントロールルームとデータをリンクさせ、携帯型ストレージに情報を書き写す。
「取り合えずデータ整理が終わるまで待つか・・・どこかに照明の制御パネルは無いかな?」
暗いので明かりが欲しい・・・特に突き当りのガラス壁の向こうに広がってる空間が真っ暗で何も見え無かった。
下手にパネルを操作して何か怒ったら厄介、カチューシャにリンクさせて間違いない部分のみ捜査して行く。
「これだ♪」
漸く照明設備の操作出来る様に成ると、暗かった部分の照明が一斉に点灯する。
それにより真っ暗で見得無かった奥のフロアも照らし出された。
「変なモノが有りません様に・・・・・」
ボクが祈りながら奥を確認すると・・・ソコはチョッと理解し難い空間だった。
先ず向かって正面には手術台化作業台の様な物が鎮座し、左側の壁に円柱状のカプセルが立って並んでいる。
タンクや筒で無くカプセルと断言出来たのは12本並んでいるカプセルの内、11本は開いて中を晒しているからだ。
明らかに何か個体を入れてた筈で液体が入ってたなら、まあ清掃の為開く様に成ってる可能性は有るけど普通側面は開けないだろう。
そして左側には同じく形の違うカプセルが12本、こちらは9本が扉を開いて中を晒している。
さて問題は塞がっている左の1本と右の3本、中に何が入っている?
「ここで不用意に覗き込もうとしたり引っ叩くと中からブシューって気体や液体が噴き出して、閉じ込められて居たゾンビが暴れ出すんだよね♪」
そう言うゾンビ映画を昔夜更かしして母さんと見たんだ・・・あの人ボクには「夜更かしするなっ!」って叱るクセに、途中まで見かけたゾンビ映画を最後まで見たいとボクを巻き込んだ、トイレに起きたボクをリビングに拉致して映画終わるまで抱き着いて放さなかったんだ!
後ろから抱き締められ逃げられない状態で、小学校低学年のボクに無理矢理ゾンビ映画見せたんだよ?
アレは虐待だよ軽くトラウマに成った・・・おかげで幽霊とか悪魔など非科学的なモンスターは全く怖く無いボクでも、科学的に現実で再現出来そうなゾンビとか生き残ってても不思議じゃ無い巨大生物は人並みに怖がれる様に成った。
「先ず少ない方から確認し様かな・・・・・」
左側の一つだけ残ってるカプセルを覗き込み、その除き窓から中を覗き込もうとして・・・届かなかった。
そう言えば先古代文明は我々と違い爬虫類つまりトカゲから進化した人類で、平均身長が我々人類より30㎝ほど高いのだった。
地球では如何成るのか知らないけど、こちらの世界では人類とは知的生命体全般を指す。
ベースが霊長類だろうが他の哺乳類だろうが、それこそ虫類・魚類・その他諸々・・・この世界では進化して文明を築ける文化レベル迄に成長し、意思疎通をしてコミュニケーションが取れ、利己的思考を持ってても利他的考えも合わせ持てると言う3つの条件を満たした生物を人類と呼ぶ。
実際帝国にもボク達の様な霊長類型が一番多いけど他の種族も多々存在するらしい、ただ絶対数が少な過ぎてマダ御眼に掛かった事は無いけどね♪
その3つの条件で最期の条件以外の条件を満たしながら、利他的思考を持てない存在は亜人類と呼ばれる。
当然だ・・・利他的考えを持てない生物にとって他の生命体は単に食料や資源に他成らない、丁度インディペンデ何とかとか宇宙〇争に出て来るエイリアンみたいにね♪
中に何が入ってたのか気に成り何とか踏み台に成りそうな箱を探して持って来る・・・ホラー映画では定番のNG行為だけど、そこの所は敢えて無視した。
漸く中を覗き込むと冷凍状態にされたトカゲ人間が一人眠って・・・オイオイ先古代文明が滅んでから何年経ってると思ってるんだ?
アリスの計算じゃ数千万年から数億年経過してるそうだが、そこまで時間が経つと流石に当時ワイズマン・ライブラリーの管理者であったアリスでも数えてられ無いそうだ。
システムダウン、それ等に対応する応急処置、施設の管理整備に修理と点検に伴う電力遮断、そして極限まで切り詰められた節電の後遺症・・・等々、如何しても管理AIを休眠させねばならない事態が発生するのだ。
しかも何か形がオカシイ・・・ミローで見付けたタブレット状の物・・・これ面倒だから今後はタブレットって呼ぶね、それで先古代文明人の姿を何人も見て来た。
全てが体毛が無く地球の日本で庭先で見る様なトカゲを二足歩行させてた様な身体をしていたが、彼は形が厳めしくハッキリ言ってカッコイイ♪
例えるならヨロイトカゲを直立させた様な形状をしている。
さて反対側の3つはナニが入ってるのだろう?
踏み台を持って移動しカプセルに近付いたら・・・警報が鳴って室内灯が赤く成り、同時にカチューシャ内のAIが警告を発した。
「このブロック専用のAIは独立してた様ですが・・・それが経年劣化にて防衛機構が誤作動しました!マスターを侵入者と認識し、排除を試みています」
良かったチャンと劣化してるんだね♪
なら時間さえ立てば自然に帰・・・・・
「そう言う事を言ってる状況では無いかと愚考します」
カチューシャのAIにまで叱られる。
さて防衛用のドローンでも出て来るかと思いきや、3つのカプセル付近から水蒸気が上がった。
「戦闘用改造クリーチャーです。気を付けて下さい・・・ベースは同盟軍兵士、つまり本職の軍人さんです!」
それはマタ怖い事ですね!
重要の事を今に成って急に思い出した・・・シィーゲルのミロー基地やワイズマン・ライブラリーは同盟軍軍の施設だが、ヒュンケルズやポワントの宙軍基地はA級市民側の施設だった。
ちなみに最後の一つは同盟軍の施設だった筈、ここでいう同盟軍はA級市民側に抵抗する為に組織された❝彼❞が所属していた集団だ。
ポワントにも❝ゾンビ化ウイルス❞備蓄されていた・・・こう言うケースも想定すべきだったかも知れない。
カプセルから立ち上がった3体のクリーチャーは、所々身体が崩れ落ち完全にゾンビと化している。
「イエこの兵士達はゾンビ化してる訳では御座いません!
長い年月に耐えられず構成組織が崩壊を起こしており、見た目がゾンビ化しているのはソレが原因です。彼等の技術をもってしても冷凍冬眠の限界は1500年ほど、それ以上眠らせるのは身体が持たない様です」
「解説ありがとうねっ!」
ボクは飛び掛かって来るトカゲ人間のゾンビさん達の鋭い爪を交わしながら答えた・・・3体のゾンビさんは連携を取って戦闘し正直コチラには分が悪い、元々同じチューンナップされたクリチャーボディながら奴等は戦闘に特化した軍用クリーチャーなんだ。
「それは訂正します!確かに敵は戦闘に特化した軍用クリーチャーですが、アナタは先古代文明人の中でも特に突出した頭脳を誇る❝彼❞特製のスペシャルクリーチャーです」
「でも向うは爬虫類ベースで、コッチは脆弱な霊長類ベースだし・・・・・」
「お忘れの様ですがアナタの身体は、本来❝彼❞が収まる筈の爬虫類ベースのスペシャルメイド、それを霊長類ベースに再変換し、しかも彼の趣味で更にチューンナップされた特製品です。軍用と言え量産品とはキツネとタヌキほど違います」
「それって大差有るの?ボクはキツネなのタヌキなの?」
「大いに違います!当然アナタはキツネです」
カチューシャのAIが例える意味が良く解らない。
「キツネは赤いしタヌキは緑でしょう?アナタは赤い専用機で向こうは緑の量産機と言う、二段構えのギャグで・・・・・」
「オイお前アリスがチャンと繋がってるんじゃ無いか?!何で地球しかも日本のカップ麺を使ったギャグを・・」
思わず怒鳴り付けるが、
「イエ現在は切断されており、ユーモアのセンスはアリスからダウンロードして有っただけです。本機のユーモアはアナタの言動を解析して返されてるだけで、私には疑似人格は設定されてません」
「戦闘中に緊迫感が抜けるから、ユーモアのデータは削除する様アリスに言っとけ!」
このプラントは中途半端に狭かった・・・素早い奴等の速い動きを封じられるかと思ったが、それ程は狭くは無かった上に微妙に作業台がボクの動きを阻害した。
仕方無く自動ドアから外へ飛び出すと、一体が自動ドアに突っ込んでドアを凹ませた。
だが残りの2体はガラスを破ってコチラに来る、もう1体もドアを蹴破って迫って来た。
「悪いけど死にたくないんでね!」
ガラスと違い堅いドアにぶつかった奴はふら付いていた。
回復する前にと携帯してたレーザーを掃射するが、奴の身体がレーザーを反射して仕舞う。
驚くボクにカチューシャが告げる。
「体表に防・光学兵器被膜を塗布されてます。光学兵器はレーザーで粗100%、ビームでも60%を反射されます。ただし物質化直前まで圧縮された荷電粒子砲は・・・・・」
「効くんでしょうけど持ち運べないからね!」
小型化するには少々無理が有り、携帯型の荷電粒子砲は実現されて無い。
「それなら取り合えず・・・・・」
持ってたレーザーガンを連射モードにして、奴の崩れてる部分に照準を合わせる。
そこなら保護膜も消失してるかと思うのだが・・・コイツ等は元々ボクの敵じゃ無いのにな・・・・・
そう思って仕舞う・・・だがコチラも殺される訳には行かない。
『そうだ・・・奴等を楽にしてやってくれ・・・・・』
耳に届いた声に従いボクはトリガーを引き絞る・・・奴の左眼と周辺は半分崩れかけていた、そこは思った通り防光学兵器膜が剥がれ落ちている。
銃口から放たれたレーザーが奴の内部に吸い込まれると、中で乱反射したのか頭部が吹き飛んだ。
「良・・・っ!」
一体倒して安堵した所を側面から襲われ、何とか躱したが左上腕を深く斬り割かれる
同時に背後から襲われ、背中から腰まで宇宙服を斬り割かれた。
そのまま転がる様に何かの設備の陰に隠れる。
「サービスシーンは女の子でやろうね」
「キッド様なら十分需要有るかと・・・・・」
「分解されたいのか?オマエ本当にアリスと切れてんだよな?」
その時、周囲に影が差し・・・ボクの上から設備を飛び越えた奴が襲い掛かって来た。
ボクは冷静に上にレーザーを乱射して、そのまま設備の下に飛び込んだ。
同時にボクが飛び出すと思ってた、もう一人のクリーチャーが近くに降り立った。
光学兵器には討ち取られない自信が有ったらしい。
しかも乱射後にボクのレーザーガンは、襲い掛かって来た奴の爪で切裂かれる。
「ヤッパ性に合わないや!」
そのまま恐らく配電設備らしいユニットの下を潜り抜け、反対から飛び出すと今度はボクが設備の上に飛び乗って飛んだ。
奴等もボクに対応しようと脚を撓めて力を籠めるが、その前にボクはホルスターから❝趣味の銃❞を引き抜いた。
MM7545・・・自他ともに認めるガンマニアのボクが造り出した最高傑作のオリジナルハンドガンだ。
MMはミステリアス・モデルの略で、7545はCZ75を参考にして45ACP仕様で作ったと言う意味だ。
CZ97Bと違い前期型ショートレイルの形を若干大きくして再設計し、全体のバランスを纏めて造り直したジェフ・クーパーの理想をそのまま再現したモデルに成っている。
正面から飛び掛かろうとした奴の頭と、横から襲おうとした奴の頭に3発づつ撃ち込んだ。
そのまま銃をポイントしたまま彼等に近付いた・・・改造された彼等は脳髄を破壊されながら、まだ戦闘を続け様としている。
なんて惨い事だろう・・・・・
『危ないっ、後ろだ!』
ボクは前転様に前に飛び出し、すぐに態勢を整える。
何と最初にレーザーで倒した筈の奴が、頭部を半分無くした侭でも襲い掛かって来た。
「冗談じゃ無い、これじゃホラー映画だ!」
『そう思うなら終わらせてやってくれ・・・彼等には既に意識と言うモノが無い。強制的に闘争本能だけで行動させられてるんだ・・・・・』
「助けてくれてアリガトウ、ところで先っきから話しかけてくれてるアナタは誰ですか?」
『その前にやる事が有るだろう?彼等を救う方法は無い、再生する前に完全に頭部を破壊するんだ!』
仕方無いな・・・ボクはMM7545をショルダーホルスターに戻し、ヒップホルスターからM69の2.75inchモデルを抜いた。
見た眼は同じだが地球とは比べ物に成らないほど強靭なスチールで作られており、また弾も安全な範囲内での強装弾しかも火薬も高性能版だ。
その破壊力は・・・チョッと聞かないで欲しいね♪
某スペースオペラの主人公である宇宙海賊が、サブとして腰やブーツに差してる奴と同じ様なモノと思って欲しい。
とにかく中二心を擽るロマン系の武器さw
と、お道化て見たモノの・・・やはり彼等を見ると撃ち辛いモノが有る。
それでも自分が生き残る為に、ボクは引き金を引くしか無かった。




