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艦隊ハンティング♪

「いやココまで付いて来てオレが言うのも何だけどさ・・・こんな無茶苦茶な作戦、良く考え付くよな?」


「アップルトン大尉、覚悟を決めましょう♪アナタが接触した相手は常識と言うモノを、何処かに置き忘れて来た様な存在で・・・・・」


「ミューズッ、作戦終わったらオシリ叩き30発な!」


「お兄さま、冗談ですよ~~~っ!」


 ミューズがボクの首に抱き着いて来る。

 ボクの機嫌を何処まで取り直す事が出来るか、がオシリ叩き実行か回避かの境界線だかんな!


「それより人質が拘束されてるオルキュロスってのは、衛星って言ってたけど天然の天体?それとも人工衛星?」


 衛星とは天体の重力に引き留められ、衛星軌道を周回する物体を指す。

 小さな通信や観測用の人工衛星も衛星だが、巨大なコロニーだって惑星などの衛星軌道を周回するなら衛星だし、地球を例に挙げれば月だって衛星で地球だって太陽の衛星だ。


「人工衛星だ」


「コロニーとは違うのですか?」


 ミューズが疑問を呈する。


「コロニーの様に人類が居住する事を前提に造られた代物(モノ)じゃない。基地や施設のみの構造物で生活環境は快適とは言え無いね」


 それ自体が回転し遠心力で重力を発生させているコロニーと違い、質量エネルギーを強制的に発生させる人工引力は徐々に健康を害する。

 惑星上の重力と殆ど変わら無い、スターシップやエルミスの様な高品質な人工重力はヴァイラシアンには存在し無いのだ。

 ファルデウスでは目下増殖中なんだけどね・・・・・


「この世界の基準では直径または一辺および長さが最低1000m以上あり、回転する事で遠心力を生み人工重力を発生させ、なおかつ継続して生活出来る環境下のモノをコロニーと呼ぶ・・・か・・・と言う事はオルキュロスは大きさ的にはコロニーの基準を満たしているけど、設備の面で満たないって事なのね」


「ドチラにしろコチラには都合が良いですよ♪自転するコロニーは小さくても牽引して移送し難い物体です」


 アリスが口添える。


「オルキュロスは全長1200m、直系450mの円柱状をしている。単体なら大型戦艦なら1隻でも牽引可能だが、オルキュロス1~4までの4基を並列に並べられ連結されてるんだ」


「しかも軍事衛星キュマイラとマンティコアに挟まれ、妙な動きを見せれば即撃沈と言われている」


 完全な人質じゃねえか!


「問題は衛星じゃ無く周辺の艦隊だよ・・・衛星が沈黙すりゃワンサカ集まって来る!」


「スピード勝負だ・・・モタモタしてる時間は無い!アリス、ボクの声を野太い中年男性の声に変換出来る?」


「可能です」


「OK♪アップルトン大尉の艦隊に、処理した上で全艦に艦内放送で流してね。ミューズ、ボクはファルデウス帝国軍の待遇って・・・・・」


「一応❝少佐❞同等の権限と言う事に・・・・・」


 ボクはインカムに向かって吠えた。


「聞こえるか、ヴァイラシアンの玉無し野郎どもっ?オレはファルデウス帝国軍・特務隊セイ・ヤフネ少佐だっ!オマエ達のボスは貴様等の命を助ける為に、人質に取られている家族の命を見捨てる事にした!後8時間で親が!嫁が!子供が!その誰かが殺される事に成る。オマエ達を助ける為にだ!良いのか?それでも良いのか?少なくともファルデウス帝国軍の宇宙艦隊で、そんな事を良しとする海の男は居()ェぞ!」


「降伏後艦内の通信システムは掌握してますが、艦内で怒号が響いております」


 アリスが中の様子を探っている。


「テメェ等の玉の色は何色だっ!黒ずんでるのか?赤茶色に錆付いてるのか?それとも端から付いて無いのか?」


 う~~~ん・・・少し下品かな?

 それに何か真空の宇宙空間を突き破って、怒りのオーラが届いて来てる気がする。


「もし立派な金色の玉が付いてるって言うんなら、チョッとで良いから手を貸せっ!大丈夫オマエ等に責任は追及されない!!それドコロか上手く行ったら、作戦終了時に今と同階級で全員ファルデウス軍に編入させてやる」


 途端に全艦の内部で歓声が上がる。


「お・・・お兄さま、そんな約束勝手に・・・・・」


「ファルデウス軍法・第24条6号・・・尉官以上の士官は戦時中、緊急に必要な軍務者を臨時に召集する事が出来る。ただし強制的に招集する事は出来ない・・・・・だっけ?」


「その通りです」


 アリスが答える。


「その招集規模は・・・確か少佐なら小一個艦隊迄だよね?」


「仰る通りです」


 じゃあ問題無いよね♪

 何だかんだファルディウス帝国の為に動いてるんだから多少は融通利かせてよw


「そんじゃまあ・・・始めますか」


 と作戦を始めようかと思ったら、パイン大尉と副官さんが苦笑いしている。

 2人は仲間の船の中の会話を盗聴してたらしい。


「どしたの?」


「キッドの立案した作戦を、アサルト端末で全艦のクルーに提示したんですが・・・・・」


 副官さんの説明、パイン大尉の方は笑うのを我慢出来て無い!


「こんな無茶苦茶な作戦立てる何て、どんな奴なんだって大騒ぎに成ったんだ・・・そうしたら情報関係に強いスタッフが、ファルデウスの❝救国の美少女❞や❝戦の女神❞とか❝英雄天使❞なんて言われてる誰かさんの記事を思い出して・・・・・」


「それが嫌だったから声を変えたのに!」


 ミューズが呆れた顔をする。


「声を編集するプログラムはファルデウスでもヴァイラシアンでも一般流通してますよ?つまり逆編集されて元の声を解析されれば・・・・・」


「こんな会話も有りましたし・・・」


 アリスが録音しといた、パイン大尉の艦隊内の会話を流す。


『見ろっ!言った通りだろ・・・この美しい声、喋ってるのは間違いなく美少女だ♪』


「キッド様の声を再編集し、元の声を探し当てた方の発言です」


「アリス・・・逆編集出来ない、優秀な編集プログラム作って・・・・・」


 ボクはアリスに頼んだが、


「その手のプログラムは、コチラの世界でも開発し尽くされました。新たに作っても大差あるモノは出来ないかと・・・・・」


 ボクの首がガックリと垂れ下がった。




 スターシップ内の工房で、携帯型の武装を造った。

 パイン大尉を始め数百人が装備し、オルキュロスに突入して内部を制圧する。

 既に彼女等は自分の船に戻り、一番早そうな駆逐艦で全速力を出していた。


 彼女が捕捉される前に、ボクにはやらなければ成らない事が有る。




「何が起きた?」


 キュマイラの指令室で最高司令官が叫んだ。

 オルキュロスを挟んで対峙してたマンティコアが爆散し四散したのだ。

 敵の攻撃はおろか艦影すら見付からない。


「ファルデウス軍の攻撃か?」


 ギブソンの敷いた防衛ラインが突破された話は無い。

 もっとも本当は裏切られ、何時でも突破されて不思議無いのだが!


「エネルギー反応なし・・・実体弾だろうがエネルギー兵器だろうが、攻撃された痕跡は有りません」


「そんな事が有るかっ!良く調べ・・・・・」


 途端にキュマイラの指令室が爆発・・・いや蒸発する。




「ハイパードライブでカッ飛んでいる宇宙船がレールガンぶっ放したら如何(ドウ)()るでしょう?」


 本来光速に達しない筈のレールガンの弾(理論的には限りなく光速に近づける事は可能)が、光速で飛んで行く事に成る。

 軍事衛星など一発で蒸発する。

 それだけ光速に達すると言う事は、膨大な破壊力と察知不可能な速度に成るのだ。


 ちなみに宇宙空間から、ゴルフボールが光速で地球に飛んで来たら如何成ると思う?

 色々な説が有るが地球が無事か如何かは別にして、「大気圏で燃え尽きる事無く地球を貫通し反対側へ飛んで行く」と言うのが最有力な説らしい。


 飛んで来たのが氷の粉末で良かったね♪


「ミューズッ!」


「アイアイサー♪」


 ミューズが放ったレーザー砲は、オルキュロスの砲塔を次々吹き飛ばして行った。


「パインだ・・・突入する!後は任せる」


 駆逐艦でオルキュロスに接舷し、彼女等は乗り込んで行った。

 ボク達は周辺の護衛艦隊を蠅叩きだ。


「各艦っ、打ち合わせ通り牽引具を接続しろっ!時間が無いぞ、早くやれっ」


 オルキュロスの武装を排除すると、パイン大尉からの連絡を待つ。

 彼女等は内部の敵性勢力を排除しながら、オルキュロスを連結するアームシャフトの隔壁を降ろして行く。

 暫らく艦内から銃声が響く音を中継され、その後パイン大尉の状況報告される。


「オルキュロス1と3の間を閉鎖しました」


「了解っ!」


 意外と早かったが万が一の時は軍用衛星や艦隊で、衛星ごと堕とす手筈だった・・・なら中に居る警備兵は必要最低限である。

 すぐにレーザーでアームシャフトを焼き切った。


「1~2および3~4閉鎖っ!」


「2~3、OKです!」


 連絡が来る度にシャフトを溶断する。


「お兄さまっ、お客様ですよ!」


 近郊に居た艦隊が押し寄せて来る。


「地表は特権階級の住処だなんて思い上がって、集めた人質を宇宙空間に放置するからだよっ!」


 ボクは艦首を巡らし、迫る艦隊に襲いかかる。


「後は打ち合わせ通り、用意が出来た艦いや衛星から進発しろっ!巡洋艦1隻と輸送艦はオルキュロスの牽引、その他の戦闘艦は警護っ!足並みを揃え様など考えるなっ!用意が出来た艦からポイントX3642に向かえっ!」


 何万隻が相手でも戦う事は出来るが、オルキュロスを守りながらは不可能だ。

 奴等はオルキュロスにさえ当てられれば良いのだから・・・彼等が逃げ出すまでの時間を稼がなくては成らない。


「アリスッ!個体弾頭でレールガン用意」


「了解・・・撃てます」


「じゃあ、サヨ~ナラ~~~~ッ!」


 艦体の中心にレールガンを打ち込むと、周辺の艦を巻き込みながら次々と誘爆して行く。


「近付かせない様に片っ端から沈めるよっ!向かって来る艦には手加減は無しで・・・・・」


「オルキュロスに家族が居る様な方は?」


「パイン大尉の話じゃ万一の時、撃墜し易い様に周辺艦隊には配属されて無いって!」


 むしろ遠慮なく殺せる様な貴族等が多いらしい。

 ならコチラも遠慮なく狩らせて貰う。


「そうは言っても一般兵士が大半でしょう?」


「戦争だもの巻き添えを出さないなんて綺麗事は言えないさ・・・でも極力少なくする方法は無い訳じゃ無い」


 ボクはミューズと顔を合わせて微笑む。


「「ブリッジ狙い撃ち♪」」


 意見が合ったね♪




 流れ作業の様にボクとミューズはブリッジを撃ち抜いて行く。

 これも❝ヘッドショット❞と呼んで良いんじゃ無いかな?

 今回アリスは攻撃に加わらず、索敵と計算に従事して貰ってる。


「正面10時方向上方45°の艦がオルキュロスへ針路を・・・」


「私が撃ちます」


 キレイなブリッジ狙い撃ちが入った。


「オルキュロス2準備完了、進発します」


「おうっ、とっとと行きなっ!」


 巡洋艦が衛星を牽引して行く。


「アップルトンだっ、オルキュロス4はマダ鎮圧出来ていないっ!」


「最悪鎮圧出来て無くても引いて行けっ!移動しながら鎮圧すりゃあ良いでしょっ!」


 パイン大尉の艦隊は戦艦1・巡洋艦2・駆逐艦12そして輸送艦が13の構成だ。

 その輸送艦の内3隻は大型輸送艦だったので、それと巡洋艦1隻が牽引役に成る。


「オルキュロス3、準備完了っ!」


「よしっ、行ってらっしゃい♪駆逐艦3隻付いてって」


 次のオルキュロスが動き出す。


「オルキュロス1、加速開始・・・前進します!」


「早う行けっ!」


「お兄さま・・・段々扱いが雑に成ってます・・・・・」


 迫って来る艦船の相手をしながら、ボクは近付く気配を見せた艦のブリッジを射抜いて行く。


「オルキュロス4、制圧は終了して無いが発進準備は整った。移動を開始する・・・・・」


「中の様子は?」


 奥の方で踏ん張っている守衛部隊が有るらしい。

 手伝いにイケたら良いのかも知れないが、コチラは湧き出してくる増援艦の対処で忙しい。


「そりゃ人質を奪われれば、今まで好き放題扱っていた奴等が寝返り出すでしょうから」


 そりゃ必死に成って取り戻そうとするだろう。

 と言う事はオルキュロスを堕される事は、心配が要らないかも知れないね?


「イエ、自分達で落としといて・・・お兄さまに責任を押し付けるかも知れません」


 確かにソレやっても不思議無い連中だ。

 絶対にオルキュロスには近付けられん!


「全艦っ、防衛戦闘を継続しながらポイントX3642に後退!」


 4棟のオルキュロスを牽引しながら艦隊が後退する。

 敵も敵で喰い付いて来るが、分散しながら追い縋って来るので前に回り込む事は出来ない。

 前に回り込むには当然だが、コチラより速いスピードを出す必要がある。

 そうやって突出した敵を、ボクが野放しにする訳がない。


「地味に最初のレールガン攻撃が効いてますね?」


「それが狙いだったしね♪」


 スピード出して追い抜こうとしたら、亜光速までしか出せないレールガンでも十分狙い撃ちに出来る。

 ワープなど以ての外、アウトした瞬間に蜂の巣だ。

 もっとも・・・


「他の宙域から応援の様です・・・進行方向に敵影!」


 対した数では無いが前方を塞がれる。

 ボクは前に出様とするが、


「逃亡中の艦隊へ、私はヴァイラシアン帝国軍ヴァッサー・メローネ大尉だ!今よりヴァイラシアン帝国を離反しアナタ方に降る。アナタ方はファルデウス軍なのだろう?頼むからオルキュロスの中の息子は大事に扱ってくれ」


 一応前に出た全艦が最大出力でシールドを張る。

 だがヴァッサー大尉の艦隊はオルキュロスと擦れ違うと、猛然と追い縋って来るヴァイラシアン艦隊に襲い掛かった。


「更に大小4つの艦隊が従属の意思を表明しながら接近して来ます。ヴァイラシアンの罠である可能性は低いかと・・・・・」


「幾ら何でも都合良過ぎません?」


 アリスの言葉にミューズが言うが、


「そうでも無いさ・・・パイン大尉も言っていただろ?何でモット早く侵攻して来なかったって・・・ミンナ待ってたのさ♪まして人質がコッチの手に有るなら・・・・・」


「パインだっ!遅く成った・・・何とかオルキュロス4の中も鎮圧した」


「じゃあ急いで出て来て下さい・・・次は艦隊戦で活躍を・・・・・」


「少しは休ませてくれよ・・・・・」


 文句を言いながらも移動する大尉、中に若干の警護兵を残して宇宙へ戻ろうとする。

 その時、後方から大きな艦隊がワープアウトして出現した。

 仕方ないので大尉には、衛星内で待機してて貰う。


「流石に人質が連れ去られちゃ、大変だって事くらい判る奴が居るか?」


「まあ1人位は居るかも知れませんよね♪」


「ノンキに言ってる場合ですかっ!」


 アリスに怒られながら、全艦に最大船速で逃げる様に指示をする。

 だが何分コッチは大きな衛星を牽引中、少しずつ間が詰められて来た。


「キッド、大丈夫なのか?」


 衛星からアップルトン大尉が心配そうに連絡して来た。

 正直言って最悪の場合、敵艦隊をブラックホールダウンで吹き飛ばす事も視野に入れていた。

 そう成らない様に布石はしといた筈なんだけど・・・・・


「遅いなあ・・・オシリが重くて難渋してるのかな?」


「失礼ねっ!そんなに重く無いモン!」


 レプトン通信でジュリアさんの怒鳴り声が響いた。


「これでも綺麗な小尻だって同僚から評判なんだから♪」


「自分で見た事の無いモノは信用しない主義です!」


「良いわよ、是非見せて上げる♡」


「お願いします是非ッ!チョッ!ミューズ、冗談だってばっ!!!!!」


 自分のシートから飛び出したミューズがボクの頬を抓り上げる。

 その時にハイパードライブから減速しながら、エルミスシリーズで構成された艦隊が、ボク達の横を擦れ違った!


「得物は早い者勝ちよっ!最多撃墜者には、御褒美に私のキスをプレゼントします!」


 ボクは何も言わず、機首を後ろに切り返す。


「あの~私達の護衛は・・・・・」


「幾ら何でも無責任じゃ・・・・・」


 アップルトン大尉と副官さんのボヤキが聞こえるが、


「背後の敵より脅威が有りますか?」


「それはソウ何ですが・・・・・」


 2~300の艦隊、追っ手を無視出来ない!


「本音は?」


「ジュリアさんのキスはボクのモノだ!」


 後頭部をミューズに引っ叩かれる。

 それで凹む僕じゃ無いけどね!


「さあ狩りの時間だ!」


 ボクのスターシップは、エルミスタイプの艦船を追い抜いて、敵の艦隊に飛び込んだ!




 ギブスン指令の所に逃げる訳に行かないから、進路をズラして国境に移動する。

 ウェルム少将の艦隊が出迎えてくれ、人質達はファルデウス軍で手厚く保護をしてくれるそうだ。

 お母さんと泣きながら抱き合っていたアップルトン大尉は、今までのカリを返す為ギブスン指令に合流するらしい。


 そし整備(メンテナンス)点検(オーバーホール)修理(リペア)それに補給を受けながら、アップルトン大尉の補給艦の一つで・・・・・


「それでは発表します・・・最多撃墜者は142隻撃沈したキッド君のスターシップです!」


 ジュリアさんはマイクで発表すると、他の人から怨嗟の怒声が上がった。

 ちなみにファルデウス軍では、行動不能に成った艦は撃沈と評価される・・・海じゃ無いから水面下に沈められないしね♪


「汚ねえぞ!」


「この野郎!」


「ズルイぞっ!」


 と喧々囂々と罵声を浴びながら、ボクは舞台の上に上がった。

 ジュリアさんはボクと出会う前の小艦隊の時から、戦功の有る士官なんかにキスを振舞っていたらしい。

 まあ本人が嫌がったらセクハラ行為だからしないけど、若くて綺麗なジュリアさんのキスを断る馬鹿は居ない!


「ふっふっふっ、嫉妬は見苦しいぞ諸君!」


 ボクが大声で挑発すると、罵り声は一層大きく成った。

 非常に気分が良い。


「ハイッ、じゃあキッド君・・・御褒美よ」


 ドキドキしながらキスを待ち構えていると、


「そのキス異議有りっ!」


 少女が叫ぶ・・・この声はミューズ!

 オマエってばボクがキスを貰いに行くと言っても、文句を言わなかったじゃ無いか!


「如何したのですか?ミューズ様・・・・・」


「この操艦データを確認して下さい!」


 ミューズは舞台の上に上がると、タブレット状の端末をジュリアさんに手渡す。


「スターシップの撃墜数(スコア)は142ですが、その内お兄さまの撃墜数は65!残りの77隻を沈めたのは私です!従って御褒美のキスを貰う権利は私に有ります!!!」


「ミューズッ、汚いぞ!」


 そう言ったがジュリアさんはデータを見てから、


「まあ艦のクルー全員にキスする訳には行かないし、普段なら恒例としてキスは代表者だけにしてるけど・・・コレだけ明確なデータが有るなら、権利者はミューズ様よね♪」


 そう言ってボクから離れるジュリアさん・・・


「お疲れ様でした、ミューズ様♪」


 ジュリアさんはしゃがんでミューズの頬にキスをした。

 嬉しそうに微笑むミューズに、集まってた士官達が一斉に拍手を送る。


「ズリィ・・・腹黒め・・・・・」


 このドンデン返しをしたくて黙って付いて来たな!


 でもまあ・・・皆から祝福され微笑んでる彼女は嬉しそうだ。

 それが悪戯が成功したからであっても、彼女が喜んでるなら良いだろう。


「オ~イ、キッド・・・残念だったな!」


「いつも美味しいトコ持ってくからだっ!クソガキめ」


 そう言いながらボクを揶揄うジュリアさんの部下達の脛を、ボクは片っ端から蹴っ飛ばして行った。

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