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人質って流行ってるんですか?

 ヴァイラシアン帝国の通信は、レプトン・レーザー問わず混迷を極め荒れ果てていた。


「首都星近郊でファルデウス軍が暴れてるんだ!」

「いつの間に抜かれたんだ?」

「オマエ等の眼は節穴か?」

「何をやっていた!」


 そう言う叱責に対し、


「コッチは抜かれてなんかいない!」

「周り込まれたんだろ!」 ㊟共に大ウソでギブソンさんの防衛ラインを堂々と通過して来てる。

「100隻も無い小艦隊じゃ無いか!その位は貴様等で片付けろ!」


 とギブスンさんがやり返す。


 そしてボク達はヴァイラシアン帝国の首都星近郊で、敵の艦隊を潰しては逃げ回る。

 その中に不運な軍監や監察官が居たとしても、ボク等には何にも関係は無い。


「あんまり暴れ過ぎると皇帝が強権を発動して、ギブスン大佐に私達の討伐を命じたりしないかな?」


「その時はジュリアさんの父上に働いて貰うさ♪艦隊が押し寄せたら防衛線を崩せない」


 まあ何か月も続いたら怪しまれるけど、50日くらいは誤魔化せるだろう。

 そうしてる内にファルデウスの準備が整う。

 ファルデウス軍本隊とボク達で挟み撃ちの形を取れば、ギブスンさんが降伏しても十分仕方ない状況に見えるだろう。


「ギブスン大佐の防衛ラインに、小規模な艦隊が向かっています」


「さてお仕事お仕事・・・・・」


 ロイヤルフェンサー・第一艦隊、通称❝第一の剣(ファーストフェンサー)❞はジュリアさんの率いるエルミスタイプを主軸に構成された艦隊だ。

 121隻の艦隊を2~3に分けて首都星近郊で暴れ廻っている。


「じゃあボクはソレに向かうね♪」


 ギブスンさんの防衛ラインに辿り着く前にコチラで沈めてしまえば、何時まで経っても軍監は防衛来任配属できない。

 意図的に狙ってると思わせない様に、周囲でもジュリアさんが艦隊を始末して廻っている。


 主に輸送関係を・・・兵糧攻めを狙う陰湿な戦法だ。


「ヴァイラシアン帝国の首都星って食料自給率低いのね・・・・・」


「それでも星系ナンだから、食料を生産できない訳じゃ無い・・・でも嗜好品や高品質なモノは手に入り難くなる♪地味に貴族階級には嫌がらせに成るよ」


 まあハッキリ言えば、この戦闘自体が嫌がらせ以外の何物でも無い。

 軍監・監察官の足止めのついでで、戦略的意味はかなり低いのだ。


「そんな嫌がらせ嬉々として・・・三人(キッド・ミューズ・ジュリア)の性格が表れてますね」


 とアリス談。


「そう言うキミも楽しそうだね?」


「人の不幸は蜜の味です♪」


 ボク達は呆れながらも、分かれて狩りに出た。




 と意気込んで向かったモノの中性子ビーム砲の斉射一回で全敵艦が沈黙した。

 エンジンを狙ったから上手く行けば生き残れる。


 別に情けを掛けた訳じゃ無い・・・フィクションでは主人公やヒロインが敵を殺さぬ方針を取る事も多いが、ボクは生憎だがそんな善人じゃ無いんだ。

 まあ出来るなら殺さない方が良いとは思ってるけど、回り回って味方に被害が出る様じゃ馬鹿も良い所だろ?

 実際は平和主義的な考えで無く、救援に手間を取らせて敵勢力の分散・疲弊を狙っている。


 と言う訳でやる事が無くなった。


「きゃんっ!」


 と可愛らしい悲鳴を上げて、ミューズは後ろに吹っ飛んだ。

 その先には跳弾防止の為に引っ張り出した❝断熱発泡プラスティック❞を積み上げて有った。

 壁や的の背後に貼り敷き詰めた残り・・・そこへ見事にオシリから飛び込んで行く。


「ミューズ・・・もう諦めてレイガンを使いなさい!1発撃つ毎に吹き飛ばされるんじゃ、実戦では使えないだろう?」


「むぅ~~~っ!」


 可愛らしく頬を膨らませて不満を表すミューズ、残念ながら彼女ではボクの拳銃を使う事は難しい。

 ただ・・・一々後ろに吹き飛ばされてるのに、何故か標的のセンターを撃ち抜くのだけは本気で凄いと思うよ!


「お兄さまは何でコンナに重力が軽いのに、後ろに吹き飛ばされ無いのですか?」


 そう普段スターシップの艦内は、人工重力で1.05Gの環境にしてある。

 若干重くして有るのは低重力下での体力減退防止の為だ。

 今は一応❝戦闘待機状態❞な為、重力を0.95Gまで下げて有る。


「慣れだよ♪高重力下で機敏に動き、軽重力下でバランスを取り安定する事が出来る。そう言うのが近接格闘戦の理想形だそうだよ」


 ミューズから銃を受け取ると、ボクの周囲だけ重力が強くなる。

 多分1.5Gほど・・・トレーニングの為、あらゆる重さを1.5倍にアリスがしてるのだ。

 身体が蜂蜜の中を泳いでる様な感覚の中で、ボクは銃を構え引き金を引いた。


 身体がスッと軽く成った・・・今度は0.45G全ての重さが半分以下に成る。

 この侭だとボクもミューズの様に後ろに吹っ飛ばされる。

 ボクは重心を前に押し出し、踏ん張って更に2回引き金を引く。


 銃弾はターゲットのセンターへ3発とも吸い込まれた。


「お兄さま何故か銃の場合は、精度も命中率も高いのよね?」


 普段スターシップの各武装を、ボク・ミューズ・アリスの3人?で分担操作している。

 ボクの場合は速さだけは自身が有るが、狙い通り当る正確さと命中率に関してはミューズの方が上だ。

 だが拳銃の扱いに関しては炸薬式でも光線銃(レイガン)でもボクの方が上、速さに正確さそれに命中率はズバ抜けてボクの方が高かった。


「この銃は元々撃ち易い代物じゃ無いんだ・・・そもそも炸薬式何て実用的じゃ無いしね」


「じゃあ何で炸薬式に?」


 アリスが不思議そうに聞いた。


「男のロマンだ!」


 そう・・・この銃はボクの好みだけで造られている。

 シルバーフレームに黒いスライドとラバーグリップのガバメント、しかも形そのままでDA/SA(ダブルそしてシングル・アクション兼用)それにスマートトリガーなど好みに走り過ぎであろう。


「だって・・・お兄さまと同じのが欲しいんだモン」


 ズッキュ~ン!と脳内に音が響き、心理的なモノで胸を撃ち抜かれた。

 ミューズは可愛いなあ・・・まったく仕方がない。


「チョッとコレ使って見て・・・・・」


 ボクはケースから出した予備用の銃を取り出した。


「コレは?」


「ボクが造った予備用の炸薬式拳銃、コレの方が使い易い筈だ」


 ワルサー社の銘銃の一つでアメリカでライセンス生産されたモノを、コッチの世界で勝手に再現コピーした銃だった。

 ちなみに本当はワルサーでなくヴァルターと発音するらしいが、あえてボクはワルサーPPK/Sと呼ぶ。


「この銃は本家ドイツで造られたPPKと、アメリカでライセンス生産されたPPK/Sが存在する。コレは後者のPPK/Sを更にボクがコピーしたモノだ」


「何でソチラを選んだのですか?」


 ボクはマガジンを抜いてからスライドを引き、初弾を抜いてからマガジンを刺し直した。

 自分でスライドさせられないなら、持つ資格は無いであろう。


「PPK/Sは大柄のアメリカ人の手のサイズに合わて、同時に当時の小型拳銃を規制する法律を順守している。その為サイズが若干大きく、オリジナルラバーグリップは幅広だ」


「それじゃ私には逆に不利では無いですか?」


 ミューズの手は、平均的な日本人より小さいだろう。

 確かにフィットさせるには小さい方が良いが、


「アメリカ人は自分の大きな手に合わせてグリップを大きくしたが、大きいグリップは小さい手の人間にも別の恩恵をもたらすんだ♪」


 背後からミューズの手を保持させながら、アリスに重力制御を止めさせる。


「実際にシューティングを楽しまないと解らない話だが、炸薬式の拳銃は小さければ軽ければ良いと言う訳じゃ無い・・・重い銃は構えた時に安定し、大きなグリップは衝撃を和らげる」


 実際に発砲した事が有れば判るが、同じ銃弾を使うなら大きな銃の方が楽である。

 勿論大きく重い銃は取り回し難く、疲れ易くも成る・・・しかし大柄なグリップは衝撃を分散させ、重い銃身は安定を増す効果が有るのだ。

 それに小口径の軽量弾を合わせれば、初心者にも使い易い銃と言えるだろう。


「ふ~ん・・・」


 ミューズはスライドを引きチェンバーに弾を送り込むと、引き金を3回引いた。

 発射された3発の弾は、ほぼ的のセンターに集弾する・・・がヘッピリ腰なのは変わらない。


「それをサイドアームにして、メインにレイガンを使いなさい。ただトレーニングを積めば炸薬弾の銃もマトモに使える様に成る。そう成ったらガバメントも造って上げるから♪」


「お兄さま、この銃の弾を全部出して下さい!」


 早速練習を始めるミューズ、慣れた所で重力を調節し始めるだろう。

 そうすればマタ吹っ飛ばされる様に成るかも知れないが、そもそもミューズにだって十分1G下では吹き飛ばされ無いだけの体重を持ってるのだ。

 まあ頑張って貰うとしよう。


 さてボクの方はレイガンを片手にターゲットをマークする。

 ボクの場合はメイン・サイドでなく、ただ単に銃を使い分けている。

 何も問題が無い事を確認しアタッシュケースの中に戻すと次の銃をチェックする・・・アタッシュの中には趣味で造った様々な拳銃が所狭しと並べられていた。


 その全てが地球の銃のコピーである。

 ベレッタM92F、シィグ・ザウアーP226と227、ちなみにワルサーPPK/Sの場所はミューズに譲ったので開いている・・・後で造り直そう。

 それにリボルバーがS&WのM500とM629の6.5インチモデルそれにM66とM69・・・ただしM500は原型を留めて無い程カスタマイズされている。

 ほとんどがブルーイング仕上げだが、M66とM69だけニッケルメッキのシルバータイプだ。


 それ以外にもショルダーホルスターに例のガバメント・タイプの拳銃を、ヒップホルスターにレイガンを装着している。

 ちなみにガバメントはダブル・カアラムからシングルに変更し造り直した・・・あまりデザインに影響が出ない範囲で造って見たが、やはり多少太めに成りガバメントのスマートなイメージを損なう。

 それに大して装弾数は増えなかった・・・薬莢が太過ぎて中途半端なダブル・カアラム化は装弾数が2発しか増えないんだもん!


「オ~イ、そろそろ変わって・・・」


 ミューズはボクの声が聞こえないほど集中している。

 残して置いてってもミューズは絶対に触らない・・・クスリと笑ったボクは邪魔をしない様に席を立つ。




「キース班が巡回中の敵艦隊を全滅させました。リチャーズ班は周辺をステルスモードで巡回中・・・・・」


「で我等ジュリア班は捕縛した艦隊をポイント3-C-1045へ連行中と・・・大漁大漁っと♪」


 副官のミント大尉がジュリア中佐にコーヒーを差し出す。


「しかし我々ロイヤルフェンサー第一艦隊だけで、ヴァイラシアン帝国の首都星まで来て隠密戦をさせるとは・・・あの少年は無茶を言いますね」


「この位ナニよ・・・ブラックホールの中にワープアウトしろ!なんて言われるよりは全然マシじゃない?あの時は本当に死を覚悟したわよ」


 二人は顔を見合させると互いに溜息を吐いた。


「そう言えば・・・あの戦闘後、司令はシャワールームに飛び込んでましたよね?」


 そうジュリア中佐は女として少々恥ずかし失態をした。


「それを知ってる貴女もソコに居たよね?」


 再び顔を・・・今度は一瞬睨み合って乾いた笑いを上げてから溜息を吐いた。


「リチャーズ班が戦闘に入ります」


 オペレーターの言葉に緊張が走る。


「ソロソロ敵も本格的な艦隊を率いて、我々の討伐に出陣するでしょう。今後の展望は如何見てられますか?」


「艦隊を首都星から出せやしないわよ。それよりギブスン伯に出陣を迫るでしょうね・・・そろそろ、お父さんに出陣願おうかしら?」


「と言っても陽動ですけどね」


 本格的な侵攻を開始するには、もう暫く時間が掛かるだろう。

 その為の時間稼ぎに私達だけで出て来た様な物だ。

 するとレーダーに感有りとオペレーターが叫ぶ。


「さあミンナッ!お仕事お仕事、この戦いが終わったら特別バカンスを絶対に捥ぎ取ってやるんだから」


 私は発見した艦隊に狙いを付け、仲間に指示を発した。

 敵の艦体を見付けては襲い掛かり拿捕して連行する・・・やってる事は海賊と大差なく、最早ハンティングの様相を呈している。




 実際に兵站を整えて何て言ってても、やる事は他にも数多くあった。

 何よりコッチが戦闘態勢を整えているなら、敵だって何か考えている筈だ。

 後はタヌキの化かし合いである。


「まだ2週間か・・・」


 皇帝が詰まらなそうに宙を眺める。


 思えばミューズは変わってしまった・・・あの儚げな野花の様な美しさを持つカワイイ孫娘が、今や恋したキッドに夜這いを掛けたり、嬉々としてゲームの様に敵艦を沈めて行く。

 あの思い出の中のミューズは一体ドコへ行ったのだろうか?


「んなモン最初から居無かったのでは?」


 ジェリスの一言に睨み返す。


「昔から思ってたが、オマエもう少し君主に対して尊敬とか遠慮とかだな・・・・・」


「そう言ったモノは18の時に無くしました。陛下が宮殿を抜け出すのを手助けさせた時です。あの時、陛下は私に「今日からオレの事は皇帝と思うな!オレとオマエは親友で相棒で兄弟だ」と仰って・・・・・」


(わか)った!(わか)った!(わか)った!」


 皇帝は口を❝へ❞の字に曲げる。


「で?」


「キッド君と分散させた娘の艦隊で、ヴァイラシアン帝国の中を引っ掻き回しています。同時にジョンブルソンとワメリカーノにはヴァイラシアン帝国との開戦を傍観する様に依頼しました。ヴァイラシアン帝国に友好的なヴィエントとノスモー帝国ですが、今回援軍は見合わせるかと・・・・・」


「経済封鎖は上手く行ってる様だな」


 宙域図を見ながら説明する。


「オイッ、宙域図を立体映像で出せ。平面図では立体的な宇宙空間を理解し切れん!」


 すぐにテーブル上の宙域図の上に、ヴァイラシアン帝国首都星近郊の宙域図を表示させられた。


「足止めと拘束と経済封鎖の役には立ってるな♪」


「それに嫌がらせの役にも♪」


 宙域の敵艦や要塞の分布も表示されて行く。


「馬鹿と言っても帝国を名乗るだけは有る。マダマダ敵軍も層が厚いな・・・ところで地道にキッド達が削っているが、やはり数が多過ぎないか?」


 ファルデウス帝国軍全ての戦闘艦を搔き集めれば、大体200~300万の数に成る。

 だが勿論その全てを戦闘に投入する様な事は出来ない。

 特に宇宙艦隊戦の時代と化した昨今、敵は惑星上の戦争と違い敵は360°水平線・地平線の向こうから現れる訳では無い。

 自分を中心に上からも下からもソレこそ全方向から襲ってくる可能性が有る。


 当然そんな状況下で全戦力を投入ナンて事に成るのは国の存亡が関わる時だけ、大概は1~2割・大盤振る舞いで3~4割、5割以上の戦力を投入すれば「アソコの国家元首は馬鹿か?」とか「あの国のトップは頭がイカれたらしい」と言われる事に成る。

 そもそもコノ広大は星間国家で国中に分散した兵力を搔き集めるのは時間が掛かる。


「反乱軍が大分流れましたからね」


「ダラスの馬鹿者め、厄介な置き土産を残しおって!」


 と言うモノの正直ダラスが全て悪い訳では無い。

 彼が神輿に担ぎ上げられたのは、内乱集結の最後の最後の方だ。

 その残念な頭では大した事を企む事も、実際ナニか計略を立て実行した事も無いだろう。


 ただ(おだ)てられ乗せられて、名ばかりの君主候補として出て来たのだ。


 そんなバカな事をしなければファルディウス帝国の片隅で、勘当されたと言え庶民が羨む生活を送って天寿を全う出来ただろうに・・・・・唯一の子供だったが、決して甘やかす事をしなかった。

 だが周囲は逆に甘やかし、摺り寄って来た取り巻きが次期皇帝と煽て上げた。

 結局10代後半には皇帝に見切られ、内密に次期皇帝の候補からは外していた。


 今、皇帝の頭の中には次期皇帝候補は2人居る。


 先ずは継承順位第3位のジュリアだ。

 1位の弟と2位の叔父は高齢過ぎて論外だ。

 判断力と統率力そして何よりカリスマ性は、他の候補より明らかに秀でている。


 戦記物などのフィクション作品では、皇帝や王など君主やその妻に成る者は、幼少期から多大な知識を学ばせる様な表現をするモノが有るが・・・そんなのは嘘っぱちだ!


 君主に必要なのは統率力と合理的な判断に決断力それにカリスマと何より発想力だ!

 その周囲の人間には分析力と統率力、そして更に周囲の人間に求められる物こそが知識だ。


 そんなのは歴史を学べば馬鹿でも解る。

 名君と呼ばれた君主が、その施行する法制度を自ら考えていたのか?

 答えは断じて否である。


 君主が「ココが悪いのだから、マトモに運営出来る様に考えろ」と言えば、その問題を考えるのは文官で、頭を悩ませ案を出しソレを側近等が環境と整え出たモノを纏めて調整する。

 現代の理想的な組織運営と何ら変わる事が無い。


 さて脱線したが、そう言う事を考えるとジュリアは性能でも若さでも理想的な皇帝候補だ。

 だがココで対抗馬が現れてた・・・キャプテン・キッドことセイ・ヤフネだ。

 彼もジュリアと同等以上に資質が有ると皇帝は考えてる。


 しかも彼が皇帝に成ってくれれば、先古代文明人の英知と言う代えがたいオマケが付く!


 元々両人とも皇帝の椅子に興味は無い・・・だが帝国の為には本人が嫌がっても座って貰わねば成らないだろう。

 ジュリアを予備と考え本命はキッド、ナンとしてもアイツを皇帝の座に座らせなくては・・・・・


「しかし無理を通せば彼は逃げますよ?それドコロかヤリ過ぎれば牙を剥く事すら・・・・・」


「オマエはテレパスかっ!」


 皇帝は毒吐いたが、


「何年の付き合いだと思ってるんですか?顔を見てれば考えは大体解りますよ」


 大袈裟に溜息を吐くと・・・


「何としてもミューズの血を引く曽孫に後を託したいんだよ」


「なら何で側室にウチのジャジャ馬を?」


 皇帝はジェリスに資料を差し出した。


「キッドがファーレンでメディカルチェックを受けた時のデータだ・・・まだ彼は精通して無い様だが、それでも成熟すれば子供を立派に宿させる事が出来る身体を持って居る。一方ミューズは詳しいチェックを受けて無いが、それでも幼少期にアレだけ身体を傷め付けられ結局は躰の大部分を入れかえられたのだ。子供が出来ない可能性も有る・・・なら最悪の場合は帝室の血脈だけでもとな・・・・・」


「今から考え過ぎでしょう・・・まあ側室の件は本人の意思を尊重し、私として言う事は有りません。帝国貴族に女として生まれた以上、そう言うケースもウチのジュリアは覚悟してるでしょうし、それに本人もキッド君に好意を持ってるでしょうから・・・まあウチの娘はポンコツ過ぎて自分でも気付いて無い様ですが」


 皇帝は呆れた様に溜息を吐いた。


「ため息ばかり増えるな・・・まったくアノ娘も・・・・・」


 帝国内でキッドの外堀を埋める作業は、重機を持ち出し急ピッチで進んでいる様だ。

 だがジェリスの考えは違う。


『いざ本当にミューズ様が結婚する事に成れば、陛下は間違いなくキッドの胸倉を掴んでダダを捏ねて反対するな』


 ジェリスは心の中で再度溜息を吐いた。

 皇帝は溜息が増えたと言ってたが、アンタの所為で私の方が増えたと声を大にして言いたいジェリスだった。




 敵艦が警告を無視して発砲すると、その返礼として数十倍の砲火をお返しする。

 その時に慌てふためく、ブリッジの会話や敵艦の通信を傍受するのが最近のマイブームだ。


「一隻じゃ無いのか?敵は一隻じゃ無いのか!」


「しかも小型船だっ!何故にこれ程の火力が有る?」


「止めろ馬鹿刺激するなっ!逃げるか降伏だっ」


「貴様帝国軍人として・・・」


「「「アレと戦って勝つ自信有るのか?!」」」


 ハイ、30隻未満の艦隊を秒で鹵獲しました♪

 宇宙戦争に成ると30隻だ50隻だなんて艦隊は小艦隊以下の扱いで、下手すれば艦隊と名乗らせて貰えない。

 まあ万単位の艦船が砲火を交わす世界だからねw


「降伏します・・・撃たないで下さい!」


 敵ながら情けない降伏文だな・・・・・


「コチラの指示通り移動して下さい。エネルギー兵器へのチャージや実体弾等の装填は、発見次第撃沈します」


 こちらも慣れたモノで、ミューズが相手に警告する。

 さてジェノサイドする気は無いから、捕虜や鹵獲した艦船は大事に使おう。

 その前に艦隊司令官を尋問する。

 幾ら何でもアッサリ降伏し過ぎだ。


「いや小艦隊の指揮などしてる下級貴族や平民出身者の軍人は、こんなモンじゃ無いですか・・・ってより殆どがコンナモンでしょ?命を懸けて忠誠を誓えるほど、ヴァイラシアンの皇帝は名君じゃありませんよ。アアッ、私もファルデウスに生まれたかった・・・むしろ何でモット早く、この国を滅ぼしに来てくれなかったんですか!」


 相当鬱憤溜まってるらしく、税金の高さや貴族の横柄さをネチネチと愚痴り始める。


「もし此の侭、配下に加わってヴァイラシアンに砲塔を向けろってなら・・・少なくとも私は喜んで照準を合わせますよ!むしろ言われれば喜んで下に着きますが・・・・・」


 パイン・アップルソン大尉は言った・・・ヴァイラシアン帝国軍人で男爵家の3男だそうだ。


「取り合えず素直に従ってくれれば良いから・・・ファルデウス軍に帰属出来るかどうか、口を挟める立場に居ないんだ」


 取り合えずジュリア中佐と合流する事にする。

 戦うなら100隻でも1000隻でも相手に出来るが、捕虜などを管理するのはボクには数隻だって難しい。


「取り合えずパインさんは人質として本艦で拘束します」


 彼には連絡艇(ランチ)でコチラに御足労願った。

 そこでボクは間違いに気付く、秘書か副官らしい女性を伴ったパインさんは・・・大柄で筋肉質な細マッチョの(けっこう可愛い)女性だった。



「なんで・・・なんで子供が軍艦に乗ってる?」


 まあ驚くかもしれないね♪


「この船は(名目上)ファルデウスの為に戦ってるけど、ファルデウス軍に所属はして無いんだ。義勇軍か傭兵的な存在だと思ってね・・・まあ後でファルデウス軍の中佐さんに引き渡すから」


「しかも2人しか乗って無いのか?たった2人の子供が操る1隻の小型戦闘艇に破れたのか?プライドがズタズタだ・・・・・」


 まあソウ成るだろうが、彼女は即戦闘停止を出来ただけ有能である。

 コチラの火砲は全敵艦のブリッジ上方をキレイに掠め、照準をブリッジに合わせ直していた。

 彼女が戦闘を継続したのなら・・・次の瞬間には全艦轟沈していただろう。


「ところで男爵家の3男と聞いてたのですが・・・・・」


「男爵家の3人目、上に兄が二人いる。それにしても畜生・・・こんな良い船がオレにも有れば・・・・・・」


「オレにも有れば?」


 むざむざ投降等しなかったとでも言いたいのだろう。


「とっととヴァイラシアン何か見限って、脱走して海賊にでも成ってたのに・・・それとも反乱起こすのも面白いかもな!」


 ボクとミューズの眼が点に成り、彼女の副官は眼を覆って溜息を吐く。

 ロクでも無いなヴァイラシアン皇帝・・・それにしても軍人が海賊落ちしたなら、家族に迷惑が掛かるだろ?


「むしろ喜んで迷惑かけたいね♪オレは母親がオヤジの使用人で、無理矢理犯されてオレを孕まさせられたんだ。そんな訳だから生活環境など推して何とやらだろ?」


「ウチの父親と大差ないクズですね」


 クズ親を持つ者同士、ミューズがパインさんと意気投合してる。

 互いに肩を抱きウンウンと頷き合って居る。


「それにしてもローティーンの子供2人で、捕虜を艦に引き込むとは油断し過ぎじゃ無いのか?制圧されたら如何する気なんだ」


「試して見ます?」


 ボクが言うとニヤリと笑ってパインさんが身構えた。

 彼女は格闘技のセンスがあり、ボクなんか一瞬で制圧出来るだろう。

 だが、


「うへっ!」


 マヌケな声を上げると同時に彼女の身体が床に沈んだ。


「あっ?がっ・・・へっ?」


 状況が解らぬ様で、地面に土下座の様な姿勢で這い蹲っている。

 正直女性にさせるには忍びない姿だった。


「この船の床は10㎝単位で人口重力が調整出来るんです。動く事すらママ成らないでしょ?このまま圧殺(おしころ)す事も可能ですが・・・・・」


 彼女が慌てて謝罪する。


「参った降参だ・・・スマンッ、冗談だったんだ!降伏した以上、最初から逆らう積りは無い。許してくれっ」


 ボクはニッコリ笑って、


「知ってますよ♪貴女方のブリッジやランチでの会話は傍受してましたから」


「そんな事まで出来るのか?」


 彼女は驚愕した顔をしている。

 通信などの傍受は戦術戦の基本だが、される方だって黙って傍受はさせられない。

 まして簡単にブリッジ内の会話を盗み聞ぎされた事に恐怖すら覚えている。


「タダね・・・ボクは気にしないんだけど」


 パイン大尉の背後に回ったミューズが、スチール製のお盆を彼女の突き出されてるオシリの上に差し出した。

 パインさんの周囲は屈強な彼女が身動きできない程の高重力下、差し出したお盆はソレに引かれて凄いスピードで落下する。


 パ―――ンッ!


 お盆はとても良い音を立てて、彼女のヒップを痛打した。


「カハッ!」


 パインさんは悲鳴も上げられない。


「私のお兄さまを如何するんですか?若くて良い男ならオレの魅力で篭絡するし、効かなかった無理矢理なんでしたっけ?」


「お・・・押し倒すってのも篭絡も冗談だよっ!頼むから勘弁してくれっ」


 涙を浮かべながら彼女はミューズに降伏した。




 パイン・アップルトン大尉は大柄で筋肉質では有るが、決して平凡な外見の女性では無かった。

 むしろ美人の部類でも上位だと思うし、ワイルドな女性が好みなら彼女は最適なお相手だと思う。


 ボク?

 ボクはアア言うタイプも好きだよ♪

 自慢じゃ無いけどストライクゾーンは広いんだ♡


 アレ・・・ミューズさん、レイガンの出力最小限に絞って何をする気ですか?


 さて現在スターシップの休憩室はチョッとしたサービスタイム中だった。

 高重力で引き寄せられた超硬スチールのお盆は、殺人的な破壊力を持ってた・・・一撃で彼女の尻を真っ赤に染め上げたのだった。


「ハヒッ・・・ヒッ!」


 彼女は啜り泣きながら、下半身の着衣であるパンツスーツと下着を脱いで尻を晒していた。

 と言うより脱ぐのも一苦労、ギャーギャー悲鳴を上げながら脱ぎ、痛くてパンティすら穿いていられ無いそうだ。


「ヤリ過ぎだよ・・・」


「ゴメンなさい・・・」


 ミューズに一応注意する。

 さて何で女性がオシリ丸出しなのにボクも休憩室に居るのか?

 それは治療する人がボクしか居ないから。


 ミューズは虐待されていたが、シンデレラの様に酷使はされていなかった。

 その代わりロクな食事も与えられず、監禁されてたのだからシンデレラより不幸だったが・・・そんな訳で彼女は家事などが軽滅的に下手だった。

 それに教育も受けさせられて無かったので一般常識すら抜け落ちている事が有り、今一生懸命お勉強している最中なのだ。


 その上パインさんの副官さんも治療が出来ない。

 と言っても彼女の勉強不足で無く、この船の医療機器が先古代文明のモノを再現したモノだったからだ。

 彼女は「一応ヴァイラシアンの医療機器もファルデウスのモノも知識としては使える筈なのですが」と首を捻っている。


「腹筋は綺麗に六等分されているし腕も脚も筋肉質なのに、お尻は丸くて綺麗な形してますね」


「そんなトコは見て無いでくれ!」


 彼女から注意され、横からミューズに頬を抓り上げられる。

 そんなにイヤならミューズも医療器具の使い方ぐらい覚えてくれ!

 塗り薬すらスプレー化されてるんだから・・・・・


「お兄さま、さっさと治療して退席して下さい!」


 ミューズの眼が冷たい。

 パイン大尉のオシリに冷却薬をスプレーし、その上から湿布を張り付ける。

 この辺りはアナログだが、その方が効果的な様である。


 そして彼女に毛布を一枚渡すと、ボクはコクピットへ移動した。


「さてとジュリアさんと合流しますか・・・・・」


 スターシップのエンジンを廻し、28隻の艦隊を引き連れると合流地点に向かった。

 暫くするとドアが開き、ミューズがコクピットに入って来る。


「お兄さま、アップルトン大尉の事で少しお話が・・・・・」


「パイン大尉のオシリを見過ぎだってお叱りなら受けんぞ」


 後頭部を叩かれるかと思ったが、何時まで待っても手が出て来ない。

 オカシイと思って振り返ると、彼女が少し泣きそうな顔をしている。


「真面目な話なんです」


「聞きましょう♪」


 アリスに操縦を任せると、ボクはパイロットシートから立ち上がる。




「ウチは輸送部隊だ・・・それでも各輸送艦には10人程乗ってるし護衛は駆逐艦でも100人、巡洋艦や戦艦なら2~300人のクルーが乗船している。総員2642名の大所帯、数十名の人質の為に殺す訳には行かないだろう?」


 ヴァイラシアン帝国軍では尉官以下の士官は殆ど首都星に家族を人質を取られ,そして敵に降った場合その家族は見せしめに殺されるそうだ。

 最も名目上は軍人の家族が敵国やテロリストに拉致され無い様に保護してる事に成ってるそうだ。


 オイオイ・・・敵ながらヴァイラシアン帝国上層部、冗談にしても笑えない頭の悪さだな。


「そんな軍隊に良く忠誠を誓えるモンだね?」


「誓える筈無いだろ?現にコノ有様だ・・・・・」


 まあ即降伏したモンな・・・・・


「国の上層部では「素晴らしいシステムだ。これで寝返る者は居なくなる!」何て本気で言ってるんだぜ・・・正気の沙汰とは思えないだろ?」


 反感ばかり買って、寝返るチャンスを皆が狙う様に成る。


「しかも人質も丁重に扱われてると言う事も無い。首都星の衛星オルキュロスに詰め込まれ、刑務所や強制労働所よりマシと言う程度の施設で労働させられてるよ。オレの母さんもな・・・・・」


「父・・・いえダラスの奴が手を組んだだけの事が有ります。クズの集合体ですね!」


「機械の私でも何か妙な感覚が沸き起こります・・・コレが嫌悪感と言うモノなのですね?なるほど・・・これが「反吐が出そう」と言う感覚なのですか・・・最高に不快で不愉快ですね!」


 ミューズとアリスも嫌悪感を隠そうとしない。

 ただヴァイラシアン帝国やダラスだけでなく、独裁、国家や軍事国家それに共産主義的なヴィエントなども、軍人の家族を集めたり造反でもしたら連座させるシステムなどは有るらしい。

 地球でもドッカの国がやってるらしいしね・・・赤いのとかアフォいのとか共産的な国でさ!


「気にする事は無いさ・・・悪いのはヴァイラシアンとオレ達の方だ。オマエ達が気にする事じゃ無・・・・・何やってるんだ?」


「チョッと黙っててね!」


 カチューシャから情報が流れ込み、アリスの構築した❝趣味レーション❞で状況をシュミレートして見る。

 ちなみに誤変換じゃ無いよ、ボクの趣味で造った嫌がらせ審査シュミレーション、通称❝趣味レーションVer1.2❞だ。


「成功率は14%、とても実行に移して良い数値では・・・・・」


「凄いじゃん!成功確率が2桁も有るの?」


 アリスだけじゃなくミューズもパイン大尉も沈黙する。




 合流予定地点には輸送艦が一隻現れただけだった。

 しかも敵方の・・・降伏信号は出しっぱなしだ。

 武装歩兵が雪崩れ込むと、中にはコンテナで造られた即席の独房に何十人ものヴァイラシアン士官が閉じ込められている。


 ブリッジは自動操縦で誰も居ない・・・閉じ込められていた者以外は、人っ子一人乗って無かった。


 この世界で宇宙を航行する艦船は正確かつ厳密に区分されて無いモノの、スターシップの様なコクピットタイプの操縦席を持つ宇宙船と、舵やレバーの類で操舵するブリッジタイプの航宙艦に区分される。


 そしてコノ輸送船のレバーには手紙が張り付けられていた。


『緊急性を持つ案件が浮上しました。附きましては輸送艦のメモリー2085番を参照にして下さい』


 乗り込んで来たジュリア中佐はメモリーをメインモニターに表示させる。

 それを読んで行く内に・・・・・


「あの子は何で何時(イツ)何時(イツ)も、こんな非常識な作戦を行き成り立てるかな・・・この輸送艦はギブスン指令の所に自動航行で行くようにセットしなさい。私達はスターシップを追いかける・・・他の2班も合流する様にレプトンで緊急打電してっ!」


「ナニが始まるんですか?」


 エルミスⅡのブリッジ・・・操縦はパイロットシートだが、巡洋艦でクルーが数人掛かりで操縦するので敢えてブリッジと呼称するが、そこへ戻ったジュリア中佐にミント大尉が質問する。

 ジュリア中佐は軍帽を直しながら、


「狩りよ、狩りっ!ヴァイラシアンの艦隊がワンさと追っかけて来るんだからっ・・・一応ギブスン指令にも状況を打電しといてね」


「キース班が15分後に合流予定と打電アリ!」


「隊列は航行しながら整えなさいっ!進路・・・」


 次の一言でクルーの顔が凍り付く。


「ヴァイラシアン帝国首都本星!」


「「「「「あのチビスケ、今度は何をヤラかしたんですか~~~~~っ!」」」」」


 クルーが一斉に絶叫を上げる。

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