中で暴れまわった!
ファルディウスとヴァイラシアンの国境では、両国の艦隊が砲火を交わし激戦が繰り広げられていた。
だが明らかに艦数が多いヴァイラシアンに対し、優勢なのは比較的ファルディウス側の方である。
「コチラの内乱に乗じて侵攻してくるのは読めてたが・・・なんと間抜けな奴等だな」
「まあコンナに早く内乱が終息するとは、アチラも思わなかっただろう・・・キッド様々だな」
「まったくキッドは幸運の女神だ」
本人が聞いたら泣くか殴られる様な事を言いながら、カペターズ・ビジーズの両大将が言った。
反乱を手助けしている以上、ヴァイラシアンが侵攻して来るのは誰の眼にも明らかだった。
それでもヴァイラシアンに援助を求める馬鹿貴族共に、二人は呆れながらも馬鹿だからの一言で納得する。
だが予想を裏切って反乱軍がほぼ壊滅、それも いとも簡単に・・・折角攻めて来たのに背後からファルディウス軍を襲う筈の反乱軍は殆んど残っていない。
「そろそろ私は後退するぞ・・・反乱軍で最後に残った大物貴族、ボルクス公爵が現れる頃だ」
「早く片付けて手伝ってくれ、数だけならヴァイラシアンの方が多いからな」
反乱軍を潰してる連中の様に最新鋭では無いが、数万の艦隊を率いて対峙している。
だが相手の方が若干数が多い様で、後続の艦隊も続いていた。
「通信を傍受してるが、アチラも急遽編成され総大将が決まって無いらしい。だれが指揮権を握るか争いながら戦ってるから連携が取れて居らん。戦闘は始まってるのに何を考えてるんだか・・・・・」
「コッチは総司令官を押し付け合ったのに・・・まあキッドが現れた事による内乱勃発など、奴等が馬鹿で無くても予測出来んモンな」
カペターズ大将はスクリーンの中のビジーズに問い掛ける。
そこへ並んでる別のスクリーンが点灯し、ジュリア中佐の顔が表示された。
「お待たせしました♪ロイヤルフェンサー第一艦隊、指揮下に入らせて頂きます。総司令官殿はドチラに決まりました?」
「ジョーカー引いたのはカペターズさ♪」
この世界にもカードゲームは存在したが、キッドがトランプ・花札・ウノを持ち込んで、皆けっこうハマッている。
「トランプをクジ代りにしたのですか?」
「いや敵が現れる前に集結出来たから、責任者を押し付け合ってババ抜きを・・・・・」
平和な戦場である!
「ではカペターズ司令官殿、我等は側面から・・・・・」
「イヤそろそろ反乱軍のボルクス公爵が現れる。ビジーズに頼もうと思ってたが、オマエに頼むとしよう。後方に待機して現れたら撃退してくれ・・・奴を倒せば内乱も、ほぼ終結する」
「了解しました♪」
「ところで新聞読んだか?」
「喜ばしい事ですね♪」
ミューズの帰還の事である。
「オマエさんも気が気でないだろ?」
「何でです?」
2人の将軍は溜息を吐く。
「戦闘が終わったら説教してやるぞ!このポンコツ娘が・・・・・」
「な・・・何でですか?」
「良いから早く行け!」
何なのよ一体・・・と呟きながらジュリアは通信を遮断する。
この二人の将軍にとっても、ジュリアは孫娘の様な存在だった。
「あの娘は自分で気が付いて無いのか?」
呆れた様にカペターズは言った。
「恋愛に関してはポンコツを極めてる・・・全くモテるクセに質が悪いの」
「ところで・・・あの噂聞いたか?」
カペターズの言葉にビジーズは声を潜めた。
「噂じゃろ?幾ら何でも・・・」
「何でだ?バカ息子の所為で血筋より能力を求めるのは、陛下の基本方針に成った・・・あの方は血が繋がら無くても、帝国に有益なら問答無用で引っ張り込むさ!」
確かにその通りと思わずに居られない。
「ああ、間違いない・・・陛下はキッド君をミューズ様と結婚させ、彼をファルディウス帝国の皇帝にするだろう。ミューズ様では無く、キッド自身を皇帝にな!下手すると第2夫人にジュリア嬢を据える所まで考えてるかもな・・・・・」
キッドが聞いたら全力で拒否し逃亡するだろう。
外堀を埋める工事は、帝国で着々と進んでいた。
少し時間は巻き戻し、国境でドンパチ始まった報告が届いた直後の事である。
その頃ジェリス艦長は、ミューズとの再会に臨んだファルディウス皇帝の警護に当たっていた。
同僚のピスタ艦長とウェルム少将は帝国内の反乱軍を虱潰しに狩り出しており・・・ヴァイラシアンの侵攻も脅威だが国内に危険分子を放置出来ず、早急に撃滅しないと安心して戦争に挑め無い。
先ほど国境で戦端が開かれたと通信が有り、このまま恐らくヴァイラシアン帝国との戦争に突入する。
それどころか非友好的な国が連合を組んで攻め込んで来る可能性も有り、国内の平定は正しく急務なのだ。
「反乱軍の阿呆共がヴァイラシアンに情報を漏らし過ぎたんだ・・・・・」
元々他国の領に興味を持たないファルディウス帝国に対し、敵対国はファルディウスの領星と技術が欲しくて堪らない。
居住可能な惑星を増やす人工太陽を作る技術を、涎を垂らしながら狙っている。
「その欲望にキッドの存在が拍車をかけた・・・・・」
援助するヴァイラシアンに、反乱軍はキッドの情報を垂れ流した。
今後は彼のもたらす技術で国力の差は更に開いて行く・・・今の内しか勝ち目が無いと思うのも仕方ない。
「それなら協力体制を構築して技術交流を図れば良いだけの話ですよ!何でタダで奪う気に成れるんですか、現に友好国間では・・・・・」
ココ少尉が興奮気味に言うが、ケチ臭いうえ強欲な奴等が対価を払う可能性は無かった。
「要はヴァイラシアンの国家自体が悪質な強盗犯と同じ、早目に潰すに限る!」
ジェリスは詰まらなそうに言った。
「アトロペルスから通信、順次ワープに入る様に言ってます」
「了解・・・先発隊は陛下に先行しワープに入れ。我が艦は後詰だ・・・・・」
指揮する艦隊の艦艇が発光しブレて消えて行く。
「ロイヤル・ディフェンサーが国境に派遣されたからな、仕方無いが我々は陛下とともに首都星に戻って暫らく首都星の防衛だ。各艦ワープの順位を・・・・・」
その時ラグナレクの横を、一隻の宇宙船が加速しながら通り過ぎる。
「スターシップですが、何処へ向かうのでしょうか?」
ココが不思議そうに言うと、ジェリスは言った。
「さあ、何も聞いて無い・・・がっ!?」
ジェリスが驚愕した声を上げると一瞬クルーは彼の視線を追い、そして各自が己の責務を全うする!
ラグナレクの前を航行していたアトロペルスが急制動を掛けたのだ。
「速度落とせっ!ワープ中止、面舵を取れ!」
「後続艦に打電っ!緊急事態、対応を求む!!!」
「後続艦がぶつからぬ様に、微速前進!」
まあ正直言ってぶつかる程接近しておらず、車間距離ならぬ艦間距離?は十二分に取って有る。
それに実際ぶつかってもシールドが干渉し、この程度の速度では実害は無いだろう。
それでも艦隊行軍で前の艦が急制動を掛けるのは非常に危険な行為、珍しくコメカミに青筋を浮かべてジェリスは皇帝陛下の座乗艦を呼び出した。
「こちらラグナレクのジェリスだ。如何したアトロペルス、何か有ったのか?」
「スマン、陛下が乱心・・・迄はしとらんが興奮して、皆で取り押さえて対応が遅れた」
「あのジジイ、何やってるんだ!」と心の中で毒吐いたジェリスの耳に、仕えてる君主の怒声が届く。
「キッド―――ッ!ミュ―――ズッ!貴様等ドコへ行くっ?一度首都星に来ると言いながら、ワシを謀りおったな?全艦何としてもスターシップを止めろ~~~~~ッ!」
ファルディウス帝国の元首なる者なんだから、一応は海千山千の強者である事は想像に難しくない。
自分達が「戦争の火種に成るかも知れない」・・・と来れば行く先は友好的な国では無いだろう。
その為に「隠密行動で密入国する」なら、かなり緊迫した関係の国だ。
そして「その事は陛下にも言わない」「知らない方が良い」と来れば皇帝達が知らない方が良い相手、キッド達の存在を知れたらネタにしてマウントを取りに来る相手だ。
つまり行く先はヴァイラシアン帝国に他ならない!
そこまで皇帝に悟られて仕舞ったのは仕方ないだろう。
そう成れば話は違って来る・・・流石に国境紛争しかも武力紛争してる所に皇族であるミューズを行かせる訳には行かないだろう。
皇帝陛下の言い分は「紛争が収まるまで待ちなさい」だがキッド達は「混乱してる今こそ潜り込む好機!」なので話し合いの折など着く筈が無かった。
取り合えず時間稼ぎの為、首都星❝ミューズ❞に無理やり連れてこうとしたのだが、
「良くも謀った何て言えますね?私達を首都星で、紛争終結まで足留めする気だったのに」
モニターに映る皇帝の顔が、ギクッと擬音を立てた様な気がした。
海千山千の古強者より、若い柔軟な脳ミソの方が勝る事もある様だ。
「クソッ、何故気が付いた!」
「そりゃ戦争おっ始まったってのに、ミューズの帰還祝いして国民にお披露目する何て言い出しゃバレバレだって!」
そう言うキッド君はコクピットのパイロットシートにミノムシ状態で縛り付けられ、操縦はアリスが代行している。
「なんじゃキッド・・・その恰好は?」
「アンタのカワイイ孫娘の仕業だ!一応首都星まで付き合ってやれと言ったら、縛られて言う事を聞くまで擽られたんだ!ミューズ・・・後でオシオキだからなっ!」
するとミューズさんは愛用の羽ペンを取り出した。
勿論だが文字を掻く為じゃ無い!
「ミュ・・・ミューズさん、チョッと待ちなさい!ソレを使って何する気・・・・・」
「正式ルートで無く敵国に侵入するなら、戦闘中の今が最高のチャンスじゃ無いですか♪なのに何時終わるか解らない国境紛争を待たされるなんて馬鹿らしいと思いませんか?」
そう言うと脱がされて素足に成っている足の裏に羽で擽った!
「チョッと待てっ、アッ!ヒッ!ヒャハハハハハ・・・・・・・」
「お兄さまも昨日までは、そう言ってたじゃ無いですか♪」
実はキッド、擽られる事に滅法弱い!
「キャハハハハ、ヤ・・・ヤメなさいっ!ヤメテ、お願い・・・ヒィ~~~~~ッ!」
「お爺さまの我儘に付き合ってちゃ、チャンスを逃しますよ♪ヴァイラシアンなんて私だって本当は行きたくないんだから、さっさと行って来てセッセと終わらして、早く帰ってユックリすべきだと思いませんか?」
徐々に差が開き置いてかれる帝国軍とスターシップ、その間をコント染みた通信でのやり取りが交わされる。
「お願い・・・もうヤメテェ・・・・・」
「私の意見に賛同して貰えますね?」
そう言いながらもコチョコチョ攻撃の手は止まらない。
「分かったからヤメテ・・・降参します」
漸く擽る手を休めるミューズは、本当に清々しい笑顔で額の汗を拭った。
「と言う訳で、お兄さまは私の説得に応じて下さいました。私達はヴァイラシアンに向かいます♪」
「コレは断じて説得では無い・・・拷問だっ!脅迫だっ!」
酸欠で息も絶え絶えに成ったキッドは吠える。
その声を遮って、ココが叫んだ。
「ミューズ様ったら最高っ!今の画像を保存しとかなきゃ」
「あっ、ココ狡い!その画像私にも下さい」
「私にもっ♪」
ラグナレクのブリッジが騒がしくなり、ジェリス艦長が苦笑する。
「イケナイ・・・私、撮っておくの忘れてました。ココさん私にもコピーして貰えませんか?」
「勿論っ!」
グッタリしてるキッドは皇帝に言った。
「と言う訳でボクはアナタの孫に拉致されてヴァイラシアンに向かいます。文句は帰ってから・・・ちなみに文句を言うのはボクの方だからねっ!」
そう言うと通信が切れスターシップは、帝国艦隊を置き去りワープ航法に突入した。
絶叫する皇帝の声も一緒に置いてきぼりにして・・・・・
ワープ中は何もする事は無く、早速ボクは先程の仕返しをする事にする。
「コラッ、ミューズ待ちなさいっ!待てェ~~~ッ!」
「イヤァ~ン、ゴメンなさいっ!・・・ヤリ過ぎました、許して下さい」
そう言いながら艦内を駆け回って逃げるミューズ、小型宇宙船と言え185mもあるスターシップの中は逃げ隠れする場所には困らない。
185mもあって小型とは意外に思われるかも知れないが、スターシップは積載量など余裕をもって造られ、その上で星雲間も航行する事を念頭に造られた❝外宇宙航行用・宇宙船❞である。
戦闘能力を持たせた上で200m未満に収まっているのはコンパクトを極めていると言えた。
勿論❝外宇宙航行❞を念頭に置かず戦闘能力すら付与しないなら30m未満で済むし、最新鋭のエルミス・シリーズでさえ外宇宙航行に対応していなかった。
それを考えれば極端に離れて無い星雲なら往復し、100人のクルーが半年間・無補給で航海出来る積載力を持っているスターシップが如何にコンパクトに造られているか判るだろう。
その上スターシップは大気圏内・高重力下・水上・水中・ドコでも活躍出来、全長250m以上ある戦艦大和が海上を航行する事しか出来ない事と比較して見れば良い♪
「逃がさんぞ!ホラ捕まえた」
「ヤダァ!」
とっ捕まえたミューズを膝の上に押さえ付けてオシリを叩く。
もっともさほど怒ってる訳でも無いので、撫でながら軽く叩き据えているだけだ。
「ア~~~ンッ、お兄さまのHっ!」
「全くオマエと言う奴は、こう成る事解ってるクセに何時も何時も・・・・・」
イヤ悪戯してる時は忘れてるかも知れない。
それとも多分だけど?
「それとも構って欲しくてワザと悪戯してるのか?」
ピクンッ!と反応するミューズ、コイツも嘘吐くのは下手な方だな。
「オマエと言う奴は・・・・・」
「だってさ・・・最近忙しかったし、それに帝都に行ったら当分出して貰えないよ?拉致したのが私の方なら、お兄さまは文句言われたり叱られずに済むでしょ♪」
やはり計算尽くだったか・・・何気に腹黒だよね。
「まあ説得されて出航すれば責任はボクに成るモンな・・・ミューズにハイジャックされたなら、拉致されたボクの責任は軽く成る。でも15分以上も擽る必要無かったよね?」
ミューズの頭を寄せ、中指を立てた拳でコメカミをグリグリしてやる。
軽いオシリ叩きより、コッチの方が辛いだろう。
「ア~ンッ、許してよぅ!」
涙を浮かべながら謝罪するミューズさん♪
「正確には15分以上では無く30分近くです。それは楽しそうに擽ってましたよね・・・・・」
アリスは呆れた声で言った。
「そんなに擽られてたっけ?」
「いくらスターシップと言え標準航行で軍艦を引き離すのには、その位は掛かるでしょう?フォトンエンジンを全開で廻したなら、一瞬で逃げ切れますが・・・・・」
まあ艦隊を擦り抜けながら逃げるのに、フォトンエンジンを全力で廻すのは危険かと思って使わなかったのだ。
先行した後も皇帝とやり取りしてたんで全力航行して無かった、ただミューズの奴ったら皇帝の爺ちゃんをブッ千切った後もズッとボクの足の裏擽り続けたモンな♪
「でスターシップをハイジャックしたミューズさんは、この後は如何する積りだったの?」
ボクはミューズのオシリを撫でながら言うと、彼女もイヤンイヤンと身体を捩りながらも逃げ様とはしなかった。
「流石にアヴァ元帥は首都星を守ってるでしょうけど、カペターズ・ビジーズ両提督は国境に展開しジュリア中佐も向かってます。戦端の火蓋が切られたから今ごろ大騒ぎしてるわよ」
ミューズはボクの膝の上でモニタに星域図を展開させる。
「コチラは手薬煉を引いて待ってたのに対し、敵は如何見ても押っ取り刀で駆け付けてるよね?その証拠に後続の艦隊が後から後から押し寄せてる・・・アレは増援で無く間に合わなかった様にしか見えない」
「その点は同感だね」
現段階でも敵の方が数だけは多い・・・それなのに後から夏場の藪蚊の様に湧いて出ている。
おそらくだけどダラス辺りが、帝国領の分割でも条件に共闘する事にしたのだろう。
イヤ奴を担ぎ上げた者達がだな・・・そんなにダラスの頭が回るとも思えないし、奴が出て来たのは反乱軍が衰退し出してからだ。
だから準備してる暇もなく、急遽国境に押し寄せた。
元々ボクが出現しなくても、皇帝陛下や側近の皆さんは専横する貴族に嫌気が刺し、排除する機会を狙っていた。
ファルディウスは戦争する用意は出来てたのだ。
「私達が国境の戦闘に乱入し散々暴れまわった後で、撤退するヴァイラシアン軍に紛れ込んでも気が付く者は居ないと思うのですが♪」
そう上手く行くかな?
「コチラの姿形をヴァイラシアン帝国軍に認識される事無く紛れ込まれば大丈夫かと思うのです」
「距離を取って目視される事を避け、認識を阻害すれば理論上は不可能では有りませんが、無謀である事は変わりませんよ?」
アリスも水を差してくれる。
「スターシップとエルミスシリーズの形状はファルディウス・ヴァイラシアンでも目新しいデザインだから、確認されたら即終了のゴングが鳴りますね。せめて外見だけは変えて置きたいのですが・・・・・」
「それに付いては考えて有る。でも何をやるにしても国境から敵を撤退させないとね♪」
こっちのホーム奥深くまで誘い込む戦法も有るかも知れないが、敵はアウェイで散々好き放題荒そうとするだろう。
全ての国民を避難出来る筈も無く、帝国民から犠牲者を出すのは憚られる。
ヴァイラシアンには早々に退場願おうか♪
「オーライ、一部修正してミューズの案を採用しよう♪」
「それより問題なのは、お爺さまが国境で揉めてる間に来てしまう事です。逃げるのは簡単だけどウザイじゃないですか・・・早々に国境を平定しないと・・・・・」
愛する孫娘にウザイと言われる陛下が少し可哀想だなw
「国土を荒らされたんだからファルディウスだって黙っちゃ居られない。おそらく片付いたら、そのまま逆侵攻を掛けるよね?」
「多分それまでにロイヤルフェンサーが反乱軍を打倒し、一息ついてから攻め込むと思います。その前にはヴァイラシアンへ入り込むべきだと進言します」
アリスの言う通りだろう。
「ワープアウト地点変更、亜空間から出るのは両軍を飛び越えてヴァイラシアン軍の背後だ。ワープアウトと同時に認識阻害用ジェルを放出して」
認識阻害用ジェルとは発泡性の耐圧シリコンだ。
ミサイルや魚雷に仕込んで発射、前方で爆破してバラ撒いたシリコンに自分で突っ込む。
船の形状を完全に隠すが砲など発射すれば簡単に飛び散る。
敵のサーチなども遮断するし、燃焼系ミサイルを至近距離で爆発させれば簡単に焼き捨てられる。
「DX2058-15487に空いてる空間があります」
そこへワープアウトだな・・・
「しかしコンナに正確なデータを良く貰えたよね・・・幾らミューズに頼まれたからって、簡単に軍事情報流しちゃ不味いんじゃないか」
「ジェリス艦長が許可を出してますので問題は無いと思います」
「にしても早く無いか・・・・・」
するとミューズがモゾモゾ放れ様とする。
今回は本気で怒ってる訳じゃ無いので、オシオキだと言ってもジャレてるだけだ。
なのに何で逃げ様とするのだろう・・・普段は脚が疲れたから許してとボクが言う迄、膝の上に居座ってるのに?
ミューズはミニスカートの軍服でニッコリ微笑んだ。
ボクも微笑み返す・・・何か誤魔化そうとしてるな!
ボクはミューズの肩を掴んだ。
「何を隠してる?」
「な・・・何も隠して無いよ♪」
スカートの裾を直す仕草が何か怪しい。
ちなみにファルディウス軍の女性用の軍服は、タイトとフレアのスカートとパンツスーツを自由に選べ、ミューズの様な膝上ミニのフレアスカートは若い軍人さんや学生任官者が好むそうだ。
ついでにジュリア中佐はパンツスーツ、ココさんもフレアのミニスカートだ。
「アリス、何か知ってる?」
「ミューズ様に情報が届くスピードが早いのは、ラグナレク通信オペレーターのココ・ナッシュ少尉と密約を交わしジェリス艦長に直接要望を届けるからです」
明らかに逃亡を図るミューズを押さえ付ける。
「その密約って何なの?」
「報酬を渡してます・・・その・・・キッド様のシャワーシーンの盗撮画像データ・・・前もって言っときますけど、私は止める様に言いましたからね!」
ミューズが恐る恐る振り返って言った。
「お・・・お兄さま、ゴメン、許して・・・・・」
誰が許すかバカ者めっ!
ボクはニッコリ微笑むと彼女のミニスカを捲って腰の後ろで巻き込みペロリとショーツを下す!
さっき迄は本気で怒ってる訳じゃ無かったのでスカートの上から叩いたり撫でたりしていたが、これからのは本当のオシオキだった!
「ゴメンなさいっ!もうしません、もう絶対にしないから・・・・・」
ジタバタ暴れるミューズの尻に、ボクは思いっ切り右手を振り下ろした。
「ボルクス艦隊を撃退しました。ボルクスは自決、艦隊は背後に後退させました」
そう報告するが事実は少々違っている。
ボルクスは断固徹底抗戦とか叫んでたが、諫める部下が沈黙した後に銃声が響いた。
多分部下に見限られた。
「お疲れ様、お嬢には悪いが上方の突出した艦隊を叩いて貰いたい」
「じゃあ左翼は私が受け持とう」
レプトン通信で話しながら敵に当たる。
この温い雰囲気がファルディウス風だ。
「しかし中々崩れませんね?」
「まあ敵も数だけは有るからな・・・地道に削るしか無いが」
「アレッ、何か中央の圧が減った様な・・・・・」
観測オペレーターが妙な事を言い出した。
「イエ明らかに敵艦隊の中央部が密度を減らしています。その為に敵艦隊の中央が窪んでる形に・・・・・」
「コチラの攻撃で無く敵艦隊内で爆発を確認しました」
「何かが敵艦隊内で高速で移動・・・内部で敵艦を攻撃してる様です」
この合同艦隊を指揮する3人の提督が溜息を吐いた。
「そう言う非常識な戦い方する子には、1人しか心当たりが有りません・・・・・」
「と言うより奴しか居ないだろ?」
「まるで寄生虫みたいな戦い方する奴だな」
三人は揃って苦笑い。
その寄生虫みたいな人は・・・・・
「コラッ、ミューズ狙いが粗いぞ!」
ヘッドショットならぬブリッジショットを外したミューズをキッドが揶揄う。
「オシリ痛くて集中出来無いんだもん!」
ミューズが頬を膨らませる。
「自業自得だろ?それともオシオキが足りなかったか?」
「反省してますから、もう許してよ~~~っ!」
ミューズは半泣きに成って謝罪する。
シィーゲル小惑星群からココ迄はワープでも2時間弱かかる。
その間にミューズは百叩きのオシオキをされ尻が真っ赤に腫れ上がり、その為にパイロットシートに座ると尻がジンジンと痛みを発している。
「こんなに痛く成るまで叩くなんて酷い・・・お兄さまの意地悪っ!」
そう言いながらモノ過い速さで周辺の敵をロックオン、直後にプラズマブラスターで前周囲攻撃を掛ける。
リザルトは即アリスが計算する。
「48門で2連射し96発全弾命中、48隻の敵艦船・艦橋に2発づつ撃ち込みました。その内46隻が撃沈・沈黙しました」
「流石にコレはボクには無理だ・・・・・」
「エッヘン♪」
正面に敵の大型戦艦が集中してる。
と言っても戦艦同士は距離を置いて、進行方向へ重なって見える配置なのだ。
問答無用で(実際は翼じゃ無いけど)両翼のマルチブラスターでプラズマ弾を射出、大型戦艦が次々と火を噴いた。
「コレは私には出来ません♪」
「エッヘン♪」
夫婦漫才をしながら敵艦隊の中を逃げ惑った。
「ところで隠密行動を続けるには認識阻害用ジェルが大分剥がれ落ちてます。着弾した訳では有りませんが、この高機動では流石に・・・・・」
宇宙空間で空気との摩擦は無いが、それでも急激なGや慣性が働いて少しづつジェルが剥がれ落ちる。
この船でヴァイラシアンに潜入するのだから、成るべくデータは残さない方が良い。
と言ってもエルミスシリーズの情報位流れてるだろうから、見付ったらボクの船だと丸解りだけどね!
それでも敵に流れる情報は少ない方が良いだろう。
「もう一発だけ阻害ジェルを使おうかな・・・でも敵に渡るのは避けたい。後どれ位持ちそう?」
「このペースで戦闘継続するなら、30分から1時間と言う所です。スターシップ自体の光学兵器の熱が艦体を温め過ぎ、地味にダメージをジェルに与えています」
流石に敵の艦隊は簡単に引き下がらないだろう。
「そもそも戦闘が始まってるのに総司令官が決まって無い戦闘何て有り得るんですか?そんな御馬鹿さん達と、我が国は長年戦って来たと言うのですか!」
ミューズは本気で怒っている。
ウン戦って来た相手が低レベルだったてのは、地味にプライドが傷付くよね♪
「敵の通信は傍受しながら情報整理してますが、この場で内容の把握するのは流石に無理かと思います。ソレでも有力な指揮官が数名リストアップ出来ましたが・・・・・」
十数名の有力者が艦隊の彼方此方に散らばっている。
全員殺すのは非現実的、しかも未だに誰がトップに座るか揉めているらしい。
「敵ながら大丈夫なのか?」
と思わず思ってしまう。
するとアリスが、
「中破した艦艇が後退してますが、敵の通信を分析した所、後方に補給部隊と要塞が控えてますね。場所は敵艦隊後方500ベッセル、小惑星を要塞化したモノらしいですよ」
ミューズとアリスが戦闘をこなしながら分析したそうだ。
「お手柄だ二人ともっ!ジェルが剥がれても構わないから、全速力で敵を突っ切れ!!」
「如何成ってんの・・・コレ?」
ジュリア中佐は呆れ顔で言った。
戦闘は継続されている・・・されてはいるのだが、ファルデウス帝国軍が半ば蚊帳の外へ弾き出されている。
どう見ても艦隊内を飛び回るスターシップに集中し、艦隊は隊列を乱しながら後方へ100ベッセル近く後退していた。
軍学上有り得ない後退の仕方で、しかもファルデウス帝国軍よりキッドを如何にかし様と揉めているらしい。
「オイ、お嬢・・・アレ何だか分かるか?」
意味不明の敵の行動にカペターズ大将が質問する。
「キッド君を落とそうと自棄に成ってる様です。と言うよりキッド君の進行を邪魔してる様ですね・・・コチラからは艦影が濃いので見えませんが、閣下の艦から後方を望遠観測出来ますか?」
「やってみよう・・・成る程、宇宙要塞と補給部隊が有るな♪そちらに向かおうとしてるキッドの奴を留め様としてるらしい。ドチラにしろ・・・・・」
「チャンスだな!」
三人の提督が悪い笑みを浮かべると、全艦隊が前進を始めた。
「あの船を何とかしろっ!」
司令官が怒鳴り散らすが何も出来ない状態だった。
あの船は有ろう事か我が艦隊の中を自在に飛び回り、友軍の艦船を片っ端から沈めている。
それも信じられないスピードでだ!
しかも包囲を崩せば我が艦隊の後方に進もうとする。
そこには補給部隊と要塞が待機しており、行かせる訳には行かないかった。
「何としても・・・あの船だけは!」
キッドを包囲した侭でヴァイラシアンの艦隊は後ろへ後ろへと押し込まれている。
そして包囲が崩れたら、一気に懐に飛び込まれ要塞を攻撃するかも知れない。
「要塞に向かってくれるなら良いのですが・・・そんな筈は有り得ません!」
部下が注進する。
幾ら攻撃力が非常識に強い艦でも、要塞を単騎で堕とせる筈が無い。
逆に要塞からの攻撃で沈められてしまうだろう。
あの船が背後に向かおうとしてるのは、要塞周辺で待機してる補給部隊だ。
コレだけの艦隊は要塞内に備蓄して有るエネルギーでは到底足りる筈も無い。
そして要塞内に全補給艦を収容出来る数では無いのだ。
「この侭では、あの船に包囲を突破されます」
「止むを得ん・・・シュターフ要塞に補給艦を下がらせる様に打診しろ」
暫らく時間が経過した。
「シュターフ要塞のゲンク指令が、要塞が落ちる筈が無いから補給部隊を逃がす必要も無いと・・・・・」
「馬鹿かアイツはっ!」
そもそもコノ侵攻が無計画過ぎだ!
総司令官も決めずにダラスに唆され、国境に大量の軍を集結させた。
しかも皇帝の鶴の一声で進軍を開始、何を考えているのだろう?
「国民の税金で給料を払われてる義務感から残っていたが、そろそろ潮時かも知れないな」
何とか離脱して逃亡するのも良いかも知れない。
一度故郷に帰って妻子と両親を連れファルデウス帝国に亡命しようか?
「オリバー提督が包囲を崩してアノ船に・・・包囲を抜かれました!」
だから我が国の貴族共は・・・・・
戦艦や巡洋艦と擦れ違いながら突き抜けると、そのままミサイルと魚雷を躱しながらボクの船は敵艦隊の背後を疾駆する。
その向こうには大量の補給艦隊が、その前に小惑星を刳り貫いて建造した要塞が在った。
「めっけた♪」
ボクは加速しながら敵要塞に向かって突き進む。
要塞の各所から光学兵器の砲塔や航宙ミサイル射出機が火を噴いたが、打ち落とし躱しながら前に進んだ。
「周辺の輸送艦を狙って来ると思ってたので慌ててますよね・・・全守備艦隊がコチラに向かって来ます」
んなモン言われ無くても解っている!
全砲塔をアグレッシブにしたまま前に進み続けた。
「ビームキャノンと両翼のマルチブラスター、それにリニアキャノン以外はミューズとアリスに任せた!大型ブラスターは中途半端だから封印して」
艦船を攻撃するには威力が高過ぎ、要塞に使うには火力不足だ。
「じゃあ私はレーザー砲塔を担当します」
「その他の兵器は私が・・・ブラックホールダウンは?」
「そんなモノ使われて堪りますか!絶対使うなよ、フリじゃ無いからな!!!」
惑星ドコロか星系だって潰せる、そんな代物を簡単に使われては堪らない。
若干背後からの攻撃が濃いが全体的に360°全方位から攻撃されている。
ボクは操船しながら前方の敵に集中し、後部はミューズが担当、接近してくる敵にはアリスが警戒する。
「451~っ、452~っ・・・・・」
「ミューズさん・・・お願いだから、その気が抜けるカウントはヤメテ!」
「は~いっ♪」
撃退する敵機の数をカウントする主人公の描写は、日本じゃネタに成る程メジャーな代物だ。
だがミューズの場合・・・撃墜してるのはロボットで無く艦船だったりする。
船一隻の重さが軽い事・軽い事w
「アナタだって結構良いペースで沈めてますよ」
アリスが呆れながら言った。
ワイズマン・ライブラリーと合体してから直接会話する様に成り、ヤケにアリスは人間臭くなっている。
そのアリスが前方の様子をスキャンしてディスプレイに表示した。
「麦粒を立てた様な形をしてる小惑星です。物凄い集中砲火ですが、側面ほど両先端部は火器の密度が濃くありません」
「そこがコノ要塞のNフィールドってコトね♪」
だが狙う必要は無いだろう。
敵の艦隊は当然ながら防御力の低い所をカバーする。
それよりソロソロ・・・・・
「敵の艦隊が形を崩し出しました。後方に避難していた補給部隊が、算を乱して散ってますけど・・・・・」
「あの人達なら気が付くでしょう♪」
ボクに気を取られてる間に、後方から大回りして周り込んだ艦隊が、背後から補給艦を襲う。
そんな大回り普通はしないだろけど、あの艦隊ならそれが出来るんだよね♪
「こちらロイヤルフェンサー第一艦隊・旗艦エルミスⅡA型巡洋艦フリッパー、撃沈に拘らなくても良いからエンジンを確実に打ち抜きなさい!外したらオシオキよっ!」
ノリがいいねジュリアさん♪
同時に敵方の通信か「なんで周り込まれてる事に気が付かなかった」と叱責の声が響く。
あの船は早いんだよ・・・半端無くね!
「ジュリアさん・・・何か性格が変わってません?」
「ってよりヤケにハイに成ってるな・・・まあ獲物が多過ぎて興奮してるんだと思うけど」
補給艦・輸送艦の類が足止めを喰らうと、艦隊内から離脱するモノが現れる。
逃げる燃料がある内にトンズラしようと思ってるんだ。
当然だが・・・ボクは見逃す♪
ジュリアさんはポイント稼ぎに行くけど!
別に撃沈数競ったりジェノサイド楽しむ趣味は無い。
その思想はファルデウス帝国軍でも同じ様で、功績を計算する算出法で撃沈・破壊数より鹵獲・回収数の方が高く評価される。
ちなみにヴァイラシアン帝国の場合は、撃沈・大破・中破しか功績に反映されない。
ジュリアさんも出来る限り撃沈までしない様にしてる・・・ただし降伏しといて砲塔向ける奴や、断固として戦い続けるモノに容赦はしない。
「要塞がマダマダ元気だな・・・黙らせる方法あるか?」
「流石に内部のスキャンは妨害されてます。流石に司令部がドコに有るのかは・・・・・」
「一番奥深くじゃ無いかな?」
ボクがアリスとジュリアさんと話してると、ミューズが楽しそうに言った。
「大体アソコ等辺だと思うよ♪」
「何で分かるの?」
「比較的、防御が薄い場所ですよ?」
さっきも言ったが要塞が在る小惑星は、麦か米の粒を立てた様な形をしている。
その上の方、一番先端の尖った部分をミューズが表示したマーカーが指している。
「お兄さまも何時か言ってたじゃないですか・・・頭の悪い家柄しか誇る者が無い貴族と言う生物は、一番上で踏ん反り返りたがるって♪」
「皇族のオマエは、その貴族の代表格だよな?」
宇宙空間で上の方と言うと語弊を感じるかも知れないが、確かに無重力下の宇宙空間には上下左右なんて無いかも知れない。
それでも人間や人間が造る構造物は天地を決めないと作業がし難い・・・そこで宇宙では重力の影響下にある星系の、中心に有る恒星等の北極を天つまり上・南を地(下)に見立てる。
「ただ比較的防御薄いっても、コレって誤差の範囲内でしょ?」
要塞から集中砲火を浴びせられ、思う様に近寄れない。
その内に認識阻害ジェルが完全に焼け落ちる。
ボクはジュリアさんを通信で呼び出した。
「なに?」
「ジュリアさん♪ボク達って軍人じゃ無いんだから、これ以上手伝う義務は無いですよね」
ジュリアさんがギョッとした顔をする。
「チョッとソンな薄情な事言わないでよ!報酬だったら払うから・・・」
「でも戦ってる内に煩い爺様が来そうで・・・・・」
ミューズじゃ無いけど確かにアレは煩わしい。
ただ要塞の攻略戦など、本来は数か月かけ行うモノだ。
ファルディウス帝国側も国境周辺には秘密裏に要塞を建造してるが、今回は場所とタイミングが悪かった様だ。
「当然近くに要塞が在る方が有利に戦えるじゃない!つまり敵の方が有利なんだからさ、せめてアレ落とすまで付き合ってよ」
ジュリアさんは要塞だけは如何にかしたいと思っている。
「取引しませんか?要塞を即沈黙させて上げますから・・・・・」
「補給に情報の隠蔽、その他諸々何でも相談に乗ります♡」
話が早くて結構な事だ。
「ミューズ、凍結粒子弾用意・・・オマエの読みを信じて、目標は要塞の天辺だ!」
「ミューズ様の読みって?」
スターシップを上昇させる。
「要塞のドコに司令部が有るか・・・踏ん反り返る貴族は高い所がお好き♪」
「ミューズ様、後でお話が有ります!」
ジュリアさんの怒ってる声に、ミューズの笑い声が重なった。
「ミューズとキッドはドコへ向かった?」
顔が着くかと言う位に近付けて、怒れる皇帝はジュリアに迫った。
「申し訳御座いません・・・要塞攻略の交換条件に、情報の秘匿を約束させられました」
「オマエは帝国軍人だろう?」
そう皇帝は詰め寄るが、
「しかし軍事情報なら報告する義務が有りますが、これは私的な情報で・・・あの二人は軍人でも無いし」
「じゃあ祖父として聞こう・・・ジュリア、ミューズは何処へ行った?」
そう来たか。
「如何したジュリア・・・お爺ちゃんに白状しなさい!」
「厳密に言うと陛下は私のお爺ちゃんじゃ無いし」
私の祖父は陛下の弟だ。
それでも私は子供の頃から陛下の事を、お爺ちゃんお爺ちゃんと言って懐いていたが・・・・・
「キッドを見習って言う事を聞かない孫娘達は、皆が見てる前でも構わないから尻を引っ叩く事にしようかな・・・・・」
「セクハラですよw」
ジュリアはコーヒーを注ぎながら笑って言った。
「ミューズはマダ子供だ・・・オマエもだがな!だがオマエは学生と言え任官してる。戦闘に赴くのも仕方ないだろう。それでも出来たらオマエ達に戦闘が予想される旅などさせたく無い、まして敵国の中へ等・・・・・」
ジュリアが眼を細めながらコーヒーを手渡す。
「で奴等は要塞を・・・一体如何したら小惑星を真っ二つに出来るんだ?」
巨大な麦粒の様な歪なラグビーボール状の小惑星が、縦真っ二つに割れている。
「上から急降下しながら端の最上部にレールガンを・・・構造の問題が有ったらしく、着弾の衝撃で二つに割れました」
不本意なジェノサイドに成ったが仕方がない。
こう言う風に要塞が破壊されるなど、誰も想定して無かったのだ。
「で要塞一つを単騎で潰し、そのまま補給を受けて敗走する艦隊について行きました。まあ正直に言うと情報の秘匿を約束させられましたが、実際は何も知らないんですよ。言わなかったし・・・・・」
「アイツ等・・・・・」
皇帝は溜息を吐きながら眼を覆った。
「私は首都星に戻る・・・他の艦隊と合流次第、ビジーズを総司令官にして逆侵攻をかけるんだ。奴等め・・・長い付き合いだったが、今度こそ歴史から消してヤル!」
「半分八つ当たりですね?」
ツッコミを入れるジュリアに、空かさず来た皇帝の反しは、
「煩い!」
の一言だった。
 




