スターシップを再武装する!
目的の物は見付らなかったが、気落ちしてる時間も無かった。
時間制限が有る訳じゃ無いが、ミューズには早く身体を取り戻してやりたい。
翌日と言うより時間的に明け方位に成るが、アイスコフィンが到着したのでスターシップを乗り入れる。
宇宙で翌日だの明け方だのと言う表現は可笑しいかも知れないが、あくまで体感時間的なモノで指し示してると思って欲しい。
全ての武装を剥ぎ取って飢えたハイエナの様な様相の3人に、ジャンケンをさせながら装備を分配していった。
アイスコフィンの一番大きなドックに何故かジュリアさん達だけでなく、彼等の船のクルー迄集まって背後で大声を張り上げ応援している。
「良い装備は自らの生還率を上げますから、彼等も必死に成るのでは?」
ミューズに言われるが、違うよ・・・アレはお祭り気分で騒いでるだけだ!
それより、この世界にもジャンケンが有った事が面白い♪
「良しっ、ビームキャノンはフリッパーが頂いた!」
「エ~~~イッ、少しは父に孝行し様とは思わないのか!」
「敬老の精神が足りぬ娘だ!」
3人ともノリノリだ。
正直言って付き合い切れない部分も有るので、後は彼等に任せて場を後にする。
「コッチだって大変なんだから・・・・・」
外装は全て剥がしリサイクル施設に運搬してあり、そのブースがアイスコフィンの中に有るのだ。
砲塔や接続端子・ビスやネジの規格は帝国のモノに合わせて有るので、それに合わせて新しい武装を造れば良い。
だから再利用が容易いので、ドックの様な騒ぎが起こるのだが・・・・・
ジンジャーエールを飲みながら休んでいると、ホクホク顔のジュリア中佐とガッカリするジェリス・ウェルム両艦長が入って来る。
ウェルム少将も艦隊司令官ながら、座上艦の艦長も兼任してるのだ。
「親不孝者め・・・こんな娘に育てた覚えは無いぞ!」
「虐めてやる・・・パワハラがナンボのモンじゃ!」
二人はボロ負けしたらしい!
「そんなコト言ったって、ジャンケンで決めようと言い出したのは誰よ!」
二人は悔しそうに言葉に詰まった。
如何やら二人の方が言い出したらしい。
「仕方無いなぁ・・・良し、今回は二人に全部譲りましょう!」
「「おおっ!」」
良い大人が子供の様に喜ぶ。
「その代わりキッド君、私には新しい装備一式・・・・・」
「「ズルいぞっ!」」
訂正・・・3人とも子供染みている!
「主兵装のビーム兵器とレーザー兵器を併用するのは良い考えよ♪二つとも光学兵器だけど、特性が全然違うから・・・どちらかが通用しない場合や、威力を減退させられた場合に互いに有効活用出来る」
「副兵装のビーム兵器を船体各所に分散配置するのも良い考えだ。だがこのビームファランクスは対宙防衛がメインだろ・・・敢えて砲門数を増やし収納式にすれば良い」
専門家のアイデアを基にスターシップの改造計画が練り上がって行くと、やはりボク達では素人だったと思わされる。
武器を設置する場所一つにも、有効性や理由が有るのが解った。
「それにブラスト兵器はエネルギー弾にも物質弾つかえるから多用する方が良い」
プラズマブラスターの話だった。
ちなみにココで言う❝ブラスター❞は熱線銃や火炎放射器と言う意味で無く、❝ブラスト❞または❝ブラスティング❞など爆風や爆破・発破・吹き付けると言う意味から来ている。
エネルギーや物体の弾丸を、叩き付けると言う意味で使われている。
「じゃあビームとレーザーは降ろさなくても良いかな?」
途端に3人の顔が落胆に彩られる。
「代わりの砲台は造りますから♪」
顔色が変わった・・・単純な人達だ!
まあコッソリとダウングレードしとくけどね♪
意地悪で無くジェネレーターの出力から、大出力の光学兵器は使い熟せそうも無いからだ。
それに進み過ぎる技術は、もう少し様子を見ながら流したい。
主武装は今まで通りだけど少し改造しよう。
先ずは中性子粒子砲と荷電粒子砲を兼用出来る❝連装ビームキャノン❞に船首両サイドの大口径単装❝プラズマブラスター❞更に❝リニアキャノン❞は、そのまま継続使用する。
それに対しレーザーキャノンは出力だけで無く、焦点距離・照射範囲も可変可能なタイプに変更し名称も❝高出力イオンレーザー❞に変更した。
ただし改造し名前を代えただけで中身はほぼ一緒♪
ビームファランクスカノンは船体・ランチャー共に全て廃止し、元々使ってた❝ビームファランクス❞に16連装ランチャータイプにする。
もともと速射砲的に使ってたし、今まで通り防宙・防空と同時に小型機の迎撃にも使用する。
ちなみに地球の艦上速射砲と違い16連装なのは、押し寄せるミサイルや魚雷を速やかに確実に落とす為だ。
宇宙戦だと押し寄せるソレ等の数が半端でないんだ。
船体の両サイドの張り出した部分に、正面攻撃用の単装❝マルチ(プラズマ)ブラスター❞を、12門を上下2列・左右で48門装備する。
これは小型のプラズマブラスターで実体弾・エネルギー弾、共に対応出来る優れモノだ。
同時に同じ❝マルチブラスター❞48門と単装❝ビームカノン❞を12門を船体各所に分散配置し全方向からの敵に備える。
ミサイルランチャーと魚雷発射管を兼ねた❝多目的ランチャー❞も船首の左右2門づつと船底に左右に2門づつ計4門の現状維持!
「基本的には今まで通り操縦と正面攻撃はボクが、狙撃・精密攻撃と防衛攻撃はミューズが対応するパターンで良いかな?」
「何も問題有りません」
3人の顔色が変わる。
「キッド君・・・キミ、殿下にも戦わせてるの?」
「不味かった?」
命を懸けて同じ船に乗ってるんだから、当たり前だと思うのだけど?
「マズ・・・くは無いか?陛下もアア言う人だし・・・・・」
「でも殿下が戦ってたのか?」
「今までもか?とても戦うタイプに見えないのだが?」
なんだ問題が有るんじゃ無くて、ミューズが戦う娘に見えなかったのか!
だけど・・・
「・・・・・だもん」
ボクは思わず小声に成った。
「どしたの?」
聞き取れなかったジュリアさんが聞き返す。
「だって・・・ミューズの方が攻撃上手なんだもん!特に狙撃は・・・・・」
「それを言ったら操船と反射攻撃は、お兄さまに敵いませんわ♪」
要するに格闘戦的な攻撃や操船しながらの攻撃はボクの方が上手いのだが、腰を据えて長距離射撃や小さな攻撃目標を打ち落とす事に掛けてはミューズに軍配が上がる。
地球でもシューティング系のゲームはミューズの方が上手かった!
逆にアクションや格闘系のゲームはコッチが上だ。
「い・・・意外ね」
ジュリアさんが呟く。
シュミレーションを何度かこなして武装のバランスが良い事を再認識した。
やはり専門家のアドバイスは頼りに成る様だ。
ボクはドローンに出す指示に若干の変更を咥え、シュミレーションルームから出るとドックへ向かう。
途中の宿泊室からジュリアさん達の声が聞こえる。
何だかんだ言って最新装備で船を固められ、皆が喜んでいるらしい。
ボクはドックに入ってスターシップ前のデッキチェアに腰掛けた。
「お帰りなさい。コチラでもモニターしてましたが、やはりプロの見識は違いましたね」
「そりゃボク達は軍人じゃ無いモンな♪」
学校に行ってたらマダ中学生のボクに逃亡したお姫様だ。
正直言ってココまで戦えた事が奇跡なんだ。
「ミューズ、正直に言え・・・大丈夫なのか?なにか引っ掛かってるモノは無いか?」
「父親を殺した事ですか?」
実際殺したのはボクだが、やろうと思えば彼女は阻止する事が出来るトコロに居た。
見殺しにしたのだから、実質殺したのと大差ないだろう。
「正直に言います・・・全く悲しくは有りません。本当ですよ・・・でも何か、心に空白が出来た様な気がします。それだけです・・・残酷な娘だと思いますか?」
「全く思わないね」
ボクはそう言ってボールを取り上げ起動させ、頭の代りに撫でて上げる。
モニターが無いので表情は分からないが、彼女が眼を細めている様な気がした。
「お兄さま、お願い・・・」
「何?」
「そのまま暫く・・・良いですか?」
「良いよ♪」
ボクは彼女の頭を撫で続けた。




