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ナイスミドルな艦長に命を預けられる!

「丁寧な御挨拶、痛み入ります・・・こちらも名乗りたいのですが残念ながら、コールドスリープを緊急解除した所為か記憶が定かで無く、辛うじて船の操縦法は覚えているモノの、それ以外の記憶が失われて居ります。また船にも当該データが無く、船体名❝スターシップ❞以外の公表は出来ない状態です」


 彼の背後で囁く声が聞こえカチンと来た。


「勿論ジェリス艦長の左斜め後ろの方が言う通り、ボクの言ってる事が嘘である可能性を否定出来ません。信用出来ないなら離脱しますので、どうか仰って下さい」


 意地悪い事を言うと、彼の背後で殴る蹴るの音が聞こえる。

 まあボクに見捨てられたら、救助が来るまで漂流しミイラに成る事に成る。


「確かに貴方が怪しいのは確かです。ですがコチラも貴方にすがる以外生き残る道が無い・・・協力して頂けないでしょうか?」


「解りました・・・ジェリス艦長の事は全面的に信用し協力します」


 艦長の背後が騒めいた。

 こんなに最初から簡単に、ボクが協力に応じると思わなかったのだろう。


「全面的に信用・・・ですか?」


「ハイ、戦闘中から両陣営の通信を傍受してました。それ以外も・・・それほど筋肉質には見えませんが御強いのですね?18人相手に乱闘して勝つなんて」


 彼は驚いた顔をした。

 戦闘終了後・・・旗艦ラグナレクに他の艦長が集まり、今後の対策を練ったのだった。


 その会話は醜悪そのモノ!

 貴族だけでスターシップを乗っ取り、最寄りの星まで逃げ様と言うモノだった。

 他の兵士を見捨てて・・・イヤ、口封じに殺してだ!


 だがソレに激怒したジェリス艦長は、他の指揮官や艦長を相手に乱闘、応援に駆け付けた部下と共にソイツ等を独房に蹴り込んだ。

 だけど戦艦内の会議室の会話まで、傍受されてたとは思わなかっただろう。


「とにかく一度、対面で話し合いませんか?」


 そう来るとは思わなかっただろう。




 ボクはコチラが伺うと言う意味で言ったのだが、ジェリス艦長は部下を2人連れただけでスターシップに乗り込んで来た。

 一応警戒はしておく・・・今までのやり取りが演技だった可能性も有るし、こちらは子供一人で何時でも取り押さえられると考えてる可能性も否定し切れないからだ。

 だが彼等は武器を一切持たず、さっきのオペレーターお姉さんと副官のオジサン一人連れて来ただけだった。


「取り合えずコレ着て下さいね」


「アリガトウ御座います」


 渡されたのは帝国の女性用軍服らしい。


「サイズが合いそうなのソレしか無かったの」


 まあ子供の服は軍艦に無いだろう。


「現段階で残存艦隊の状況・物資の目録・それに人員数とコレ迄の経過報告です」


 データに眼を通すと溜息が出て来るほど、相当に詰んでいる状態だった。


 簡潔に話を纏めるとファルディウス帝国では恒星つまり太陽を作り出す技術が有り、それを狙ってヴァイラシアン帝国が辺境で開発してたこの惑星に襲い掛かったらしい。

 太陽が作れれば、周回衛星は開拓地として開発出来る。

 だが開発主催者だった貴族がドケチで警備もつけず、開発中だった人工太陽を敵に渡さない為に破壊した。

 一般人の避難も行わず!


「この凶行も報道されており、その貴族は既に逮捕済み、全財産を没収されて死刑待ちです。我々軍も報道で現状を知り、救助の為に我等が派遣されたのですが・・・・・」


 返り討ちに有っちゃったのね。

 ちなみに人工太陽の作り方は国家機密、他国に流出させたら死刑だそうだ。


「だって開発まで、どの位の期間と資金が架かったか・・・それら代償も払わずに技術だけ寄越せ何て、図々しいにも程が有ります」


 オペレー・・・いやお姉さん(ココ・ナッシュ小尉)が興奮気味に言った。


「残存艦22隻・・・戦艦3・巡洋艦6・駆逐艦13、鹵獲艦4の内・・・戦艦と巡洋艦2づつ。大まかな数値ですが軍人1000名・捕虜500名そして民間人1500名!そして最寄りの惑星まで約1か月(スターシップなら1週間)かかり、酸素は50人分しか無いうえ水はソレ以下・・・・・」


「船の数に対し捕虜の数がやたら多くは有りませんか?」


「大型艦が生き残ったのと、殆どが科学者な所為です・・・人工太陽自体を奪う訳には行きませんから、方法を解析し持ち去る積りだったのです」


「それほど重要な技術を使うのに、マトモな警備体制を敷いて無かったのですか?」


 ジト眼でジェリス艦長を見た。


「バカな領主予定者が邪魔しなければ何とか出来たんだが、こちらも巡視中の艦隊で駆け付けた位なんだ!これでも健闘した方だと思うよ・・・キミが来る迄に艦隊の25%を沈められたが、敵に与えた打撃は30%だ。だが敵も補給路を断ったうえ随行してた輸送船団を効率的に潰してね・・・しかも長距離通信システム艦を狙撃して黙らされた。まあキミの船で通信して貰えても、応援が来るには何時に成るのか」


 一番近い惑星はファーレンと言う星で、先程もあったが1か月かかる距離だ。

 どちらにしろ酸素と水の問題が有る。

 水は我慢出来ても酸素を我慢する訳には行かない。


「どの道ファーレンには救助に回せるほどの艦隊は無い・・・だからキミに協力して欲しい」


「近場に酸素を採掘出来る惑星とかは・・・無いな」


 最悪水を採取出来たら酸素も作れるんだけど・・・駄目だ!

 提供された情報、宙域図ではファーレンの方が近い。


「正直言って我々は完全に手詰まりに成って此処へ来ました・・・報酬は出来る限り払うし協力もする。救出優先順位は年少者(こども)が最優先で、次は民間人・軍人・捕虜の順だ」


 まあ捕虜は可哀想だが仕方ないだろう。


「人間の身体を資材として流用出来るなら許可します。責任は私が・・・・・・・・」


 何気に恐ろしい事を言う。

 彼はスティック状の物を差し出した。


「このビデオレターを渡して置きます・・・全ての責任は私に有り、キミは指示に従っただけと言う事にしてあります」


 何かが引っ掛かった。

 いやスグ明確に理解出来る。

 この男は死ぬ気だ。


「こんなモノ渡すって事は助かる順は最後に、そして犠牲に成るなら最初に犠牲に成る積りですね?捕虜よりも先に・・・・・」


「そう言うモノですよ・・・司令官とは、では御検討ヨロシクお願いします」


 彼は頭を下げて出て言った。

 部下の方も続く・・・その連絡艇に乗る前に、彼はココに何かを渡していた。


「娘さんに遺書を渡す様に頼んでいる様です。ちなみにαトライシクルに掛けた所、脳波の揺らぎはβ線上に一度もブレませんでした。彼は嘘を吐いて無い可能性が非常に高いと言えます」


 アリスが答える。

 約3000人を一か月以内に移送する・・・普通に考えたら簡単な事じゃ無い!

 そう普通に考えるのなら♪


「彼が船に戻ったら、タイミングを見計らって連絡・・・動かす事の出来る全ての艦長・指揮官を集める様に」


 さあ忙しく成りそうだ♪




「まさか、こう言う発想するとは・・・・・」


 ファルディウス軍の士官が声を揃えて言った。

 まあ普通は考えないかも知れない。

 艦船の中には工房も有り緊急時には足りないパーツを作ったりするが、自分の専門分野以外の物を一から作り出せると彼等も思わない。


「さっさと下剤を飲んでくれ!後が(つか)えてる、出無いなら浣腸でも使ってくれ」


 背後では役に立たない・・・と言っては失礼だが、現状役目の無い民間人から体内を洗浄していた。

 コールドスリープに入れる為だ。


「全力で無人機(ドローン)を廻しています。後は戦艦の残骸が2隻と重巡洋艦2隻、全てエンジンは使えます」


 ココ姉さんが言った。

 彼女は資材の回収と管理をしている。

 撃沈された敵艦も最早鉄屑、有効に利用させて貰おう。


「推進剤は十分足りるな・・・まさか、こんな事を考え付くとは」


 眼の前に浮かぶ巨大なチクワ、いや長さや穴の大きさのバランスから考えたらマカロニかな?

 その中にファルディウス軍の艦艇が収納されて行く・・・と言っても管状に敵の残骸を繋げ中に無事な艦船を収容し、互いの船を連結して巨大な一艘の船にしている。

 そして余った資材で大量のカプセルを量産していた。


「用意が出来た者からコールドスリープに入ってくれ!期間は最長でも1月半、向こうに着いたら起こすから・・・・」


 正確には「着けたら」の方が正しいのだが。

 バクチ的要素が大き過ぎる。


「戦艦でも動かすだけなら数人で出来る。疑似的に一隻の船にして人員を減らし、パーツが崩れ落ちたら拾いながら航行するのか」


 呆れながらジェリス艦長は呟いた。


「姿勢制御は最低限で良い!加速に使ったエンジンは航行中に内部で分解、前方に移動させて組み立て直し減速時のブレーキに使う。時間は無いよっ、モタモタしないのっ!」


 作業をしてるドローンはスターシップのモノだ。

 断然、両帝国製より性能が良い。


「キミの持つ船は凄い代物だな・・・明らかに三世代分は技術が進行してるよ」


「それよりアリガトウ御座います・・・なんか迷惑かけた様ですね?」


「迷惑をかけたのはコチラの方です。生き残る道が見えた途端に・・・・・」


 ボクを捕らえて技術を奪おうと考えた馬鹿が出たらしい。

 彼が直々に粛清した。


「ヴァイラシアンの残骸から水と食料それに酸素が若干手に入りました。これで多少は息が付けますね」


 それでも100名分には届かない・・・このチクワ状の船を動かすに、ギリギリの50人で運行する。

 一か月で必ず着けると限らないからだ。


「スターシップの工房で量産したドローンは、役目を終えたら解体し資材に回します。スターシップには載せ切れませんし、簡単に彼等を信じて技術を渡すのも憚られます。現在の状況なら三日以内に出発出来るかと」


 そうアリスが計算した。




 アリスの予想通り三日後に出発する事が出来た。

 ジェリス艦長から話を持ち掛けられ5日間、その間に用意を整えたのだ。


 先ずスターシップ内でドローンを大量生産し、それで残骸を集めて無事な船や使えるパーツを合体させる。


 同時に3426人分のコールドスリープ用のカプセルを製作し、作業効率から逆算して要らない人間をコールドスリープにしてしまう。

 先ず役に立たない民間人と、信用出来ない軍人と捕虜から!


 次に急ピッチで脱出船を組み立てながら、出来る限り物資とファルディウス軍兵士の亡骸を収容する。

 ヴァイラシアン側の兵士は可哀想だけど無視だ。


 作業が完了次第、不要に成ったドローンを解体し分解する。


 言えば簡単なモノの作業は大変だった。


「この船の艦長は君だよ♪名前を付けて号令をかけてくれ」


 すっかり打ち解けたジェリス艦長が言った。

 立場が弱い為、言葉遣いを選んでいたらしい。


「それでは・・・スタッフの皆さん、今より出航します。衝撃に備えて下さい・・・氷の棺桶(アイスコフィン)号、発進します!」


 途端に皆がズッコケる!


「も・・・もうチョッとマシな名前は無かったの?」


 早速ココさんに文句を言われる。

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