愛機を徹底的に改造する!
陛下が信頼出来る人間を厳選し、スターシップの警備に当たらせる事にした。
マアこの船が現在ミューズの身体だから、晒して置く気に成らないのは理解出来る。
もっとアイスコフィンの一番広い区画をスターシップとエルミスⅡで占領しており、そこは戦闘ドローンに守られてるので警備は万全だと思うんだけどね♪
ボクは種明かしが終わったのでスターシップに戻って様子を見る・・・元々❝要修理状態❞だった船体はフレームを残して辛うじて原形を留めていた。
この際だから船体のパワーと機動性そして防御も含め、全ての性能を底上げしようと思っている。
外装や武装など装備品にエンジンも、スターシップ内の工房区画がフル回転で製造中だ。
「造った時はマダ❝彼❞の英知を引き継いだばかり、知識が定着してませんでしたからね」
カチューシャからミューズの声が響く。
確かにスターシップを造った時、ボクはマダ受け継いだ知識を十分に使える状態では無かったが、今なら十全にイヤ十二全に使いこなす自身がある!
今後は敵が強力に成る事を見越し、ボク達は武装の在り方を再検討し始めてた。
「この世界で確立した技術であるイオンエンジンを使ってたけど、今度は彼が発明した光子エンジンに換装して見ようと思うんだ」
「なら同時に彼が発案した、フォトンラダーやフォトンスタビライザーも搭載して見ませんか?機動性の大幅アップが望めますよ・・・・・」
眼の前に浮遊していたモニターにスターシップの新しい姿が描かれる。
それを見ながら・・・熟ボクは彼の死を惜しく思った。
「何とか彼の精神を、せめてAIに・・・イヤ彼が望まないな」
「そうですね・・・彼は自分の英知の後継者を探していただけですから・・・・・」
ミューズの命を救う事が自分の限界だと彼は言った。
そして自分の英知の後継者にボクを決めた時、彼は自分の旅は終わったと言い残して死んで行った。
その代わり、必ずミューズを助けろと言い残して・・・彼の言葉が思い出される。
「そもそも彼は・・・お医者様ですら無かったのですから!」
ボクの心をクリエイトボディに移し、その身体を使って死に掛けてたミューズを修復した彼は実は医者では無かった。
いや違う・・・医者であり、学者であり、発明家であり、技術者でもある・・・彼に相応しい呼び名は❝賢者❞だろう。
「外見こそエルミスを模したが、中身を構成する技術は彼が全て確立したモノだからね」
スターシップを見上げボクは呟いた。
だが感傷に浸ってばかりは居られないだろう。
「ミューズッ、新しい武装案は出来てる?」
「お兄さまの御希望をベースに纏め直してみました」
ドローンが出来上がったパーツを台車に乗せて運んで来た。
それを見渡し、ボクは口角を釣り上げて呟く。
「ハリネズミみたいに武装させちゃったかな?」
それは少々過剰に見える武装群だった。
二股に別れた船首の付け根その上下左右に配置された4門の単装❝ビームキャノン❞を、中性子粒子砲と荷電粒子砲を兼用出来るのはそのまま、出力や焦点距離を調節出来る2連装のモノに換装して最大出力を3倍にまで高めた。
同時に船体上下左右4か所に配置された2連装❝レーザーキャノン❞4門も、出力調整機能を追加して最大出力は5倍まで上げたモノに換装する。
左右に張り出した翼状の部分に装備された24門のプラズマブラスターと、20連装のビームファランクスを廃した。
その代わり攻撃にも対宙防御にも使用出来るビーム速射砲❝ビーム・ファランクス・カノン❞を、船体各所に24か所、更に8連装ランチャータイプを4門設置する。
そして同時に船首の両サイドに、大口径の単装❝プラズマブラスター❞を1門づつ計2門設置した。
たった2門に減らし攻撃力は減退した様に思えるかも知れないが、実際に出力は24門の時より大幅に上がっている。
何せ新しい1門の出力は、前の24門全部合わせた出力の倍有るのだ!
一方で実体弾兵器の方も充実させる。
8連装小型ミサイルランチャーと大型ミサイルランチャー兼用の魚雷発射管は廃し、小型ミサイル・魚雷も発射可能な❝多目的ランチャー❞船首左右に2門づつと船底に4門設置する。
ちなみに二股に別れた船首部の間に装備した❝ブラックホールダウン❞と、それをカモフラージュする為の大型電磁加速射出砲❝リニア・ランチャー❞は、そのまま変更していない。
ちなみにスペルが同じキャノンとカノンを別表記にするのは、主砲をキャノン・副武装をカノンに分けた為だ。
ボクは武装の一覧を眼を通し、これなら大概の奴等と渡り合っても何とか成りそうだと考える・・・まあ最悪敵わなければ逃げれば良いだけの話だ。
同時に船自体の性能にも舌を巻いた。
これはファルディウス帝国だけでなく、この世界の常識から考えても規格外だ。
「アンタはヤッパリ大した人だったよ」
今は亡き彼に思いを馳せる。
彼の英知はアリスを構成するAIの中に入っている。
遺憾だが地球人の貧相な頭脳では、入り切る代物では無いからだ。
この英知は世界を狂わせない程度に、小出しに世界に流布して行くつもりだ。
一度にバラ撒くと、碌な事を考えない馬鹿が必ず出て来るからだ。
「少し時間が掛かるな・・・まあノンビリやるか♪」
ボクは次にエルミスⅡの改造に向かった。




