ジャジャ馬の尻を引っ叩いてオシオキする♪
皇帝陛下の別荘の綺麗な庭園で、幾つかの浮遊モニターにアイスコフィンの状況が映されていた。
横付けされていると言っても安全の為、ステーションの個人区画からは距離が保たれてる。
肉眼で内蔵されてるドック迄は見え無いので、スターシップやエルミスⅡの姿はモニターで見ていたのだ。
「アリス・・・音声をモニターのスピーカーに連動させて♪」
ボクは外したカチューシャに向かって言うと、それをテーブルの上に置く。
スターシップを映し出してたモニターから、アリスの声が流れた。
「了解しました・・・マスター、コレで良いでしょうか?」
機械的だが愛らしい女性の声が流れる。
「OK♪さてと陛下、紹介します。ボクの相棒でスターシップの管理AIアリスです。アリス、ご挨拶してね」
「初めましてファルディウス帝国・皇帝陛下、私はスターシップの制御管理AIのコードネームALICEです。名前の由来は普段の生活から戦闘 行動までサポ・・・・・・・」
ボクは盛大に溜息と吐きながら、さっきまでリフティングして遊んでいたボールを取り上げた。
大きさはサッカーボール大で表面はツルツル、パールメタリックの乳白色をしている。
「ア~リ~ス~ッ!ホントに挨拶しても仕方無いんじゃない?キミは言わなきゃ成らない事は、そんな事じゃ無い筈だろ?」
「何の事でしょう?」
コイツ・・・ココまで来て惚けるか?
「確かに可能性は低いけど、キミの復活の望みは有るんだ。キミがやった事・やろうとしてる事で陛下が悲しむ事に成っても、何も教えないのは更に酷い事だよ?」
ボクの言ってる事の意味が分かったらしい・・・陛下の眼が驚愕に見開かれる。
それでもアリスは惚ける気の様だ。
「マスターの発言、意味を理解出来ません」
そう来るか・・・でもアリス、キミの負けだよ。
さっきと違い声が動揺して、機械的な声で無く成っている。
「フ~ン、まだ惚けるんだ?ボクはキミの部屋で❝前文明の教科書❞に触れた時、思考適正化プログラムを受けて記憶を取り戻した。このカチューシャを通して繋がってるキミも、同時にプログラムを受け記憶を取り戻した筈だよ?」
「マスターは人間、私は人工知能です」
往生際が悪いな♪
「そう・・・でも有機AIいやキミは人工知能(artificial intelligence)じゃない!キミは人間natural intelligence、そうだよなミューズ!」
皇帝の眼から涙が零れる。
「マスター、私は何を言われてるのか解りません」
強情だなあ。
段々腹が立って来た。
「フ~~~ン、アリスいやミューズ・・・ボクを怒らせる気?」
「ですから何を言ってるのか?」
「2度と嘘吐かないって、地球で約束したよね?」
「私は嘘など吐いてません」
ホラまた嘘吐いた・・・オシオキはキツメに行こう!
「じゃあミューズはタダの人工知能で身体なんか持って無いと言うんだね?」
「当然です」
「じゃあ感覚も無いんだよね?」
「その通りです!肉体が無いのですから感覚など有ろう筈が有りません」
また嘘吐いた!
オシオキLVを1ランクUPだ!
「これ何だ?」
「マスターが先の戦闘前に、工房ブロックに製作させた遊具と思われます。詳細は船長権限でコチラでは把握出来ませんでしたが・・・・・」
ボクは両手に持ったボールに向かって呟いた。
「起動」
ボールが内側から発光し、柔らかい光を放つ。
「ミューズ」
「私はアリスです」
「ミューズッ!嘘吐きはオシオキだよっ!」
ボクはボールを優しく撫で廻す。
次の瞬間、
「キャアーーーッ!」
可愛らしい声が庭園に響き渡った。
「なっ・・・何ですかっ!なん何ですかっ!」
思いっ切り狼狽えてる。
「このボールはね・・・外部刺激を肉体に加えられたとシュミレーションして、電気信号に変えて送る様に造られてるんだ。シュミレーション先は肉体の一部限定だけど」
ボクは更に撫で回す。
「ヤンッ・・・マ・・・マスタッ、止めて下さいっ!」
「何で?身体を持った経験が無いなら、コレはタダの電気信号に過ぎない筈でしょ」
「そ・・・それは・・・・・」
「どう言う事なの?」
ジュリア中佐から質問タイムだ。
「このボールに刺激を与えると、刺激は電気信号化されてミューズに送られるんだ。でも彼女が自分の言う様にタダのAIに過ぎないなら、信号は信号としてスルーすれば良いんだよね?でも彼女に身体が有る、もしくは身体を持った経験があると、このボールを触った刺激はそのまま身体を触られてるのと同じに感じてしまうんだ」
つまりボールが彼女の身体の代わりに成ってる。
「でも何で撫でられただけで大騒ぎを・・・・・」
「それは勿論、」
ボクはガーデンチェアに座ると膝上にボールを乗せる。
「このボールが再現してるのが、」
左手でボールを支えたまま、右手を大きく振り上げた。
「あわわ・・・マ、マスター・・・」
「お尻を触られる感触だからね!」
ボクは思いっ切り景気良く、スパーンッ!と音を立ててボールを叩いた。
「キャンッ!」
ミューズが可愛らしい悲鳴を上げる。
「さあドンドン行くからね!」
景気良く連続的に音を上げ、ボクはボールを引っ叩いた。
「マ・・・マスター止めて下さいっ!」
「悲しいなあ可愛い妹から、マスター何て他人行儀に呼ばれるなんて」
ボールを叩く手は止めない。
意固地に成ってるミューズには少しキツ目にオシオキだ。
「そっ・・・そんな事言わないでマスタッ、ヒッ!」
「ボクの事は何て呼ぶんだっけ?」
ミューズは言葉に詰まる。
昔と同じに呼んだら、自分をミューズと認めるも同じだ。
「嘘吐きのオシオキ何だから、ミューズが正直に成るまでボクの手は止まらないよ!」
「そ・・・そんなぁ!」
そこへミューズに救いの手が伸びる。
「チョッとキッド君、ミューズ様は皇女殿下なんだから!そんなに気軽にお尻叩き何かしては・・・・・」
「その前に血が繋がらなくてもボクの妹です!悪い事をしたらキッチリ罰します。陛下だって身内に甘いだけの人には見え・・・無い・・・・・」
陛下は眼が点に成って放心している。
再起動するまで、このまま置いて置こう!
「第一ミューズだって、ボクが地球で何処かの国家エージェント達と一人で戦った時、オシオキだと言ってナニしたっけ?」
「エッと・・・」
「ナ・ニ・を・し・たっ・け!」
ボクは更に力強くボールを叩いた。
「ひっ、い・・・一時間耐久コチョコチョの刑しましたぁ~~~っ!うわぁ~~~~~ん」
「それだけだっけ?」
更に力強く一発叩いた。
「ど・・・どさくさに紛れて、お兄さまのお尻も撫でましたっ!ゴメンなさっ、ビェ~~~~~ッ!」
「素直に成った所でゴメンなさいしようね!」
まだ手を止めて上げない♪
「お、お兄さまっ!また嘘を吐いて仕舞いました。ゴメンなさぁいっ!」
「謝るのはボクだけじゃ無いでしょっ!」
ハッとするミューズの反応、陛下を見ると優しそうなお爺さんの顔をしている。
「お爺さんを悲しませなくて旅に出たんでしょ?今の姿を見せられなかったんでしょう?でも例えどんな姿でも、君が帰って来たら喜んでくれる。そんなお爺さんじゃ無いのかな?陛下は・・・・・」
「うっ・・・」
「このタイミングだろうと、言わないと余計に言い出し難く成るよ!」
ミューズは暫く沈黙し、陛下も黙って見守った。
無言の時間が流れる・・・だが、
「お爺さま・・・心配を御掛けして申し訳有りませんでした。ミューズは・・・ミューズは悪い娘です」
そう言ってミューズがモニタ越しに泣き出す。
そのモニタを優しく抱き締めると、
「当たり前じゃ馬鹿者め・・・ワシが如何に心配したと思って居る。だが・・・良く帰って来てくれた。ありがとう・・・・・」
ミューズの泣き声が号泣に変わる。




