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30000ぽっちの艦隊を122隻で蹂躙する・・・簡単だよ♪

 担ぎ込まれていた病院から港湾ブロック迄はリムジンもどきで送って貰えた。

 車の中で無理矢理体を解す・・・3日も寝てたから関節や眼の調子が悪い。


「大丈夫なの?ホントに・・・・・」


 本当に心配そうにジュリアお姉さんに言われる。


「ダメでも何とかするしか無いでしょ♪」


 流石に万単位の艦体を堕とせるほど強くは無いけど、それでも敵艦隊に即時対応出来るのはボクのスターシップとエルミスⅡしか居ないだろう。


 港で別れて互いの船に飛び込んだ。

 正直言って時間的余裕は一切ない。


「アリスッ!全システム起動、出航用意」


「了解しましたマスター・・・全システム起動、オールグリーン」


 スターシップの動力部が起動し、微細な振動が伝わって来る。

 その振動を感じるとボクは有る事を思い出した。


「アリス出航準備には、どの位掛かるかな?」


「給電ケーブルと動力パイプを外し、5分ほど掛かります」


 十分だ。


「すぐ行くから準備を続けて」


「了解しました」


 ボクは艦内の端末を起動し、船長権限で工房部にアクセスした。

 あるモノを内密に作れないか、それを作る事は可能か、可能と告げられたので形状は任せ作成を依頼する。


 そしてコクピットに向かって、到着したのは5分後ピッタリだった。


「ボクの寝てる間に補充は済んでるんでしょ?」


「荷電微粒子・ミサイル・魚雷は満載、燃料は満タン、充電はフルチャージです」


 ボクはチェック項目を確認して行く。


「アリス、長丁場に成る・・・先ずはビームキャノンは中性子粒子砲を優先、状況によって荷電粒子砲に切り替える」


「了解しました」


 荷電粒子砲には金属微粒子を使うが、それをケチっている訳では無い。

 中性子粒子砲の方が射程が長く、速射性と節電に優れているから長丁場には便利なのだ。


「港湾管理局各位、コチラ傭兵スターシップ号の船長(キャプテン)キッド・・・出航の許可を求む」


「こちらNo7ステーション・コロニー港湾管理局、帝国軍よりアナタ方の出航を最優先するよう命じられてます。進路オールグリーン何時でも出られます」


「了解、お気遣い感謝する。スターシップ出航します」


 港湾施設内を移動用アームで運ばれて行く。

 やがて港の出口から、一直線に伸びたレーザーサインの上に浮かべられた。


「スターシップ、発進します」


 背後のバーニアが光を放ち、スターシップの船体が加速する。




 背後から艦隊が付いて来る・・・先頭の艦は純白の船体に艦首だけ銀色、エルミスⅡが120の艦体を率いて続いて来た。

 船は動性とスピードに長けた、高速巡洋艦を中心に構成されている艦隊だ。

 エルミスⅡからレーザー通信が入った。


「とてもじゃ無いけどキミの真似は出来ない・・・でも私達は私達()りに新しい戦術を考えた。スターシップみたいに中には飛び込め無いけど、外側からゲシゲシ削り上げるからフレンドリーファイアには注意してね」


「イヤイヤ無理無理!中に飛び込んで掻き回すのに、外側からの攻撃に注意する余裕なんて有ると思う?」


「攻撃のタイミングはリンクして有りますから、イイ子だから素直に言う事聞いて下さいね」


「無茶振りって言葉が有るんだけど知ってる?」


 人の力当てにしてる割には、ボクの事は随分と子ども扱いだよね!


「こちらはズルい大人なんで・・・・・」


 自分で言うな!

 自分だってマダ10代のクセに!


「ハイパーレイ突入しました」


「このままアステロイドベルト手前までハイパードライブで自動航行、その後は手動にて其のまま中央を突破します!」


「って事はハイパーレイの侭でしょ・・・ナニが無茶振りなのよ?」


 良くSFでアステロイドベルト突破と言って小惑星を避けて航行する描写が有るが、この太陽系のアステロイドベルトは地球の有る太陽系のソレと同じ位の密度しかない。

 小惑星同士は可成り、ソレこそウン万kmも離れている。

 と言ってもハイパードライブのまま飛び込むのは、自殺行為と言えなくても可成り度胸が要る行為だ。


 小惑星同士が縫いながら突破しなければ成らないほど密集するのは、この間の海賊が隠れ家に使ってた様な、もっと高重力・高密度な小惑星群である。

 ブラックホールに成るほどの質量を持たなかった天体が、自身の破片や周囲の小惑星を搔き集められるだけ集めて消滅した非常に迷惑な存在で、惑星系同士が衝突しても同じモノが出来る場合が有る。


「アステロイドベルト内壁部到達、自動航行から手動に切り替えます」


「了解、浮遊する岩や氷山に注意して」


 内壁と言っても実際に壁が有る訳じゃ無い。

 ただ星系図を上から見ると小惑星帯は壁の様に見える。

 正確な縮尺で小惑星を描くと、よほど大きな星系図で無い限り肉眼で見えないからだ。


「ああっ、もう・・・十字隊列、後れを取るな!」


 ジュリア大尉の艦隊も細長く纏まり、蛇が進む様に後に付いて来る。

 人が通った後は安全だからだ・・・小惑星同士は離れてても、浮遊する岩石や氷山それに残骸などデブリも有る。


「しかし何かトリックを使ったとか言ってたけど、一体如何やってワープインを誤魔化したの?艦隊が集結してたのは監視してたんでしょ?」


 ジュリア大尉がレプトン通信越しに呟く。

 確かにワープに入る為、亜空間に突入する(ワープイン)時に莫大なエネルギーを使いソレを探知出来る。

 だが別に誤魔化すのは、それほど難しい技術でも無いと思う。


「ワープイン時に外部エネルギーシールドを厳重に張っとくとか、その後に艦船の分だけデブリとか集めてジェネレーターを起動させデコイにするとか・・・・・」


「そんな膨大なシールド張れるモンですか!」


「惑星上やコロニーに設置すれば可能じゃ無いかな・・・アレッ?だとしたら・・・・・」


「だとしたら?」


 ジュリア大尉が怪訝そうな顔をする。


「ワープした時の膨大なエネルギー波を抑えられる様な強力なバリアシールド、繰り返し何度も張ってられないよね?」


「当然そうよね・・・そんなの惑星上のジェネレーター全部使ったって、一度か二度しか張れないもの!それにソンナ膨大なエネルギーを何度も使ってたら、コッチだって気が付く筈だし」


 じゃあ奴等は?


「ジュリア大尉っ!後尾の方から、全艦停止!」


 前方から止まったら玉突き衝突事故が起こる。

 背後に続く艦隊は亜光速でブッ飛んでる宇宙戦艦だ。


「隊列後部より順次停船!背後艦の減速を確認次第、該当艦も減速せよ!」


 ジュリア大尉の声で艦隊に急制動が掛かる。


「大尉っ!アステロイドベルト外壁沿いで、大きな小惑星やデブリに極力隠れる場所を探して下さい。敵は外壁のすぐ向こう側にワープアウトします」


「何でよ?」


 と言いながらレーダーで特大の小惑星を指定、艦隊を三つに分けて停船する。

 その背後に順次続く艦隊が整列をしながら停船した。


「全艦隊、ジェネレーターをカットしレーザー通信のみ使用して下さい。ボク達は首都星から最短距離でアステロイドベルトに突入しました。奇しくも敵の到達地はこの向こう側と考えられます」


 いくら小惑星同士が離れていても大艦隊が通り過ぎるなら、密度が少ない事が最低条件だ。

 30000の艦隊が亜光速以上(巡航速度)で通る以上、当然の事と言える。


「奴等がワープの開始時間を誤魔化し一度で全艦一斉にワープして来たのは、アステロイドベルトに隙間が出来る事を計算に入れてたからです。ワープアウト後すぐに艦隊を整列させ、同時に兵士のコンディションを整えたら・・・一気にアステロイドを突破して首都星に迫る気なんだ」


「それも想定して無かった訳じゃ無いけど互いが出現する衝撃波に備え、アウト時には艦同士の間は無防備な状態で距離を置く筈です。大急ぎで集まっても数時間は掛かるし、そんな事を奴等がするかしら・・・・・」


 そこを襲われちゃ堪ら無いモンね♪


「スターシップとエルミスⅡそれにエルミスⅡに着いて来られる艦隊しか間に合って無いじゃない♪ビジーズ大将やカペターズ大将、両閣下が船団を率いてココまで来るには?」


「あと5時間以上掛かるわね・・・艦隊が集結するだけで!その後で急いでもココまで半日は掛かる・・・・・」


「30000程度ならアステロイドベルトに空いたこの空間にも余裕で入る。コロニーや要塞からのメガビーム砲は小惑星が盾に成る。背後から襲われる心配が無いなら、正面からの攻撃にのみ気を付けて置けばいい・・・・・」


「アステロイドを盾にする気ね・・・・・」


 その時、下士官らしき人が声を上げる。


「時空振動探知、ワープアウト来ます」


 正面の空間に紫電が走ると、黒い空間が現れ中からノッソリと艦体が抜き出て来る。


「次々来るわね・・・ワープ酔いしてる者が立ち直る前に、襲い掛かりましょうか?」


「ジェネレーターを切ったまま沈黙!折角だから、このままお通り願おう」


「チョッと正気?」


 ジュリア大尉が異を唱え様とするが次々と亜空間から出て来る艦隊に、ボクは予定を変更するべきと思った。

 そもそも敵だって警戒位してるだろう。


「背後を心配する必要は無く、上下左右は隙間が有ると言っても小惑星が守ってくれる。奴等は正面からの攻撃に注意してれば、良いと思っているんでしょ?それならば威張るしか能の無い腰抜けの貴族は、背後の一番護衛が密集してる中に居るんじゃない?」


「キッド君、アンタ私に喧嘩売ってる!?」


 喧嘩は売って無いけど揶揄(からか)っております・・・とは言えず口笛を吹いて誤魔化そうとするが、考えたら僕は口笛が吹けなかったので吹いてる真似をする。


「覚えてらっしゃい!」


 ジュリア大尉は頬を膨らませ怒っている。

 さて敵はワープアウトを終えた様だ。

 此方の読み通りヨロヨロと艦隊の隊列を整えながら、同時にアステロイドベルトに空いた空白空間に頭を突っ込んだ。


「全艦沈黙・・・レーザー通信の出力は最小・・・・・」


 流石に万単位の艦隊は迫力が違う。


「情報の正確さに問題が有った様です。実際には32082隻居ます」


 さて何隻沈めたら降参するかな?


「こちらの戦力数は3分の1と言え、絶対に引っ繰り返され無いと言う数でも有りません。この反乱軍を事実上指揮しているマルドゥース公爵も・・・・・」


「マル・・・ドゥー・・・ス・・・・・」


 アリスが反応する。


「そいつが首魁ね・・・何者なの」


「有名人ですよ悪い意味で・・・ミューズ姫を生んだ女の主家筋です。スキャンダルが報道された途端、分家を切り捨てて無関係であると公表しましたが、分家も主家も姓はマルドゥースなんです。おかげで評判は地に落ちて、同じ物でもマルドゥース産は三割引きに成ると言うまで国民に敬遠されてます」


 そりゃ運が悪い奴だな・・・分家がスキャンダル起こしたって本家に関係無いだろ?


「いえ本家も分家と変らぬロクデナシですよ!元々評判最低だったのに、13年前の件で更に底をボーリングしちゃいました」


「しかも虐待されるミューズ姫に原因が有ったとか言い出して、陛下の逆鱗に爪を立てちゃったんです。おかげで陛下に嫌われて領地運営も上手く行かず、結局のところ逆恨みが大半ですよね」


 オペレーターのお姉さんまで喰い付いて来る。


「陛下に嫌われた所為で領地運営が上手く行かなく成ったなら、(あなが)ち逆恨みと言えなくないんじゃないかな?」


「ミューズ姫の母親マルドゥース伯爵家もマルドゥース公爵家も、元々選民思想の塊の様な一家です。公爵の発言でトドメを刺して以来、国民も同じ商品なら多少高くてもマルドゥース産を避ける様に成りましたし」


 うっわ~嫌われたなぁ♪


「マスター・・・お話し中申し訳有りませんが、敵の本体が入って来ました」


 正面から敵の砲火に晒されるなら、本来その正面に艦影を一番集中させるべきだ。

 なのに正面より更に濃い艦影の中、その中心で敵のトップは自分を守らせているらしい。

 ボクの考えてるお貴族様として、典型的なタイプの様だ。


「キッド君・・・この戦いが終わったら、アナタの持つ貴族像について徹底的に話させて貰いますからね!」


 美人のお姉さんを揶揄うのは楽しいなあ♪


「さて・・・ボク達は奴等が通り過ぎると同時に、そのドテッ腹に飛び込むので後はヨロシクお願いします!」


「キミが艦隊側面を食い破ったら、コッチも動き出すね♪キッド君・・・気を付けてよ?」


「了解しました」


 眼の前を艦隊が通り過ぎて行く。

 多分ビジーズ・カペターズ両大将はアステロイドベルトの出口を塞ぎに掛かる。


 そりゃアステロイドベルトを潜ってる途中では、反乱軍も迂闊に包囲等には動けない。

 それでも正面から撃ち合い続ければ最後は数が勝るだろう・・・だが、その最中で艦隊の内部で暴れる命知らずが居たら?


「まるで寄生虫に成った様な戦い方ですね?」


「煩いっ!そろそろ行くよっ、タイミングを合わせて」


 主人の上げ足を取るとは、アリスめ・・・後で覚えていろよ!


「3・2・1・ジェネレーター起動っ、最大推力!」


「オールグリーン、機関正常」


 いきなり出現したエネルギー反応に敵が大騒ぎを始めるが、運の良い事に主砲にチャージして無かった。

 チャージが終わる前に敵に中に飛び込む・・・ボクを狙った高火力のビームが、ジュリアさんの艦隊に向かっては堪らない。

 彼女等はジェネレーターを切ってるから、シールドも張れないし回避も出来ないからだ。


「流石に主砲で同士討ち(フレンドリーファイア)は出来ないだろ!」


 ボクは正面の敵をビームキャノンで狙い打った。

 可哀想だが目眩ましにするので動力部を打ち抜き爆散させる。


「敵襲っ!敵襲っ!短焦点レーザーで打ち落とせ」


 1000m級の大型戦艦がゴロゴロ居る。

 彼等の対空砲なら200m級(実際は200m無い)のスターシップなど、当たれば落とせると思ってるだろう。

 そりゃ当たればね!


「駄目です、速過ぎるっ!狙いが付けられません」


「馬鹿野郎っ、相手は艦橋を狙い撃ちしてるじゃ無ェかっ!」


 機体性能と腕の差だよ!

 怒鳴る前にキサマがやって見たら良いんだ♪


「アリス、レーザーとブラスターはソッチに任せる。効率的に大型艦の艦橋を狙って頂戴」


「了解しました」


 敵の攻撃を躱しながら正面に迫る敵をシューティングゲームする。

 すると壁面モニターに友軍の攻撃シグナルが表示された。


「ジュリアお姉さんの、お出ましかな?」


 高速機動で敵艦隊の表面をなぞる様に航行しながら砲撃する。

 成る程、大した手腕だ・・・密集した艦隊にとって、自分達の艦影を掠める敵艦は、ハッキリ言って狙い難い。

 しかも周囲の小惑星の陰に隠れた艦隊が、絶妙な援護射撃でフォローしている。


「こりゃ撃墜数なら負けちゃいそうだな」


 まあコッチは単艦、アッチは120隻も居るんだから当然だろうけど(笑)

 変則的に動きつつも少しづつ艦隊の最深部へ向かって、敵の攻撃を躱しながら2隻3隻と敵艦を沈めて行った。


「マスター正面2時の方向に500隻ほどの集合が有りますが、中心で守られているのはマルドゥース公爵の船です」


「本命が来たな♪」


 いったん左に舵を切ってから、急回頭してマルドゥース公爵の船に向かう。

 モニターの一部が切り替わり、拡大されたのは趣味が悪い金ぴかの大型艦だった。


「カッコイイと思ってやってるのかな?アレって・・・・・」


「さあ?私には理解出来ません」


 何隻もの戦艦がシールドのパワーを上げながら立ち塞がった。


「ビームキャノンを荷電粒子砲に、シールドごと()ち抜いてやる!」


 正面で大出力シールドを張る艦にビームキャノンを打ち込み、そのままシールドを最大出力にして正面から突っ込んだ。

 4隻の大型艦を沈めたが6隻残っており、それがシールドを張りながらコチラに向かってくる。

 出力差が拮抗し反発圧が溜まって、少しづつスピードが落ちて来る。


「一旦退きますか?」


「そのまま・・・・・」


 ボクはブーストを上げ最大出力を出した。


「打っ飛べ!」


 シールドを破り前進したのはスターシップだった。

 正面から張り合ってた5倍以上ある大型艦が、破れたシールドに跳ね返され船体を二つに折っている。


「普通これで沈むのはコッチなんですけどね」


 アリスも呆れている。

 それでも密集する敵艦隊に飛び込んで、前後上下左右に有らん限りのエネルギー弾をバラ撒いた。

 金色の艦が後退し、黒い艦が数十隻前進してくる。


「対艦魚雷全管射出、同時に対艦ミサイルも時間差で・・・ファイアッ!」


 4発づつの魚雷とミサイルが敵に迫った。

 防宙射撃で狙うが近過ぎて当たらない。

 敵艦に命中すると同時に盾と成ってる戦艦達に飛び込んで、ミサイルや魚雷の誘爆に囲まれながらレーザーキャノンを打ち捲くる。


「防宙弾幕が少々厚い様です。一度退きませんか?」


「退きたく無いでしょ?」


 アリスが黙り込むと同時に、前を塞ぐ船のドテッパラにキャノンで穴を空けた。

 もう少しで金色の艦に手が届く。


「擦れ違い様にレーザー照射、アリス任せるよ」


 一瞬回答に詰まるが、


「了解しました」


 と返答が来た。

 ケツを向けて逃げるマルドゥース公爵の船に、ボクは追い抜きざまに周囲の船に向かって発砲する。

 そしてアリスはマルドゥースの船の機関部と武装を見事に打ち抜き生け捕りにするのかと思った次の瞬間、フルチャージのリニアランチャーが周辺艦隊ごと、見事なまでに焼き尽くした。


「オイオイ・・・」


 今もビリヤード的に吹き飛ばされた残骸が他の艦を巻き添えにして行く。

 最終被害計算・・・アリスがモニターの端に表示しているカウンターは、300を超えてもマダ上がっている。


「効率的に敵を沈黙させられると思ったのですが・・・・・」


 ウンそれは間違って無いよ。

 敵艦の攻撃、手が止まってるモノ・・・・・

 暫くすると敵の中で動きが有った。


「敵の中で同士討ちが始まってる模様・・・降伏を提案した艦に砲撃を加えた貴族が、逆に周囲から袋叩きにされてます」


 だろね・・・包丁と剣で戦えば、剣の方が強いだろう。

 しかし懐に飛び込まれて喉元に突き付けられてるなら、明らかに包丁の方が強い。

 ボクと言う包丁に懐に飛び込まれて切り刻まれ、新たに上位貴族の大型艦と言う大剣が、降伏を申し出るべきと訴えた下級貴族の小型艦(包丁)に切り刻まれているよ♪


「マスターが突き付けてるのは、間違いなく包丁でなく大剣であると思いますが・・・それより残った貴族が破れかぶれで、スターシップに殺到して来ますよ」


 しかし先程までの勢いはない。


「良いじゃ無いか、手間が省けて♪」


 ボクはスロットルを全開で噴かせる。




 大分派手にヤラれて仕舞った・・・スターシップはボロボロだ。


「お言葉ですが殆ど着弾しておりません・・・過剰使用を続けたビームキャノンが暴発し、それに外壁も巻き込まれたに過ぎません」


 煩いなぁ!


「アリスだってレーザー砲台一つオーバーヒートさせて吹っ飛ばしたでしょ!」


「お言葉ですがマスターがオーバヒートさせたビーム砲台は3基です」


 ハイハイ、ボクが悪う御座いました。

 でも仕方ないだろう?


 最後の足掻きを見せた貴族と軍人は、総勢5000強と言った所だった。

 それが全部ボクに押し寄せて来たんだから・・・如何やら逃げるにしても、スターシップの持つテクノロジーだけは奪いたかった様だ。

 コイツ等って頭の構造が、金が無くて強盗に走ったチンピラと変わらないな!


「前もって言っとくけど、帝国貴族は皆コンナのじゃ無いんだからね!」


 ボクに揶揄われてばかりいるジュリア大尉が文句を言う。


「そちらは大丈夫ですか?」


「キミ以上にボロボロよ・・・折角ヴェラニ大尉から新品で奪ったのに!」


 さて最後まで逆らってた5000隻、その2割ほど片付けた所でアステロイドベルト内側にビジーズ・カペターズの両大将が到着した。

 アステロイドの中を逃げ惑う敵艦船に向かって「マダヤルの?」とフルチャージの高出力荷電粒子砲を向けたところ、敵艦隊の皆様は「失礼しやした♪」とばかりにジェネレーターを切って全艦投降の意志を表明した。


「と言っても半数は逃げを打ってるがな・・・10000って所じゃろ?」


 ボクはビジーズ大将の艦でコーヒーを御馳走に成っている。


「アリスの計算だと13000ですよ。追撃戦はしないのですか?」


 ビジーズ大将はしかめっ面をしてる。


「本国の守りも有るし、周辺も警戒しないといけないからな・・・今後の平定までキミも手伝う気は無いだろう?」


「まあ・・・ファルディウス帝国の事はファルディウスの人達が片付け無いとでしょ?」


 そこまでやったらスターシップ一行は完全に皇帝の手先と化し、その後どんなにボクが否定しても周囲はそう思わないだろう。


「取り合えずビームキャノンは大至急復旧させます。そうすれば何とか戦う体裁は整うけど・・・出来れば無茶したくないので、ジェリス艦長が早く来てくれないか祈るのみです」


「逃げた奴等は当分来られんよ・・・簡単に態勢を整えられんほど、徹底的にキミに痛め付けられたんだ。ホントに122隻のみで戦ったのか?こりゃ歴史の教科書に載るな・・・・・」


 まあ32082対122だモンね♪

 非常識にも程が有る戦力差の戦闘だ。


「陛下は建造中の艦船の内、全ての戦艦と巡洋艦の建造を一時停止したわよ・・・今後の新造する艦は全て基本エルミス・タイプにするみたい」


 ジュリア大尉はコーヒーカップを置くと、ボクの両手を握って言った。


「そしたら折角手に入れたエルミスが、うじゃうじゃ量産されちゃうじゃない!私だけのエルミスだと思ったのに・・・・・」


「よほどヴェラニ大尉の調整と、技術の相性が良かったんだろうな・・・量産するエルミスタイプは戦艦と駆逐艦それに巡洋艦を3種類造るそうだ」


 ジュリア大尉・・・手を放して下さい。

 言いたい事は分かってるんだけど、美人に甘えられてスグ言う事聞く様な人間と思ってるのかな?


「キッドく~ん♪」


 チュッ♡

 頬っぺたに温かく柔らかいスタンプを押されてしまった。


「ハァ・・・スターシップと一緒に修理しますから、アイスコフィンが来たらドッグを2隻分空ける様に要請しといて下さい」


「アリガト~~~ッ♪」


 良い感触のスタンプを、もう一つオデコに貰った。

 仕方ない多少は他の船より性能が上に成る様、帝国に流す技術の範囲で少しズルして上げるか(笑)


『良いのですか?』


 カチューシャを経由して頭に中にアリスの声が響く。


「多少は情報を流出させても良いだろう♪オーバーテクノロジーまで行かない程度に・・・悪いけどアイスコフィンが来る前に、スターシップとエルミスの技術を融合させた設計案2~3用意してくれる?」


『そうすればスターシップ自体を求める者は居なく成りますね?』


「残念だけど、そりゃ絶対に有り得無いね」


 例え全ての技術を吐き出しても、強欲な奴等はマダ隠してるモノが無いかと欲の皮を突っ張らせる。

 結果として存在しない宝物を追いかけるのさ・・・本家キャプテンキッドの財宝の様に!


「そうだキッド君・・・」


 ジュリア大尉に首根っこ押さえられた。


「色々とお世話に成るし、その恩は必ず返すけど・・・それとは別に帝国貴族に関して少しお話ししましょうね!キッド君はファルディウスの貴族に偏見持っている様だから」


 そう言うとボクをカフェスペースに連行した。

 その45分後・・・


「ウッ、エグッ・・・キッド君なんか嫌いだ・・・・・・」


 カフェスペースでジュリア大尉を論破し、彼女を盛大に泣かせて仕舞った♪

 自慢じゃ無いが口が回る事に関して、ボクは誰にも負ける積りは無い!

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