ゴンザレスと魔王③
失敗した。
暫定リーダーのハムウェイは、そう後悔せずにはいられなかった。
崖をなんとか登り、魔王城のそばまで来たが、都合良く扉がある訳ではない。
城と言っても人が住む城ではなく、怪しげな岩山の、言うなればダンジョンの方が近い。
外に居ても、飛行型の魔物に襲われるだけなので、様子を伺いつつも中に入る。
崖を登ったばかりだが、長い下り坂の後、広いフロアに出た。
大きな鍾乳洞の空間。
部屋という訳ではなく、中央と右側に道がありその先は見通せない。
光苔があるらしく、ほんのり明るい。
不思議と魔獣は出てこない。
そこでドリームチームは、ようやく息をつく事が出来たが、一様に暗い雰囲気が漂う。
いっそ絶望的と言えるほど。
、、、初めてドリームチームから犠牲者が出た。
生死を確認出来る状況ではなかったが、この高さから落ちて無事とは考えづらい。
もしも、幸運にも水の中へ入ったとしても、跳ね飛ばされた時点で彼女は意識を失っていた。
こんな場所でもなければ、通りかかった誰かに救出される奇跡も、あり得たかもしれないが、、、。
ならば、結論は一つしかない。
誰もがその結論に至った。
確かに戦力としては、彼女は1番下だったかもしれない。
しかし、No.9との連携は1番だったし、彼女の存在は場の空気を柔らかくした。
そういうことよりも致命的だったのは、彼らドリームチームは誰一人脱落者を出したことがなかった。
つまり喪失に慣れていない。
誰もが座り込み、項垂れている。
特にNo.9ツバメの様子は見ていられない。
暴れる訳でもなく表情を動かさず、ずっと涙を流したまま。
同じ村からの出身で、昔からの親友だという。
カレン姫が、ポツリと。
「No.0なら、、、防げたでしょうか?」
彼をご主人様と慕うメリッサ・レイドがそれに答える。
「恐らくは。
あの方ならば、まずあの崖のルートを通る事を、考えなかったのではないかと。」
No.1ハムウェイは、それを悔しいとは思わなかった。
あの男はいつも奇想天外な方法で、状況を塗り替える。
単純な力など使わずに。
そして、全員の心を掴むのだ。
「アレスなら、そうだね。
絶対嫌だと言って、意地でも違う道を選んだだろうね、、、。
人が考えもつかない方法で。」
そう言ったエルフィーナも疲れ切っていたのだ。
普段の彼女なら気付いただろう。
そもそもアレスなら、魔王城に行かないことに。
そんなエルフィーナにキョウ・クジョウは掛ける言葉が見当たらず、結局、項垂れた。
「それでも、今更退く訳にはいきませんわ。」
そう力を込めてソーニャ・タイロンは気丈に言ったが、彼女自身に限らず周りも、彼女が強がっているだけなのは分かっていた。
「アレス様は何処に行ってしまわれたのでしょうか。」
No.8イリスは誰かに問うでもなく、そう言った。
それに答えられる者は居ない。
突然、巨大な魔力の気配を感じて、全員が身構える。
「この魔力の大きさ、魔王?」
カレン姫がエルフィーナに問う。
エルフィーナは、近づく気配を睨みつけながら、首を横に振る。
「、、、分からないわ。でも、禍々《まがまが》しさは感じない。どちらかと言えば、、、。」
「聖剣の気配に近いですね、師匠。」
エルフィーナは頷く。
そして、それは姿を現す。
あわわ、、、。
なんでこうなった!?
カバ魔獣!!
なんで俺をここに連れて来た!
あれか!時間をかけた嫌がらせか!!
ドリームチーム全員が、武器を構えこちらを睨んでいる。
ひーーえーーーー!!!
カバ魔獣の頭の上で手を振る。
誰かー気付いてくれー!
ほら!チェイミーも一緒に!!
最初に気付いたのは、No.8。
驚いたように口を開け、カランっとショートソードを落とす。
あら?武器を落とさず助けて?
カバ魔獣はそこで、歩みを止めて突然、座り込む。
ちょっと地面が近くなったけど、随分高いから降りれませんね〜。
「行きましょう。」
チェイミーが俺の腕を掴む。
ま、待て!
それを世間では飛び降り心中というのだ。
やめろ!
飛び降りるなら1人で行け!
俺を巻き込むな。
俺は首を横に振り、逃げようとする。
チェイミーは不思議そうな顔をする。
ダメだ!コイツ分かってない!
コイツらクラスならこの高さでも平気だろうが、一般人には自殺と変わらんということが!!!
助けを求める。
エルフ女ならわかる筈だ!!
おい!こら!ぼうっと見てるな!
助けろーーーーー!!!
と言うか、口に出して止めればいいんだ。
「この高さから落ちたら死ぬから。」
チェイミーは不思議そうに首を傾げる。
「このぐらいなら死にませんよ?じゃ、行きましょう!」
死ぬから!!
君らの感覚で考えないで!!
行きましょう!じゃねぇぇええええ!!!
そして、俺はチェイミーに引っ張られ、カバ魔獣から飛び降りさせられた。




