ゴンザレスとゲシュタルト⑥
その夜、シュナ第三王女はふと予感がして、目を覚ました。
隣に眠っていた筈の男は、そこには居なかった。
彼はやはり自分には手を出してこなかったのか、とガッカリする。
手を出してしまえば、簡単に王位が手に入ることが分かりながら。
それほど、自分に魅力が無いのか、とショックでもあるが、これでも人より優れた容姿であることは自覚がある。
ならば、やはり彼は王位や人の容姿だけで、手を出すかどうかを考えたりはしないのだろう。
シュナは、上着を羽織り窓の外を眺める。
彼は伝説の英雄のような人だ。
滅亡寸前の連邦王国に突然現れ、いくつもの奇跡を起こした。
魔獣の資源化、毒の治療、そして圧倒的な数の魔獣討伐。
前任司令官のケーロット伯爵の、ゴリ押しで決まったゲフタル侵攻も、彼ただ1人の力で食い止められた。
世界最強チームと呼ばれた魔王討伐軍のナンバーズたちを、叩きのめして。
彼女ら全員が、彼を自分たちの頂点であると宣言する。
世界最強と呼ばれる存在がいる。
曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。
曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。
曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者
曰く、最強にして無敗、世界の叡智の塔に刻まれるランクNo.1も超えた最強ランクNo.0
だが、その正体は一切不明。
男か女かオカマか、年齢も不詳なら、生まれも公爵家の捨て子だとか転生者とか生まれながらの救世主だとか、数え上げたらキリがない。
それら全てを合わせて、誰も見たことがないという。
それが、世界最強ランクNo.0。
その伝説に偽りなし。
「あら?」
その時、夜空に一つの星が瞬き、流れた。
誰かが走り、部屋にやって来る。
「シュナ様!!!」
シュナは、ふと予感がして目覚めた。
その予感とは、、、。
その夜、久方ぶりの大勝利に沸き、そして、疲れ切っていたゲシュタルトの王都は、静かな眠りにあった。
だが、その静かな夜は突然破られた。
昼間を超える魔獣の大群の襲来。
その報がもたらされた時、ゲシュタルト王都には、もうそれを弾き返す力はない。
、、、筈であった。
その僅か数時間前、1人の男が正門から王都を出た。
その男はゲシュタルトの総司令官と呼ばれていた。
王都を襲う進路を取っていた魔獣たちは、突然、前触れもなく何かを追うように、その進路を変えた。
そして、、、、。
多くの者が遠くの方から響く激しい地響きと、激しい揺れを感じた。
すぐに調査団がその地点を捜索。
もたらされた報告は、驚くべきものだった。
魔王城にほど近い場所に、大きな空洞が深く空いており、大量の魔獣の死骸がそこにあった、と。
誰もが気付いた。
誰が自分たちを救ってくれたのか。
その人は、魔獣の大群を誘い出し、魔獣を討伐したのだ。
たった1人で。
そして知る。
世界最強No.0が存在する事を。
世界ランクを刻む世界の叡智の塔。
そこには未だNo.0という番号は、ない。
船着場に無事、メリッサたちが到着した際、シュナが出迎え、彼が大量の魔獣と共に姿を消した事を告げた。
「あー、またですかー。ご主人様めー。」
そう言って、メリッサは自らのこめかみを揉む。
彼女らの誰もが、彼が死んでいはいない事を疑わなかった。
「どうせ、アイツのことだから、また城から逃げ出そうとしたんじゃない?
ま、どっかに居るわよ。」
剣聖の担い手と呼ばれるエルフの女性は、そう言って肩をすくめる。
他のメンバーも似たり寄ったりの反応だ。
「アレス様ー!どうして置いていくんですか〜!!!」
世界ランクNo.8イリス・ウラハラはそう言って、泣きながら剣を振り回す。
そこにシュナはポツリと。
「あのお方は、ゴンザレスという名前のはずですよ?」
爆弾を投入した。
睨み合う2人。
震え上がるエルフと勇者。
我関せずの他のメンバー。
メリッサはついに頭を抱える。
「あんの王女様ホイホイがーー!!!!」
カレン姫などは楽しそうに笑い、
「私もいつかゲットされちゃうかなぁ?
ふふふ、楽しみねぇ〜、ね?メリッサ。」
「お願いします、カレン姫様。もう勘弁して、、、。」
こうして、ゲシュタルトはNo.0の残した数々の策とゲフタルからの援軍の到着により、魔獣の押し返しに成功した。
その後すぐに、ついに魔王討伐軍は魔王城への進攻を開始することとなった。




