ゴンザレスと帝国⑤
11人が作戦がー、決行日がーと話し合っている。
「すまんが、作戦の内容、教えてもらえるか?」
「は!新教祖様には朗報を、お待ち頂くだけで宜しいかと思われます。」
宜しい訳ねーだろー!!
失敗確率100%の襲撃の責任だけ取らされるなど、まっぴらごめんだ!
せめて成功させろや!
「前教祖はどうだったかは分からないが、私は貴殿らにだけ、全てを任せっきりにするつもりはない。
さあ、私にも話してくれたまえ。」
妙に感動した顔で、ヒョロガリヤバい目男の伯爵に見つめられる。
うぇ、可愛い子ちゃんならともかく、狂信者のヤバい目男に見られたくないね!
狂信者は可愛い子でも、ヤダけど。
作戦は意外とまとも(?)だった。
囮の襲撃が各所で行われ、手薄になったガイアパレスに内通者を使い入り込み、皇帝とカレン姫を襲撃するという。
No.2をどうやって?と聞くと、どっかで見たことのある杖。
まだ残ってたのね。
真名を言うと動き封じるやつ。
「ガイアパレスには、現在No.8も居るが?」
そのことを言うと、怪しげな連中全員が動揺し、流石は新教祖様と謎の祈りを捧げてきた。
呪われそうだからやめて?
皇帝暗殺して、それでどうすんの?と聞いたら、新教祖様の威光が世界に広まりますとのこと。
心の底からどうでも良いわ!!!
そもそも、新教祖なしで作戦立ててたんだろ?
新教祖関係ないじゃん!
、、、これ、ヤバいし逃げたい。
今すぐ帝国から逃げれば、なんとかなるか?
逃げようとした瞬間、貴様は偽物じゃー!と襲いかかってきそうだけど!
あ、そうだ。
「その杖は私が持とう。」
「はは〜!」
とマルーオ伯爵。
そして、11人全員の名前を呼ぶ。
うん、全員動けなくなった。
やっぱりこれ、本物だったのね、前見た杖と同じ。
ピクピクしている11人を置いて部屋を出て、そのまま屋敷を出る。
あ、ついでに金目の物を物色しておいた。
大した物は何も無かった。
屋敷だけが立派で金は残っていなかったらしい。
ちっ!しけた野郎だ。
あるいはその作戦とやらに全てを賭けていたか、だな。
成功絶対せんよ?
No.8以外にソーニャちゃんにエルフ女にキョウちゃんにメメに、後、会ったことないけどNo.9。
うん、No.1を除く世界の最強メンバーが全部居るやん。
そんな訳で杖を持って、帝都の詰所に立ち寄る。
「すみませーん。
そこの角で、新教祖っていう人に、この杖と手紙渡されて、詰所に届けてくれと言われたんで、渡しておきますね?」
あたかも落とし物を拾いましたよ?という感じに。
衛士に詳しく呼び止められる前に、そのまま立ち去る。
手紙の中身は、マルーオ伯爵の作戦の計画に杖の効果の説明。
一時的に捕獲しているから、急いだ方が良いのと、詳しくは顎髭男爵に聞けと押し付けておいた。
そのまま、着のみ着のまま帝都を出る。
準備不足での旅など自殺と変わらん?
緊急事態には、仕方ないこともある!!
出来るだけ近い村か町で、揃えれば良いのだ!
そうして、俺はひっそりと帝都を立ち去った。
私、グレック・ノート男爵は、何か詐欺にでも遭ったような気分だった。
「マルーオ伯爵が?」
彼が何かを企んでいるのは気付いていた。
しかし、それを止められるだけの力は、自分には無かった。
男爵と伯爵。
同じ貴族であっても、その立場の差は大きい。
帝国の国難の折、正教団が一致団結して帝国民を支えるよう尽力した。
その後の商業連合国併合の際に、その時に恩を感じた人々の助けで、男爵の地位でありながら、伯爵に匹敵する財を築けた。
それでもだ。
かつての幹部の多くは、少なからず、過激な部分が多く、実は初めの内は新教祖様を信用しているとは言えなかった。
信頼するライラの紹介と前教祖様から真名を聞かされているほどの重鎮ゆえに、新教祖に収まって貰った。
だが、すぐに新教祖様は私の心を掴んだ。
前教祖様の論文を読む。
椅子にただ静かに座りそうする新教祖様は、かつての二面性を持つ前の、優しい前教祖様の姿を思い出させた。
集会や会合の時もそうだ。
新教祖様は一言、時を待ちなさい、とおっしゃるに留めた。
そのすぐ後、集会予定地にしていた場所で、馬車3台による大事故が発生した。
その時間もまた、集会が予定されていた時間だった。
会合については、、、今、分かった。
あの会合では、マルーオ伯爵と10賢者が来る予定であった。
そうなれば、あのおぞましい計画に強制的に、参加させられることになっていただろう。
それを阻止したのは、あの新教祖様。
そうして、彼は去った。
まるで役目が済んだとでも言うように。
「ライラ、良かったのか?新教祖様について行かなくて?」
彼女は私の隣で朗らかに笑う。
「昔のことよ。旦那様。」
元伯爵夫人でもあったライラは、過去の夫とも離縁出来、この度、私の妻となる。
その出来事の中に、幹部になる前の新教祖様の影響があったことは知っている。
だが、それはもう過去のことなのだ。
「そうか、、、。
さて、帝国上層部に弁解に行かなければな。
新教祖様がお手紙してくださっているとはいえ、我が教団の問題。
しっかりと弁明を聞いてもらわねばならない。」
「はい、行ってらっしゃい、旦那様。」
旦那様であるグレック・ノート男爵を送った後、私も出掛ける。
辿り着いた場所は、表向きは場末の酒場。
実際は、帝国第3諜報部隊の隠れ蓑の一つ。
「ライラ。報告かしら?」
そこには、メリッサ・レイド帝国ランクNo.1。
、、、あの人の愛人という噂。
「はい、あの方は海側に向けて、出立されました。」
「、、、そう。相変わらず、ね。」
優しげな眼差しで、あの人を想う美しい女性。
ほんの少しの痛みを思い出させながら、でもそれは過ぎ去った過去。
今はもう、それ以上の痛みはなく、私は新しい夫と幸せに暮らしている。
あの大襲撃の後、正教団を内部から監視する名目で、私は帝国の犬となった。
私の心を暴力旦那の呪縛から解放した、あの人のことを何か知ることが出来たらと思ったから。
でも結局、詳しくは分からないまま。
ただ、上層部のソーニャ隊長やメリッサ様などは、あの方となんらかの繋がりを持っていることは分かった。
とても手の届くような人ではない。
そして、何よりとんでもない人物の可能性も。
曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。
曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。
曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者
曰く、最強にして無敗、世界の叡智の塔に刻まれるランクNo.1も超えた最強ランクNo.0
噂通り、聖者のような人だった。
世界ランクNo.0。
全ては謎のまま。




