ゴンザレスとケーリー、おまけでエルフ女①
世界最強と呼ばれる存在がいる。
曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。
曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。
曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者
曰く、元男でも関係無く愛せる慈愛の人
曰く、最強にして無敗、世界の叡智の塔に刻まれるランクNo.1も超えた最強ランクNo.0
だが、その正体は一切不明。
男か女かオカマか、年齢も不詳なら、生まれも公爵家の捨て子だとか転生者とか生まれながらの救世主だとか、数え上げたらキリがない。
それら全てを合わせて、誰も見たことがないという。
それが、世界最強ランクNo.0
どうもーアレスですー。
ゴンザレスでもいいですが。
いや、もうどっちでもいいや。
ついにエール共和国でも、お尋ね者となりました!
はっはっは、どうしよー。
(ねえ!ちょっと、どうすんのよ?)
隣に座ったエルフ女が声を抑えて、そう言ってくる。
そんなエルフ女と俺なのだが、現在、な・ぜ・か、ケーリー侯爵の屋敷にお邪魔しております。
なーんでこうなったかなー。
颯爽とエール共和国を出て、エストリア国に入った訳だが、山崩れで最短ルートが封鎖され、だいぶ遠回りを強いられた。
だから、本来は通るつもりのなかったケーリー侯爵領に、足を踏み入れてしまった。
とは言え、謎のカストロ公爵領とかいうNo.8の居る地方は、領内の中でもここからは端と端ぐらいには離れている。
早速、旅の疲れを癒すために宿を取り、酒場で少し早めの食事を取って、酒場のキャサリンちゃんから勇者の話を聞いていた。
今までなら、キャサリンちゃんを口説いていたはずだが、メメちゃんの恐ろしい罠によって、すっかりS級にしか食指が動かなくなってしまった。
S級なんて、そう簡単にいねぇからS級なんだよなー。
まあ、今は適当な口実で一緒に行動しているS級のエルフ女が居るからいいけど。
もちろん、恋人とかそんなことはないし、お互いに考えたこともない。
勇者探しの一時的なパートナーに過ぎない。
ま、持ちつ持たれつということで。
で、それはいいんだ。
問題はその酒場からの帰り道、まだ暗くなる前にある大きな屋敷があって、それをちょっと遠くから眺めていた。
ああ、そういえば、この屋敷でも大変な目に遭わされたなぁ、と。
ここポイントね!
ちょっと遠くから。
近付いてないよ?
でも、向こうから執事らしき人が、さささと近付いてきた。
逃げたかったけど、後ろ暗いことがバレるから逃げれなかった。
「もしや?カストロ公爵様では、ありませんか?」
「いいえ、違います。」
目を逸らし、即答。
「成る程、、、失礼しました。
あくまで秘密裏にケーリー侯爵様に会いに来て下さったのですね?では、こちらへどうぞ。」
違うって言ってるじゃん!
人の話聞けよー!
あれよあれよもなく、連れて行かれた。
逃げたかったけど、なんだかこの執事さん出来る雰囲気醸し出してるから、逃げ切れるイメージが無かった!
とまあ、そんな訳で借りて来た猫のように、豪華なふっくらソファーに身を沈ませている訳で。
どうすんの?と言われたところで、どうにも出来ん!
(いきなり侯爵に直接会うって、あんた何したのよ?)
まだ侯爵は来ていないが、声は潜めてエルフ女は、俺に尋ねる。
それに対し、俺は絞り出すように、返事を返す。
(、、、詐欺った。)
(は?)
(公爵を騙って、土地を取った。)
「はー!?あんた一体何してんの!何がどうなったら、そんなこと、、、!」
「シー!シー!声でかいエルフ女!落ち着けって。」
そこにタイミングを合わせたように、侯爵が扉を開ける。
「おや?お取り込み中でしたか?」
金ピカ貴族のおっさん。
金髪太り、やたらとジャラジャラと悪趣味な服でザッ貴族って感じ。
口元は笑顔だが、相変わらず目が笑っていない。
「いえいえ、些末なことですよ?ウチの連れが、侯爵様にお会いするのが緊張すると申しましてね。
寛大な方だから大丈夫と伝えたところですよ。」
「それはそれは、カストロ公爵殿にそう言われるとは恐縮ですな。」
はっはっはと互いに笑う。
侯爵様は目が笑っていないが、俺は目も笑うぞ!
だって、もう笑うしかない。
公爵様って誰だよ!
カストロ公爵って、結局、ウラハラ国のどんな奴だったんだよ!
知らねーし。
「さて、ゆっくりと積もるお話でもしたいことですが、公爵殿もお忙しいお方。
例の用件で来ていただいたと思っておりますが、如何かな?」
如何も何もないよ!
来る気なんてかけらもないし!
例の用件って、何だよ!?
誰とそんな話していたんだ?
聞くのこえーけど、聞くしかないか。
「はて?申し訳ない。旅先でたまたま通りがかったところ、侯爵様の執事殿に呼び止められたまで。
用件については私には預かり知らぬ事です。
教えて頂けますか?」
ぐっと息を飲む侯爵。
ええ!?何で?
「、、、要求は、なんだ?」
要求って、、、何?
でもまあ、今の要求と言えば、そりゃあ、、、。
「勇者、ですね。ご存知、ですよね?」
何処に居るか、知ってるよね?
それだけを聞いたのだが、何故か侯爵は握り拳を作り、ぐぬぬ、と震える。
エルフ女が、ちょっと、大丈夫なの!?と目で訴えてくるのが分かる。
知るかー!
何で居場所聞いたら、こんなに震えるのかさっぱりだ。
「、、、貴殿は、どこまで、、、知っている。」
「いえ、何も?」
まじで何にも知らんよ!?
「分かった、、、。国には私から働き掛ける。だが、今、確約は出来ない。」
「あー、はい。じゃあ、せめて、このエルフ女を会わせる事は出来ますか?」
会うのにも、国の了解が要るなんて、相変わらず大物だねぇ、キョウちゃん。
「え?アレスも一緒じゃないと嫌だよ?」
普通の女に言われたなら、嬉しい限りだが、コイツに言われてもなぁ。
「いや、もう金無いし。」
「えー?」
あ、やべ、ケーリー侯爵の前だった。
「そのお方は、、、?」
ケーリー侯爵が何故、このエルフ女を『そのお方』呼び?
もう何が何だか。




