熱砂のゴンザレス②
「、、、何が悪いか、分からないんだ。昨年は上位入賞出来た。だけど、それ以上になると壁が乗り越えられない。」
そりゃ、それ以上は運とかもあるしな。
実力者同士の差なんて明確に示せんだろ?
世界ランクNo.1とNo.2の差なんてどれほどかなんて言えねえし。
No.10だったあの女が、前No.8を倒せた理由も目の前で見せられても、よく分からんかったし?
あれ、実力はどう見ても前No.8の方が上だったしなぁ。
世界最強ランクNo.0って言ったところで、意外とただの詐欺師だったりするぐらいあると思うね、俺は。
あ、俺、違うからね?
危険なことに巻き込まないでね?
無理だからね?
誰にでもなく言い訳する。
「一万だ。」
「は?」
鈍いねぇ、わざとかい?
「俺の指導料金貨一万だ。」
相手がふざけんな、と一言口を開く前に。
「、、、だが、俺も引退した身だ。金貨100枚で良い。
俺からしても、お前のダンスは気になっていた。」
金蔓としてな!
「、、、少し考えさせて貰っていいか?」
考える時間を与えると、詐欺に気付かれるから畳み掛けたいところだが。
「、、、俺もこの国には、長くは居れない。悩みがあるなら、急ぐことだ。」
金が無くなるから急いで、金蔓さん!
そこで、俺は話を変える。
「そう言えば、お前の鳴らし手、、、。」
「俺の?ああ、ユウナのことか?」
ユウナちゃんと言うんだ!
良い名前!
是非夜に一戦!
「、、、良い鳴らし手だ。恋人か?」
超大事な質問だ。
妹とかなら、お兄様!妹を俺に下さいと言わなければ。
「いや、アイツは幼馴染で、、、。」
「ほう?」
あんな美女の幼馴染だと?
万死に値する。
「何か理由があるのか?
ああ、酒でも飲むか?
、、、すまんが酒を追加で。」
支払いは、、、先行投資か、ここで支払いさせると金の面で疑われる。逆に奢ると、金に困っていないと勝手に勘違いしてくれる。
昔から家が関係が近く、ユウナともよく一緒にいたらしい。
そのユウナとダンスの腕を磨き、もう少しで相手の両親に認めて貰えるかもしれないそうだ。
、、、恋人みたいなもんじゃねぇか!
肉体関係は?
無いだと!?
奪っとけよ!なんだその甘っちょろい考えは!お前もお坊ちゃんだろ?
それでなくとも、魔獣が蔓延る中で、明日無事に居られるかも分からんのに、のんびり恋愛を楽しんでて良いのかねぇ?
意外に思われるかも知れないが、俺は初めての女は相手にしない。
したとしても、そういう商売の相手か冒険者とか一夜限りの関係で、済ませそられそうな相手だけ。
後腐れなく生きたいからな。
後は、どーしても我慢出来ない時だけだ。
メメちゃん?
あんなS級が俺相手に初めてとか、誰が想像出来るんだ!?
ありえん!ありえんことが起こってしまった!
それこそ俺が実は、世界ランクNo.0なほどあり得ん!
まあ、絶対無いけど。
それぐらいあり得んぐらいの奇跡だ、と言うことだ。
まあ、今更、帝国には帰れないから、メメと会えないから考えても仕方ないけれど、ぐぬぬ。
「とにかく、お前の原因はソレだ。ダンスに色気がない。」
適当に指摘。
「俺の色気、、、?」
男は酒を片手に聞き返す。
ほんのり顔が赤くなっている。
酒でだぞ!
男が酒に弱そうで良かった。
酒豪なら金が足りん。
まあ、その時は是が非でも支払わせるがな!
適当に言ったが、そこそこ的を得ていると俺は思っている。
「このダンスをなんだと思っているんだ?これは求愛ダンスだぞ?
色気のない男なんてなんの魅力がある?」
ズガーンと雷に撃たれたかのような衝撃を、与えられたようだ。
そんな顔をしている。
しめしめ。
結局、当たり前なことを指摘しただけだが、当たり前ってやつを忘れずにやっている奴は、そう多くないと言うことだ。
しかぁし!これで仕込みは十分だ。
俺は立ち上がる。
「、、、サービスし過ぎたな。金貨100枚だ。忘れるなよ?」
まるでさも、相手の悩みの一つを指摘してあげたかのように、良いところで立ち去る。
もっと詳しく聞きたい!そう思わせるのが大事だ!
カモーン!金蔓ちゃん!
翌日、予定通り、酒場に男はやって来た。
女を連れて。
「俺のパートナーもアンタを見たいと。それで判断する。」
流石、頼りないパートナーをフォローする女か。
ふむ、さて、こちらを睨んでいるな。
愛しい男を騙すなってか?
だとすれば、俺もやり易い。
俺は警戒を解くように、軽く手を振る。
「少し彼女と話せるか?」
男に尋ねる。
ここで女に聞かず、男に聞くのもポイントだ。
男を仲介することで、立場を明確にするとか、男と女の関係をそういう風に見てるとアピールすることで、警戒を解く意味もある。
男は戸惑いつつ、女に確認する。
女も戸惑いつつ頷く。
駄目だよ〜?
わっるーい男と二人っきりになったりしたら、どんな言いくるめしてくるか分かんないよ〜?
詐欺にはまず、チャンスを与えない!これ大事。
超超ベテランの交渉人なんかは、会話が成立した瞬間に、どんな相手だろうと交渉が可能とみなせるらしい。
言葉のプロのステージに乗ってはいけないのだ。
んでもまあ、今回は大丈夫。
狙いは女の身体じゃないから。
金が狙いだから。
男には、見える範囲で席を離れて貰うだけ。
女は少しだけホッとした表情を見せる。
やはり世間に揉まれてない。
表情でバレバレだ。
俺が金狙いで良かったな!
男が少し離れたところで、彼女に優しく話しかける。
この時、見た目より大人の雰囲気を出すのが、コツだ。
慌てず、トツトツと話す。
「君は、彼の目的が何かは知っているか?」
彼女は戸惑ったまま、口を開く。
「ダンス大会で優勝を、すると、、、。」
「そうだね。では、その本当の目的は分かっているかい?」
この時、否定から入らず、逆に意見を受け入れるように話すことが大切だ!
「え?本当の目的、、、?」
ふっ!かかったな!
この心の隙を突くのだ。
俺は優しく諭すように女に伝える。
「彼は君と添い遂げることこそが、目的なのだよ。」
言い切る。
ここは違っていても言い切る!
「皮肉なことに、彼が君と添い遂げるために必要なことこそが、彼を優勝から遠ざけている。」
女は怯えるように震えながら、
「私が、私の存在が彼の、邪魔に、、、?」
それに俺はゆっくりとだが、確かに首を横に振り否定する。
「いいや、逆だ。
君たちが添い遂げる条件としての、ダンス大会優勝。
そのためには、、、まず、君たちが結ばれなければならない。
そうしなければ、彼は優勝に必要なための、『色気』を手に入れることは出来ない。」
そして、俺は意味ありげに口の前で両手を組み、彼女を見る。
「、、、さて、君に。君たちに、その覚悟はあるか?」
女がゴクリと息を飲むのが、分かる。
俺は席を立ち、彼を呼ぶ。
そして酒場のマスターに2階にある宿の鍵を手配。
彼らの前にその部屋の鍵を置く。
「覚悟が決まったら、その鍵を持って行くといい。」
そう言いながら、彼らの前で口の前で両手を組んだまま、待つ。
彼らは暫し迷った後、互いに見つめ合い。
鍵を手に取り、立ち上がった。
俺は微笑み、頷く。
彼らも覚悟を決めた顔で頷き、二人で2階に向かった。
ヤッテ来い!




