海賊ゴンザレス
あ、どうもアレスです。
詐欺師のはずですが、今は海賊の奴隷です。
ここ最近の立場の変動が激しいです。
もうね、今ならあのヤバい女No.8も愛せるよ?
後に来る恐怖さえ考えなかったら、最高の女だしね!
美人だし、飯食わせてくれるし、動いてくれるし、俺を立ててくれるし、鞭打ちしないし、、、あれ?俺、何を拘ってたんだろ?
あの日に〜戻りーたい〜。
「オラー!奴隷ども!キリキリ働け!」
壊れた帆船の代わりに、動力は奴隷の手漕ぎ。
なんとか移動しております。
はい、海に落ちて、あの海賊船に捕まりました。
調子に乗って、あのなよっと兄ちゃんが、座礁させた船です。
3隻のうち1隻が手漕ぎでなんとか移動出来そうだったらしく、他の奴隷仲間と一緒にギッタンバッタンと櫂を漕ぐ。
船が動かないようなら見捨てられていたので、良かったのか悪かったのか。
周りは男しか居ない。
それはそうだ。
女なら、すぐに売り出すか、海賊共のおもちゃになるだけだ。
全員黙って、漕ぐ。
話せば体力は無くなるし、何より鞭が飛んで来る。
奴隷辛いー。
かつて書物で読んだ伝説の、ブラックキギョーがこんな状態だと聞く。
疑問が抱けなくなるのだ。
次第にこんな状態なのに、働きがいとか感じだすぞ!注意しよう!
そうしてたどり着いたのは、何処かの島。
ここが海賊のアジトなんだなぁ。
「おい!奴隷ども!荷物を運べー!」
海賊Aが指示を出すのを、へーいと返事。
これには鞭が飛んで来ない。
従順な奴隷にいちいち鞭を飛ばしてたら、すぐ潰れてしまうからだ。
何気に奴隷の中でよく働く奴は、海賊に昇格したり出来るらしい。
出世か!
そんな訳で潰れないためにも、奴隷にも休憩がある。
食事はパンと魚のスープ。
海だから魚は豊富だ、むしろ野菜が殆どない。
俺はパンをスープに浸しながら、何度もパンを噛む。
硬ぇんだよ、このパン。
隣に誰かが座る。
「よう、新入り。調子はどうだ?俺はマイケルだ。」
「俺はジャックだ。よろしくな。」
求められた握手に応じる。
マイケルは、なるほどマイケルって顔をしている。
陽気な気遣い屋って、感じか?
もちろん、そういう風に見せているだけだろうがな。
「調子のいい奴隷ってのは、あんまり聞かないな。」
マイケルは俺の答えに、陽気に笑って見せる。
「違いねぇ!まあ、ここは、奴隷ってより海賊見習い養成所って、捉えた方が良いかもな。
その辺のスラムよりよっぽど環境が良いぜ?」
まあ、そうだな、スラムでは、飯が食えること自体が贅沢だ。
働けば飯が食えるだけマシとも言える。
スラムには、飯を食うための仕事自体が無いから、まさに八方塞がりだ。
だから、スラム上がりは仕事が無くて、飯を食うために犯罪をするしかなかった。
俺の詐欺師稼業も、そうやって始まった。
それを思うと、この『奴隷稼業』も実に身の丈に合ったものと言えよう。
「ただなぁ、女がなぁ、、、。」
「そいつも出世すれば、おこぼれがあるらしいぜ?全ては上に認められれば、な。」
マイケルは、親指を立ててニカッと笑った。
目、笑ってないから、こえーんだよ!
出世した。
「おい!ジャック!次、アレ持ってこい!あれ!あっちじゃないからな!」
「へい!兄貴!」
このあれとかアレとかあっちとか、物の名前で言えよ!どれかわかんねぇだろうが!
それかお前の頭の中身ばら撒け!そのまま海に投げ捨てるから。
奴隷稼業から、海賊稼業の下っ端に昇格した。
それ、昇格と言っていいのか?
「よう?兄弟、頑張ってるか?」
マイケルが俺の肩に手を置く。
気持ち悪いんだよ、放せよ。
やはり、というか、マイケルは奴隷の中に混じって、海賊の下っ端になれそうな奴や、反抗する奴を洗い出す役目を持った海賊の下っ端だった。
最初っから分かってたし、そうとなれば、マイケルと仲良くなって、海賊の下っ端になれるように行動した方がずっと良い。
すぐに始末されたりはしないが、奴隷のままだとやっぱり、いつ捨てられるか分かったものではない。
魔獣なんかに襲われたら、真っ先に見捨てられるからな。
「よう、ジャック。ついに俺も海に出れることになったぜ?」
「マジか!?はえーな、まあ、オメェは最初から見所がある奴だったからな。」
海賊になる見所って、どう考えても、ろくでもないよな。
まあ、当たってるな。
詐欺師だし。
修復の作業も頑張った。
修理担当の棟梁にも褒められた。
「オメェは見込みがあるな、頑張んな!」
「へい!棟梁!」
俺は勢い良く返事をする。
見込みがあるのも海賊なら、頑張ってなるのも海賊。
うん、人として駄目だよな!
それでも、褒められれば、人として間違っていても嬉しいもので、出世して頑張ろうとか思ってしまうのが人の性分だ。
俺は思わんけれど。
島はちょっとした村みたいになっており、島で奴隷と海賊が暮らしている。
女は海賊幹部が囲っているから、ほとんど見かけねぇけど。
早くこんな島出たい。
そんな俺の努力と才能のおかげで、ようやく、海に出る日が来た。
俺も含め、下っ端どもは略奪の期待で目がギラギラしている。
これが海賊どもが命も惜しまず、勇壮に戦える理由の一つでもある。
色々と飢えてる。
当然、奪うことばかりを考えるので、この時点でこの環境から逃げ出そうなんて思いつきもしない。
「野郎ども!行くぞー!!」
「「「「おお〜!!!」」」」
俺たちは修理された海賊船に乗り込み、意気揚々と海へと出た。
道中はずっと作業をしながら、下っ端連中と奪えるかどうかも分からない獲物の話ばかり。
「俺はとにかく女だ!」
「俺は食いもんだな、腹一杯食いたい。」
「馬鹿だな、オメエら、やっぱ宝石だよ、宝石。取って幹部たちに届ければ、顔も覚えて貰って出世だ。」
下っ端の中にはマイケルも一緒だ。
こいつも下っ端海賊だしな!
取ってもいない獲物について、アレやこれや、ガッハッハ!
海賊稼業も悪く無いってか?
そうして船出から3日。
あっさり、帝国海軍に見つかり、圧倒的な力で叩き潰され、全員お縄となりました。
世の中、そんなに甘くないぞ!
ゴンザレスからの忠告だ!




