船の上のゴンザレス②
釣り糸を垂らすけど、全然釣れねぇなぁ、と思いながら、隣で作業する兄ちゃんに話しかける。
「釣れねぇけど、何でか知ってる?」
「潮目が違うんですよ。後10分すれば風が変わるので、釣れだしますよ。」
そんな詐欺みたいなと思ってたら、ほんとに丁度10分後に釣れだす。
「すげぇな、、、兄ちゃん。風とかわかんの?」
なんだか、なよっとした兄ちゃんだけど、ちょっと感動。人ってなんか特技あるよな。
「へへへ、海が好きで、昔から船乗りになりたかったんだ。けど、身体付きがこんなだろ?雑用ばっかりでさぁ。
今回の船も急だから手が足りない、てことでなんとか見習いに滑り込ませて貰ったんだ。
あんちゃんは、商人か何かなのか?
ウラハラ様と時々話しているみたいだけど?」
「あ〜、そうそう、商人みたいなもんなんだけど、なんか偉い人に揶揄われてるみたいでな。
ほんと、困ったもんだよ。」
詐欺師と商人は似たようなもんだ。
「お偉いさんにか?そりゃ大変だなぁ。逆らったりしたら、それで人生終わったりするからなぁ。」
「だろ?いやぁ〜、分かってくれる人が居て嬉しいよ。
特に、そのイリス・ウラハラが、俺をある、、、「商船が襲われている!」」
俺と兄ちゃんは、叫んでいる奴が指差す方向を見る。
大型の商船らしき船が、軍からの横流し品のような船に海賊旗を立てた3隻の船に襲われている。
あー、あれ海賊船か?
3隻もいやがるなぁ。
あの商船も運が悪かったな。
「あの商船は、我らが買い求める品を運んでいるカーバル商会の船です!至急、救援に向かいましょう!」
あー、No.8の女が何か言ってるなぁ。
まあ、人外のNo.8なら余裕だろう。
スピードを上げ、救援に向かう。
このままなら十分救援が間に合うだろう。
そう思った時に、俺はある不安がよぎった。
第六感という奴。
「あー、コレ何かある?」
絶対、何か悪いことあるパターンだ。
ゴンザレス学んだ。
あー、ほらなんというの?フラグ踏んだってやつ?
え?と隣にいたさっきの兄ちゃん。
No.8は身構える。
その先の海面が大きく泡立つ。
激しい波が立ち、そこに大きなイカ。
、、、うん、なんかそんな感じのパターン予測出来てた。
「、、、流石はあるじ様。クラーケンの出現を予想されておりましたか、、、。
わたくしめの想像力不足、大変申し訳ございません。
この上は、私が責任をもって、あのイカを始末致します。」
言うや否や、船から飛び出し、クラーケンに躍りかかるNo.8。
わお!No.8さん、流石!海面走ってる〜。
「え?商人のあんちゃん、今、ウラハラ様にあるじ様って、、、!?」
「気のせいだ!そんなことありえん!」
俺は言い切る。
「お、おう。それもそうだよな?」
兄ちゃんは、常識的な奴らしい。
久々にまともな奴を見た気がする。
ところで、何でこのままこの船、海賊船に突っ込んでるの?
馬鹿なの?ねえ、馬鹿だよね!
馬鹿だと言うよ!バーナード!
「旦那ー!このまま、突っ切るけど、指揮頼んだぜ!!海賊3にこちらは1!圧倒的に不利だぜ!
どうする!」
どうするじゃねー!!!!!
「え!?あれ?今度は船長にも、指揮とか言われてるけど!?あんちゃん、商人なんだよな?」
詐欺師を商人と呼ぶなら、そうだよ!
間違っても、No.8のあるじでも無いし、この船の持ち主でもねえぞ!!!
「兄ちゃん。どうしよう?
なんか良い方法ない?
今にもこの船、あの海賊船に突っ込んで行ってるんだけど?」
隣の普通の人っぽい、なよっちい兄ちゃんに俺は聞く。
こうしている間にぐんぐん、船は海賊船に突っ込む。
「へ?とりあえず、帆を返してタッキングして、上手回しに。」
「聞いたな!船長!帆を返しタッキングして上手回しに!」
「この距離でか!?」
海賊風船長バーナードが叫ぶ。
「他に手があれば好きにして良いぞ!」
俺は言い返す。
というか自分で勝手にやれ!
「くっ!ねえよ!旦那!信じるからな!」
「信じるなー!テメェの腕の方を信じろよ!」
俺は即座に全力で言い返す。
海賊風船長は、何故かニヤリと嬉しそうに笑った。
コイツ、、、マゾか!
「テメェの腕の方を、か。
言ってくれるな。
もちろんだ!!
俺らの腕でなんとかしてやろうじゃねぇか。
聞いたな!野郎どもぉお!!
テメェらの腕、旦那に見せつけてやろうぜ!!!」
「「「「おお!!!」」」」
何か燃えてんね?
俺を信じるなと言っただけなのに。
とりあえず、兄ちゃんに聞く。
「次!兄ちゃん、次、どうする急げ!」
頼む、なんとかしてくれ。
俺と海賊風船長のやり取りを聞いて、ポカーンとしていた兄ちゃんを促すと、戸惑いつつ、次の動きを指示する。
それを俺はそのまま海賊風船長に伝え、海賊風船長と海賊風船員は躊躇わずに、それを実行する。
少しは躊躇えよ!
なんだか横に揺れ、縦に揺れ、一回転して急加速。
へ〜、船ってこんな動き出来たんだ〜、と俺は遠い目をする。
翻弄された海賊船は、俺たちを追いかけようとして、互いで船をぶつけ合ってしまい、遂には、、、3台同時に座礁した。
それから、海賊風船長たち(俺の隣の居た兄ちゃんも)は、襲われていた商船の方に乗り込み、海賊どもを一掃した。
スゲェー。
その光景を見ながら、俺は穂先でエロエロ〜と海に俺の内容物を吐いていた。
やがて、完全に掃討も終わり、座礁した海賊船は放置したまま、船が動き出した。
俺は部屋にでも帰って寝転ぶことを、近くに居た海賊船船員に伝える。
「部屋帰って眠らせてもらうわ〜。」
「は!ご苦労様です!バーナード船長に伝えておきます!ごゆっくりお休み下さい!」
海賊風船員はそれを、船長に伝えてくれるらしい。
「まあ、いいや。俺もう行くわ。またな。」
海賊風船員はそれに何故か少しだけ首を傾げたが、すぐに何かに気づいたように敬礼して立ち去った。
なんかもう、俺、ほんと、どんな立場なんだよ?
ふらふらと手すりを持ちながら進むが、僅かに船が揺れた際に。
また足を滑らせた。
忙しく走り回る海賊風船員たちは、こちらを見ることはない。
ぽちゃんと落ちた俺を、誰も気付くことなく、船は商船と共に去っていった。
こんなんばっか、かよ。




