ゴンザレスとエール共和国②
「無理。」
話を聞いて開口一番にそう言った。
数千の魔獣を撃滅してくれ〜!?
出来るかー!!
「そ、そんな!」
エール共和国元首のちょび髭は、情け無い顔で、机に手をつき身を乗り出した。
そんなもクソもあるかー!
そんなことしたければ、ナンバーズ連れて来い。
「な、何とかなりませんか!国家存亡の危機なのです!お願いします、貴方様のお力をお貸し下さい。」
必死に頭を下げるちょび髭だが、それには何の価値も無い。
「残念だが、行くぞ、メメ。」
あ〜あ、な〜んか適当な口実見つけて、ご褒美貰いたかったなぁ。
ほんと、残念だよ!
「よろしいので?」
メメが聞く。
「よろしくは無い。よろしくは無いが、こんな手前勝手な話なら、打つ手はない。
本当に残念だ。」
ほんと、涙が出そうだよ!
こういう機会でもないと、そう簡単にメメからのご褒美なんて貰えないんだから!
商業連合国の時は、良かったなぁ〜。
いっぱいご褒美貰ったし。
「俺に頼るなど、話にならん!ベテラン冒険者ならともかく!」
俺を魔獣と戦わせてみろ!
一匹目でお陀仏だ。
メメを連れ立って、執務室を出た。
カストロ公爵アレスが、あっと言う間に立ち去ってしまい、エール共和国元首マーク・アイスは暫し、茫然とした。
そして、力尽きる様に椅子に座り込んだ。
何がいけなかったのだろうか?
帝国の使者カストロ公爵アレスと言えば、ここ最近は世界ランクNo.0なのではないかと、各国の上層部には情報が入っている。
だが、条件面を一切聞くことすらなく、カストロ公爵は立ち去った。
これはどういうことか、マークは自問自答する。
エール共和国は今、存亡の危機にあった。
小国であるエール共和国には数千もの魔獣を食い止める手段はない。
それこそナンバーズ、それも現在生き残っている中でも、No.1とNo.2にしかその数の討伐は不可能だろう。
だが、、、その2人を超えるNo.0なら容易い話の筈だ。
現に数十万の魔獣を討伐し、No.2のカレン姫と帝国を救って見せたのは、No.0だ。
No.0には、ナンバーズを除く帝国最強の元皇女メリッサが付き従っている。
そんな情報もあった。
だが、どうやら、違っていた様だ。
、、、それでも、マークには悩んでいる時間はなかった。
今、この時も魔獣は迫って来ているのだ。
何とかしなければ、、、。
その時、不意にカストロ公爵が残した言葉が頭に浮かび上がる。
『よろしくは無い。よろしくは無いが、こんな手前勝手な話なら、打つ手はない。本当に残念だ。』
手前勝手な話、、、なら?
それに気付いた瞬間、落雷に打たれた様にマークはハッとする。
彼は、カストロ公爵は何と言ったか?
『俺に頼るなど、話にならん!ベテラン冒険者ならともかく!』
マークは立ち上がり、部屋の外へ出た。
「誰か!誰か居るか!至急、冒険者を!ベテラン冒険者を集めてくれ!!」
元首に就任して2年、マークはかつてないほどに救国の志に燃えていた。
エール共和国の元首の元から去り、俺たちはすぐに出発することにした。
小雨が降っているが、そこを気にしていると逃げるのが間に合わなくなる。
魔獣は街の前面、つまり山の反対側の平原からやってくるらしい。
だから、多少無理をしてでも山を越えエストリア国を目指す。
「No.0!」
荷物を担ぎ、街の門に向かう途中にキョウちゃんに呼び止められる。
とりあえず、No.0ではないので、スタスタ無視して歩く。
「No.0ー!!」
叫びながら、キョウちゃんが俺の前で通せんぼ。
「キョウちゃん退こうか。」
俺は、優しく言ってあげる。
俺は可愛い子には優しいのだ。
ほ、ほんとだぞ?命が懸かってなければ。
「僕はこの街を守る!No.0!力を貸せ!」
「断る!」
殺されるわ!
「No.0!貴様ー!」
だからNo.0と呼ぶな!
なんとかキョウちゃんから逃れ、山に入る。
連日の雨のため、山道はグチョグチョだ。
雨の日の山道なんて歩きたくないが、仕方ない。
魔物に襲われるよりは余程マシだ。
「よろしかったのですか?」
メメがまた聞いてくる。
「何がだ?」
「いえ、見捨ててしまって。」
俺は思わず首を傾げる。
「俺には何も出来ないぞ?」
「私の時は、助けてくれたじゃありませんか。」
責める感じではない。
ただ不思議そうに首を傾げる。
ちょっと可愛らしい。
ちょっとじゃないな、かなり可愛い。
「あれは、、、。」
ただ単に詐欺ろうとしただけで。
思えば、あれから何故かずっと一緒に居るよなぁ。
改めてこの娘なんで、ずっと俺について来ているんだ?
No.0だと思ってるからだろうなぁ。
ごめんな!
詐欺だ。
飯も奢ってくれるし、ご褒美もくれるし、詐欺師なのに、罪悪感感じそうになった程だ。
駄目だぞ?
簡単に詐欺に騙されたら!
「俺、No.0じゃないぞ?」
メメは小首を傾げる。
だから?とでも言うように。
え?No.0だと思ってついて来てたんじゃないなら、それこそなんでだ?
俺はメメに言葉を発しようとして一歩踏み出し、、、そのまま足を滑らせた。
「うおおおおー!!!」
雨でぬかるんだ山は、俺の身体をつるんと運び、、、。
俺は斜面から、一気に急降下。
メメが俺に何かを叫びながら、手を伸ばすのが見える。
「あいるびーばああぁぁーーーーーーっく!!!」
天然の滑り台はどこまでも続き、俺は必死に身体を制御する!
俺は、俺は生きるぞーーーー!!!!
随分、下にまで滑り落ちた。
だが!
俺は生きてる、生きてるぞー!!!
立ち上がり、メメの元に帰ろうと、、、。
あら?
わたくしの目の前に、魔獣の大群が。
凄いですわね?
こんなに大量の魔獣なんて、見たことありませんわ?
ざっと見るだけで数千!
エール共和国の平原から来ている魔獣と同じぐらいの数いるかも知れなくてよ?
魔獣さんの大行進よ!
山側のこっちから、ずっと街に近づいていたのかしら?
とにかく、、、。
俺は魔獣にクルッと背を向け、、、ダッシュ!!
「おー助けーーー!!!!!」
絶賛、魔獣の群れに追いかけられています。
激しい地響きと共に、背後の魔獣が追いかけて来るのが分かる。
「おーれーはー!生きるぞーーー!!!!」
魔獣たちの地響きは山を揺らし、雨でぐずぐずになっていた山は。
激しい山崩れを起こした。
「ギヤーーー!!!」
山崩れは、魔獣と俺を、、、。
その時!俺の身体を何かが。




