カストロ公爵再び②
あ、ども、アレスっす。
ゴンザレスではないっす。
詐欺師と名乗って良いかどうか分からないっすけど、詐欺師っす。
現在、商業連合国代表とのお話し合いです。
やってやる?
無理無理無理。
すげぇ威圧感なのよ、オッサン。
「ようこそ、カストロ公爵。」
そのオッサンが目は笑わずに、口だけ笑いながら握手を求める。
「会えて光栄です。」
心にも思ってない社交辞令を言いつつ。
そういや、このオッサン、名前何?
メメを見る。
「ベルファレス代表。こちら、帝国よりのお手紙です。
委細は全てカストロ公爵アレス様にお任せすると。」
「ほう?」
とベルファレスのオッサン。
イヤイヤイヤ!
何言ってんの?何言っちゃってんの、メメちゃん!
俺いったい、何交渉すんの!?
何も聞いてないんだけど!?
ソファーに促され座り、メメは黙ってその後ろに立つ。
なんだか偉くなった気分。
なんで、また俺カストロ公爵を騙って、商業連合国代表と相対してんだろ?
遠い目になりそうなのをグッと堪える。
目標はただ一つ、とにかく無事に部屋を出る。
ちょっと、遠い目をしかけていると、向こうから話し出した。
「さて、エース高原の領地の件だが、此方は、ユーフラテス山脈の麓までを想定しているが、如何であろうか?」
あ〜、俺の頭に地形が浮かび上がる。
無駄にふらふらしているから、地形はよく分かる。
領地そのものでいけば、がっつり帝国を侵食するなぁ。結構、オッサン欲張って来たなぁ。
多めに言って譲歩を引き出す、例のアレかなぁ?
通常の者なら、相手の威圧と国を背負っている重圧で、相手の土俵に乗ってあっさり負けるだろうな。
まあ、俺は気楽なもんだけど。
それで良いよ?といっても良さそうだけど、、、。
チラッとメメを見る。
澄まし顔で、特に反応なし。
ちょっと欲が出た。
俺は口を開く。
「良いだろう。代わりにセントラル川は此方で構わないな?」
「何?、、、いや、失敬、セントラル川、、、ふ〜む、、、。」
此方の意図が読めなかったらしい。
セントラル川は、この街への港にも繋がるアマガケ海に続く河川だ。
中型の船舶などは河川は通れるが、有名な航路ではない。そもそも、セントラル川周辺には目立った街はない。
つまり、受け取ったとしても、開発の手間がかかるし、現状、何も無い土地だ。
商業連合国からしても、帝国からしても、どがつく田舎に過ぎない。
だからこそ、意図が分からない。
「、、、くくく。分かりませんか?」
俺は愉快そうに笑う。
オッサンの動揺する様子が可笑しくて、俺は調子に乗ってしまう。
俺はメメを見る。
「ああ、、、なるほど、コレは失礼した。
帝国ランクNo.1が私の後ろに居るので、私が、『帝国中心に』物事を考えると誤解を与えたようだ。」
俺は調子に乗った。
とことん調子に乗った。
後で後悔しそうだが、良いじゃん!!
こんな調子に乗れる機会なかなかないんだから、調子に乗っても!!
「メメ。此方に。」
手を伸ばし、メメの手を引き俺の膝に座らせた。
少しは躊躇うかと思ったが、一切躊躇わず、俺に手を引かれるままに、俺の膝の上に座るので、逆に俺が困った顔をしてしまった。
メメが膝に乗る際に、何故か少し嬉しそうに微笑したので、余計に困惑した。
オッサンには顔を見られない角度だったのが幸いだった。
「コレは、私の愛人ですよ?ベルファレス殿?」
オッサンは困惑の色を深め、その様子は俺でなくとも読み取れる。
詐欺師は常に相手の顔色を、見なければならない!
俺は更に言葉による追撃をする。
わざとらしく、ふふふと笑う。
「私は、『カストロ公爵』なのですよ?ベルファレスさん?」
より親密に、相手に寄り添うように。
そして、答えはあくまで『相手が』導き出す。
「、、、成る程、大変失礼を、そうでしたな。
元ウラハラ国筆頭公爵様。」
セントラル川周辺、そこはかつてウラハラ国の領土の一つであった。
帝国の領地になる際に、商業連合国が掠め取った土地でもある。
俺は遠い目をする。
「ふふふ、良いのです。ベルファレスさん。
つまりただのノスタルジーというやつですよ。」
そうして、俺と商業連合国代表との会談は終わった。