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世界最強、その名はランクNo.0彡☆  作者: パタパタ
魔王編
21/163

ゴンザレスとメリッサ②

 私はメリッサ。


 帝国第3諜報部隊の一員として、街の酒場で看板娘をしたり、城でメイドをしたり、護衛をしたりと忙しくする諜報官だ。


 世界ランクナンバーズには及ばないが、帝国ランクNo.1。

 世界ランクナンバーズを除けば、帝国最強だと自負している。


 普段からショートカットだけど、貴族の令嬢は髪を短めにするのを嫌う。

 だから、メイドをする時は長めのウィッグをつける。


 かつて、失われたレイド皇国の姫だった私は、故国を失い帝国に亡命した。


 逃げ惑う中で、ずっと世話をしてくれた乳母もついに私を見捨てた。


 身寄りもなく、奴隷になるところだったその私を、カレン姫様が救ってくれた。

 だから、カレン姫様は恩人だ。


 それ以降、カレン姫様のしもべとして、時に騎士となり、メイド、諜報官として頑張って来た。


「メリッサは可愛いのに、そんなに男顔負けで頑張っていたら、嫁の貰い手が無くなるわよ?」とカレン姫様にはよく笑われた。

 その度に、私は。


「良いのです。私はこのまま、カレン姫様にお仕えすることだけが願いですから。」

 そう答えるのが常だった。


 そのカレン姫様の命が危ない。

 魔獣が何万と襲い掛かり、カレン姫様の居られる部隊が戦闘状態に入ったと知らせが入った。

 その日から、私の眠れない日々が始まった。


 戦いは激戦となり、帝都防衛の第一から第四までの部隊の内、半分がカレン姫様救援に向かった。


 神様、お願いします。

 これ以上、私から何も奪わないで下さい。


 だが神は無情で、カレン姫様が1人行方不明となられた、と。

 私はその場で崩れ、茫然と座りこんでしまった。




 1ヶ月前、世界に絶望が訪れた。

 世界の叡智の塔が、その絶望を人類に示した。


 世界最強を表すNo.1の上に現れたのは『魔王』。

 その後、すぐにNo.5、6が沢山の兵と共に魔獣により殺された。


 世界の叡智の塔から、No.5と6の名が灰色に表された。

 まるで、世界から希望を一つ一つ奪うように。


 魔獣は溢れ、各国は対応に追われた。

 だが、絶望はさらに広がり、No.7、4、そして、恐るべき事に、No.3までも灰色に染まった。


 残るは下位のNo.8〜10、そして、上位のNo.1と2。

 何故、下位No.8〜10が襲われていないのか、その理由は不明。


 ただ、帝国の秘宝、帝国第3諜報部隊隊長ソーニャ様はポツリと洩らした。


 No.0が何かしたのかも知れない、と。


 多くの人が一笑に付した。

 私も何を馬鹿な、と思った。


 No.0と思われる人物に私も会ったことがある。

 酒場の看板娘に変装していた私を、やたらと口説いて来た胡散臭い男。


 その後、ソーニャ様自身がNo.0であることを否定した。


 だけど、その話を後でソーニャ様とした時、ソーニャ様は青い顔で、

「だったら、どうして私は死んでないの?どんな理由があって襲われない?」


 その事に私は何も言えなかった。

 上位であるNo.3ですら、突然の襲撃で殺された。


 下位であるソーニャ様も殺されて然るべきで、今、生きているのも運、としか言えなかったから。


「この間、この緊急事態に対し、世界全体で対応するためエストニア国に行ったわ。

 そこでNo.8に会った、、、。」


 私は口を挟む事が出来ずに、ソーニャ様の言葉を聞く。


 ソーニャ様はそうすることで、自分を落ち着かせようとして必死に見えた。


 それはそうだろう。

 このままでは自分も死ぬ。

 いくら強くとも、関係なく殺されているのだ。


 私と同じ歳ぐらいなのに、誰にも頼れず、その恐怖に耐えるしかないのだ。


「No.8は焦る様子もなく、むしろ余裕すら漂う表情でこう言ったわ。

『問題ないわ。あるじ様が導いて下さるもの』、と。」

 No.8のあるじと呼ばれる人物。

 あの男が、、、No.0。


「、、、今、生きているナンバーズは5人。

 カレン姫様を除く4人とも、、、No.0と思われるあの男に接触した事があり、死んだ5人は、No.0と会った情報は聞いたこともない、、、。」


 ソーニャ様を押し退けて、No.9になった女、ツバメと言ったか。

 確かに情報では、彼女もまたNo.0と疑われる人物と会っている。


 ならば、本当に?


 その後、ソーニャ様は、カレン姫様救援のため第一部隊と合流する事になった。


 その瞳が誰も分からないぐらい僅かではあるが、恐怖の色が滲んでいることを私は気付いた。


 だから、私はあの男に賭けるしかなかった。


 もう、それ以外、カレン姫様を救える可能性は、本当に唯の一つも選択肢が無かったから。




 あの男は簡単に見つかった。


 見つかるも何もない。

 だって、あの男は毎日、街娘姿の私に会いに来るかのように、酒場に来ていた。


 その日も居た。


 私は、城でカレン姫様の報告を聞いて、変装一つせず、そのままの姿で走って此処まで来た。

 だから、いつもの街娘姿ではなく、素の姿だ。


 密偵にあるまじきことだが、それでも構わなかった。


 私は男を見つけるや否や、その場で土下座して頼んだ。


 そして、カレン姫が森の中で行方不明になっている事を告げると。


 彼は一言、『故意か』と。


 今回、カレン姫様が魔獣が居るであろう森に出たのは、偶然ではない。

 狙われているなら、とカレン姫様自ら故意に出陣したのだ。


 だから、数万の魔獣を撃退する事が出来た。罠を張っていたのだから。


 だが、彼の言った意味を、私は瞬時に悟ってしまった。


 故意に囮になるなど、なんと愚かだ、と。


 今起こっていることは、そんなに甘いことじゃないと。


 絶望に震えた私に、彼は優しく微笑んだ。


 もっと詳しく話を聞こうと。


 今の状況を説明し、彼が告げた一言は、私を更に絶望に叩き落とした。

「無理だ。」


 目の前が真っ暗になりそうになった、その時。


 彼は寂しそうに。

 帝国、と。


 帝国?帝国に居られなくなるが、それでも良いか?と。


 恐らく、それだけとんでもないことを、しなければならないのだろう。


 だが、逆に言えば、、、


 私は覚悟を決めた。

 帝国に居られなくなろうと、この男のしもべとなろうとも、カレン姫様を救い出す、と。


 男は、いいえ、ご主人様は立ち上がった。

 それからご主人様と共に2階の宿へ。


 まずは休め、と言われながら。


 あれほど眠れなかったのに、私は眠る事が出来た。


 この日、私は初めて温かい男の人の腕の中で、眠った。


 そんな訳で、熱い夜を過ごし、一夜明け、冷静になった私。

 メリッサです。


 ちょっと早まったかなぁ〜、と思わずには居られなかった。

 まるで詐欺にでもあったみたい。


 ご主人様と共に森を移動している間に、事あるごとに逃げようとするのだ。


 今では、やっぱりこいつNo.0じゃないよね?と思ってたりする。


「ご主人様〜、どうするんですか?森の中、着いちゃいましたよ?」

 ちょっと口調まで素になって、ご主人様となった彼に呼びかける。


 じーっ、と見るとわかりやすいほど、動揺している。

 ちょっと面白い。


 それでも、ま、しょうがないか、とも思えるのは、なんだかんだ言って、温もりの中で眠ってスッキリ目覚めたからでもある。


「とりあえず、こっちだ。」

 とりあえずね、はいはい。


 言ったところで、他に手が無いのも何も変わらない。


 だけど、彼がNo.0には見えないけれど、もしかしたらカレン姫様を救えるナニカがあるかもしれない、そう思う。


 何故なら、驚くべきほどに魔獣に遭遇しないのだ。


 今も森の入り口付近では、援軍に来た第一部隊と第二部隊が戦闘を繰り広げ、はぐれた魔獣がいつなん時、襲ってくるか分からない筈なのに。


 ちょっと迂回しただけで、アッサリと森に入れてしまったのだ。


 彼と接触したナンバーズは魔獣に、襲われる事なく生きている。


 まるで彼が魔獣を寄せ付けないかのように。

 そうなると、当然、自身にもそれをしない訳がない。


 しばらく2人で森の中を歩く。

 不思議なことに、彼の歩みには迷いがない。


 やはり、本物?

 どう見てもそう見えないけれど。


「んじー。」

 あえて口に出して言ってみる。


 ビクッ、と分かりやすく反応してくれる。

 あまりに分かりやすくて、クスッと笑ってしまう。

 ちょっと可愛いとすら思ってしまう。


 そうしていると大きな沼に出る。

「黒い、、、毒の沼ですね。」


 私がそう言うと、彼は木を沼に突っ込み、刺した先端を嗅ぐ。

 彼はウッと顔をしかめる。


「ご主人様大丈夫ですか?何やってるんですか?馬鹿ですか?」

 とりあえず思った事を言ってみる。


 怒らずに困った顔をする。

 ちょっとその顔は好きかもしれない。


 彼は何かを少し考えた後、また歩き出す。


 不思議な人だなぁ〜。

 考えてないようで考えてそうだし。


 どう見ても強そうにないから、世界最強では無さそうだけど。

 違う何かは見えてそう。


 ピタッと彼の足が止まる。

「、、、帰ろう。」

「駄目です。」

「嫌だ。帰る。」


 これは何かあるな?と私はキュピーンと来た。


 彼の視線の先を目を凝らす。


 あ、あれは!

「カレン姫様!」


 私は全力で駆け出した。


 カレン姫様は今まさに、グレーターデーモンに跳ね飛ばされ、数十メートル飛んで、何度もバウンドする。


 今の今まで、ずっとずっと諦めずに戦い続けていたのだろう。


 目に涙が滲む。


 気絶したカレン姫様を抱えて、グレーターデーモンから離れる。


 凶悪な叫びを上げて、こちらを追いかけてくる。


「やめろ!コッチに来るな!!」


 彼が横を指差すので、私は迷い無く、大木の横を通り過ぎた瞬間、彼が指差した方向へ飛び込むように曲がった。



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【外伝】キョウちゃんのその後の話をリンク貼っておきます。 カクヨムサイト かなりガッツリ恋愛系なのでご注意を!
親友だったはずの女の子とイチャイチャな日々!?〜キョウちゃんの憂鬱〜
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☆【世界最強、その名はランクNo.0彡☆の真相編先行版はこちら、近い内全て再掲予定。
ネタバラシになりますので、先が気になる方はこちら】☆
世界最強、その名はランクNo.0彡☆真相編女神陥落
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