とある部族のゴンザレス
世界最強と呼ばれる存在がいる。
曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。
曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。
曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者
曰く、最強にして無敗、世界の叡智の塔に刻まれるランクNo.1も超えた最強ランクNo.0
だが、その正体は一切不明。
男か女かオカマか、年齢も不詳なら、生まれも公爵家の捨て子だとか転生者とか生まれながらの救世主だとか、数え上げたらキリがない。
それら全てを合わせて、誰も見たことがないという。
それが、世界最強ランクNo.0
俺はアレス。詐欺師だ。
この度、帝国から無罪を勝ち取ってので、名前を戻すことにした。
戻したらゴンザレスじゃないのか?だと?
その名は忘れた。
今、絶賛大ピンチだ。
木の棒に括り付けられて、周りを原住民族らしき腰ミノだけ巻いた裸の男たちに回られている。
女は!女は居らんのか!!
「うんばっほうんばっほ!
うんばっほ!!!」
ロープを解かれた。
一際立派な体格の男が、俺の目の前に立つ。
「我らが神のご判断により、貴様は悪しき者ではないと判断した。よって、貴殿を解放する。」
詐欺師が悪い人ではないとする神とは、心が広いね〜。
邪神じゃないよね?祈り方似てたけど?
「悪しき者ではないなら、貴殿は客だ。ゆっくりされていくが良い。」
俺は都会のシティボウイなんだ、いつまでもこんなところ居てられるか!
「兄様、儀式は終わられたのですね?」
長い茶色の髪に、鳥の羽飾りを髪にさした年の功なら10代後半。美しさと可愛いさの両方を兼ね備えたカラフルだが落ち着いた色合いの民族衣装を着た娘。
「初めまして、お嬢様。この度、ここで客人として逗留させてもらいます。」
色々よろしくしようぜ!
あ、警戒された。
男に慣れていないのか半裸の男の後ろに隠れる。
残念だ。
逗留の間、ちょっと年増だが清楚な雰囲気の未亡人の家に泊まることになった。
男共のリーダーにこそっと教えてもらったが、外部の血を混ぜるために積極的に致して良いとか。
ここは天国か!?
客人でなければ、天への供物として捧げられてたらしいので、俺の強運に感謝だ。
、、、だが、一週間で飽きた。
そりゃあ、まあ、食い物もあって、女も充てがわれて良いっちゃ良いんだけどなぁ。
シティボウイの俺としては、そろそろ次に行きたいというか。
リーダーの妹のトレアちゃんがそろそろデレても良いんじゃないの?と思うんだが、つれないまま。
もう良いかなぁ、と思い出したところで、事件が起きる。
隣のナダル村と揉め出して、争いになりそうだと言うのだ。
この周辺の部族の争いは殲滅戦、男は殺すか奴隷。女は慰み物。
冗談じゃねえ!俺はこんな危険なところに居てられるか!
サッサと村を出るぞ!
そうして、今、俺は足をロープに括られて、木に吊るされ、葉っぱだけの男たちに回りを回られている。
「うんばばりあばばばほりあ!キタキタ!」
何言ってるかワカンネェ。
「我が神に尋ねたところ、主は悪しき者ではないとのことだ。今日から主は客人だ。」
デジャヴ〜。
君らが言ってる神って、お隣の村の神と同じだよね?
やっぱり邪神だよね?
その神の悪しきってなんなの?
服着ること?
「父上!儀式は終わられたのですか?」
長い茶色の髪に、鳥の羽飾りを髪にさした年の功なら10代後半。美しさと可愛いさの両方を兼ね備えたカラフルだが落ち着いた色合いの民族衣装を着た娘。
あれ?ドッペルゲンガー?
「トレアちゃん?」
娘はサッと全裸のオッサンの後ろに隠れる。
「この子はナリアと言う。隣村のトレアとは従姉弟になる。」
そうですか〜。
近い部族同士で血が混じるのね。
というか親戚同士で争いか。
「トレアネエ様をご存知なのですか?」
ネエ様ときたか。
「愛を語った仲だな。」
一方的に俺が。
「ネエ様の恋人?」
「もう終わったことだがな。」
ちょっと寂しげな表情を浮かべる。
ナリアちゃん、次は君に愛を語るよ?
「ネエ様の元恋人、、、。お願いがある!叶えてくれたら僕なんでもするから!」
僕っ子かぁ。
僕っ子と言えばキョウちゃんに会いたくなって来たぞ?
会いたいというか頂きたいぞ、ゲヘヘ。
待て、俺。
今、大事なことを言われなかったか?
「なんでもする?」
ナリアちゃんは両手を組み上目遣いで頷く。
「良いのか?
そんなこと言って。俺はなんでもイケル口だぜ?
思う存分その身体を楽しむかもしれないぞ?」
ナリアちゃんは顔を赤くして俯きながらも、はっきり頷いた。
「契約成立だな?」
父親の葉っぱだけ男を見る。
男はため息を吐く。
「仕方ない。誓いは神聖なるものだ。お主が、願いを果たせばこの子はお主の物となる。」
ゲヘヘ、良いんでゲスな?
契約により、願いが叶った暁には娘の全てを頂こう。
悪魔の契約のようだが、契約とは神聖なものなのだ!
契約も結ばない天使がおかしいのだ!
さあ、願いを言うのだ。
「隣村との争いを止めてください。」
、、、やめればいいじゃん?
「自分たちでは止めれないのか?」
なんで?
自分たちで好き勝手に争ってるだけじゃん?
「無理だ。原因は水の奪い合いだからな。」
へぇ〜。
水が不足する土地には思えんけどな?
大きな森の中だ、砂漠の土地なら話は分かるが。
「この土地は飲み水として使えるものが少ないのだ。
神に許された泉ではない限り、飲んでしまうと神の怒りにより、激しい痛みによりもがき苦しみ死んでしまう。」
ほほー。
神の怒りね〜。
んー。
「その許されない泉、案内出来る?」
「ナリア。案内してあげなさい。」
「はい。」
お!ナリアちゃん頼むよ!
案内されたのは、部族の村から少し離れた場所。
人気は、、、ない。
ニヤッと。
「ナリアちゃん。」
彼女を優しく、引き寄せる。
「あ、、、。」
あ、だって!かっわいい〜。
そのふっくらとした柔らかな宝石の唇をそっと奪う。
ふふふ、今はここまでにしておこう。
契約だからな、仕事が終わった後、美味しく頂こう。
彼女の潤んだ瞳に軽い微笑みで答えながら、彼女を放す。
「さて、水は、、、透明度は高いな。
ナリアちゃん?この水を使用することについては怒りに触れないのかな?」
潤んだ瞳でぼ〜っとしていたナリアちゃんは、ハッとして。
「え、ええ。ですが、神の怒りを恐れて使う人はいません。何か分かったのですか?」
「恐らくね。この水が使えれば、争う理由は無くなるかい?」
「はい、ここさえ使えれば、今後、争う必要は無くなると思います。」
俺は、仕事の完了後に期待を膨らませる。
「ならば、任せたまえ。
その代わりいくつか試したいことがある。協力してもらうよ?」
俺はとっても素敵な笑顔で、彼女をまた抱き寄せその瞳を見つめる。
はい、と彼女は俺にもたれかかった。
クックック、たっのしみだー!
いくつかの検証の後に、俺は村人たちを集めた。
男は葉っぱのみなのだが、女性はナリアちゃんと同様なカラフルな民族衣裳だ。
「なんと!?あの水を飲めるようにしたというのか!」
「ああ、神に正しい手順により捧げる事で、神の許しを貰った。
やって見るから見ているが良い。
まずは神に許しを請う。」
水を火にかけ、むにゃむにゃ適当に言いながら沸かす。
「次に神にその水を捧げる。」
砂利と木炭を敷き詰めた木箱に、その水を注ぐ。
「神が許してくれた水のみを口にする。」
捧げた水が木箱より流れ出るので、それを飲む。
「これで、神の許しを得らええるだろう。」
俺は村人を見回す。
要するに水に寄生虫がいたんだろうねぇ。
とある本に書かれていた症状と状況全て同じだった。
「うんばほー!うんばほー!神の使徒の降臨だー!」
村中から、大歓声が上がる。
話を聞きつけ、隣の村からも村人が様子を見に来て同じようにうんばほー!と大歓声を上げる。
トレアちゃんは来なかった。
チクショー。
いや、だがいい、俺にはナリアちゃんがいる!
村はその日、飲めや歌えのお祭り騒ぎとなった。
俺とナリアちゃんは、その喧騒から抜け出し、人の居ない場所へ。
何をするのかって?
ヘッヘッヘ、報酬を頂くのさ!
彼女を優しく抱きしめると、潤んだ瞳で目を閉じる。
ふっくらと柔らかな唇を奪い、、、。
そして、、、ん?
んー?
パッとナリアちゃんを放す。
不思議そうな顔の美少女、、、?
「ナリアちゃん、、、。キミ、モシカシテ、、、。」
ナリアちゃんは美少年でした。
「うわーーーーーーん!!!!」
俺は走った!
ただひたすらに走り、村を立ち去った。
元男はいいけど、男の娘はあかんのやー!!!
この日、滅びる運命にあった部族が救われた。
その者は、神の使徒の叡智により、その部族に命の水を与えた。
だが、その者は自らの名を告げることもなければ、与えられた報酬を受け取る事もなく、立ち去った。
その崇高な志に、皆、ある存在を想起せざるを得なかった。
世界最強No.0
世界ランクを刻む世界の叡智の塔。
そこには未だNo.0という番号は、ない。