革命家ゴンザレス⑨
ベック伯爵領陥落後、早馬により報告をウスタから、受けたカストロ公爵名代イリス・ウラハラはため息を一つ付いた。
「アレス様らしい。
本当に仕事に行ったのですね。
まさか単独でベック伯爵領を、制圧に行かれるとは、、、。
すぐにメリッサお姉様にも伝えないといけませんね。」
相変わらず無茶苦茶だ。
軍も動員せずに、どのようにしたらそんなことが出来るのか。
彼にとってしてみれば、ナンバーズのイリスですらも、足手まといなのかも知れないと寂しく笑う。
、、、いや、事後を任せてくれる事が、まさに信頼の現れである。
今までなら、そんなことはなかった。
全て自分で片を付けていたのだから。
ならば、イリスたちは、その信頼に応えねばならない。
「あ、あの〜。
ゴンの奴は一体、、、?」
その報告を届けてくれたウスタの戸惑う様子は、流石にイリスも慣れっこになってしまった。
「ゴンザレス様は、カストロ公爵アレス様ご本人で御座います。
そして、、、。」
そこは軽い笑みで留める。
それでも、関わった者はある存在を浮かべる。
世界最強ランクNo.0。
「さて、それと貴方からの伝言、確かに聞きました。
少々そのままでお待ちなさい。」
イリスは部屋から出て行った。
ウスタは、その時の事を生涯忘れないだろう。
「お父さん!」
「ターナー!!」
娘と妻は生きて、カストロ公爵家に保護されていたのだ。
そして、ウスタは唐突に気付かされた。
全ては偶然などではなかったのだと。
あの男、いや、あのお方は全て分かった上で3人に接触したのだ、と。
ベック伯爵領の民の未来を案じ、ただ、全てをカストロ公爵領の者が助けるのではなく、自らの力で立ち上がるように促しながら。
イリスからの手紙を受けたメリッサは、図らずもイリスと全く同じように、ため息をついた。
「本当に仕事をしに行っていたとは、、、。」
しかし、どこまで本気だったのかはあやし〜ところだ。
「イリスさん、なんて?」
気怠げなカレン姫にも手紙を見せる。
それを読んでカレン姫も吹き出す。
「ははは、、、アレスさん。相変わらず無茶苦茶だよねぇ〜。」
「全くです。さあ、カレン姫様。帝国までもう少しかかります。
あまりご無理なさりませぬよう。」
「んー、メリッサもね。
、、、お父様には、なんて言おうかなぁ。」
カレン姫は、たはは、と笑う。
それにはメリッサもこめかみを抑える。
まあ、なんとか考えるしかない。
なんと言って良いかは、全く分からないが。
帝国を上げて、アレスを血祭りに上げようとすることだけは、何としても止めなければならないのだから。
その日、元ベック伯爵領は、カストロ公爵領に併合された。
それもカストロ公爵領は、ただの一兵も使わずに。
仕掛けたのは、無論、あの男。
カストロ公爵アレス。
カストロ公爵領に居たはずの男が、突然転移でもしたように、その街に現れた。
そのような存在を人々は知っている。
世界最強ランクNo.0。
やはりカストロ公爵アレスはNo.0なのだろうか?
事実、エストリアが誇る10剣の1人、グリデン・ベックを、無手にて制したという。
むしろNo.0の数々の逸話から見れば、当然で、挑んだグリデンの方が愚かだと言わざるを得ない。
ナンバーズであっても、誰一人No.0には敵わないのだから。
世界の叡智の塔、邪神の作ったその塔に、No.0の名は、ない。
報告をカストロ公爵領とケーリー侯爵に送り、ある程度の目処が付いた。
私、ナユタは、主人であるゴンザレス様の居ない元ベック伯爵の館で、これからについて考える。
ここからは私よりも、他の人の方が適任なので、私については一旦、カストロ公爵領に戻るかどうかといったところ。
そんなある日、土煙をあげて、何者かが元ベック伯爵領のこの街に接近していると、知らせがあった。
私はグリデンに敗れはしたが、それでも元革命軍では最高戦力。
警戒も兼ねて、その何者かを城門にて出迎えた。
土煙を上げてやってきた人物は、私の前で急停止して行った。
「チクショー!!アレスの奴!
まんまと奪っていきやがった!!」
美しいエルフの女性。
剣聖の担い手と呼ばれる伝説の1人、エルフィーナという名だとか。
その実力はナンバーズに匹敵するという。
アレス、つまりゴンザレス様を追って来たのだろう。
「いいえ、あの方は何も奪っておりません。」
むしろ、皆に希望を与えて行かれました。
「え?奪われたでしょ?」
キョトンとした顔で、私の全身を見る。
私のことで言うなら、、、。
「え、ええ、まあ、奪われました。」
「ふ〜ん。」
さらに私をジロジロ見る。
そして手を差し出す。
「行く?」
「え?」
「あんた、一緒に行く?
アイツが手を出したんなら、見込みあるわ。
ナンバーズ並に強くなれるわよ。
それに、、、アイツはクズだから、追いかけないとさっさと逃げるわよ?」
私はその言葉に、、、。
「はい!」
頷き、彼女の手を取る。
「私はエルフィーナ。あんたは?」
「ナユタと申します。」
そして、元革命軍の皆とブレンたちに笑顔で見送られ、エルフィーナさんと共に旅立った。
あの方を追いかけて。
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