革命家ゴンザレス⑥
「なぁあんでこうなったかなぁ、、、。」
馬で領都へ移動中。
作戦はこれ以上ないほどに、上手くいった。
簡単に言うと、口で騙した。
中央府は攻めるフリ。
丸太や柵も油を仕込んだのは、前面、つまり処刑場とこちらの間の分だけ。
いざとなったら、火を付けて逃げるために。
牢獄だけは1番手薄だったので、本当に解放。
それなりの訓練された兵が居れば、中央府を潰しても良かったが、軍としての訓練をしていない雑兵では数が居ても難しかった。
向こうも兵士としては微妙だったので、革命軍だけで直接武力で制圧も不可能ではなかっただろうが、被害はかなり大きかっただろう。
カストロ公爵の兵?
呼び寄せる訳ないじゃん。
捕まるし。
そんな訳で、頭を潰すのが1番楽そうだった。
その一言に尽きる。
んで、口が最も上手い人が、矢面に立ったという訳だ。
詐欺師って名乗ってないけど、オーラで分かるのかな?
「お館様が前面に出れば、勝利は疑い無いですから。」
ナユタはキラキラした目でそう言った。
うん、疑おうね?
カーラにご執心のフーに伝令兵として、敵陣の中に入ってもらう。
失敗したら自分で、カーラをなんとかしてね?という感じで。
俺が適当なことを言って、代官と兵が戸惑っている間に、代官にフーが接近。
剣を突き付けて脅す。
降伏に応じなければ切って捨てて、戦闘。
俺は逃げる!
、、、まあ、抵抗する気骨もない代官様で、良かった。
「お見事でした。ゴンザレス様。」
ロープに亀甲縛りされた(ように見える)ヒゲオヤジが、感心してしきりに俺を褒める。
まあ、どうも。
オッサンに褒められてもなぁ、、、。
んで、俺たちがどうしているかと言えば、領主代行の居る街に移動中である。
ヒゲオヤジと首謀者の男女を、20名ほど連れて全員亀甲縛り、して見えるように。
大体100名ぐらいの大所帯。
反乱軍を警戒するという名目。
何をするつもりかは見れば分かる通り、領主代行を成敗に向かう予定です。
大将、俺。
いつもだが、なんでだ?
なんで俺は、領主代行の街に攻め入る暴徒の親玉になっているんだ?
君らなんで俺を信じるの?おかしくない?
詐欺師オーラ出てるでしょ?オーラ。
溢れんばかりのイケメンオーラに騙された?
じゃあ、仕方ないな。
いやいやいや。
すぐに逃げ出したいが、逃げれる感じがしない。
ナユタ乗馬上手いのよ。
馬の上に片足で立つぐらい。
曲芸師?
それはともかく、これがどういう状況かというとあの混乱の最中、伝令兵を領主代行へ送っていた。
反乱軍が決起したが、返り討ちにして捕縛したので連行します、と。
道中、反乱軍の残党を警戒しますので、それなりの数にて移動します、とも。
街の内部には人が入り込み、領主代行の街の反乱勢力とも繋ぎを取っている。
また、合わせて噂もばら撒く。
ベック伯爵の失態に宰相側は憤慨している。
この街は見捨てられるかもしれない、と。
カストロ公爵は抵抗しなければ、民を保護する旨を領主代行に伝えたが、領主代行は愚民への気遣いは不要と突っぱねたらしい、と。
流した噂をまとめて言うと、宰相側からの援軍は期待が薄いこと、カストロ公爵に付けば保護されるが、領主代行は自分のことしか考えていないこと。
これらは皮肉なことに、事実でもあった。
そこにもう一つ、抵抗すれば街を蹂躙すると。
それに併せて、先のベック伯爵との戦いにおけるカストロ公爵の軍の強さも流す。あの時の中身は帝国軍だったけど。
これを流しておかないと、日和見主義者が増えるからだ。
本当は、革命をしたあの街にも、似たような噂は流していたが、活用せずにあっさりと終わった。
なんだかなぁ。
「ゴンザレス様、街が見えて来ました。」
は〜い。
ブレンは緊張を滲ませ、その門を潜った。
街で編成されていた兵から参入した者が、手続きを行う。
この時点では、疑われてはいないようだ。
「兵の皆様、かなり緊張されてるようですが?」
門兵が訝しげに、ゴンザレスに尋ねる。
バレたか!?
ブレンたちは、さらに緊張してしまう。
ゴンザレスの合図一つですぐに戦闘だ。
領主館まではまだ距離がある。
駆け抜けられるか?
「そうなんだよ、、、。
もうね、道中、反乱軍がいつ来るか分かんないでしょ?
それで全員、無駄に警戒して疲れ切っちゃってさあ、、、。
ほんと、早く休みたいよ。」
門兵にゴンザレスはゆる〜く答える。
心からそう思ってるのがよく伝わる。
上手い!
ブレンはそう思わずに、居られなかった。
多少の訓練経験者もしくは帰還兵を優先して選んでいるが、それでも民兵に毛が生えた者たちばかり。
そんな連中が、街から街への移動中に反乱軍を警戒し過ぎて、ピリピリしてしまうのは、むしろ当然とも言えることだ。
「はあ。ですが、もう街の中ですし、そんなに緊張なさらなくても、、、。」
そこでもゴンザレスが、間髪入れず答える。
「君さあ、、、。領主代行に緊張なく会える?
領主代行なら、なんで反乱軍が出たんだ!と怒りそうじゃない?
良かったら、変わってくんない?」
またしても、心の底からそう思っているようにしか聞こえない。
「いえ!結構です!皆様のお役目を奪うわけにはいきません!どうぞ、お通り下さい!」
早口で大きな返事をして、門兵は下がる。
それはそうだろう。
領主代行もベック伯爵同様、どんなことを言い出すか分からない相手。
本当にそう言って怒り出しそうだ。
その考えが門兵たちに伝わり、むしろ、緊張するのが、当然という雰囲気で見送られる。
バレる感じがなくなって、ブレンたちも、少しだけ緊張が和らいだ。
そして、道の先にある一際大きな贅沢な建物。
領主館兼伯爵邸。
解放するのだ、この街を、この領を。
ブレンたち全員の心は今一つになった。
とある詐欺師以外。
下の星エネルギーをお願いします_(:3 」∠)_