革命家ゴンザレス⑤
作戦決行の日。
結局、俺は逃げられなかった、、、。
ナユタの隠れ家で寝泊まりして、眠い目を擦りながら決行の日を迎えてしまった。
「ゴンザレス様お言葉を。」
何言えちゅうねん。
集まった革命軍の代表たち。
全体では何人居るんだ?
「諸君、皆の未来を掴むぞ!革命を!」
「革命を!!」
全員ノリ良いね?
決行の日は、西の代表カーラの公開処刑日。
その日に合わせ、各重要拠点を攻撃。
本命を狙う。
公開処刑日になったのは、単に準備に時間がかかったせいだが、そのおかげで敵は分散状態。
狙うポイントは3つ。
西の代表カーラの処刑場。
街の中央府と牢獄。
あともう一つ、領主代行の居る街への伝令。
処刑場は物々しい雰囲気。
本日、革命軍の襲撃がある予定と噂されているからだ。
丸太や柵による防衛陣地が構築されている。
設置は街の者を奴隷のように酷使して行われた。
「では、ゴンザレス様。参りましょう。」
ナユタに護衛についてもらい、俺も現場に移動。
ナユタはこの街の中でも、抜きん出て強いようだ。
カストロ公爵領の奴等って皆異常なほど強いよね、、、?
理由は知ってる。
エルフ女、本当に教えるの上手いんだ。
究極なんとか勇者コースみたいなの、志願制でさせたみたい。
志願者で溢れ返ったそうな。
すげぇな。
俺、絶対やらない。
そして、作戦時間が来た。
ベック伯爵領の街の一つ、マルンド。
その街の代官ゴッドワルドは、焦っていた。
「反乱軍の動きはまだ掴めんのか!」
革命軍と自称する反乱軍。
その西区の代表のカーラという中年だが、なかなかに美しい女を、内通者を使い捕らえたまでは良かった。
今度はその内通者より、処刑場に反乱軍が襲撃をかけると連絡があった。
そのため、防備を固め、反乱軍を待ち構えていたが、奴等が姿を現す様子がない。
それならばそれで、カーラの処刑を済ませてしまえば良かったのだが、ここまで動きが読めないと不気味で仕方がない。
今まで反乱軍が、このような動きをしたことはない。
カーラ捕縛の際もそうであったが、反乱軍は所詮、一般庶民の烏合の衆。
統率された動きもなければ、少し突いただけでとても分かりやすく、滑稽に踊ってくれた。
今日は、いや、ここ最近はむしろ真逆。
何か巨大な存在の手のひらで、踊らされているような、そんな感覚すらしてしまう。
そこに火急の知らせと、兵が走って来た。
「申し上げます!中央府が襲撃に遭い、、、捕らえていた者どもに、逃げられました!」
「なんだと!?守備隊は何をしていた!」
「そ、それが、、、反乱軍の奴等は、カストロ公爵の兵を、街に呼び込み忍ばせていたようで!」
「ぬぬぬ!急ぎ援軍を送る、、、。」
「はーい、そこまで〜。」
処刑場の外に、どう見ても胡散臭そうな男とこの街では見ないほどの、楚々《そそ》とした美しい女性。
「なんだ貴様は!」
「いいからこれ見てね〜。」
懐から木を取り出し、美女から火を受け取る。
それに火を付けると、ボワッと一瞬で燃え上がる。
その燃え方は、木の中に油を仕込んであるようだ。
「アチー!!アチアチ!!」
ぽいっと木を放り捨てる男。
沈黙が流れる。
ゴッドワルドは驚愕する。
な、なにをしたいんだこの男!?と。
手を冷ますように振りながら、男は話を続ける。
ゴッドワルドは思わず思った。
あ、話続けるんだ、と。
「そこの丸太やら柵、これと同じ材料で作ってるから。
火を付けたら、君たち蒸し殺されるから。」
ゴッドワルドは、処刑場の全方位にある丸太や柵を見る。
だが、出入り口にしている場所には、それはない。
簡単に逃げ出せる。
「逃げれると思うよね。そこで!」
処刑を見学していた街の者たちが、武器を取り出し、入り口の方ににじり寄ってくる。
一触即発。
そんな中、さらに男は続ける。
「はいはい、慌てない、慌てない。」
男が緊張感のない声でさらに続ける。
美女が文官らしき男の腕を固定し、剣を突き付けている。
抵抗しようとするが、文官は力の無さそうな美女を、振り解けないようだ。
「こちらは人質が居ます!大人しく兵を引きましょう!」
それは昨日、姿を見せなくなった高級文官の1人だ。
ゴッドワルドは叫ぶ。
「卑怯だぞ!」
それにやる気の無さそうな男が答える。
「美人の女性を、処刑しようとする男よりマシでしょ?
もう中央府も陥落するから、投降しようか!」
「そんな訳にいくか!者共、、、。」
「いいのか!次に見捨てられるのは、自分だぞ!それでもこんな奴の元で戦うか?
さらに自らの守るべき人々を殺してか?兵士諸君!」
兵たちが戸惑い、一瞬止まる。
ゴッドワルドは歯噛みする。
兵はこの街での徴用兵だ。
忠誠心など期待出来ない。
従えるならば、恐怖ぐらいしかない。
ゴッドワルドはさらに、言葉を告げようとして、、、出来なかった。
喉元に剣を、突き付けられていたからだ。
それは、報告に来ていた兵。
反乱軍の手の者だったのだ。
火急の報告と、あの男の妙な行動のせいで、確認が遅れたことが致命打となったのだ。
突き付けられた剣から、目が離せないゴッドワルド。
そこに男から、先程と変わらぬ口調で告げられる。
「、、、さて、お分かりかな?お分かりになりましたら、降伏を。
それとも、そんな訳にいくか、と首と胴が離れますかな?」
戸惑う内に、兵から迫る圧力。
ゴッドワルドには、為す術が浮かばなかった。
こうして、この街は革命軍の手に落ちた。
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