逃亡者ゴンザレス②
最初の数話かなり抜けてました。
修正しました。
アレスはいくら探しても、見つからなかった。
「相変わらずアレス様は、とんでもない方ですね。」
それがどれだけ異常なことなのか、カストロ公爵領の名代をしながら、経験を積んだ今のイリスには分かる。
隠れ里の棟梁たちは優秀だ。
世界のありとあらゆる情報を取得してくる。
だが、アレスのことだけは発見出来ない。
発見出来るのは、事が終わり噂が流れた時。
もしくは彼が自ら姿を見せた時だ。
まるで突然、何者かに連れ去られているかのように。
「カストロ公爵様は見つかりになりませんか?」
エストリア国王女セレンがイリスに尋ねる。
「ええ、いつものことです。」
イリスは穏やかな笑みを浮かべる。
それでも時々は帰って来てくれる。
今のイリスには、それで十分だった。
「不思議な方ですね。あの方と会ってから、追っ手がピタリと止みました。
それに『反乱軍』の混乱ぶりも、噂が聞こえて来ます。
これが全て、、、。」
「ええ、恐らくアレス様のお力です。」
全てを見通す千里眼を持つ大軍師。
その場に居なくても、敵の動きを封じてしまうその力。
分かりきったことだが、とある詐欺師はそこまで考えていない筈である。
ただの嫌がらせが、効果が出過ぎただけである。
誰もが、ベッドの中では口が緩む。
王都のグローリー派に仕掛けられた嫌がらせとは、そういう手だった。
一時の王都の大勝利に気が緩んだ瞬間を、これ以上ないほどについてしまった。
それだけである。
かつてアレスが帝国諜報部にその手腕と効果を見せたが故に、帝国諜報部はそのやり方をマネて、効果を出して見せたのだ。
「私たちは、ただアレス様を信じて待つのみ、です。
すぐにその時は来るでしょうから。」
そう言って、イリスは驚きを見せるセレン王女に微笑んだ。
囲まれていた俺は、生きようとする思いにより覚醒した。
なんてことはない、気付いたのだ。
俺は両手を上げて、オッサンズに話しかける。
「へっへっへ、兄さん方。あっしがカタギに見えるんでやすか?」
「何?」
まず俺の格好だが、金持ちには見えない。
次に荷馬車といえど、ぼろぼろだ。
金目の物を持っているとは、どう見ても言えないはずだ。
男たちは改めて俺を観察する。
「、、、いや、見えないな。
せいぜいチンケな詐欺師にしか見えない。」
なんて観察眼だ!
感心している場合ではない。
言葉を途切らせれば終わりだ。
「後ろの荷馬車の荷物を見てくだせぇ、、、。
おっと、間違っても手荒に扱ったらダメですぜ!
そうなったら、あっしも兄さん方もお終いだ!」
互いに目配せし、1人が荷台を覗きに行く。
「なんだコレは?」
荷台を見に行った男が声を上げる。
知らん!
後で見ようと思って、まだ見てないからな!
先に見ておけば良かった!
ご禁制の荷を運ぶ時、見ないのがルールだ。
見たことがバレたら、それだけで始末されてしまう。
もう一つ言えば、運び屋としての信用も失う。
でも大丈夫。
俺、詐欺師だから。
運び屋じゃないから。
騙される方が悪い。
通常ならば俺もこんな危ない橋は、渡らない。
だが、街から抜け出すには、通常ルートでは無理な程度には、俺の監視は厳しかった。
イヤイヤ違う、ゴホン、逃げ出したんじゃない。
仕事をしているだけだ、仕事だから街を出ても仕方ないんだ。
決して、美女に囲まれて、王侯貴族のような生活をしているあり得ない事態に、怖くなったからじゃない。
ち、違うからね!
おいおい、このままじゃあ、戦争の最前線に、総大将として駆り出されるんじゃね?とか。
そうなったら、もうどこでも完全に顔バレじゃねぇか!冗談じゃねぇ!とか思った訳じゃないからな!!
、、、まあ、そういうことなんだけど。
大体さぁ〜、チンケな小悪党に王侯貴族なんて無理に決まってんじゃん?
かと言って色々、手出してしまったから、今更許して?と言っても許してくれねぇだろうし、、、。
王侯貴族になる覚悟が無いなら、良くて詐欺師として宦官にされて永久に牢獄か、もしくは縛り首だ。
良くてそれよ?
逃げるしかないじゃんよ〜。
おっと、とりあえず今を生きねば。
「そいつはとあるお方に渡してくれ、と頼まれた品だ。
、、、そこで物は相談なんだが、一緒にコレを売り払うのに協力しねぇか?ってことよ。」
「なんだと、、、?」
3人は戸惑いを隠せない。
「おっと、俺を殺してそれを盗んでも、兄さん方の身がヤバくなるだけで、売れもしねぇ。
、、、そんなのはお互い、損なだけ。
そう思わないか?」
3人はまた顔を見合わせて、俺に尋ねる。
「幾らで売るつもりだ、、、?」
「金貨で10000、、、いや20000は下らないだろうな。
取り分は、、、四等分で良い。俺たちは一蓮托生。
どうだ?乗ってみないか?」
金額は現実を超えた、あり得ないのものであればあるほど信じやすい。
人の不思議な心理だ。
ごくっとオッサンどもの喉が動く。
かかった!