ゴンザレスとコルラン⑤
「いやぁ〜、今回ばかりは世話になったね!No.0。」
ハムウェイが、パーミットちゃんを後ろから抱きしめるように、引っ付いている。
俺はもはや定位置と化した研究室のソファーでぐったりしながら、カレン姫と王女様と3人でそれを眺める。
カラクリに気付いてしまうと、ただイチャイチャしているだけだと気付かされる。
「もう迷惑かけないでね?」
お願い口調で言ってしまうぐらい疲れた。
俺もう世界の叡智の塔に近づかない、、、。
色々やっちゃった、、、どうしよ〜。
「ははは、まあまあ。」
カレン姫の方はあっけらかんとした感じ。
そうだよなぁ、処罰されるのは俺だけだしな。
「僕も今回は君に倣って、自由にやってみようと思うよ。」
おい、いつ俺が自由にやったよ?
自由に出来なくて、こんな状況なんだが?
なんでこうなったんだぁあ!!!!
それからすぐに、僕、ハムウェイはパーミットと無事、婚約することが出来た。
どうやったかと言えば、本人にちゃんと想いを伝えて、関係各所を脅して回った。
「最初からそうしろよ!
世界最強なんだからさぁ〜、誰が逆らえるんだよ。」
研究室のソファーで、帝国の皇女カレン姫と世界ランクNo.9とエストリア国のセレナ姫を侍らせたNo.0にそう言われた。
「僕には、君のようにハーレムを作る甲斐性までは無いからね。」
僕は肩をすくめてそう返した。
本物の世界最強にそう言われても、嫌味だよ?
すると、No.0は何故か蒼白な顔をして、ハ、ハーレムって、、、何?と聞いてくるから。
「今の君の状態だけど?」
言ってあげると、No.0はついには白い顔になる。
「、、、て、帝国皇女様?エストリア国王女様?少し離れて頂けますか?」
「「嫌。」」
そして、No.0は涙目で見てきて、ヘルプ、、、というのでニヤリと笑い、片手を上げて部屋から出ておいた。
ハーレムを形成している自覚がなかったらしい。
皇女にまで手を出したんだ。
間違いなく、これから奴は大変だろう。
ざまぁみろ。
パーミットちゃんが言っていたお見合い相手だが、パーミットちゃん自身は相手を知らなかったらしい。
彼女の父である伯爵に尋ねると、
「はて?貴殿のことであるが、話はいってなかったのですかな?」
と言われた。
最初から相手は僕であったらしい。
ああ、確かに研究は続けて良いと言ったかもなぁ。
誤解から暴走して、国を危機に晒してしまったのは、大いに反省した。
そこで僕の立場を救済したのは、またしても奴だった。
「あー、じゃあ、カストロ公爵領の例の土地とその周辺あげるから、No.1の力貸してよ?
上手くいけばエストリア国からも、土地をさらに分けてもらえるかもしれないし。
そういう理由ならコルランの国益にもなるし、良いんじゃない?
どうせ、悪いのは世界の叡智の塔って事で。」
カストロ公爵領の一部は現在、借用という形だ。
それを正式に譲渡する。
国として、国境線も変わることとなる。
前の時もそうだったが、あの地域を聖地としている部族との土地問題も、改善が見込めることになる。
争わなくても、分け合える豊かな土地が手に入るのだ。
しかもカストロ公爵領は魔王無き今でも、魔獣素材の多くが取れる地域だ。
コルランでは魔獣素材は大きなウェイトを占めているので、それが手に入るのは、土地以上の価値を持つ。
つまり、コルランとしては、今回の被害を超える利益が見込めるのだ。
その結果、僕の罪は問われなくなった。
大きな借りを作ってしまった。
「アレスさんは不思議な人ですね。
最初見た時は、バグ博士を騙した詐欺師かと思いましたが、そんなことはなかったです。」
「、、、奴だけは僕が唯一恐る男だよ。」
後ろから抱きしめられたパーミットは、ふふっと笑う。
「アレスさんは凄い人ですが、私が好きなのは、ハムウェイさんだけですよ?」
、、、まったく、やっぱり奴には大きな借りを作ってしまったようだ。
No.0、この借りは必ず返す。
僕はそう誓った。
この日、コルラン国の世界の叡智の塔はNo.1により破壊され、コルラン国は邪神の影響から逃れることが出来た。
この事件の際、No.1が堕ちた事で、コルラン上層部からはNo.1を処罰する話も出ていた。
何故ならこの時は王家にも、虚ろになった者も居たからだ。
しかし、その話はすぐに却下された。
No.0とパーミット伯爵令嬢が作った薬により、人々はすぐに回復したこと。
そして何より、今回No.0はNo.1が堕ちて、数日も経たずに助けに現れた。
それもNo.2を連れて。
それは魔王討伐ドリームチームの固い絆を現していた。
さらには、No.1を連れて行くために、No.0は破格の報酬を用意した。
それは逆にこうとも言えた。
No.1に何かするなら、No.0及びドリームチームは黙っていない、と。
世界は邪神の脅威に脅かされている。
しかし、世界には希望があった。
世界ランクNo.0。
決して世界の叡智の塔に刻まれることのなかったその名を、誰もが知っているから。
虚ろになった人の回復薬を徹夜で作り続けて、それが終わりNo.1が来た後、離れてくれない皇女様方にさらに疲れて、ソファーでぐったりしていると、ついにその時が来た。
冷た〜い空気が流れ、近付いてくる。
「、、、ご主人さまぁあ〜、、、、。
よもや、よもや、、、王女ホイホイは仕方ないかと思ってましたが、まさか、まさか!そちらとは!!」
おドロドロしい気配をまとい、メリッサが顔を見せた。
あら?メリッサさん、相変わらずお美しい。
ですから余計に怖く思えますのよ?
軍は?半数はカストロ公爵領に、半数は連れて来た?
へー。
俺に引っ付いていたカレン姫がその空気をモノともせず、メリッサに手をフリフリ。
「あー、メリッサ〜。
ゴメンねぇ〜。
やっぱ吸引力凄いわぁー。
閉じ込められちゃって、今度こそもうダメかなぁ、と思ってたら、絶妙なタイミングで助けに来るんだもの〜、ヤッバイわぁ〜、堕ちるに決まってるわぁ〜。
ホイホイされちゃった。」
う〜っと涙目になるメリッサ。
う!詐欺師の俺すら罪悪感!?
「あんた、やっぱりハーレム作っちゃってるわよね、、、。」
「え、エルフ女、、、。やっぱそう思う?」
俺も涙目。
「これは流石にアタシも想像してなかったわ、、、。
まさか帝国皇女様にまで、手を出すなんて。
あんた、今度こそ色々諦めな?」
い、いやだぁぁぁぁああああああ!!!!