ゴンザレスとコルラン②
「お初にお目にかかります。エストリア国セレン・エストリアです。」
王女様が帝国皇女様に丁寧にご挨拶。
帝国皇女様がちろっと、俺を確認。
目をそらす俺。
「、、、え?本気でホイホイしちゃったの?凄くない?」
手を出してはいないぞ!
すっごくすっごく手を出したいけど、出してないぞ!
我慢だぞ!
思えば、俺は正気ではなかった。
カストロ公爵に行こうとしたり、やばい王女様に手を出そうとしたり、今までの慎重な俺からしたらあり得ない行動だ。
やばい王女様に手を出すなんて、マフィアの女と分かって手を出すようなものだ。
、、、知らずに手を出すのはノーカンだよ?
知らないんだから、仕方ない。
あと、そういう雰囲気になったらマフィアの女でも、、、は!?
いかんいかん、命大事に。
危ないことには手を出さない!これ大事!!
頭の中が1人ピンクになりかけたが、クールになるんだゴンザレス。
理由はともかくNo.1に匹敵するNo.2の帝国皇女様が居るんだ。
なんとかなるかもしれん。
「でも、なんでここに居るんだ?」
「ナンバーズクラスだと下手に護衛を付けるより、1人の方が動きやすいからね〜。
メリッサもソーニャもそんな感じだったでしょ?」
あ〜、まあ超S級美女たちだから、姿を隠しておかないと目立つけど、実力的に確かに。
魔獣1000ぐらい相手に出来るということは、人ではその3倍ぐらい相手に出来るということで。
体力が保つならば、という前提はあるが、万の魔獣を相手取ったこともあるNo.2なら、3万の兵を相手に出来るということだ。
改めて考えるとナンバーズって、えげつねぇ化け物だよな、、、。
「アレスさーん、ちょっと手伝って下さい!
今やっている研究がですね〜。」
パーミットちゃんが、研究書類を山積みにして、何やら研究を始めている。
前から研究馬鹿だったけど、こんな時に?
「これが世界の叡智の塔の効果よ。」
ふっくらして柔らかそうな赤い唇から、くすぐるような声で帝国皇女様が言った。
「その人が持っている、もっとも強い欲望を刺激するの。
多くの人は、その欲望を理性で抑えているけど、そのタガが外れてしまう。
起こることは混沌よ。
秩序の世界なんて、簡単に崩壊してしまう。
邪神の望む通りに、ね。
だから、急いで世界の叡智の塔を、なんとかしなければいけない。
幸い、帝国はナンバーズが3人に他にも実力者が揃って居たから、大きな問題が発生する前に世界の叡智の塔を破壊出来たわ。
コルランもNo.1が居れば、大丈夫な筈だったけど、、、。」
振られたショックで堕ちた、か。
プププ、ざまぁ。
パーミットちゃんに、気持ちをハッキリ言ってなかったからかね?
研究馬鹿って分かってるんだから、結婚しても研究続けても良いと、その見合い相手より先に言っとけば良かっただけだろうに。
まるでウブな坊やのようだ。
、、、貴族出っぽいから、そういう何というか、恋愛みたいなものを楽しむ余裕があったのかもな。
平民やましてやスラム上がりに、そんな余裕はない!
行くなら行く、行かないなら行かない!
恋は戦場、悩んでいる時間はないのだ。
、、、俺もまだ純粋な駆け出し詐欺師の頃、お店のお姉ちゃんをチロチロ見てたら、金払え貧乏人と言われ以来、恋愛ってお金がかかるんだなぁ、と学んだ。
だから、S級美女が生活の面倒見てくれながら、お世話してくれる現状が怖くて仕方ない。
分からされても、ワカラナイ!
怖い!S級美女何を企んでるの!?
売りつけるの?何を!?
ゲシュタルトの姫みたいに国を売りつけるのやめて!?
無理だから、ゴンザレス無理だから!
「アレスさん?」
艶やかな髪と深い黒の瞳のS級美女の帝国皇女様が、俺の顔を覗き込む。
おっと、美しすぎて逆に正気に戻れたぜ。
「まあ、そんな訳で状況がもう少し分かるまで、私も様子を見てたってこと。
アレスさん着いたばかりでしょ?
とりあえず、今日は休んで明日考えましょ?」
「、、、ああ、まあ、そうだな。」
疲れている時は、酒でも飲んで寝てしまうに限る。
乗ってきた馬車に、酒も食料もあることだしと答える。
「ふふふ、それは良いわね。
ここで籠城中でしょ?食料はまだ大丈夫だけど、お酒とか全然なかったから。」
お!手は出せないけど、S級美女と酒を飲むだけで十分ご褒美だな。
帝国皇女様、どことなく色っぽいし。
そうして、今日は酒を飲んで休むことにした。
だが、人はどうして気付かないのだろう。
その危機はいつでもそこにあって、その警告とも取れることは、幾つも転がっていたのに。
いくつものターニングポイントがあって、そうなる前に防ぐことは可能だった、、、はずなのに。
いつも後悔というものは、先には来ない。
起こってしまった後に訪れるのだ。
人を嘲笑うように。
、、、俺は、ちゃんと聞いてた筈だった。
世界の叡智の塔は、『その人が持っている、もっとも強い欲望を刺激する』と。
俺の欲望って、、、まあ、そうだよね!
2人で寝るには狭いソファーで、毛布で身体を隠す帝国皇女様は、照れ臭そうに。
「ついに、ホイホイされちゃった。てへ♡」と可愛く笑った。
やっちまったぁぁぁああああああ!!!!